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お隣のふにゃふにゃ王子様  作者: まあちゃん
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間違い?

次の日、Speranzaのメンバーは空港に見送りに来てくれた昨日の密着取材スタッフと別れの挨拶をすると飛行機に乗り日本に戻った。

移動の車の中でも飛行機に乗ってる時もPCを開きヘッドフォンをつけてる綾子を見て渉と隼人は、こんなにも綾子が曲作りで切羽詰まった表情をしていることは見たことがないと思ったが、誠は違うことを考えていた。

和が綾子が曲作りで無理をしないか心配なので様子を見てほしいと言われた時は、心配し過ぎだと思っていた。

今まで、悩む事はあったけど煮詰まってしまう事はほとんど無かったので和が綾子を信用してないのかと思った。

けど…、結果はこれだ。

和の言ってた通り綾子は無理をし過ぎて煮詰まってどうにもならなくなってしまった。

昨夜、相川から電話が来て綾子が泣いて電話を寄越したが大丈夫なのか?と、無理をしないように伝えて欲しいと言われたが、今の綾子にはそんな言葉は耳に入らないだろう…。

言えば言うだけムキになってしまうだろうし、煮詰まり曲を作れなくなってしまった自分を責めて自信を無くしてしまうだろうと誠は思った。


成田に付いたメンバーは、一度事務所に寄り今後のスケジュールについて打ち合わせをして解散になったが、綾子は結城に呼ばれて話をしていたために、事務所を出る時間が遅くなってしまい山下に頼み相川の家まで車で送ってもらった。

金曜日の夜と言うこともあり、道が混んでいて相川のマンションの前に付いた時に18時半を過ぎていた。

「山下さんも疲れてるのにゴメンね。ゆっくり休んでね」

と言って車を降りた綾子は相川の住むマンションに入っていった。

結局、曲は全然進まなかった。

本当なら、相川に頼らず自分で仕上げなきゃいけない仕事だった。

でも、結城から製作会社に持って行く前にレコード会社にデモを聴かせなきゃならなくて明日中には歌録りまで終わらせてある程度形にしなきゃならないと言われた。

これ以上時間は取れないし、和だって曲が出来なくて相川さんに手伝ってもらったと正直に話せば仕方なかったと笑ってくれるはず。

まずは曲を仕上げなければならない。

今となっては2週間で作るなんて自分の能力を過信して大きな事を言った自分が恥ずかしい…。

曲が作れないと電話口で相川に泣きついた自分も恥ずかしい…。

もう二度と同じ失敗は繰り返さない、今回の事は全て自分の責任だときちんと謝ろうと綾子は心に決めて、相川の部屋のインターホンを鳴らした。

「…」

いつもならすぐにインターホン越しに相川の声が聞こえるのに今日は返事がない…。

どこかに出掛けているのだろうか?と綾子が考えていると、相川の部屋のドアが開いた。

「相川さん、昨日は泣きついてしまい本当に申し訳ありませんでした」

と綾子が頭を深々と下げて言うと

「…昨日って何の話?」

と言う和の声が部屋の中から聞こえてきた。

ハッとして背筋に冷たい汗が流れた感覚になった綾子が顔をあげると、相川の奥に立っている和と誠の姿が見えた。

「…な…なっちゃん。どうして…」

と綾子が震える声で言うと

「どうして?逆に俺が聞きたいよ」

と和は怒りを抑えたような声で言った。

「ま…まぁ、とりあえず綾子も入って」

と相川に促されて綾子は部屋に入った。

相川がスタジオに使ってる部屋に4人は入ったが、誠と相川は和と綾子の対照的な顔を見て何て言って良いのか分からず黙っていた。

「…綾子、曲は出来たの?」

と話を切り出したのは和だった。

「あっ…」

と綾子が何て説明していいのか分からず黙ってると

「相川さんにチェックしてもらうために来たんだろ?」

と和は言った。

「…」

綾子が黙ってると

「綾子、歌録りが明日になった。明後日はレコード会社の人に曲を聴かせる事になったから変更は出来ないよ。大丈夫なんだよね?」

と和は綾子に聞いた。

「そ…それが…まだ…」

と綾子が震えながら言うと

「まだ何?出来てないか?」

と和は言った。

「…」

綾子が俯いて頭を縦にふると

「だったら相川さんに会ってる暇なんて無いだろ?それに何で俺に連絡しないんだ!そりゃ、忙しかったのは分かるよ。でも、連絡出来ないならせめてまっすぐ家に帰って曲作りしなきゃなんないだろ!」

と和は怒鳴り声をあげた。

綾子が和の怒鳴り声に怯えてビクッとしていると

「和さん、落ち着いて下さい。綾子が怯えてますよ」

と誠は言った。

「落ち着けだって?落ち着けるはず無いだろ。だいたい泣泣き言って何だよ?曲が作れないって相川さんに泣きついたのか?ふざけるな…」

と言うと和は

「泣き言言って頼る相手は相川さんか?ふざけるなよ…。俺はこの仕事が終わったらfateはやめる。綾子は相川さんと組んでやったら良いんじゃないか?」

と言うと和は上着を着て

「明日、歌録りだし落ち着いてゆっくり寝たいからホテルに泊まる。綾子は相川さんと曲を仕上げておけよ」

と言って相川に頭を下げて部屋を出ていった。

和が出ていったあともその場に立ち尽くしてる綾子に

「早くに帰ってもらうつもりだったんだけど、いろいろ話をしてたら長くなってな…。で、誠が香港の土産を持ってきてくれて…そしたら話が盛り上がって」

と相川が話をしているのを

「相川さん、本当の事を話した方が良いんじゃないですか?どうせバレるんだし」

と誠は遮った。

「そりゃ、そうだけど…」

と相川が俯いてる綾子を見ると誠は

「綾子、お前には悪いけど曲が作れなくて煮詰まってること…和さんは知ってたよ」

と言った。

「えっ?」

と綾子が相川を見ると

「知ってたってんじゃなくて、俺が和さんと相川さんに知らせた。多分、お前が相川さんに連絡する前に」

と誠は言った。

「何でそんな事したの?」

と綾子が怒って言うと

「綾子、落ち着け。誠は悪くない。俺と和が綾子の様子を見てくれって誠に頼んだんだよ」

と相川は言った。

「相川さんとなっちゃん…。何それ…私が曲作れないって思って誠に頼んだんですか?」

と綾子が言うと

「そうゆう訳じゃないけど…」

と相川が言うと、綾子は鼻で笑って

「二人とも私の事なんて信用してなかったんですね。実際、曲は完成させれなかったし私は何も言えないけど。でも、酷くないですか?なっちゃんなんて、私に任せるって言ってたくせに本当は出来るはずないって思ってたんですね。…必死になって考えてた自分がバカみたい。」

と綾子は言った。

「綾子、お前さ自分の事を信用してなかったって言うけど、じゃお前は和さんの事をどう思ってるんだ?」

と誠は言うと

「俺、言ったよな?和さんに任せた方が良いんじゃないかって?」

と綾子に聞いた。

「だってなっちゃんは歌詞をやらなきゃいけなかったし…」

と綾子が言うと

「歌詞をやらなきゃならないから綾子に曲を任せるって言ったのか?」

と誠は言った。

「それは…」

と綾子が言うと

「言ってないよな?俺が曲も仕上げるって言わなかったか?自分の作ったのが気にくわなかったら、やり直しをしても良いって言わなかったか?」

と誠は言った。

「でも、なっちゃんは歌詞も尺の調整もしなきゃいけなくて…それに間奏までなんて時間を考えたら出来ないよ。それにやり直しなんてする時間なんて無いし…それに最後は私に任せるって」

と綾子が言うと

「綾子が自分でやるって言うからだろ?」

と誠は言った。

「誠、そんなに綾子を責めるな」

と相川が言うと

「だけど、和さんが可哀想過ぎますよ。あんなに綾子の事を心配して、曲だって結局…。和さんが怒るのも当たり前じゃないですか?」

と言うと誠は上着を手に取った。

「綾子、和さんは曲が心配で俺に連絡してきた訳じゃないんだよ。お前が無理して倒れたりしないか心配で様子を見てくれって言ったんだよ。言葉に出さない優しさに気付いてやれよ」

と言って誠は相川に頭を下げて部屋を出ていった。


綾子が立ち尽くしていると、相川はマグカップを綾子に差し出した。

「ほら、そこに座って飲めよ。先ずは落ち着かないとな」

と相川が言うと綾子はマグカップを受け取りソファーに座った。

綾子は相川の入れてくれたコーヒーを一口飲んで

「私、間違ってたんですか?」

と相川に聞いた。

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