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お隣のふにゃふにゃ王子様  作者: まあちゃん
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香港days 2

次の日、綾子は7シャワーを浴びて伊藤が来る時間までPCを開いて曲作りをしていたが、良いアイデアは一向に浮かばなかった。

自分でもここまで行き詰まってしまうことは珍しく期限までに作り上げれる事が出来るかの不安とイライラがつのっていた。

「どうしよう…」

綾子は頭を抱えた。

自分で作ると和だけでなく、Speranzaのメンバーにも言ってしまった以上どうすることも出来ない。

和はきっと自分が曲を完成させて帰ってくると信じてるはず…。

和の期待を裏切りたくない…。

でも、焦れば焦るほど曲は出来ない…。

「相川さん…」

綾子はそう呟いてスマホを手に取った。

綾子が相川に電話をすると、すぐに相川は電話に出た。

「もしもし、相川さん?今、大丈夫ですか?」

『あー、綾子?どうした?』

「実は、明日…忙しいですか?」

『明日?明日はオフだけど何で?』

「明日、東京帰ったら相川さんのスタジオに行きたいんですけど…」

『俺んとこ?別に良いけど。…曲聴かせに来るのか?』

「いや…それが…」

『…ん?まぁ、良いけど、和も一緒に来るのか?』

「なっちゃんは…私だけじゃダメですか?」

『ダメって言うか…。和と何かあったのか?』

と相川が言うと綾子は泣きそうになった。

『綾子?』

と相川が聞き返すと

「曲が行き詰まって…。でも、なっちゃんは歌詞作らなきゃならないし、私が作るって大見得切っちゃって…」

と綾子は震える声で言った。

『…そうか。まぁ、俺はお前たちのプロデューサーだし歌詞まで頼んで焦らせてる責任あるしな』

と相川が言うと綾子は泣き出してしまった。

『いいよ。東京戻ったらおいで。綾子が黙ってて欲しいなら、和には黙っておいても良いから、一緒に考えよう』

と相川は言ったあと

『でも、明日は和に歌詞を見せてもらう約束してるから18時以降で大丈夫か?その18時までには和を帰しておくから』

と言った。


8時から伊藤に来てもらい髪型をセットしてもらい、軽くメイクもしてもらった綾子は用意された服に着替えると部屋を出た。

エレベーターを降りて、ロビーに行くと既に篠田をはじめとしたマネージャーと香港のテレビ局の取材スタッフが待っていた。

「Good morning」

と綾子が挨拶するとカメラマンは撮影を始めようとカメラを持った。

「Why Don't you begin a video short after all gathered?」

と綾子が笑うとカメラマンはカメラを下ろした。

「綾子さんは英語が上手ですね」

とスタッフの一人が言うと

「日本語が話せるの?」

と綾子は聞いた。

「はい。僕は2年前まで東京の大学に通ってましたので」

とスタッフが言うと

「そうなの?スゴいね。日本語話せる人がいるなら今日の取材も楽しくなりそうですね。ストリートマーケットで買い物するときに通訳頼んじゃおうかな?」

と綾子は笑った。


メンバーがロビーに集まるのと同時に撮影も始まり、メンバーは昨日同様に2台の車に別れて移動を始めた。

綾子はいつものように誠と同じ車に乗り込んだが、昨夜のこともあり気まずい空気が流れていた。

けど、車にもカメラマンとスタッフが同乗しているのでこのままの雰囲気で移動をするわけもいかなく二人はそれぞれに目をつぶりうたた寝を始めた。

今日、初めの仕事はテレビ局でのインタビュー録りだった。

テレビ局の準備した通訳を通しての収録になったが、細かいニュアンスなどが伝わりずらくなんとも歯痒い収録になった。

楽屋に戻り移動の準備をしながら

「まぁ、仕方ないよね」

と隼人が言うと

「そうだね。私たちが伝わりやすいように表現出来なかったのも原因だしね」

と綾子も言った。

「でもさ、今さらながら綾子が一人だけ女だとかそうゆう話題を振られるんだな」

と渉が言うと

「音楽に性別は関係ないから気にしたこと無いって言ったら、中性的過ぎて性別が分かりずらいなんて言ってたよな」

と隼人は言った。

「実際にそうゆう売り方してきたんだし、それが浸透してきてるってことで誉め言葉と思えば良いんじゃない?」

と誠が言うと

「だけど、あれは棘のある言い方だったよ」

と隼人は笑った。

「まぁ、良いじゃない?私は別に気にしてないし、最後はあの司会者に娘がファんだからってCDジャケットにサイン頼まれたよ。その上ライブには家族で行くからって言われたしチケット4枚は売れるの決定したよ」

と綾子も笑った。


テレビ局を出たメンバーは香港でも人気の店で食事をして、シークレットゲストとして出演するイベント会場に向かった。

「はぁ…、まだ先は長いな」

と隼人が呟くと

「テレビのインタビューがあと3件あるからな。でも、ホテルの部屋でするから次々こなせば良いだけだし、そのあとはお楽しみの観光が待ってるだろ」

と篠田が言うと

「まぁそうだけだ…」

と隼人は言ったあと小声で

「あの人たちも一緒でしょ?綾子なんて空き時間に曲作りしたいはずなのに、あの人たちが常にいるから出来ないし…」

と香港のテレビ局スタッフと話をしている綾子を見た。


イベントの出演後、プロモーターの用意したホテルで雑誌やテレビの取材を次々とこなしたSperanzaのメンバーが

「やっと終わった…」

とため息をついてると

「長い1日でしたね、お疲れ様でした。これからは僕たちが香港観光にご案内しますね」

と密着取材スタッフが言った。

「あ…そっか」

と渉が言うと

「そんな構えないで下さい。今日1日皆さんにお世話になったので。そのお返しと言うか皆さんに香港をもっと好きになってもらいたいと思って企画したので気楽に観光に来た気分でて楽しんで下さい」

とスタッフは言った。

まず初めにメンバーは2階建のオープンバスに乗った。

綾子と誠がネオン看板やレトロな雰囲気の建物を眺めているなか

「すっげぇ気持ち良い!」

と渉と隼人は席から立ち上がりはしゃいでいた。

次に、夜景が一望出来るスポットに行ったあとメンバーは香港の夜のストリートマーケットに行った。「ねぇ、この人形ってブルース リーかな?」

と渉が言うと

「これが?全然似てなくてスゲェ怪しいんだけど」

と誠は言った。

「ねぇ、これとこれだったらどっちが良いと思う?」

と綾子はお香立てを手に取り隼人に見せた。

「どっちもどっちだろ?」

と隼人が言うと

「じゃ、隼人ならどれを選ぶの?」

と綾子はお香立てを置いて聞いた。

「俺なら…」

と隼人が龍の付いたお香立てを手に取ると

「隼人好きそうだよね」

と綾子は言った。

その後も端から端まで屋台を見て歩いたりテレビ局スタッフに勧められた屋台で飲茶を食べたりと楽しい時間を過ごした。

「楽しかったね」

と綾子が言うと

「こんなに人の目を気にしないで街を歩けるなんて日本じゃ出来ないもんな」

と渉は言った。

「今回の香港はスゴい忙しくて大変だったけど、こんなに楽しい街とSperanzaを愛してくれてるファンが待ってると思うとライブで来るのがスゲェ楽しみになってきたよ」

と隼人が言うと

「だよな。早くまた来たいな」

と誠も言った。


10時過ぎ、メンバーがホテルに戻ったのと同時にテレビ局の密着取材も終わった。

「今日は1日ありがとうございました」

と取材スタッフが言うと

「こっちこそ、面白い所に連れてってもらったし本当、久しぶりに楽しかったですよ」

と隼人は言った。

「本当、メンバーはカメラが回ってることを忘れて普段通りにやっていたので、番組に使えるような物は何も撮れなかったんじゃないんですか?」

と篠田が言うと

「いえ、私たちは今日1日密着させてもらいSperanzaの事がとても好きになりました」

とスタッフは言った。

「好きに?」

と篠田が聞き返すと

「はい。今まで僕たちが持っていたSperanzaのイメージは、とても人気がありカリスマ性が強く近よりずらいものでしたが、今日1日一緒にいて見えた素顔はとても優しく明るくメンバーもスゴく仲が良い…。長い期間ずっと同じメンバーで続けてこれたのもファンやスタッフに愛されてきたのも納得できました」

とスタッフは言った。

「いや…そんなに褒められるような事は」

と篠田が恥ずかしそうに言うと

「これから、僕たちが感じたSperanzaの良さを香港のたくさんの人たちに伝えられるよう番組を作りたいと思います」

とスタッフは言った。


自分の部屋に戻った綾子は髪をほどきながら

「曲…どうしよう」

と呟いた。

今日1日、曲の事が頭から離れなかった。

バスに乗りキレイな夜景を見て楽しく屋台を覗いたりしたら何か良いアイデアが浮かぶかと思ったが…浮かばなかった。

相川に電話で泣きついてしまった事を後悔し、やっぱり自分でやってみようと思ったけど…結局何も出来ない。

これほどまで、自分の無力さを感じた事は初めてだった。

もう自分は無理かもしれない。

これから先、もう二度と曲なんて作る事は出来ないんじゃないか…。

綾子の胸は不安感で締め付けられた苦しくなった。

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