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お隣のふにゃふにゃ王子様  作者: まあちゃん
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打ち上げで

騒がしい居酒屋のトイレの前で和は綾子に電話をかけた。

「向こうも打ち上げかな?」

と和が耳からスマホを離そうとしたとき

『もしもし、なっちゃん?』

と綾子の声が聞こえてきた。

「綾子、何してたの?」

『ライブ終わって打ち上げでカラオケ来てたよ』

「カラオケ?高校生は元気だな」

と和は笑った。

『なっちゃんは?』

「俺?俺も打ち上げだよ。スゲェ酒勧められるからちょっと抜けてきた」

『なっちゃん、お酒弱いもんね』

「…ライブどうだった?」

『スゴい盛り上がってさ!多分、今までの人生で最高の時間だってぐらい楽しくて、最後にライブハウスにいる人みんなでrevolution歌ったんだけど、他のバンドの人なんて客席にダイブするし…』

と綾子の楽しそうにライブの事を話していたので、聞いてる和も楽しい気分になった。

『なっちゃんはどうだった?』

と綾子が聞くと

「思ってたより大きなホールで始まるまでは緊張したけど、スゴい盛り上がったし楽しかったよ」

と和は言った。

『そっか、大成功だったんだね。お疲れ様』

と綾子が言うと和は何故かすぐ隣に綾子がいるような不思議な気分になった。

『なっちゃん?』

と何も話さない和に綾子が言うと

「あのネックレス、着けてくれてる?」

と和は聞いた。

『うん、着けてるよ。きっと今日のライブが良かったのこのネックレスのおかげもあるかも』

と綾子が言うと

『そっかぁ、じゃあ俺もネックレスのおかげかな?…綾子、ネックレス…ライブだけじゃ無くていつも着けててくれないかな?」

と和は言った。

『何で?』

と綾子が尋ねると

「綾子が同じものを身に付けてくれてるって思うと会えなくても綾子を側に感じる事が出来て、頑張れそうだから」

と和は顔を赤くして言った。

『なっちゃん、酔ってるの?』

と綾子が聞くと

「えー?まだ飲んでないよ…。俺さ…綾子が」

と和が何かを言いかけてると

「ナゴミ、いつまで電話してんだよ!みんな待ってるんだから早く戻れよ」

と村上が側に来て言った。

「分かったよ」

と和が村上に言うと

『なっちゃん、戻った方がいいよ。私もみんなの所に戻るし』

と綾子が言った。

「あ…うん。じゃあ、またね」

と和が言ってると

「早くしろよ」

と村上が言ったので和はスマホを切った。

「和、彩子ちゃんとストロベリートークしてたのか?」

と村上がニヤニヤしながら聞くと

「ストロベリートークにこれからなるところだったんだよ。邪魔しないでよね」

と和はふて腐れた顔をしたが

「悪い悪い。けど、打ち上げも仕事場のうちだから仕方ないだろ」

と村上は言った。


綾子はドリンクバーの隅で電話を切って部屋に戻ろうとすると渉がグラスを持って立っていた。

「うわ!ビックリした。ジュース取りに来たの?」

と綾子が言うと

「楽しそうだったけど、なっちゃんと話してたの?」

と渉は綾子に聞いた。

「うん。まぁ…」

と綾子は電話で話してた内容に和がナゴミとバレる事を言ってなかったか心配になりしどろもどろになりながら渉にこたえた。

「そっかぁ。なっちゃん札幌で仕事だっけ?」

と和が言うと

「そうなの。なっちゃん、今日のライブに来たかったって言ってたから大成功の報告してたんだ」

と綾子は笑った。

「…あのさ、綾子となっちゃんは付き合ってるの?」

と渉は綾子の事を見て言った。

「なっちゃんはお隣のお兄ちゃんの友達なだけだよ」

と綾子が言うと、渉は真剣な目で綾子を見て

「本当に?」

と聞いた。

綾子が頷くと、

「突然抱きついてきたら、手を繋いで歩いたり、それからネックレスも…。普通、あり得ないだろ?」

と渉は言った。

「普通はね。でも、なっちゃんならあり得るんだよ。なっちゃんは昔からそうゆう人なんだ。ふにゃふにゃしてて、いっつも甘えてきて…。でもね、それは好きとかそうゆうのじゃないんだと思う。ただ、甘える事が出来る場所が他に無いから、昔から知ってる私に甘えるだけ」

と綾子は言った。

「甘えるだけって…」

と渉が言うと

「それになっちゃんモテるしね」

と綾子が言うと

「嘘だろ!あんな奴がモテるなんて!」

とドン引きした表情で渉は言った。

「本当だよ。なっちゃんの近くにはキレイな人が何人もいるんだよ。私なんて妹みたいな存在だよ」

と綾子は笑っていたが、渉にはその表情がとても悲しそうに見てた。

「綾子は…なっちゃんが好きなの?」

と渉が聞くと

「小さい時からずっと好きだよ」

と綾子は笑った。

渉は胸が締め付けられているかのよう苦しい気持ちを隠して

「そっかぁ。でもさ、あんな人のどこが良いのかわかんねぇな?綾子は趣味悪いな」

と笑った。

「そうだよね。ふにゃふにゃして男らしくなくて、バカみたいに優しくて、人一倍寂しがり屋で…。でも、天才ってなっちゃんのためにあるんだなってぐらい才能に溢れてるのに、陰でいろんな努力しててるのにそれを誰にも知られたくないとか思ってて……」

と綾子が言うと

「そっかぁ。俺なんてお前の心の隙間にも入れそうに無いな…」

と渉は呟いたが、綾子は聞こえなかったので

「え?何?」

と渉に聞いた。

「妹から抜け出せるように頑張れよって言ったんだよ」

と渉が言うと

「あー、無理無理。私は今のままの関係のままで幸せだから」

と綾子は言った。

「妹でいいの?」

と渉が聞くと

「だって、もしも私が好きだとか言ったらなっちゃん困らせるだけだし、…きっと離れて行っちゃうもん。…だから、今のままで充分過ぎるんだ」

と綾子は笑った。


打ち上げが終わったあと誰かが

「もうしばらく集まることも無くなるし、海で朝日見てから帰ろうぜ」

と言ったので、綾子たちはコインロッカーに楽器を詰め込んで最終電車に乗って海へ向かった。


「うわ、冷てぇ!」

「バカ、押すなよ!」

と、一緒に来たバンド仲間は大はしゃぎしながら砂浜で遊んでいた。

綾子は海辺から少し離れた所にあった石に腰かけてみんなの様子を見て笑っていた。

「彩子ちゃんは行かないの?」

と他のバンドでベースをやっている隼人の中学の同級生で元バンド仲間の誠が隣に座った。

「隼人の奴が押したから11月にこんなにびしょ濡れになって寒いよ」

と誠が言うと

「見てる方は楽しいよ」

と綾子は笑った。

「…確かにバカばっかりで見てる方が楽しいかもね」

と言ったあと誠は少し考えてから

「あのさ、彩子ちゃん」

と話を始めた。

「俺、インディーズレーベルの人にスカウトされてるんだよね。将来、メジャーデビューを目指してやらないかってさ」

と誠が言うと

「スゴいね!誠君は抜群に上手いしプロ目指してるんだもんね。おめでとう」

と綾子が喜ぶと

「でもさ、今のメンバーとは無理なんだって。だから、卒業したらアイツらとも終わりなんだ」

と誠は海辺で騒いでいる仲間を見て言った。

「そっかぁ…」

と綾子が言うと

「この話はまだアイツらにも話してないから、内緒にしてて」

と誠は立ち上がって

「彩子ちゃんはプロ目指さないの?」

と言った。

「私は…今みたいに楽しくやるのが一番だから」

と綾子が笑うと

「そうか。でも、俺でさえ声かけられたんだから彩子ちゃんにも絶対に声かかると思うよ」

と誠は言った。

「えー、そんな事無いよ」

と綾子が言うと

「じゃあ、いつか俺と一緒に組んでよ。あ、彼女でもいいよ。俺、こんな見た目だけど惚れた奴には一途だからね。いつか誘いに行くからさ」

と誠は笑って海辺に向かって歩いて行った。



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