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お隣のふにゃふにゃ王子様  作者: まあちゃん
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心の雪解け

「母さん…ごめん。泣かないで」

と奏は綾子の肩に手を乗せて言った。

綾子は首を横に振り

「ごめんね。私が奏を産んだことを後悔してるなんて思わせて…。そうよね?仕事ばっかりしてて奏のことは二の次にしてきたもんね…。そう思われても仕方ないわね…」

と肩を落として泣きながら言った。

「いや…だから、俺が勝手に思ってただけで。…本当ごめんね。泣かせるつもりは無かったんだよ。違うって知って嬉しかったし」

と奏が困った顔をしてるとドアが開き

「綾子?何してるの?」

と和が声をかけて入ってこようとしたが、綾子が泣いてるのを見て

「綾子、何泣いてるんだ?」

と驚いた顔をしてスタジオに入ってくると綾子の隣にいる奏を睨んで

「おまえ、何したんだ?」

と聞いた。

「なっちゃん、大丈夫だから。奏、何もしてないから」

と綾子が言うと

「何もしてないこと無いだろ?奏、自分の母親を泣かせるなんて最低だぞ。どうして、そんな事をするんだ?」

と和は奏に怒った。

「本当に違うから…。奏も16歳になって大きくなったなって思ったら泣けてきちゃって。奏は泣かないでって慰めてくれてたのよ。ねぇ?」

と綾子がぐしゃぐしゃな顔で笑いながら奏を見て言うと

「あ…うん。そうだよ」

と奏は言った。

「そう…なの?」

と和は奏を見たあと

「そっか。確かに大きくなったもんな…。で?何?二人でギター弾いてたの?」

と言ってテーブルの上に置いてあるスコアを見て

「これ、destinyのスコア?奏、ボレロのコピーしてるの?」

と奏に聞いた。

「あ…うん。友だちにバンド入らないかって誘われて。そいつら、ボレロのコピーバンドしてて明日、一緒にスタジオ行くことになって…」

と奏が恥ずかしそうに言うと

「へぇ、そうなんだ。で、二人で練習してたんだ」

と和はスコアを見ながら言ったが突然

「明日って、おまえ誕生日だろ?みんな来るのに主役いなくてどうするの?」

と聞いた。

「大丈夫だよ。みんな来てくれるの夕方でしょ?それまでには帰って来るから…。あと…」

と言ったあと奏は

「実は、明日…友だちを誘ったんだけど、連れて来てもいいかな?」

と聞いた。

「友だち?」

と綾子が聞き返すと

「うん。スゴいいい奴らなんだよ。だから…父さんと母さんにも会ってもらいたくて。…ダメかな?」

と奏は言った。

「全然ダメじゃないわよ。逆に奏の友だちが来てくれるなんて嬉しいわ。ねぇ?」

と綾子が和に言うと

「そうだよ。こっちこそ会ってみたいよ。…でも、あいつらも明日来るから…。あいつら、断るか?」

と和は奏に聞いた。

「いや、いいよ。みんなにも俺の友だちを紹介したいし…」

と奏が言うと

「そうか?…俺たちは仕事仕様にしてた方が良いのか?普通にしてると夢壊すよな?」

と和が言うと

「そうね。ナゴミがふにゃふにゃしてるって知ったらショックよね?少し、気合い入れないと…」

と綾子は言った。

「そうだよね。綾子に甘えてたりしたら見た人はショックだよな…。あいつらにも口止めしておかないと…」

と和が言うと

「別にいつものままで良いよ。俺は、普段の父さんと母さんにあいつらと会って欲しいから気を使い必要無いよ」

と奏は言った。

「そうか?それで大丈夫か?」

と和が言うと

「うん。大丈夫だよ。家ではまるで別人みたいだからって言ってあるし…」

と奏は言った。

「そっか?じゃあ、大丈夫だな…別人って大丈夫なのか?」

と和は言ったあと

「綾子、風呂入りたいんだけどお湯入ってる?」

と綾子に聞いた。

「入ってるよ。今、沸かし直しするね」

と綾子がギターを置いて立ち上がると

「あー、自分でするから良いよ。それよりも…久しぶりに背中流して貰いたいんだけど」

と和は恥ずかしそうに言ったので綾子は慌てて

「な…何言ってるの?奏の前でしょ?どうしてそんな事を今言うの?」

と言った。

「昔からそうゆうの慣れてるし、別に俺は何とも思わないからいいよ。逆に仲の良い夫婦でいいじゃん」

と奏がギターを持って部屋を出て行こうとすると

「いや、綾子じゃなくて奏。…久しぶりに奏に背中流して貰いたいなっって思ったんだけどダメ?」

と和は奏を見て言った。


先にお風呂に入った奏は浴槽に浸かり目を瞑っていた。

母さんが自分を産んだ事を後悔してると思っていたけど、そんなことは無かったんだ。

逆に、仕事をしていて自分の側に入れなかった事を何度も後悔したことがあるなんて…。

奏は初めて聞いた綾子の想いに驚いた。

「奏、入るぞ」

と言って和がお風呂に入ってきて、シャワーを浴びた。

43歳とは思えない細身なのに筋肉質な身体の和に奏は驚いた。

「どうした?」

と和が言うと

「いや、父さん…いい身体してるなと思って…」

と奏は言った。

「そうか?」

と言ったあと和は

「まぁ、職業がら鍛えてるし食べ物にも気を使ってるしな」

と言った。

「職業がら?」

と奏が聞くと

「オッサンになっちゃうとイメージ崩れるだろ?それに、ライブとかには体力も必要だし歌うのも腹筋使うし日頃から鍛えておかないと後で大変な目にあうからね。綾子もだけど、見られる仕事してる訳だから、身体のいろんなことには気を使って生活してるんだよ」

と和は言ってから

「そろそろ、背中流してもらおうかな?」

と言った。

奏が和の背中を洗ってると

「前に由岐から聞いたんだけど、俺や綾子がおまえを産んだ事を後悔してるって思ってたの?」

と和は言った。

「うん…まぁ」

と奏が言うと

「それ、綾子に言って泣かせたの?」

と和は聞いた。

「ごめん」

と奏が言うと

「いや、怒ってる訳じゃ無いんだよ。俺の親も仕事忙しい人だったし、俺も奏と同じことを思ったことあるから」

と和は言った。

「父さんも?」

と奏が聞くと

「ああ、俺の場合は、仕事をしてる両親の姿にスゴい憧れとか持ってたんだけど、そんなに仕事が好きで仕事ばっかりしてるなら俺なんて産まれてこなければよかったって思ってるんだろうなって思ってた時期も長くて、良い子にしてなければもっと嫌われるとか思った時期もあったな」

と和は言った。

「自分がそうゆう事を思いながら育ったから、自分の子どもには絶対にそんな思いをさせないって思ってたのに、結局同じことを思わせてたんだな」

と和が言うと

「でも、今日母さんと話をしてそれは違ったんだってわかったから」

と奏は言った。

「そっか…。あと、俺と綾子の子供ってことで嫌な思いをしてきたりもしたんだろ?」

と和は言った。

「うん。まぁ…。でも、今の友だちはそんなの関係なく一緒にいてくれる奴らだと思うから」

と奏が言うと

「そっか…綾子も昔、ユキの妹とかナゴミの恋人って言われるのをスゴく嫌っててずっと黙ってたんだよ。Speranzaのメンバーも高校卒業するまで知らなかったし、デビューするときもユキの妹とかナゴミの恋人って言われたくないって。綾子を見てほしい、綾子の実力で成功したいって言って暫く公表しないでSperanzaの活動もしていたんだよ」

と和は言った。

「俺と綾子、二人がそれぞれ嫌だった事をおまえは一人で背負ってきたんだもんな…。ごめんな」

と和が謝ったので

「いや、父さんと母さんが悪い訳じゃないし謝らないでよ。それに…前にライブ見て自分の親が本当にスゴい人なんだって初めて理解出来た気がするし、俺はこんなスゴい両親のところに生まれてきたことを誇りに思ってるよ」

と奏は言った。

「何、親を泣かせようとしてるんだよ。綾子はその手に引っ掛かったかもしれないけど俺は泣かないよ」


と和は言ったあと

「ところで、奏は好きな子とか彼女とか出来たのか?」

と言った。

「俺はそんなのいないよ」

と奏が言うと

「隠さなくてもいいから。俺と綾子の子どもならモテるだろ?」

と和は言った。

「本当にいないって」

と奏が言うと

「本当に?俺も綾子も高校生の頃はモテモテだったのに」

と和は言った。

「それ、由岐ちゃんに聞いたよ。母さんは誰とも付き合わなかったけど、父さんは好きでもない女と付き合ってたんでしょ?最低だよね」

と奏が言うと

「それは…綾子が」

と和は言ったが

「父さん、ロリコンだったんでしょ?」

と奏は笑った。

「ロリコン?…それも由岐から聞いたのか?あいつ余計なことばっかり教えて」

と和がブツブツ言ってると

「俺は好きでもない女とは付き合いたいとは思わないけど、父さんも母さんもずっとお互いのことだけが好きだったんでしょ?それってスゴいよね?」

と奏は言ったあと

「そんな二人も俺の自慢だよ」

と笑った。

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