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お隣のふにゃふにゃ王子様  作者: まあちゃん
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奏と友だち

夏休み、奏は琳たちとあちこちの夏祭りに出掛けたり夏フェスに出掛けたりと今まで経験したことのないほどの楽しい夏休みを過ごし、あっという間に2学期が始まった。

綾子や和や由岐がいないときには琳たちを綾子の実家に呼んで遊んだりもしていて、始業式のあった今日も学校帰りに遊びに来ていた。

「おじゃましました」

と勇次郎が言うと

「あら、もう帰るの?」

と綾子の母親は言った。

「はい。明日も学校だし」

と琳が言うと

「そうなの…」

と綾子の母親は寂しそうに言ってから

「そうだ、明後日の土曜遊びにおいで」

と突然ニコニコして言った。

「明後日ですか?」

と琳が聞き返すと

「そう。明後日、奏の誕生日なのよ。毎年誕生日はお父さんもお母さんも仕事休みでみんなでお祝いするのよ。奏が友だち連れてきたらみんな大喜びするわ」

と綾子の母親は楽しそうに言った。

「ばあちゃん、俺も高校生だし誕生日だからって友だち呼んだりは…」

と奏が嫌な顔をして言ったので琳たちはどうしていいのか分からず困った顔をした。

「そう…ごめんね。でも、今まで友だちを家に呼んだりしたこと無かったでしょ?だから、お父さんもお母さんも良い友だち出来てよかったって喜んでたから、琳くんたちを会わせてあげたくて」

と綾子の母親は悲しそうな顔をしたので

「あの…。俺、奏さえ良ければ来たいんだけど」

と琳は言った。

「え?」

と奏が驚くと

「だってさ、ばあちゃん可愛そうだろ?それに、奏の親だってたまにしかし会えない息子のこと心配してんじゃない?だったらさ、俺たちじゃ期待はずれの友だちかもしれないけど会って奏のおじさんとおばさん喜ばせてやりたいじゃん」

と琳は言った。

「そうだよな。それに誕生日って言ったらケーキとかもあるんだろ?野郎ばっかじゃ恥ずかしくてスイーツ食べに行けないしさ。ケーキ食べに来るって考えたらさ」

と勇次郎が言うと

「それに奏の両親も音楽やってたんだろ?だったら、話とか合いそうだし楽しそうじゃん」

とさっちゃんも言った。

「でも…」

と奏が困った顔をしてると

「誕プレ期待されても困るけど、俺たちもおまえの誕生日祝ってやりたいんだよ。なぁ、いいだろ?」

と琳が笑ったので奏は

「…わかったよ。でも、本当に特殊な親だし引くよ…」

と言った。

「大丈夫だって!俺の母ちゃんだって特殊な感じじゃん。金髪に昼間からスエット履いてる母ちゃんなんて普通いないだろ?」

と琳が笑うと

「確かに、ヤンキースタイルでインパクトあるよな。めちゃくちゃ怖い人だと思ったもん」

とさっちゃんも笑った。

「だからさ、おまえも気にするなって!なあ?」

と琳が笑うと

「うん。わかったよ。誕プレ期待してるからな」

と奏も笑った。

「おい、それは期待するなよ…」

と琳が言うと

「俺、ギターの弦欲しいんだよな」

と奏は笑った。


琳たちが帰ったあと綾子の母親は

「ごめんね。私、余計なことしたゃった?」

と奏に聞いた。

「そんなこと無いよ」

と奏が言うと

「奏がお父さんとお母さんの事を話してないんだろうなとは思ってたんだけど、あの子たちならお父さんとお母さんの事を知っても変わらずに友だちでいてくれるんじゃないかな?って思ったのよね。でも、奏がやっぱり会わせたく無いって思うなら今年の誕生日は友だちとするらしいって私が綾子たちに言うからやめてもらってもいいんだよ。琳くんたちににも、両親とも急に仕事が入ったからって言っても良いし」

と綾子の母親は言った。

「大丈夫だよ。俺もいつまでも黙ってるの嘘ついてるみたいで嫌だったし、ばあちゃんがきっかけ作ってくれて良かったよ」

と言うと奏は

「母さん、明日も休みなんだよね?」

と聞いた。

「うん。そう言ってたけど」

と綾子の母親が言うと

「俺、明日から向こうの家に帰るよ。誕生日も向こうの家でやってもらいたいし母さんに連絡しておくね」

と奏は言った。


奏の家の帰り道、琳たちは話をしていた。

「奏の両親てさ、そんなに特殊な仕事してるのかな?」

と勇次郎が言うと

「前に普通の家に憧れるってあいつ言ってたことあるよ」

と琳が言った。

「普通の家?」

と勇次郎が聞くと

「あいつ、昔から親が忙しくてばあちゃん家に預けられてたみたいだしさ」

と琳は言った。

「あのさ…。前にも話したんだけど、まさか本当に奏の親がナゴミと綾子なんてこと無いよな?」

とさっちゃんが言うと

「どうだろ?奏、顔も似てるけど、歌ってる時の声とかもナゴミに似てるもんな…」

と勇次郎は言った。

「いや、俺が思うにナゴミより格好いいよ」

と琳が言うと

「音楽の才能も親譲りだったりするのかな?」

とさっちゃんが言った。

「でもさ、ナゴミに似てるって言われて嫌な思いしかしてこなかったって言ってたじゃん。もしもさ、本当に子どもだったら俺たちには分からないような苦労してきたのかも知れないよな?」

と勇次郎が言うと

「そうだよな。ライブの時も女の子たちに囲まれて何も言わなかったけど拳握りしめて震えてたもんな…、よっぽど嫌だったんだよな」

と琳は言った。

「でもさ、もしもだよ。もしも本当に奏がナゴミと綾子の子どもだったらどうする?」

とさっちゃんが言うと

「そりゃ、驚くけど…。俺は別に変わらないと思うよ」

と琳は言った。

「だってさ、親は親だろ?別にナゴミと綾子の子どもかもしれないからって一緒にいるわけじゃないし、関係ないじゃん」

と琳が言うと

「そうだよな。やっぱりそうだったって思うかもしれないけど、あとは特に変わんないんじゃない?そんなことより俺は早く奏にバンドに入ってもらいたいしさ。…さっちゃんは何か変わるの?」

と勇次郎も言った。

「俺?俺も変わんないと思うけど…。でも、握手してほしいかな」

とさっちゃんが言うと

「それは俺も!…でも、奏の両親と握手って言うのもなんか変な感じだよな」

と琳は笑った。

「だよな。何で奏の親と握手すんの?って感じ」

と勇次郎も笑ったあと

「でもさ、これで明後日会ったのが全然違ってとんでもなく変わった親だから会わせたくなかったとか、奏が特別変異で生まれてきたみたいな似ても似つかない感じの両親だったら驚くけどな」

と言った。

「そっちの方がどう反応していいか困るわ」

と琳が笑うと

「確かにな。でも、息子の誕生日だからって仕事休む親なんて変わってるよ絶対」

とさっちゃんも笑った。

「じゃ、どんな親が出てきても奏とはこれまで通りってことで。でさ、やっぱり手ぶらで行くのはマズイよな?誕プレ何にする?」

と琳が言うと

「ギターストラップで良くない?あいつもストラップもらったからにはバンドに入らなきゃって思うよかもよ」

と勇次郎は言った。

「じゃ、これから見に行く?」

と琳が言うと

「だな。めちゃくちゃ格好いいの選ぼうぜ」

と勇次郎は笑った。


部屋に戻った奏は綾子にlineを送ろうとスマホを持っていた。

向こうから来たのには返信するけど、こっちからは連絡したことが最近無いので、何て送れば良いのか奏は迷っていた。

「明日、家に帰る…で良いかな?」

と呟きながら入力してlineを送った。

「あとは…明後日」

と入力しているとlineが鳴った。

「もう返事?…『何食べたい?』って言われても…何でもいいんだけど。それじゃ困るんかな?…ハンバーグでいいか」

と言いながらlineを送ると、またすぐに返信がきた。

『了解(^-^ゞ 明後日はどっちの家でお祝いするのかって渉が聞いてるけどうちで良いの?』

綾子のlineを見て奏は

『俺ん家でいいよ』

と返事を送った。


スタジオでの雑誌の写真撮影を終えた綾子が着替えを終えてSperanzaの控え室に戻り髪型を戻してもらってるとスマホ楽屋に鳴った。

「ん?誰だろ?」

と綾子がスマホを見ると奏から

『明日、家に帰る』

とlineが入っていた。

綾子は

『何食べたい』

とすぐにlineを送り返した。

「綾子、どうした?」

綾子の編み込みをほどいている伊東が泣いてる綾子を見て心配そうに言った。

「何でもないんです。ただ、嬉しくて…」

と綾子が涙声で言うと渉が側にきて

「何が泣くほど嬉しいの?」

と綾子に聞いた。

「これ…」

と綾子がスマホを見せると

「奏から?帰ってるって?」

と渉は言った。

「そうなの。奏、高校入ってからずっとお母さんのところにいて帰って来なくて…私たちが向こうに行っても全然話もしてなかったから…連絡来るだけでも嬉しいのに帰って来るなんて」

と綾子が言うと

「あ、返事きたよ。明日はハンバーグだって。あいつ昔からハンバーグ好きだったよな」

と渉は笑うとスマホを綾子に返した。

近くに座っていた誠と隼人が嬉しそうな顔をして

「綾子、良かったな」

と言うと

「うん。良かったぁ…。本当に良かったぁ…」

と綾子はボロボロと涙を流して言った。

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