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お隣のふにゃふにゃ王子様  作者: まあちゃん
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奏の疑問 2

「壊れた?」

と聞く奏に

「壊れたと言うか、壊れかけたのかな?」

と由岐は言った。

「あいつの家に俺と村上さんで行ったとき、震えながら俺の何がダメなんだって俺に聞いたんだよ。その時、酔って何を言ってるんだ?って思ったんだけど、あいつ泣きながら自分の何がダメで綾子は別れたんだって、…綾子が別れたことで俺を傷付けたと思わないように頑張ったけどもう無理って、綾子がいないとどうしていいかも分からないって言って…。そして、あいつは緊張の糸が切れてただ生きてるだけの人間みたいになったんだよ」

と由岐は言った。

「ただ生きてるだけの人間?」

と奏が聞くと

「そう。飯も食わないでボーッと宙を見て1日が過ぎるだけ。俺たちが何か言っても反応なんて無い。多分、あの時の和はこのまま死んでもいいと思ってたんだろうな」

と由岐は言った。

「…」

奏が黙ってると

「本当に最悪だったよな。仲間としてと言うより昔から家族みたいに育ってきた親友の和をどうしても救ってやりたくて、綾子に和のことを話してやり直して欲しいって、それが無理なら一度でいいから会って欲しいって頼んだんだよ」

由岐は言った。

「…けど、その時には綾子も既にいっぱいいっぱいな状態で倒れたんだよな」

と由岐は言った。

「で?どうやって父さんは立ち直ったんですか?」

と奏が聞くと

「綾子だよ」

と相川は言った。

「母さん?」

と奏が言うと

「正確には立ち直るきっかけを始めに作ったのは綾子が和のことを想って作った曲だよ」

と相川は言った。

「母さんの曲ですか?」

と誠が聞くと

「俺さ、綾子が作ったとは言わないで和に綾子の作った二曲聴かせたんだよ。そしたらさ、あいつ目を閉じて曲を聴いてたんだけど涙を流したんだよ」

と相川は言った。

「あの二曲には綾子の和への愛が溢れてて、和もすぐに綾子が作ったことに気付いたんじゃないか?」

と相川が言うと

「相川さんと入れ違いで和の家に行った時に、今まで俺が怒鳴っても何をしても反応しなかった和が曲を聴かせてくれて、和が作ったのかって聞いたら綾子が作ったって言って…。言葉を発するだけでも驚いていたら、和は目を閉じて曲を聴いてたんだけど口元が緩んだんだよ。俺さ、和のその姿を見てボロボロ泣いたよ。やっぱり和には綾子が必要なんだって。綾子の存在だけが和を救えるんだって思ったよ」

と由岐は言いながら、当時を思い出し泣きそうになりながら

「その時に、綾子が入院したことと妊娠してることも綾子が突然別れるって言い出したかも全部和に話したんだよ」

と言った。

「…和、かなり動揺していたよ。でも和さ、飯も食わないでフラフラな身体のくせに真夜中に病院に来てさ…。ちょうど綾子が目を覚ましたんだけど、綾子は和が痩せたことを心配して無理するなって言って、和は和で綾子は女なんだから頑張り過ぎるなって心配して…。お互いにボロボロなくせに相手のことを気遣って心配して…」

と言うと由岐は言葉につまってしまった。

「ごめん…。あの頃の事を思い出して…」

と由岐が言うと

「本当にあの二人はスゴいよ。あれほど互いの事を想えるなんて普通出来ないよな」

と相川が言うと

「そうですね。あの後の和さん格好良かったですしね」

と誠は言った。

「格好良かった?」

と奏が聞くと

「綾子を結婚前に妊娠させてしまったことや、仕事に支障をきたしたことを和は全て自分のせいだと社長に謝ったんだよ」

と相川が言うと

「それだけじゃないですよ。うちの両親と俺にも早く子どもが欲しかったとはいえ結婚前に妊娠させたことや知らなかったとは言え入院までさせてしまったことを土下座して和は謝って結婚させて下さいって頼んだんだよ」

と由岐は言った。

「…」

奏が黙ってると

「それから、おまえはみんなに祝福されて産まれてきたんだぞ」

と由岐は言った。

「おまえがお腹にいるとき和は健診には必ず着いていってなんとか教室って赤ちゃんの世話や出産の時のことを勉強する教室にも綾子と一緒に参加したし、おまえが産まれる時は和は陣痛で苦しんでる綾子をずっと側でサポートしてたし、産まれたって言ったらSperanzaのメンバーもボレロのメンバーも大喜びして病院に集まってきたし、みんな自分の子どものようにおまえの成長を見てきた」

と由岐が言うと

「そうだよ。俺たち奏がまるで自分の子どもののように可愛くて可愛くて仕方ないんだよ。多分、奏がいるから俺たち結婚出来ないんだと思うよ。だって、子どもは奏だけで充分。俺たちの愛情の全てを奏に注いでるからな」

と誠が笑うと

「だから、おまえは自分のせいでなんて思う必要な全然無いんだよ」

と由岐は言った。

「…」

奏が黙ってると

「まだ、聞きたいことある?」

と誠は奏に聞いた。

「…いえ。ありません」

と奏がこたえると

「今の話でおまえの納得するこたえは出た?」

と由岐は聞いた。

「納得と言うか、いろんな事を聞いて頭が整理出来ないって言うか…で、結局あの二人はバカップルだと言うことはわかりました」

と奏が言うと

「バカップル!確かにな」

と相川は笑ったあと

「そうだ。奏は和と綾子が付き合い始めた時のこととかは知ってるか?」

と相川は言った。

「いえ、幼なじみでって事しかしりません」

と奏が言うと

「和は自分が綾子のことを好きだって思うのはおかしいんじゃないか?ってなやんでたんだだよ」

と由岐は言った。

「おかしい?」

と奏が聞くと

「だってさ、おまえが今、5歳も年下の小学生を女として好きになるか?」

と由岐は言った。

「小学生?それは無いですね。むしろ犯罪に近いような…」

と奏が言うと

「だろ?あいつも自分はヤバいのかとか、ロリコンなのかな?って悩んでて、じゃあ彼女作れば変わるかな?とか思って彼女作ったりもしたけど結局、綾子以上に好きな子なんて出来ないでさ。で、俺がお互い成人になるし綾子が20歳になったら付き合ってもいいよって冗談で言ったら、あいつ真面目だから綾子が20歳になったら告白しようと思ってたんだよ」

と由岐は言った。

「あー、そう言えばそんな事あった。でも、誰が見ても和は綾子にベタ惚れだったよな。当時から膝枕してたんだろ?何でそこまでして綾子も気付かないかな?」

と相川が言うと

「綾子は、自分は妹みたいに思われてるから甘えてもらえるだけで、女としては見られて無いって言ってましたよ」

と誠は言った。

「まぁ、当時の和は綾子には手が出せないからって他の女で性的な欲求を処理してたしな」

と相川が言うと

「父さん、女遊びしてたんですか?」

と奏が聞くと

「年頃の息子のおまえに言っていいのかどうか分からないけど、お互いに遊びと割りきった事をしてたんだよ」

と相川が言葉を選んで言うと

「でもある時、こんなことに意味が無いって気づいて、綾子と付き合い出す数ヶ月前には全部精算したんだよ」

と言った。

「俺、和が女と縁を切った時に綾子と付き合い始めたと思ってたよ」

と由岐が言うと

「俺も思ってた」

と相川も言った。

「あれ?でも、綾子ってボレロが初めて武道館ライブした時には和さんと付き合い始めてましたよね?」

と誠が聞くと

「あー、あれね。実はさ、俺たちみんな和と綾子が付き合ってると思って和の事をからかったんだよ。綾子とラブラブで羨ましいってさ」

と言って由岐は笑った。

「そしたらさ、俺が20歳になるまで手を出すなって言うから付き合って無いし、キスさえもしたことが無いってさ。…そんな事言ったの俺もすっかり忘れてたから付き合ってないの聞いて驚いたら、だったらもう20歳まで我慢しないって付き合い始めたんだよ」

と由岐は笑った。

「え?それが二人の始まり?」

と誠が驚くと

「そうだよ」

と由岐は言った。

「いや、別にいいんですけど…。綾子って高校の時にもスゴくモテて…。でも、ギターが恋人みたいな感じに言われるほど誰とも付き合わないでいたのに…。それに結婚するときにあれほど大騒ぎしたのに、付き合い始めた時はあっけなかったんですね」

と誠が言うと

「いやいや、あっけなかったとは言えないだろ?綾子も和も初恋を実らせるのに何年かかったんだよ。それまで、和はロリコンと悩み、綾子は妹としてしか見られて無いって悩み…」

と相川は笑ったあと

「あの二人は日本を代表するようなミュージシャンだけど、それと恋愛は違うからね。カリスマ性に溢れた二人なのにどっちかと言えば恋愛には不器用だな。まぁ、そこがあいつらの可愛いところなんだけどな」

と言った。

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