表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お隣のふにゃふにゃ王子様  作者: まあちゃん
6/356

天使の羽根と膝枕

「なっちゃん?」

「何?」

「早く準備しなよ」

綾子は膝枕でくつろいでる和の頭を揺すった。

「えー、まだいいよ」

と目を瞑る和に

「明日からツアーで帰って来ないんでしょ?だったら早く要るものと要らないものと分けて準備しなよ」

と言った。


和の所属するボレロは、明後日から全国ツアーにまわる。

まずは札幌を皮切りに北海道を数ヶ所まわりそのあと青森、岩手…と全都道府県をまわる大きなツアーだし、明後日からは2週間は帰ってこない。

いつも余計な物を持ってきて荷物が多くなる和は手伝いに綾子に荷造りの手伝いをお願いしたにも関わらず、綾子が家に来るとソファーの上で綾子に膝枕をしてもらって寝ている。

「なっちゃん、おじさんたちが帰ってきたらこの生活感ゼロになった荷物置き場みたいな家を見て驚くだろうね」

と綾子は辺りを見渡して言った。

「大丈夫だよ、今年は帰ってこないらしいから」

と和は寝ぼけた声でこたえた。

和はお隣の家の一人息子で、和が大学に入る時に両親は仕事の関係でアメリカに渡った。

あれから5年、帰ってきたのは和の成人式の時とメジャーデビューするときの2回だけで、あとは和だけがこの家に住んでる。

人一倍寂しがりやの和は、自分の家には寝に帰るだけで残りの時間はいつも綾子の家で過ごしている。

「最後におじさんとおばさんに会った時はメジャー契約するときだったよね。あの時、うちもだけどみんな大反対して大騒ぎになったよね」

と綾子は3年前を思い出していた。

和と由岐のメジャー契約の話が出たときは、大騒ぎだった。

二人ともインディーズ契約をするときに大学卒業するまでって言って両親を説得して契約したものだから、和は官僚、由岐は司法試験を受けると皆が思っていた。

3年に上がる時に就職活動をしないでメジャーデビューすると言い出した時は両親に大反対された。

結局、和と由岐の真剣さに負けた両親は、大学だけは絶対に卒業することを条件に許した。

「これからは社会人なんだから、誰から見ても恥ずかしくない責任ある行動とりなさいなんて言って帰っていったんだよなぁ」

と和が言うと

「恥ずかしい所ばっかりだよね」

と綾子はため息をついた。

「何がぁ?」

と和が顔を見上げて聞くと

「だってモデルに女優と次々ネットで噂になるし、そうかと思えばデビューしたら普段は今まで以上にダラダラして…挙げ句に5歳も年下の私に毎日膝枕してもらう。恥ずかしいどころじゃないよ」

と綾子は言った。

「だからさ、綾子が一言言えばセフレは全員切るし、もう誘われても誰の所にも行かないって言ってるじゃない」

と和は言った。

「何で私が決めるの?」

「俺は綾子を近くに感じないと寂しくて人肌を求めちゃうんだよね。だから、綾子が一言言えばさ~」

「何それ?人肌とかエロい」

「そりゃ俺も成人男性だからエロいよ。毎日綾子がドン引きするようなスゲェ妄想してるもん。教えてあげようか?」

と和は起き上がって綾子に顔を近付けた。

「…!」

綾子が驚いて固まっていると

「大丈夫。二十歳になるまで綾子には手を出さないって由岐とおじさんと約束してるから。そんなに怯えないでよ」

と和は笑いながら綾子の頭を撫でてから立ち上がり

「さ、そろそろ準備始めるかな?早く終わらせて2週間分のパワー貯めるために綾子にいっぱい甘えなきゃ」

と言った。


大きめのキャリーバックに荷物を詰めてた和は

「やっと終わったよ。でもさ、タオルとか本当に要らないかな?もしも加湿器壊れたらタオルで加湿しなきゃいけないしさ。やっぱり持とうかな?」

とバックを開けようとしたので、

「その時はコンビニで買うとか誰かの部屋の借りるとかさ。方法はあるでしょ?」

と綾子は言った。

「そう?じゃあ、そうするか…。あ、加湿器入れたかな?」

と和が言うと

「それは村上さんに持ってもらってるんでしょ?なっちゃんは携帯用のを手持ちのバックに入れたじゃない。そんな事ばっかしてたら朝まで終わらないよ」

と綾子は呆れた顔をした。

「そうだよね。…そうだ。明後日は綾子もライブだよね?せっかくだからギターの手入れしてあげようか?」

と和は言った。


和が綾子の家に行くと、由岐がお風呂から上がってきた所だった。

「和、準備おわったのか?」

と由岐は髪を拭きながら言うと

「終わったよ」

と和が言った。

「じゃあ、うちに遊びに来ないで寝坊しないように早く寝たらいいんじゃない?」

と由岐がいかにも帰って寝ろって感じで言うと

「あー、俺は綾子のローディーだからさ。楽器のメンテしなきゃいけないんだわ」

と和は笑った。

「何がローディーだよ。お前、あいつが風呂から上がってきても絶対に変なことするなよ。もしも何かしたら…出入り禁止だからな」

と由岐が言うと

「そうゆう事しようとすると綾子に嫌われそうで出来ないから」

と和は言った。

「抱かれたい男No.1なのにな」

と由岐が笑うと

「ねぇ由岐。彼氏にしたい男と代わってくれない?」

と和は羨ましそうに言った。


「なっちゃん、来てたの?」

と綾子は自分の部屋のドアを開けて言ったが、ヘッドフォンをしてる和は綾子に気付かずにギターを弾いていた。

綾子はベッドに座り和が真剣にギターを弾いてる姿を見て

「音楽やってる時はカッコいいのになぁ」

と呟いた。

「ん?何か言った?」

と和はヘッドフォンを外して綾子の方を見て言ったあと、綾子の姿を見て

「お風呂上がりはジャージにTシャツかぁ」

とがっかりした顔をした。

「期待に添えないでゴメンね」

と綾子は怒ったように言うと

「そうゆう意味じゃないからさぁ。怒らないでよ~」

と和は言った。

綾子は和の側に座りきれいに磨かれたギターを見て

「うわぁ、ピカピカだね」

と言った。

「当たり前です。一応、チューニングもしておいたけど、弦はいつ変えたの?」

と和は聞いた。

「2週間位前に変えたけど…」

と綾子が言うと

「じゃあ、問題ないかなぁ」

と和はギターを弾き始めた。

「なっちゃんってさ…どっちが本当のなっちゃんなんだろう?」

と綾子はギターを弾いてる和を見て言った。

「え?何が?」

と和が聞き返すと

「私が知ってるのはふにゃふにゃ~っとしたなっちゃんなのに、ギター弾いたりボレロのナゴミになるとまるで別人みたいだしさ」

と綾子は言った。

和はギターをスタンドに置いて

「どっちだと綾子は好きになってくれるの?」

と綾子の目をじっと見て言った。

「え?どっちって…」

と綾子が困ってると

「そんな困った顔しないでよ~。綾子はボレロのユキがいいんだもん。なっちゃんもナゴミもユキにはなれないから選ぶの無理だって分かってるから」

と和は綾子の膝に頭を乗せて、持ってきたバックから小さな箱を取り出して

「はい。これ」

と綾子に渡した。

「何?」

と箱を受け取った綾子に

「開けてみて」

と和は嬉しそうに言った。

綾子が箱を開けると、シルバーの羽根と十字架のチャームがついたネックレスが入っていた。

「スゴい…カッコいい」

と綾子が言うと

「気に入ってくれた?」

と和は言った。

「うん」

と綾子が頷くと、和はネックレスと箱から取り出して綾子の首にかけて

「うん、似合う。これ着けてライブ出てよ」

と言った。

「ライブ?」

と綾子が聞くと、和はチャームを触り

「この2つの羽根は天使の羽根で、クロスについてる石は誕生石のガーネット。俺がデザインして作ってもらったんだ」

と笑った。

「嬉しい。でもせっかく作ったのに貰って良いの?」

と綾子が聞くと

「実は、自分のもつくったんだなぁ。綾子とお揃い」

と和は首元からネックレスを取り出して見せた。

「綾子とボレロのライブが成功するようにお守りだよ」

と言ったあと、和は恥ずかしそうに

「なんてね…。本当は世界中で綾子と俺の二人しか持ってない特別な物が欲しかったんだ。そうゆう二人だけの物を持っていたら、離れていても綾子と繋がっているって感じられるんじゃないかな?って…」

と言ったあと、和は再び綾子の膝に頭を乗せて

「最近忙しくて綾子の膝枕もなかなかしてもらえなくなったし、このネックレス見て『よし!仕事終わって帰ったらいっぱい膝枕してもらうために頑張ろう』って頑張れるかなぁ?って思ったんだよね」

と言って綾子の腰に腕を回してギュッと抱き締めて

「本当に綾子の膝枕は気持ちいいなぁ」

と言った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ