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お隣のふにゃふにゃ王子様  作者: まあちゃん
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繋いだ手の温もり

村上との打ち合わせが終わった和は、綾子たちの席に行き

「綾子~。俺、先に帰るね」

と落ち込んだ様子で言った。

「え?なっちゃん?どうしたの?」

和の様子がおかしいのに気付いて声をかけたが、和は綾子の前を去りながら手をヒラヒラと振った。

「今日は怪しいオッサンが奢ってやるから、若者も補導されない前に帰りなさいよ」

と村上が綾子たちの席の伝票を持ってレジに行こうとしたので

「ごめん。私、先に帰るね」

と席を離れて村上の所に行った。

「村上さん。なっちゃんどうしたんですか?」

と綾子はお金を払ってる村上に聞いたが

「俺も分かんないだよ。ちょっと電話するために外に出て帰ってきたらあんな感じだよ」

とため息をついた。

店から出て駐車場を歩きながら

「どうせアイツ、俺の車に乗ってるからさ。ちょっとタバコ買って来るから、俺が戻るまで悪いけどアイツの相手しててくれない?」

と言って村上は1台のミニバン前まで綾子を連れてくると来た道を戻った。


綾子は後部座席のドアを開けた。

和はシートを倒して横たわりながら

「村上さん、明日は歌の仕事無いよね?今日泊めてよ。久しぶりに飲みたいんだよね」

と言った。

「…」

綾子が何も言わないと

「ダメ?じゃあ、家帰って着替えてくるからカンナの所に送ってよ」

と和はスマホを取り出した。

「なっちゃん…」

と綾子が声をかけると和はスマホを動かす手を止めて綾子の方を見た。

「綾子、どうしたの?友達帰ったの?」

と和は言った。

「…なっちゃんの様子が変だったから心配になって来てみたけど、これから出掛けるなら心配ないね。じゃあね」

と綾子は車のドアを閉めようとした。

「綾子、待って」

と和はドアを押さえると

「綾子ごめんね。せっかく友達と楽しそうにしてたのにごめんね。…でも心配してくれて嬉しい」

と和は綾子を抱き締めた。


「村上さん。綾子と歩いて帰るから」

と機嫌の治った和は車に戻ってきた村上に言うと綾子の手を握った。

「はいはい。じゃあ、明日12時に迎えに行くから。準備して待ってれよ」

と村上は車で去っていった。

「じゃあ、俺達も帰ろう」

と和は綾子の手を握って歩き出した。

「ちょっと…なっちゃん!」

と綾子が突然手を握られ慌てると

「ん?何?」

と和は言った。

「手…離してよ」

と綾子が言うと

「何で?前はよく繋いでたろ?」

と和は笑った。

「それは小さい時の話でしょ?」

と綾子が恥ずかしがると

「そうだっけ?そんなに恥ずかしがらないでよ~。こっちも恥ずかしくなっちゃうよ」

と和は笑った。


ちょうどファミレスから出てきた香住たちが

「ねぇねぇ、あれって綾子じゃない?」

と道路の向こう側を歩いてる綾子と和を見て言った。

「本当、お隣さんと一緒だ。って手繋いであるいてない?」

と健太が驚いた声をあげると

「本当だ。それにあの人、綾子のギター背負ってない?」

と隼人が言った。

「それは無いだろ?綾子、あのギターは宝物だから自分で運ぶって絶対に触らせないじゃん」

と健太が言うと

「でもさ、手繋いでのといい、ギター持ってるのといい、実はいい感じなんじゃないの?」

健太が言うと

「バカ。そりゃ無いでしょ?あんたたちは分かんないかも知れないけど、綾子ってモテるんだよ。うちの学校だけじゃなくて他校の人からも告られたりしても断ってるのによりによってあんなダサい男とかあり得ないよ」

と香住が言うと、ずっと綾子と和の姿を目で居っていた渉が

「じゃ、俺こっちだから帰るわ」

と言って香住たちとは逆方向に向かって歩いていった。

「あー、ヤベェ。渉、ショックなんじゃない?」

と健太が言うと

「確かにね。今まで彼氏とか作らなかったし、男の中でも自分が一番近いって思ってたら、よりによってあんな怪しい人と綾子がね。でも、もしあの人と付き合ってたら綾子って本当にマニアックだよね」

と香住はため息ついた。


「ねぇねぇ、綾子。せっかく二人で外を歩いてるんだし、電車乗らないで散歩しながら歩いて帰ろうよ」

と和は言った。

「えー、2駅もあるよ」

と綾子が言うと

「たった2駅じゃん。運動だよ。運動。ライブ近いなら体力つけなきゃダメだよ」

と笑いながら駅を通り越して

「でも、ライブ行きたかったなぁ。何で札幌なんだよ」

と和は悲しそうに言った。

「仕方ないじゃん。って言うか来ない方が私は嬉しい」

と綾子が言うと

「何で?」

と和は綾子の方を見て言った。

「だって、一度だけお兄ちゃんと見に来たことあったじゃない?」

「あー、2年位前だっけ?」

「そう。その時、家に帰ってきたら反省会みたいな感じで二人してずっとダメ出しするんだもん。私は仲間と楽しくやれればいいだけなのにさ」

「そう言えば…。あの時、綾子がキレて暫く口聞いてくれなかったよね」

と和は笑った。

「私はプロになりたいとかって気持ち無いしさ。趣味でやってる音楽だしなっちゃんみたいにスゴい人にお見せ出来るような事してないから…」

と綾子が言うと

「でもさ、プロだからやっぱり最高の物を魅せなきゃならないって言うのはあるけど、その最高の物を作るにはやってる本人が楽しまなきゃ出来ないんだよ。根元は一緒だよ」

と和はいつになく真面目に言った。

「なっちゃんマジメに語ってる~」

と綾子が笑うと、和は恥ずかしそうに顔を赤くして

「俺はいつもマジメです~。そうだ。雑誌のアンケートでナゴミが抱かれたい男1位になったんだよ」

と和は話題を変えた。

「抱かれたい男?スゴいね」

と綾子が言うと

「ちなみに彼氏にしたい男2位にユキが入ってた」

と和は言った。

「へぇー。まぁ、ユキが抱かれたい男に選ばれてるの知っても私としては微妙だし。彼氏にしたい男なら喜べるかな?」

と綾子が笑うと

「…ちなみになんだけど、綾子の中で俺は何の1位?」

と和は恥ずかしそうに俯いて聞いた。

「なっちゃんは…」

と綾子の考えてる様子を見て和は何て言われるだろうとモジモジしていた。

「なっちゃんは…。うーん…」

と綾子が考えてると

「そんなに悩む?何でもいいんだよ。抱かれたいでもいいし、添い寝してほしいとか、キスしたいとか、膝枕したいとかさ。何かあるでしょ?」

と和が恥ずかしそうに言うと

「あ、手を繋いで歩きたい男1位かな」

と綾子は言った。

和はパッと顔をあげると

「何それ?」

と自分の期待していた答えと違うことが不服そうな顔で綾子に聞くと

「だって、なっちゃんの手がスゴく暖かいんだもん。寒いときカイロ代わりになるんじゃないかなって思ったから」

と綾子が笑った。

「カイロって…」

と和がガックリすると

「久しぶりに手を繋いだら、なっちゃんの手がゴツゴツしてて男の人の手なんだなって思ったんだけど、スゴい温かいのは昔と一緒なんだよね。なっちゃんと手を繋いでいたら安心する」

と綾子は言った。

和は恥ずかしそうに前髪をクシャクシャとして顔を更に隠してから

「綾子。早く帰って綾子に膝枕してほしい。ちょっと急いで帰ろうよ」

と綾子の手を引っ張って早足で歩き出した。

「突然どうしたの?」

と綾子が言うと

「だって俺の中で綾子は膝枕してほしい女1位なんだもん。明日も頑張るために早く帰って綾子の太ももで活力つけなきゃ」

と和は言った。



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