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お隣のふにゃふにゃ王子様  作者: まあちゃん
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相川の言葉

誠が帰ったあと、和は相川と話をした。

「痛っ!」

と言いながら頬に絆創膏を貼る和に相川は

「おまえもやったんだしお互い様だろ?」

と笑った。

「お互い様って…。俺は誠が挑発するようなことを言うから」

と和が言うと

「まぁ、誠の気持ちも分からんでもないよ」

と相川は言った。

「あいつは初めて会ったときから、好きな女に認めてもらえる男になるために音楽やってるって言ってたんだよ。それから、絶望的な片思いしてるって」

と相川が言うと

「絶望的な片思い?」

と和は言った。

「そ、絶対に叶わない片思いだってわかってるから諦めようと何度も思ったけど諦められないってさ。恋愛感情を捨てて仲間として接しなくてはいけないって葛藤もあっただろうし、誠は誠でずっとツラかったんじゃないか?」

と相川は言ったあと

「それをおまえは知っていながら、自分は綾子に愛されてるって余裕な顔してたら…ムカつくと思うよ」

と相川は言った。

「…余裕なんて無いですよ。むしろ逆です」

と和が言うと

「逆?」

と相川は聞いた。

「俺は誠の事を恐れてました。アイツは渉とは違う。俺が牽制したところで簡単には諦めないって事は初めて会ったときから分かってました。だから、俺と綾子の間には誠の入り込む隙間は無いんだって、誠が綾子を好きでいても無駄なんだって自分から諦めさせるために余裕ある顔をしてました」

と和が言うと

「何て言っていいのか…」

と相川は言った。

「ズルいっですか?」

と和が聞くと

「いや、おまえはおまえで大変だったんだなと思ってさ」

と相川は言った。

「大変ですよ。昔から綾子はモテたし、まわりにはイケメンばかり。知ってます?綾子、高校生の時にモデルの佐藤俊太郎にも告られてるんですよ」

と和が言うと相川は驚いた顔をした。

「え?佐藤俊太郎って海外のファッションショーにも出てるアイツ?Speranzaのファンだって聞いてたけど、さすがにそれは無いだろ?」

と相川が言うと

「いやいや、誠の高校の先輩だから聞いてみたら分かりますよ」

と和は言ったあと

「綾子のまわりには昔から男から見てもイケメンだと思うようなやつが集まってくるから、本当に大変ですよ」

と和は笑った。

「でも…」

と言って和は悲しい顔をした。

「俺は、綾子に近付く男には気付いても、誠の言う通り綾子の口に出さない心の声には全然気付けてなかったんですよ」

と和は言った。

「そんな事無いだろ?綾子が今Speranzaで活躍してるのも清雅や他のミュージシャンからも認められて作曲を依頼されるようになってるのも、4年前におまえが綾子の口に出せなかった音楽をやりたいって気持ちに気付いて背中を押してやったからだろ?」

と相川が言うと

「そうゆうのは気付いても、自分が関係することにはいつも気づけないんですよね」

と和は言った。

「昔、女遊びしてた時、俺は綾子が一言やめてって言ったら今すぐ縁を切るっていつも綾子に言ってました。綾子の気持ちを試してたんです。綾子が俺を好きならやめてほしいって思うはずだって。付き合い始めた時に綾子が他の人のところには行かないでって言った時はスゴく嬉しかったですし、絶対に他の女を抱く事はしないって決めました。けど、考えてみたら付き合う前に綾子は他の女のところには行かないでなんて言える訳ないんですよね?綾子は俺がいろんな女と遊んでるのを我慢して平気な顔するしか無かったんですよね…」

と和は言った。

「俺は綾子が焼きもちやくかな?とかバカな事ばかり考えて綾子に隠さないで話してたけど、もし自分が逆の立場だったらと考えると女子高生相手にスゴい残酷な事を言ってたなって今は思います」

と和は言った。

「その頃の綾子の事を俺は知らないけど、確かに可哀想だと思うし、よくおまえに愛想尽かさなかったと思うよ」

と相川がため息をつくと

「本当ですよね。どんだけ我慢強いと言うか…俺の事を思ってくれてるんだか…」

と和は苦笑いした。

「綾子が別れを切り出した時に、綾子の言葉を鵜呑みにしないでもっと何か原因があると疑ってみるべきでしたし、格好つけないで綾子にすがってでも別れたくないって言えば…」

と和は言ったあと

「綾子が具合悪そうな顔していた時も、疲れだって言う言葉を信じて…。その前に会ったときに妊娠してもおかしくないようなセックスしたことを忘れて…」

と和が言うと

「妊娠してもおかしくないって言うかさ、おまえは綾子が妊娠することを望んでたわけ?」

と相川は聞いた。

「違いますよ。子どもってなると仕事のことも考えなきゃいけないし、事務所とも話をしてからって思ってましたよ」

と和が言うと

「じゃあ、なんでそんなセックスしたわけ?27にもなって避妊の方法知らないの?」

と相川は和を睨んで言った。

「知ってますよ。でもあの日はたまたま…」

と和が困った顔をしてると

「あーっ!」

と相川は頭をグシャグシャっとかいて叫んだあと

「今のおまえさ、誠じゃないけどムカつくよ。あの時ああすれば良かったこうすれば良かったって過去に浸ってるけどさ。結局のところ、おまえがしっかりしてたらこんなことにならなかったんじゃないの?」

と相川は言った。

「…」

と和が黙って俯いてると相川はため息をついてから

「あのさ…今回の事。事務所としても大変な事になってるんだぞ。Speranzaはアルバム製作も最終段階で綾子抜きで進めてるけど作業は全然進まないし、篠田さんと結城さんは制作の人たちと既に来てる綾子への楽曲依頼の仕事をどうするか悩んでるし、村上さんだっておまえが仕事出来ない状態だから、いろんな所に頭下げに行って仕事キャンセルしてもらってる」

と言ったあと

「ついでに言わせてもらうと、綾子が倒れた時に俺と村上さんと結城さんと篠田さんと村上さんと社長で綾子の両親と由岐の所に謝罪に行ったんだよ」

と相川は言った。

「謝罪?」

と和が言うと

「そうだよ。綾子を預かっていながらこんなことになった事を謝罪しに行ったんだよ。社長なんて家に入るなり両親と由岐に向かって床に頭を擦り付けて土下座してたんだぞ」

と相川は言った。

「…」

和が青ざめた顔をしてると

「綾子の両親も由岐も綾子があまりにも可哀想だと泣いてたよ。…なのにおまえの事を心配したり、おまえと綾子が結婚するのを綾子の両親も和の両親もずっと楽しみにしてたって…」

と相川は言ったあと

「渉も隼人だって泣いてた…。あいつら、綾子は家族同然だから、綾子の子どもは自分たちが立派に育てるって…」

と言うと涙を流した。

「タケやカンジだって…真実を知って何も思わないはずが無いだろ…。ツラいのも苦しいのもおまえだけじゃないし綾子だけでもないんだ。みんながそれぞれにおまえたちの事を悩んで…」

と言うと相川は涙で言葉につまってしまった。

「すみません…」

と和が頭を下げると相川は涙を拭って

「俺は謝ってもらいたい訳じゃ無いんだよ。ただ、現実を全部知ってもらいたいんだよ。事務所もメンバーも綾子もみんな和のためにって和がまた悩まないようにって和には何も言わないと思うけど、それじゃこの問題は本当には解決しない。全ての事をクリアにしないと前には進めないと思う。今以上に自分に自信を持って強くなって綾子と産まれてくる子どもを守っていくって胸を張って言えるような男にならないと結婚なんて無理だ。そうならないと事務所も綾子の両親もSperanzaのメンバーも結婚なんて認めないと思う。誠だっておまえが憎いだけじゃないんだ。おまえに変わって欲しくてあんな事を言った部分もあると俺は思うよ」

と相川は言った。

「…相川さん、俺は甘かったんでしょうか?」

と和が言うと

「はっきり言わせてもらうと甘いと思うよ。妊娠の事だけじゃない。結婚だって二人だけで出来る事じゃないと思うよ。言いづらいかも知れないけど、俺は今回の事はおまえの両親にもキチンと話した方がいいと思うよ。おまえの両親も遠くに住んでて状況が分からないから余計心配するとは思うけど、後で人づてに知るよりは、今おまえの口から聞いた方がずっと良いだろ?」

と相川は言った。

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