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お隣のふにゃふにゃ王子様  作者: まあちゃん
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誠の恋物語 2

誠がライヴハウスの隅っこに立ってると

「よう!来てたんだな」

と演奏を終えた隼人がやってきて言った。

「おまえ、何であの子と一緒にやってるって黙ってたの?」

と誠が言うと

「だって、女と組んでるって言ったらおまえ絶対に変な想像するだろ?そうゆう風に見てほしく無いから黙ってたんだよ」

と隼人が言ってると

「隼人?打ち上げ行くかって聞かれたんだけど、どうするの?」

と綾子がやってきて言った。

「…!」

さっきまで男顔負けの演奏をしていたのが信じられないぐらい、普通の可愛い女の子に戻った綾子に誠が驚いていると

「あ…。邪魔した?」

と綾子は言った。

「いや、別に大丈夫だよ。こいつ、俺が紹介したいって言ってた誠」

と隼人が言うと

「嘘、中学の時にバンド組んでたって言う誠君?」

と綾子は言った。

「初めまして」

と誠が言うと

「こちらこそ。…って言うか、隼人から何度も話聞いてるからはじめてって感じしないね」

と綾子は笑った。

「…」

誠は自分でも信じられないぐらい、綾子の笑顔にドキドキして、顔が真っ赤になってるのが自分でもわかり恥ずかしくなった。

誠の様子を見た隼人が笑いながら

「綾子、打ち上げ行くって言っておいて。あと、一人追加って…誠も連れてくから」

と言った。

「え?俺も?」

と誠が言うと

「せっかくだからさ。他のメンバーにも会ってもらいたいし…」

と隼人は言った。


ライブの打ち上げに参加してカラオケに来た誠は、綾子の隣に座った。

「…」

「…」

何をはなしていいのか分からず黙ってると

「あ…綾子ちゃんは歌わないの?」

と誠が歌詞本を綾子に渡した。

「ごめん。私、歌下手なんだ」

と綾子が言うと、綾子の逆隣に座ってる男が

「本当、わざとじゃないのってぐらい下手だよな」

と笑った。

「悪かったわね」

と綾子がふて腐れた顔をしてるのを見て誠はスゴい可愛いと思った。

その後、誠は綾子といろんな話をした。

曲作りのこと。

隼人のこと。

好きな音楽のこと。

話をして綾子を知れば知るほどもっと話がしたい、綾子の事を知りたいと誠は思った。

今まで、こんな風に思う女がいただろうか?

音楽って共通の話題があるから、楽しく話が出来るのは当たり前だけど、誠の話をしっかりと聞いて答える綾子の姿に誠は今まで自分のまわりにいた女の子とはまるで違うと誠は思った。

「綾子ちゃんって歌詞も書くんでしょ?あれってやっぱり彼氏とかの事を書いてるの?」

と誠が言うと

「いや…あれは…彼氏いないし」

と綾子は顔を赤くして言った。

「じゃあ、好きな人?」

と誠が聞くと

「…うん」

と綾子は頷いた。

誠は一瞬胸にチクッと痛みを感じたが

「へえ…。綾子ちゃんの好きな人ってどんなやつなんだろ?」

と誠は言った。

「…私をからかってばかりいる人」

と綾子は言った。

「からかう?」

と誠が聞くと

「うん。スゴい才能あってモテてる人…。でも、私の事はからかってばかりで妹みたいにしか思ってくれないの」

と綾子は寂しそうな顔で言ったあと

「…男の人って、好きでもない人とでも平気でヤっちゃうの?」

と綾子は誠に聞いた。

「…」

誠はまるで自分の事を言われてるような気がしてドキッとした。

「ごめん、変な事聞いちゃったね」

と綾子が無理して笑ってると

「よく、分からないけど男も女も人肌恋しい時って言うのもあるんじゃない?…お互いに割りきった付き合いならそうゆう関係もあるのかもしれないよ」

と誠は言った。

「そっかぁ…」

と綾子が言うと

「あ…綾子ちゃんはその人のセフレなの?」

と誠は聞いた。

「…」

綾子が俯いて黙ってると

「ごめん。いや、綾子ちゃんにそうゆうイメージ無いから」

と誠は慌てて言った。

「違うの、私はセフレにもなれないの。多分、ずっと妹」

と綾子は泣きそうな顔で笑った。

誠は綾子の姿を見て胸が苦しくなって、何でこんなに可愛くて才能に溢れた女の子が泣きそうなほどツラい恋をしてるんだろう、…自分ならそんなツラい顔させないで守ってあげるのにと思った。

「綾子ちゃん、あのさ…」

と誠が綾子の手を握ろうとすると、突然綾子のスマホが鳴った。

スマホの画面を見ると

「ごめん。ちょっと電話だから」

と綾子は慌てて部屋を出て行った。


綾子が部屋を出たあとトイレに行こうと部屋を出た誠は、人目につかないようなところで電話で話してる綾子を見つけた。

「お土産?いらないよ。大丈夫だって」

と電話で話してる綾子の顔は、さっきまでとまるで別人のような笑顔だった。

その様子から、電話の相手は好きな人なんだなって言うのはすぐに分かった。

スマホ片手に話す綾子の顔は恋する女の子そのもので、今日見た中でも一番輝いて見てた。

「…」

綾子を悩ませてるくせに、そのうえあんな可愛い顔までさせてしまう男…。

誠はその見たこともない男と綾子に意地悪をしたくなった。

「綾子ちゃん!そんなところで何してるの?みんな帰ってこないから心配してるよ」

と誠はわざと大きな声で言った。

綾子は慌てて誠の方を振り向くと

「あ…。ごめん。今戻る」

と言ったあと

「ごめんね、なっちゃん。…うん…そう。友達の友達。…違うって…本当だよ…」

と言いながらチラッと誠を見てから

「じゃ、本当もう戻らないといけないから。…うん。…分かった。…なっちゃんも頑張ってね。…おやすみ」

と言うと電話を切った。

「綾子ちゃんの好きな人と電話してたの?」

と誠が聞くと

「まぁ…」

と綾子は恥ずかしそうに言った。

恥ずかしそうにしてる姿が何となく面白くない誠は

「そ、じゃ早く部屋に戻ろう」

と少し冷たい口調で言った。


その夜から、誠は気付けばいつも綾子の事を考えるようになった。

綾子のギター、綾子の作った曲、綾子の笑顔、綾子の泣きそうな顔…。

あの子は可愛いし自分なんかが敵わない程の才能も持ってる。

けど、他の男の事が好きで、俺の事なんて全く眼中に無いんだぞ。

そんな女相手にしなくても、俺の事を好きだって言ってくれる女はたくさんいるし、別に気にする必要ないだろ?

誠は自分に言い聞かせるように言った。

そんな日々が二ヶ月ぐらい過ぎ、綾子の事を考える時間が少しずつ減ったある日、誠は女の子とファーストフード店でデートしていた。

「ねぇ、今日家に誰も居ないから来ない?」

と誠が女の子に聞くと

「…うん。でも、いいの?」

と女の子が聞くと

「君は特別。他の子は家には連れてかないけどね。でも、二人だけの内緒だよ」

と誠は笑った。

女の子が嬉しそうな顔をしてるのを見ながら誠は、こんなの他の子にも言ってるに決まってるじゃんと心の中で笑っていると

「あれ?誠?」

と後ろから声をかけられた。

誠が振り向くと隼人がギターを背負って立っていた。

「よう、久しぶり。お前なに?ギターなんか背負って。ドラムやめたの?」

と誠が聞くと

「あー、違う違う。綾子のだよ」

と隼人は笑った。

「綾子…ちゃん?」

と誠が言うと

「そ、あいつらまだレジに並んでるから持ってきたんだ」

と隼人は言ったあと、誠の隣に座る女の子を見て

「おまえはデート中?リア充うらやましいな」

と隼人は言った。

「だろ?うらやましいだろ?」

と誠が言うと

「うるせぇよ。…あ、場所取り頼まれたから行くわ」

と隼人は言って、誠から少し離れたところにあるちょうど空いたボックス席に座った。

「ねぇ、今の人西高の人だよね?」

と女の子が誠に聞いた。

「うん。そうだけど。知ってるの?」

と誠が聞くと

「クラスの子が、西高にスゴいバンドがいるって言ってて…」

と女の子は言ったあと

「スゴい。みんないるだぁ」

と隼人の席に座った綾子と渉と健太を見て言った。

「有名なんだね」

と誠が言うと

「そりゃ、音楽もカッコいいし、みんなイケメンなのに彼女作らないし、早坂さんもモテるわりに高飛車なとこ無くて裏表無くて性格いいから、あの人たちのバンドのファンたくさんいるんだよ。…まぁ、私は誠の方が好きだけどね」

と女の子は笑った。

「ふーん…」

と誠が綾子たちの席の方を見ると、綾子はスゴく楽しそうな顔で笑っていた。

「…」

綾子が他の男といて、無邪気な笑顔で話をしている事が無性に腹ただしくなってきて、この場にいるのが嫌になってきた。

「そろそろ行こうか?」

と誠は女の子の手を握り引っ張るように店を出た。

このモヤモヤたした腹ただしい気持ちを忘れるために、早くこの女を抱きたいと誠は思った。

どうせ、自分になんて振り向かない綾子なんて…と思った誠は立ち止まった。

誠の頭に『男の人って、好きでもない人とでも平気でヤっちゃうの?』と言った時の綾子の泣き出しそうな笑顔が浮かんだ。

「誠、どうしたの?」

と女の子が心配そうに誠の顔を除き混むと

「無理…」

と誠は呟いた。

「え?何?」

と女の子が聞き返すと

「今日キャンセル。って言うか、これから先もずっと無理」

と誠は言った。

「は?何言ってるの?何突然?私何かした?」

と女の子が驚いて聞き返すと

「君って事じゃなくて、みんな無理。俺、女の子と遊ぶのやめるわ」

と誠は言った。


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