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お隣のふにゃふにゃ王子様  作者: まあちゃん
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誠の逆襲

スタジオで作業を終えた誠は

「相川さん。ちょっとお願いがあるんですけど」

と言った。


部屋に帰ってきた和はギターを片手にパソコンで曲作りをしていた。

ボレロのアルバムに入れる曲を作らなきゃならないのもあったが、何かに没頭して昨日の誠と綾子の話を忘れたいと言う気持ちもあった。

きっと綾子もそんな想いで清雅の曲を作り上げたのかもしれないと和は思った。

和はギターを置いて清雅の曲をかた。

もう何回聴いたかわからない。

けど、聴けば聴くほどこの曲に惹かれる。

強さとか弱さ、美しさと儚さ。

綾子はこんなにも上手く表現出来るなんて、やっぱり天才なのだと和は思った。

昨日の夜、せめて綾子の寝顔だけでも見たいと思い、由岐に頼んで一緒に病院に行った。

何を買っていいのかわからないので、綾子の好きな向日葵を買った。

病室の前まで来たら、綾子と誠の話し声が聞こえてきた。

和がボロボロになってるって聞いた時に、自分の事を忘れてない、まだ和に愛されてると知って実は嬉しかったと綾子は言っていた。

でも、和が夢に出てきて笑ってて、そっちの方がずっと嬉しくて、今は他の人とでもいいから幸せになっていつも笑っていて欲しいと綾子は言っていた。

由岐や家族やSperanzaのメンバーへの感謝も話してた。

和と由岐はドアを開ける事が出来ず、二人の会話を聞いてると、話は思ってもない方向に向かった。

誠が綾子に結婚しようと言った、誠と綾子がキスして一緒にホテルに行ったと言う話になった。

和は頭が真っ白になり、由岐に花を渡し帰ってきた。

綾子が自分からキスすることなんてあるわけない。

誠が無理やりしたんだと言うことは分かる。

誠がずっと綾子の事を好きなのは見てて分かっていた。

けど、誠は綾子の嫌がる事はしない、Speranzaの関係を悪くするような事もしないと思っていたから、見てみぬふりをしていた。

だから、誠が動き出した事にとても驚いた。

…いや、綾子に驚いた。

自分以外の男と本当にホテルに行ったのだろうか?

キスは無理やりとしても、ホテルは違う。

嫌なら断れる。

無理やり連れ込まれたのか?

誠がそこまでするとは思えない。

ならなぜ…。

誠に気持ちが動いたのだろうか?


インターホンの鳴る音が聞こえた。

モニターには相川と誠が映っていた。


和は相川と誠を部屋に入れた。

初めて和の部屋に入る誠は、辺りを見渡し

「やっぱり、スゴい部屋に住んでるんですね」

と言った。

「和、調子良さそうだな。もう大丈夫か?」

と相川が言うと

「はい。ご心配おかけして申し訳ありませんでした」

と和は頭を下げた。

「いや、元気になったならいいんだ。…で、今日は誠が和と話がしたいって言うから連れてきたんだけど」

と相川が言った時、誠が綾子の事を話にきたのが分かったので和は不安になったが、それを顔に出さず笑った。

「そっか。わざわざありがとう。で?話は二人でした方がいい?それとも相川さんにもいてもらう?」

と和が言うと、誠は鋭い目で和を見て

「俺はどちらでも構いませんよ」

と言った。

相川は誠の様子から何か嫌な予感がしたので

「じゃ…俺は食材買ってきたしキッチンで何か飯でも作ってるよ。誠はまだ飯食ってないし、和も栄養つけなきゃならないからな。俺に気にしないで話してて」

と言ってカウンターキッチンに行った。

和は誠をソファーに座るように促すと

「で?話って何?」

と聞いた。

「俺、和さんがボロボロになってるって聞いてたけど、痩せたみたいだけど結構普通なんですね」

と誠は言うと

「もしかして、綾子の話を聞いて立ち直ったんですか?」

と言った。

「…恥ずかしながら、俺は綾子の事を何も分かってなかったよ。なぜ別れるって言い出したかも妊娠のことも…。綾子には一人で全部背負い込ませて本当に悪い事をしたと思う」

と和が言うと

「そうですか…。それで自分がしっかりしてこれから綾子を支えていこうと思った訳ですか?」

と誠は聞いた。

「綾子が退院したらキチンと結婚の申し込みをしてすぐにでも籍を入れるつもりだよ」

と和が言うと誠は

「あなたは自分勝手な人ですね」

と言った。

「自分勝手?そうかもな」

と和が言うと

「自覚してるんですね」

と誠は失笑した。

「…俺、ずっと綾子の事が好きでした。…和さん、知ってました?」

と誠が言うと

「…知ってたよ」

と和は言った。

「やっぱり…。で?俺の前で綾子とイチャついて…綾子は自分の事が好きだからって今みたいに余裕な顔して俺を見てたんですね」

と誠は言った。

「…そうだよ。別に人を好きになるのは勝手だから何も言えないだろ?それにおまえは綾子に手を出さないって分かってるから牽制する必要もないしね」

と和は言った。

「おいおい、おまえらいい加減にしろよ。誠も余計な事を言うなよ」

と相川が言うと

「余計な事?何ですかそれ?」

と誠は言った。

「そりゃ、おまえが綾子を好きだったのは知ってるけど、和と綾子の事を考えたらさ…」

と相川が言うと

「でも、今二人は付き合ってる訳じゃないですよね?綾子は誰のものでも無いんだし、俺にもチャンスが回ってきたんですよね」

と誠は言った。

「それは…」

と相川が言葉に困ると

「俺は高校の頃からずっと綾子の事が好きでした。何度も諦めようと思っても諦められないでいました。綾子を好きになってからは他の女と寝たいとも思いません。ずっと綾子だけです。報われないの分かってても綾子だけです」

と誠は言った。

「…」

「…」

和と相川が黙って誠を見てると

「やっとチャンスが巡ってきたんですよ。このチャンスを逃したら次は無いって思うのはおかしいですか?」

と誠は言ってから突然

「…和さんってキス上手いんですね」

と誠は笑った。

「え?」

と和が言うと

「綾子に教えたの和さんでしよ?あんなキスするなんて驚きましたよ。キスだけで腰砕けそうになりましたよ」

と誠は言った。

和は拳をグッと握り苛立ちを押さえていたが、それに気付いている誠はさらに和を挑発するように

「それから…想像してた以上にずっと華奢で思いっきり抱き締めたら壊れそうで」

と誠が言うと和は立ち上がり

「いい加減にしろよ!」

と誠を殴った。

「おい、和、やめろ!」

と慌てて側に来た相川を振り払い和は誠の胸ぐらを掴んだ

「何で殴られなきゃならないのか分かんないんですけど」

と誠が和を睨むと

「おまえ、綾子に何をしたんだ!」

と和も誠を睨んで言った。

「何って?別に関係ないでしょ?それとも、綾子はそんな事しないって思ってるんですか?」

と誠が言うと

「そうだよ。綾子は他の男と寝たりしない」

と和は言った。

「どうしてそんな事言えるんですか?和さんだって綾子と付き合う前は女と遊んでたでしょ?綾子だって今はフリーだし弱ってたら人肌恋しくなるときもあるんじゃないんですか?自分がやってきて見てきた事を棚に上げて綾子はしないなんて事は言えないでしょ?」

と誠は言った。

「おまえに綾子の何が分かるんだよ」

と和がもう一度誠を殴ると

「じゃ、あんたに分かるのか?」

と誠は言って和を殴った。

「あんたが他の女と寝てた時、綾子が何も言わないから何も感じて無かったって思うのか?今だって、どんな気持ちであんたが幸せになればいいって言ってるか分かるのか?」

と誠は言った。

「あんたはズルい。この部屋に籠ってふて腐れて綾子が戻って来るのを待ってるだけ。自分からは動かない。どうせ綾子が戻ってくるって余裕こいてふて腐れたふりをして待ってるだけ」

と誠は言うと

「俺は、綾子に無理やりキスしたしホテルにも送った。けど、何もしなかったよ。何でだか分かるか?」

と言った。

「…」

和が黙ってると

「…綾子の後ろにあんたが見えて出来なかったよ。綾子の中にあんたがいるのが吐き気するほどムカついて一緒にホテルに入ろうなんて気持ちにもならなかった。でも、次は違う。今度、綾子が泣いたら俺は躊躇しない。無理やりにでも抱いて自分のものにする」

と誠は言うと部屋を出て行こうしたが、和は誠を押さえると頬を思いっきり殴り

「ふざけた事言ってんじゃねぇぞ!」

と言った。

誠はすぐに立ち上がり

「おまえにそんな事言われたくねぇよ!」

と和を殴ると

「だったら泣かせんなよ!綾子が言わないから分からないんじゃなくて、言わない事の方が重要だって気付いて汲み取ってやれよ!それが出来ないなら、さっさと綾子を諦めて自由にしてやれよ!」

と誠は言った。

和が倒れたままうつ向いてると相川が来て

「誠。和は普段穏やかだけど、キレたら何するか分かんない。おまえの気持ちも分かるけど今日は帰れ」

と言った。

「分かってますよ。こっちだってこんな人と一緒にいたくありません」

と言うと誠は部屋を出て行った。

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