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お隣のふにゃふにゃ王子様  作者: まあちゃん
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誠と由岐と失恋

病室の前では由岐と和が綾子と誠の会話を聞いていた。

「誠…ごめん」

と綾子が言うと

「何で謝るの?綾子はボロボロで判断力が無かった。俺はそれを利用してキスしたしホテルに行った」 と誠は言った。

「…和」

由岐は立ち尽くしている和に声をかけた。

「…由岐、ごめん。これ綾子に渡して」

と言うと和は向日葵の花を由岐に渡すと、その場を去って行った。


誠は綾子を見て

「卑怯な手を使ってもあの時は綾子が欲しかった」

と言ったあと

「…ホテルに送るって普通に考えて下心あるでしょ?それも高校の時から好きで、何度も諦めようと思っても諦められなかった女だよ。でもさ…キスで精一杯…送るので精一杯…。本気で惚れた女には簡単に手を出せないんだって初めて知ったよ」

と言った。

「誠、ごめんね。私、何も気付いて無かった」

と綾子が言うと

「そりゃそうだよ。気付かれないように必死に気持ち隠してた。綾子は仲間だし…ずっと和さんがいたし」

と誠は言ったあと

「でも、俺が綾子の事を好きだって知って、これからは俺の事を男として意識してくれる?」

と笑った。

「…」

綾子が困った顔をしてると

「冗談だよ。もともと自分の物になんてならないの知ってたし…」

と笑ってから

「でも、綾子に気持ち伝えられて良かった。何かスッキリしたし、これでやっと綾子の事を諦められそうだよ。やっぱり、自分の気持ち隠して生きるのって大変だよ」

と誠は言った。

「ごめんね」

と綾子が言うと

「ごめんなんて言わなくていいよ」

と誠は言った。

「ごめんなさい」

ともう一度綾子が謝ると

「…綾子もさ、きっと素直になって気持ちを伝えたらスッキリすると思うよ。気持ちを誰かに伝えるってきっと綾子が考えてるより簡単な事だよ。ほら、妊娠の事だってみんな驚いたけど喜んでくれただろ?」

と誠は言った。

「…」

綾子が黙ってると

「まぁ、今はお腹の子が一番だけどね。きっと美人な子が産まれてくるんだろうな…」

と誠は笑った。

「女の子だって分かるの?」

と綾子が笑うと

「そりゃエスパーだから予知出来るんだよ。うーん…」

と誠は綾子のお腹に手を当てて目を瞑り

「やっぱり女の子だ。将来、俺の嫁になる姿が見える…」

と言うと

「嘘?渉がショック受けるよ」

と綾子は笑った。

「何で?」

と誠が聞くと

「渉、私の子と結婚して息子になるんだって言ってたから」

と綾子は言った。

「あー、渉、残念だね。そりゃ絶対無いわ」

と誠と綾子は笑った。


誠が病室を出ると病室の側に由岐が立っていた。

「由岐さん…」

と誠がばつが悪そうな顔をすると

「ちょっといいか?」

と由岐は言った。

二人は薄暗い病棟の談話室の椅子に座った。

「あの…その花は」

と誠が聞くと

「これ?綾子の好きな花なんだ。飾ってやろうと思って」

と由岐は言った。

「そうですか…」

と言ったあと

「あの…いつからあそこに居たんですか?」

と誠は言った。

「あー…」

と由岐が返答に困ってると

「そっか…。全部聞かれたんですね」

と誠は言った。

「…俺は誠の事を好きだよ。どことなく自分に似てる気がするし…」

と由岐が言うと

「ありがとうございます。でも、俺は由岐さんみたいに大人じゃないです」

と誠は言った。

「自分の物にならなくても良いって、綾子が幸せならそれで良いって、メンバーだし俺が余計な事を言ってバンドの雰囲気悪くなったら困るしって思ってたのに、結局綾子を困らせる事をしまいました。…すみません」

と誠が頭を下げると

「…別に謝る必要無いだろ?」

と由岐は言った。

「困らせたくて困らせた訳じゃないし、おまえはおまえで今までずっとツラかったんじゃない?綾子が和と付き合ってる時も別れてからもずっと…。だから、綾子を救いたかったんだろ?自分が幸せにしてやろうと思ったんだろ?」

と由岐が言うと

「…」

誠は俯いたまま何も言わなかった。

「和といい、誠といい。俺の妹ながら綾子はいい男に愛されて幸せだな」

と由岐が言うと

「本当に幸せなんですかね」

と誠は言った。

「もしもこんな仕事してなかったら普通に女子大学やって就職して結婚して出産して、もっと幸せになれたんですよ」

と誠が言うと

「本当におまえは俺に似てるな」

と由岐は笑った。

「俺も綾子が相川さんに誘われたって知ったとき同じこと思ったよ。こんな実力主義の厳しい世界でやってくより普通に暮らしてる方がよっぽど幸せだと思って反対したよ。でも、和は違った。この世界の厳しさを知ってても後悔しないようにやりたいことをやれって綾子の背中を押したんだよ。綾子の才能を認めて必ず成功するって思ってたし、綾子が苦しい時やツラい時は話を聞いて、綾子が嬉しい時は一緒に喜んで…この4年間和はいつも綾子を支えてきたんだよ。そのおかげで綾子は次々と夢を叶えてきた。綾子は幸せなんじゃないかな?」

と由岐は言った。

「和さんが綾子を支えてきたなんて意外ですね」

と誠が言うと

「まぁ、あいつの甘ったれた態度見てたら誰だってそう思うよ。でも、本当はスゴい強い奴だよ」

と由岐は言った。

「強い?」

と誠が聞くと

「あぁ、あいつはあんな風に見えてケンカはメンバーの中では一番強いし、いつも周りを見ていろんな事を考えてる。あいつの一言でなかなか進まない会議がまとまったり企画が180°変わったり。あいつがいなかったらボレロはここまで大きくなれなかったと思うよ。けど、強さって言うのはそこじゃないんだ」

と由岐は言うと

「あいつは自分の弱さを知ってて弱さを認めてる。普通は自分の弱さなんて隠したいだろ?けど、あいつは隠さない。だから、人にも優しくできる。それって本当は強いから出来る事だと俺は思う」

と言った。

「弱さを認める…」

と誠が呟くと

「あと、和は昔から能鷹だから」

と由岐は言った。

「のうよう?」

と誠が聞き返すと

「そ、能鷹。分かりやすく言えば能ある鷹は爪を隠すって事」

と由岐は言ったあと

「あいつは頼りなく見せていつも鋭い爪を隠してるけど、いざって時には真価を見せつける強くて優秀な鷹だよ」

と言った。

「由岐さんは和さんが好きなんですね」

と誠が言うと

「まぁ、ガキの頃から一緒だし…。あいつには絶対に言わないけど俺はあいつを尊敬してるし憧れてる部分もあるから」

と由岐は言った。

「由岐さんが和さんに憧れるんですか?」

と誠が驚くと

「憧れるよ。才能にもスゴいけど、ずっとガキの頃から一人の女を好きでいるとか、バカ正直に俺の言ったこと守って綾子と付き合わないでいたとか俺なら絶対出来ないだろうって思うから憧れるよ」

と由岐は言った。

「でも、和さんには付き合ってきた人もいるんですよね?」

と誠が聞くと

「高校の頃はいたかな?あいつ自分がロリコンだって悩んで女作れば普通になれるなんて思ってさ。結局、長続きなんてしなかったし、セフレはたくさんいたけど、お互いに割り切った関係だから恋愛に発展したことは無かったな。いっつも綾子綾子ってうるさくてさ。だったらセフレと早く縁切って俺に構わず付き合えって言うの」

と由岐は笑った。


次の日、レコーディングスタジオに入った誠は渉と隼人に

「あのさ、おまえたちって高校の時に和さんに会った事があるんだよな」

と聞いた。

「あぁ、俺は一回だけど、渉は綾子に失恋した時も含めて三回あるよな?」

と隼人が聞くと

「そうだよ。何で?」

と渉は言った。

「その頃の和さんってどんな感じだった?」

と誠が聞くと

「えー、まあ格好は不審者みたいで怪しかったよな」

と隼人が言うと

「それから、あの頃から綾子への独占欲はスゴかったな。初めて会った時も突然綾子に抱きついてきたし、隼人が一緒の時も綾子綾子って煩くて…帰りは何か様子が変だと思ったら仲良く手を繋いで帰ったり…。今と変わらず綾子に甘えてふにゃふにゃしてる人だったな…。でも、三回目に会ったときは怖かったのを覚えてる」

と渉は言った。

「怖い?」

と誠が言うと

「綾子にベタベタしてるのは正直嫌だったけど勉強とか教えてくれてスゴく優しかった。でも、帰り際に俺のところに来て耳元で綾子は渡せないから諦めろって言われて、その時の和さんはスゴいゾクッとする口調で一瞬だけどめっちゃ怖い目で俺を見てた。あの時の和さんは本当に怖かった。いつも穏やかな和さんとも、仕事してるときの和さんとも違って…あんな和さん見たのはあれが最初で最後だよ」

と渉は言った。




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