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お隣のふにゃふにゃ王子様  作者: まあちゃん
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リハーサルの見学

次の日、ナナたちはfateのライブを見学するためにジップに行った。

スタッフやメンバーの邪魔にならないよう客席に座り準備の段階からステージを見ていたナナたちは、和やかな雰囲気で行われているリハーサルを眺めていた。

「たぐっちゃんは、ナゴミのファンだもんな。リハを観れるなんて夢のようだろ」

と相川が笑うと

「はい。夢のようです!」

とナナは言ったあと

「いえ、そんな邪な気持ちで見学させてもらってる訳じゃないので…」

と慌てて否定した。

「そんなに否定すると、邪な気持ちありまくりって言ってるみたいですよね?」

と石川が笑うと

「仕方ないんだよ。たぐっちゃんはナゴミにハグされたら死ぬかもしれないってほど好きなんだから」

と相川は笑った。

「そんなに好きなの?」

と石川が驚いた顔をすると

「いや違った、ハグされたら鼻血出すんだっけ」

と相川は笑った。

「そんなこと誰から聞いたんですか」

とナナが嫌な顔をすると

「誰だろうね。その場にいた人しかわからない話だしね。可能性あるやつは限られるよね」

と相川は言った後、ステージを見て

「今日は遊びできてる訳じゃないんだよ。fateの舞台裏は業界人でも見学したいと申し込んでもなかなかできない貴重な現場なんだから、しっかりと目に焼き付けておくんだよ」

と言った。

「はい」

とナナたちがこたていると、他のスタッフたちとお揃いのTシャツを着た渡辺がやってきて

「おはようございます」

と相川に頭を下げた。

「おはよう、随分遅い出勤だな。重役みたいだな」

と相川が言うと

「なに言ってるんですか。相川さんたちがくる前から来て打ち合わせしてましたよ」

と渡辺はため息をついた。

「ため息なんてついて、どうしたんだよ」

と相川が聞くと、

「和さんの機嫌が悪くて…。結城さんや綾子さんがなだめても全然ダメで」

と渡辺は苦笑いをした。

リハーサルが進んでるステージを眺め相川が

「ああ、確かに機嫌悪そうだな」

と言った。

二人の話を聞いてたナナがステージの方を見ると、ナゴミはスタッフと話しながら何度も首をかしげていたかと思うと

「石井さん、このリハやる意味あるの?」

とマイクに向かって言った。

慌てて石井がステージに向かうとfateのメンばーやスタッフたちもセンターに集まってきた。

「石井さん、さっき修正頼んだところ、スタッフにちゃんと話したの?それってさ、昨日も頼んでたことなのに一向に修正されてない気がするんだけど」

と和が言うと石井がスタッフのことをジロッと見たので

「ちゃんと言われたとおり修正しましたよ。それに、他の部分も…」

とスタッフは言ったので綾子は

「他の部分は頼んでないよね?」

と聞いた。

「それはそうですけど、こっちを修正するならそれに合わせて他の部分もしないとバランスとれないですよね」

とスタッフが言うと和は怒った顔で

「バランス?そんなものを重視しろって石井さんが指示したんですか?」

と言った。

「いや…」

と石井が返事に困った顔をしていると

「石井さんが指示したようには俺には思えないんですよね」

と和はスタッフを見て言った。

「た…確かに石井さんからの指示はなかったですけど…」

とスタッフが小さな声で言うと

「じゃ、なんで余計なことまでするんだ!もし、おかしいと思うなら石井さんにまず聞くのが筋だろ!」

とナゴミはスタッフに怒鳴った。


和の怒る声が2階まで聞こえてきて、ナナと石川が動揺した顔をしいたが、相川は笑いながら

「ああ、和の奴マジで怒ってるな。あんなに怒らせてどうするんだよ」

と言った。

「笑い事じゃないですよ。今日は誠さんが来るって言ってたのにあんな機嫌悪かったらケンカになりますよ」

と渡辺が言うと

「誠来るの?そりゃ、もともと機嫌悪いわけだ。ってか、あのスタッフも間が悪いと言うか…怒りの半分誠が来るからのは八つ当たりじゃないのか?」

と相川は笑ったあと

「誠が気を利かせて奏でも連れてくれば、和の機嫌も少しは良くなるかもしれないのにな」

と言った。

「確かにそうですね。けど、奏は明日模試が控えてるらしいので来るのは無理でしょうね」

と渡辺が言うと

「おまえ、随分と奏の行動を把握してるな。俺より情報持ってるんじゃないの?」

と相川は驚いた顔をした。

相川と渡辺の会話を聞いてた石川が小声で

「なあ、たぐっちゃん。ナゴミとSperanzaの誠の仲が悪いって噂聞いたことある?」

と聞いた。

「そんな噂聞いたことないな。逆にボレロとSperanzaはすごく仲が良いって聞いたことあるけど」

とナナが言うと隣に座ってる相川は

「石川はゴシップ好きなのか?」

と聞いた。

「ゴシップですか?」

と石川が聞くと

「ナゴミと誠が仲いいとか悪いとか気になるの?ってこと」

と相川は聞き返した。

「そうゆうわけじゃないですけど…」

と石川が返事に困ってると

「この業界では嘘か本当かわからないような噂がたくさん流れてるけど、そうゆう意味のないものに流されないようにすることも、業界人には必要だぞ」

と相川は言った。

「はい…」

と石川が言うと

「相川さん、突然真面目な話するから石川驚いてるじゃないですか」

と渡辺は笑ったあと

「でも、相川さんの言ってることは正しいと思うよ。僕たちの仕事ってのは信頼関係で成り立ってると言っても過言じゃないんだ。特にナゴミや綾子クラスのミュージシャンになるとサポメンもスタッフも自分で選ぶことができるんだ」

と言った。

「自分で?他の人は違うんだよ?」

と石川が聞くと

「大物になれば選ぶことができるだろうけど、fateの場合はちょっと違うんだ」

と渡辺は言った。

「何が違うって?」

と石川が更に聞き返すと

「あの二人と一度でいいから仕事をしたいと思ってる人がたくさんいるなかで、自分に声がかかるってことはそれだけ認められてるって自信になるんだ」

と渡辺は言った。

すると相川は

「そうだな、あの二人と仕事をするのは他のミュージシャンと仕事するよりも何倍もきついけど、得るものはそれ以上にあるんだ。それにね、あの二人と仕事するほど面白いこと他にはないと思うよ。ある意味、中毒性があるかもしれないな」

と笑った。

「中毒ですか?」

とナナがステージを眺めながら聞くと

「fateのステージは中毒性あるだろ?」

と相川は笑った。

「そうですね」

とナナも笑うと

「今日は、たぐっちゃんや石川が今まで経験したことない、すごいものを見れるって保証するよ。もしかしたら腰を抜かすかもしれないな」

と相川は笑った。

「そんなにすごいものが見れるの?」

と石川が渡辺に聞くと

「すごいよ。こんなことってあるのかって鳥肌立たせながら腰抜かすと思うよ」

と渡辺も笑ったあとステージを見て

「あ、呼ばれてるみたいだから僕そろそろ戻りますね」

と相川に言った。


その後再開したリハーサルは、張り詰めた空気の中で淡々と進んで行き、その空気は2階席で見学してるナナたちにも伝わってきた。

「息するのもためらうような空気だろ?」

と相川が笑うと

「そうですね。リハーサルってこんなに張り詰めた空気の中でやってるんですね」

と石川は驚いた顔をして言った。

「まだツアー始まったばかりだしな。でも今日はまだましなほうだよ」

と相川がステージを見ながら言うと

「ましなほうってどういうことですか?」

とナナは聞いた。

「今日、機嫌が悪いのは和だけだからましってこと。ほら、綾子は笑ってスタッフと話してたりするだろ。これが逆だったら、スタッフもメンバーも困り果てるからね」

と相川が苦笑いすると

「綾子さんが機嫌悪くすることもあるんですか?」

とナナは驚いた顔をした。

「そりゃ人間だからあるよ。それに綾子はああ見えてかなり頑固だし手がつけれなくなるから大変なんだよ」

と相川は言ったあと小声で

「和がなだめても言うこと聞かなくなるし、そのうち和も機嫌悪くなるし本当最悪らしいよ。そうゆう時に潤滑油になるのが奏」

と言った。

「奏君ですか?」

とナナが聞くと

「去年のツアーで綾子をなだめるために奏が結城さんに呼ばれて大阪まで行った話聞いてない?」

と相川は聞き返した。

「聞いたことないです」

とナナが言うと

「そっか、東京にいる間に和か奏に聞いてみなよ。綾子のすごさがわかるから」

と相川は笑った。

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