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お隣のふにゃふにゃ王子様  作者: まあちゃん
339/356

帰り道 3

「いやぁ、お待たせ」

と村上とナナが奏たちの側に来て言うと

「本当、どこまで買い物に行ってたんですか?」

と大川は笑った。

「悪い悪い。たぐっちゃんが選ぶの遅くてさ」

と村上が笑うと

「女子は買い物遅いですもんね。あれこれ迷って最後には買わないとか」

と大川は笑ったあと

「さっ、行きますか?」

と言った。


駅までの道のり、前を歩く村上大川富樫の後ろで奏とナナは何も話さず並んで歩いていた。

「…」

「…!」

奏と手が触れたナナが思わず手を引っ込めようとすると奏はナナの小指に自分の小指を絡ませてた。

「…やめよう」

とナナが小声で言うと

「なんで?いいじゃん」

と奏は言った。

「いくないよ。…みんないるし」

とナナが言うと

「ちょっとだし、誰も気付かないよ」

と奏はニコッと笑った。

「…」

…結局自分は何があっても奏には勝てないんだと思いながらナナが恥ずかしそうに俯いていると、後ろを見た大川が

「仲直りしたみたいですよ」

と村上に言った。

「そうだな」

と村上が微笑むと

「さっき、コンビニでたぐっちゃんと何話してたんですか?」

と富樫は聞いた。

「まあ、いろいろな。俺とたぐっちゃんの秘密の話」

と村上が笑うと

「あれ…。村上さん、あそこにいるのってインターンシップ生の子たちじゃないですか?」

と大川は言った。

「どこ?」

と村上が大川の視線の先を見ると渡辺と石川が駅前の花壇に座って話をしていた。

「君たち、なにしてるだ?帰ったんじゃなかったのか?」

と村上が声をかけると

「あっ、村上さん」

と驚いた顔をしたあと

「…彼女に友だちと会うからってドタキャンされちゃって」

と石川は苦笑いをし

「俺も、店移動したって連絡きちゃって行くの面倒になって。…たぐっちゃんのことも気になるから二人で待ってようか?って話になったんですけど…たぐっちゃんは一緒じゃないんですか?」

と渡辺は聞いた。

すると村上は

「今来るよ。ほら」

と奏とナナの方を見た。

「たぐっちゃん、ずいぶん遅かったじゃん。心配したんだよ」

と渡辺がナナを見つけて言うと

「どうしたの二人とも。帰ったんじゃなかったの?」

とナナは驚いた顔をした。

「予定が変わっちゃって暇になったから。たぐっちゃん大丈夫かなって気になってたし来るの待って…たん…だ」

と石川は言いながらとナナが奏と小指を絡めてるのを見たでナナは慌てて指を離そうとしたが奏はギュッとナナの手を繋いで

「心配かけてすみません。それから…」

とナナの顔をチラッと見てから

「遅くなりましたが、僕の彼女がお世話になってます。ナナは東京に知り合いが少ないので、これからも仲良くしてやって下さい」

と頭を下げた。

「こちらこそ、よろしくお願いします。…って。えっ?えっ?たぐっちゃんの彼氏ってカナデさんだったの?」

と渡辺が驚いた顔でナナを見ると

「うん。黙っててごめんね」

とナナは言ったが渡辺は信じられないと言った動揺した顔で石川を見た。

すると石川は

「そっか。…確かにカナデさんなら、たぐっちゃんが言ってた通りの彼氏だ」

と言った。

「言った通りってたぐっちゃんは奏のこと何て言ってたの?」

と大川が興味津々で聞くと

「優しくて頭が良くて格好よくて恥ずかしがりやで意地悪で」

と石川が話してると

「優しくてぇ、頭が良くてぇ、格好よくてぇ」

と大川がニヤニヤしながら言うと

「恥ずかしがりやで意地悪。たぐっちゃん、よく奏のことわかってるじゃん」

と富樫も笑った。

「半分、悪口だよね?」

と奏がナナに聞くと

「そんなこと言ってないよ。石川君、余計なこと言わないで」

とナナは慌てた。

「余計なことって、たぐっちゃん言ってたじゃん。なあ?」

と石川が渡辺を見ると

「あっ、うん。…言ってた。そんな完璧彼氏いるのかって話していたけど、確かにカナデさんなら完璧彼氏だな」

と渡辺は呟いた。

「いろいろ問題あるし、完璧ではないけどな」

と言うと村上はナナを見て

「このまま流されたままにしないで、帰ったらキチンと奏に話してみなよ」

と言った。

「はい」

とナナがこたえると

「大丈夫。もし、奏に嫌なこと言われたら明日も事務所にいるから言いにきな。俺が奏のこと怒ってやるから」

と村上は笑った。

「はい」

とナナも笑うと奏が少し面白くなさそうな顔をしたので

「ほら、その顔。すぐに、そうゆう顔するの良くないぞ。それから誰に似たのか知らないけど、嫉妬深い男も嫌われるからな。もっと自分に自信を持ってドーンと構えてろ」

と村上は奏の背中を叩いた。


奏とナナが改札の中に消えていくのを見送った富樫は

「自分が奏ぐらいの頃ってあんな感じだったんでしょうかね」

と村上に聞いた。

「どうだろうね…。でも、奏は年のわりに落ち着き過ぎてるところがあるから、今日みたいに彼女のことで慌てたり拗ねたり落ち込んだりって子どもっぽいところを見てちょっと安心したよ」

と村上が言うと

「そうですね。それに奏は年下だし奥手そうだから彼女にリードされてばかりいるんじゃないかって思ってましたけど逆でしたね。絶対に自分からなんて手を繋がない男だと思ってました」

と富樫は笑った。

「確かに。たぐっちゃん、明るいしサバサバしてるから奏のことを引っ張ってるんだと思ってたら手を握られて恥ずかしそうにするとか…。意外とたぐっちゃんの方が奥手かも」

と大川が言うと

「だからってまた余計なこと言うと奏に嫌な顔されるぞ。奏は奏なりに頑張ってるんだろうし、そっとしといてやれよ」

と村上は言った。

村上たちの後ろを歩いてる石川は渡辺に

「なぁ。今、カナデさんが俺たちより年下って言ってなかった?」

と聞くと

「言ってたな。まぁ、ちょっとしたことですぐにムッとしたりしてたからずいぶんと子どもだなとは思ってたし、やっぱりって感じだけど」

と渡辺は言った。

「渡辺だってさっきから面白くない顔してるじゃん。…まさか、たぐっちゃんのこと気になってたとかはないよな?」

と石川が聞くと

「そんなわけないじゃん。だいたい、たぐっちゃんに彼氏いるってのは初めからわかってたし俺は人のものを欲しがったりは絶対しない主義なの」

と渡辺は笑ったあと

「ただ、たぐっちゃんって本当にあの彼氏と付き合って大丈夫なのかなって思って」

と渡辺は言った。

「大丈夫ってなにが?」

と石川が聞くと

「だって、相手はあんなイケメンミュージシャンだよ。こんなこと言っちゃたぐっちゃんに悪いけど、他にも女寄ってくるじゃん。それなのに、遠距離のたぐっちゃんだけってことあると思う?」

と渡辺は言った。

「そうなんじゃないの?」

と石川が言うと

「そうなのかな?あのマネージャーとだって仲良さそうだったし、本当はたぐっちゃん遊ばれてるんじゃないの?」

と渡辺は言った。

「それは無いんじゃない?俺たちによろしくって挨拶したぐらいだし」

と石川が言うと

「じゃあ、たぐっちゃんが本命だけど他にも女いるとかありそうじゃん」

と渡辺は言った。

「それはどうかわかんないけど…。でも、親公認なんだしないんじゃない」

と石川は言ったが納得してない顔をしている渡辺は

「あの彼氏、たぐっちゃんが何も言わないのをいいことにマネージャーと仲良くしたり比較したり。たぐっちゃん笑ってたけど、本当可哀想だよ」

と言った。

「それは俺も思ったけど。でも、たぐっちゃんはたぐっちゃんで自信があるから笑ってたっていうこともあるかもしれないじゃん」

と石川は言ったあと

「渡辺がたぐっちゃんのこと気になるのはわかるけど、これはたぐっちゃんと彼氏の問題だろ?外野がどうこう言ったって仕方ないじゃん。…もしも、渡辺がたぐっちゃんのこと好きとか言うなら話は別だけど」

と言った。

「だから、別に好きでそうゆうのじゃないって。ただ、せっかく同じ業界目指す仲間になったんだし彼氏のせいで傷付いて業界入りたくないとか東京嫌いとか思ったりしたら寂しいなって…。それだけだよ」

と渡辺が言うと

「でも、たぐっちゃんは彼氏がいるから東京で就職したいわけじゃないって言ってるしさ」

と石川は言った。

「そうだよな…。そうだな。男のために東京で就職するとかそんなこと言うような子じゃないよな」

と渡辺が言うと

「そうだよ。って言ってもたぐっちゃんが絶対に東京で就職出来るって保証はないけどな。俺自身もそうだけど」

と石川は笑った。

「石川は地方も受けるつもり?」

と渡辺が聞くと

「俺は就活失敗したらバイトから業界入って社員目指すかな。…親には大学出てバイトかって言われそうだけど」

と石川は笑った。

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