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お隣のふにゃふにゃ王子様  作者: まあちゃん
332/356

初めての記念日

その日の退社時間、相川にノートを返してもらいナナが渡辺たちと帰ろうとすると

「田口さん、ちょっと」

と相川は声をかけた。

「はい」

と田口がこたえると

「ちょっと田口さんに話があるんだけど」

と相川は言った。

「相川さん、たぐっちゃんとだけ話って何ですか?もしかしてデートのお誘いとかですか?」

と渡辺が笑うと

「そうだよ。悪いか?」

と相川も笑った。

「相川さん、たぐっちゃんは彼氏いるからダメですよ」

と石川が笑うと

「そうなの?」

と相川はわざと聞いた。

「…いえ、はい」

とナナが恥ずかしそうに言うと

「俺がフリーなの知ってて、超格好よくて超優しくて超頭を良くてって完璧な彼氏なんだって自慢しまくりなんですよ」

と渡辺は言った。

「自慢なんてしてないよ。相川さん、嘘ですから」

とナナが慌てて言うと

「そうかそうか。そんな完璧な男がいるなら俺も会ってみたいな」

と相川は笑った。

「ですよね?なのに、たぐっちゃん写真持ってないとか言って彼氏のこと見せてくれないんですよ」

と渡辺が言うと

「そうなのか?じゃ、俺にだけ見せてみろよ。良い男かどうか判断してやるよ」

と相川は笑った。


渡辺たちが退社するとミーティングルームに入り相川は

「今日は予定あるの?」

とナナに聞いた。

「いえ、特に予定は」

とナナが言うと

「奏たちとご飯食べたりとかしないの?」

と相川は更に聞いた。

「奏君は友だちとご飯食べてくるって言ってたし、ご両親は仕事で海外に行ってるので。でも、今日は記念日なのでケーキ買って帰ってくるの待ってようかなって」

とナナが嬉しそうに言うと

「そっか。初アルバムの発売記念日だもんな。喜ぶんじゃない?」

と相川は言ったあと

「実は、奏たちと飯食いに行く約束してるの俺なんだけど一緒に行く?」

と相川は聞いた。

「一緒にですか?」

とナナが聞くと

「飯って言っても焼き肉なんだけど、今日のお祝いも兼ねてさ。もちろん、仕事は一切関係なしのプライベートな飯だし琳たちも来るし…どう?」

と相川は言った。

するとナナは少し考えてから

「すみません。とてもありがたいお誘いなんですけど、どこで誰に会うかもわかりませんし。私だけが特別扱いされてるって勘違いされるのも嫌なので。今日は帰らせてもらいます」

と頭を下げた。

「…そっか。確かに俺と一緒にいるところ見られたらそう思われるかもしれないもんな」

と相川が言うと

「本当にすみません…」

とナナは頭を下げた。

「いいって、いいって。ケーキ買って帰るんだろ?あんまり遅くならないうちに帰すようにするから。でも、やっぱり女の子だな。ケーキでお祝いとか」

と相川が言うと

「奏君も甘いもの好きなので。それに、今日は発売日と言うことだけじゃなくてもう1つ記念日なので」

とナナは言った。

「もう1つ?」

と相川が聞くと

「相川さんも奏君も覚えてないかも知れないんですけど、今日は函館で初めて会った日なんです。だから、ケーキでお祝いしようと思って」

とナナは嬉しそうに言った。


帰り途中で、渡辺と石川に教えてもらった店で小さなホールケーキを買ったナナは奏の家に帰ると夕食を食べた。

「…」

一人で食事を作り食べるのは少し寂しい。

東京に来て10日ちょっと。

今までは、奏がいて和や綾子がいてと一人で家にいることがなかったから気づかなかったけど広くて大きな家に一人でいるのは寂しい。

しんと静まりかえったダイニングで一人でご飯を食べるのも寂しい…。

「やっぱり、相川さんと一緒に焼き肉行けば良かったかな」

とナナは呟いた。


食事を終えたナナがシャワーを浴び終えるとリビングで交換日記を書いたり奏のアルバムを聴いたりしながら奏の帰りを待っていると玄関のドアが開く音がした。

「あっ、帰ってきた!」

と言うとナナは急いで玄関に向かった。

「奏君、おかえり!」

とナナがニコニコと嬉しそうに言うと、靴を脱いでる奏は一瞬飛び上がって

「び…びっくりした」

とナナの方を見た。

「おかえり。…うっ、焼き肉くさい」

とナナが言うと

「マジ?くさいかな」

と奏はシャツの匂いを嗅いだ。

「くさいよ。…ほら、早くお風呂行ってきて」

とナナが言うと

「はいはい。…母さんみたいでうるさいな」

と奏は小さな声で呟いた。

「ん?何か言った?」

とナナが聞くと

「何もいってないよ。風呂行けばいいんでしょ」

と言って奏は自分の匂いを嗅ぎながら脱衣室に歩いていった。


奏が脱衣室から出てくるとナナは奏のアルバムを聴いていた。

「あれ、アルバムあげるって言ったのに結局買っちゃったの?」

と奏が隣に座り聞くと

「違うよ。相川さんが買ってくれたの」

とナナは言った。

「相川さん?」

と奏が聞くと

「うん。札幌で予約してあるって言ったんだけど、私たち3人に買ってくれたんだよ」

とナナは言った。

「そうなんだ。相川さん、太っ腹だな」

と奏が笑うと

「だよね。それも2枚ずつだよ」

とナナはジャケットを見せた。

「本当だ…。あの人、金が有り余ってるんだな」

と奏が言うと

「さっきおばあちゃんに会ったら、おばあちゃんも5枚ずつ買ったって言ってたよ」

とナナは笑った。

「マジ?5枚も買ってどうすんだよ。ばあちゃん、俺だけじゃなくて父さんや母さんや由岐ちゃんのCDも出る度に何枚も買うんだよ」

と奏が呆れ顔で言うと

「それだけ、CD発売になるの嬉しいんだろうね。でも、相川さんが6枚、おばあちゃんが10枚って既に16枚は売れたね」

とナナは笑った。

「…そうだね。いろんな人が買ってくれたみたいだし今日だけで30枚ぐらいは売れたかな?」

と奏が笑うと

「売れたよ。それに明日からはもっと売れるよ」

とナナは言ったあと奏の顔に髪から雫がたれてるのに気付いて

「もう。ちゃんと拭いてこないとダメだよ」

と言って奏が首に巻いてるタオルでゴシゴシの髪を拭いた。

「もう少し優しく拭いてよ。そんな強くやったら眼鏡取れるじゃん」

と言った奏は、自分とナナのやり取りが和と綾子のやり取りとそっくりだと気付き

「やべぇ。バカップルと同じじゃん」

と小さな声で呟いた。

「なに?どうしたの?」

とナナが聞くと

「いや、別に」

と笑った奏は

「そういえば今日、相川さんに会ったんだけど、その時にナナがケーキ買って待ってるかもしれないぞって言ってたんだけど」

と聞いた。

「あっ、そうだそうだ。忘れるところだった」

と言ってナナは冷蔵庫からケーキを持ってきて

「これこれ、一緒に食べようと思って買ってきたんだ」

と箱を開けて嬉しそうに言った。

「ホールケーキ買ってきたの?」

と奏が驚いて言うと

「うん。今日はアルバムの発売日だし、奏君は覚えてないかもしれないけど…私と奏君が初めて会ってからちょうど一年の日たから」

とナナは言った。

「一年?函館で会ってから?もう一年も経つ?」

と奏が驚いた顔をすると

「そうだよ。ちょうど一年だよ」

とナナは言ったあと奏にフォークを渡し

「まぁ、一年ってのはついでなんだけど、アルバム発売記念ってことで食べよう」

と笑った。

「そっか…一年か…」

と奏がしみじみと呟くと

「あの日、突然写真撮って欲しいって言われたのもビックリしたし奏君が高校生って聞いたのもビックリしたんだよね。…一番ビックリしたのは相川さんが公務員だって言ったのだったけど」

とナナは笑った。

「そういえば言ってたね。…あの日、知らない人に声かけるの本当に嫌だったな」

と奏も笑うと

「でも、奏君が声かけてくれなかったら今が無かったわけだし、相川さんが私たちに声かけろって言ってくれて良かったなぁって思うよ」

とナナは笑った。

「そうだね。もし、声をかける相手が違ってたら隣にいるのはナナじゃなくてもっと胸の大きな…」

と奏が言ってるとナナは奏の頭を叩いて

「どうせ小さいですよ。人が気にしてることを…」

と怒った。

「気にしたってしょうがないじゃん。うちの母さんも胸なんてなくても気にしてないし」

と奏が笑うと

「綾子さんは他の部分でカバーしてるからいいの」

とナナは言った。

「よくわかんないけど…胸の大きさで決まる訳じゃないし」

と言って奏はナナの首にキスをした。

「また、そうやって話をずらそうとする」

とナナが言うと

「違うよ。今日はずらしてる訳じゃないよ」

と言って奏は耳にもキスをした。

「ちょっと…休み以外はそうゆうことしないって約束したでしょ?」

とナナが言うと

「でも、今日は初めて会った記念日なんでしょ?それに父さんたちもいないし。ねぇ、俺の部屋行こう」

と奏は鎖骨にキスをしながらナナの顔を見上げて言った。

「ケ…ケーキはどうするの?」

とナナが聞くと

「明日の朝、食べてくから行こう。…それとも、ここでする?」

と奏は聞き返したのでナナは

「…部屋に…行く」

と言った。

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