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お隣のふにゃふにゃ王子様  作者: まあちゃん
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インターンシップ 2

渡辺に案内されたカフェでランチを食べるとナナたちは早足でジェネシスに戻った。

集合場所ギリギリに会議室に戻り席に座ると渡辺は

「間に合った…」

と言い

「マジ焦った…。ってかさ、もうちょい空いてて早く飯出てくる店無かったのかよ。マジで遅れるかと思った…」

と石川も言った。

「本当だね。まさか、こんなことになると思わなかった」

とナナが言うと

「悪かったって。でも、美味かっただろ?」

と渡辺は言ったが

「かっこむように食ったし味も何もわかんなかったよな」

と石川がナナに同意を求めるように聞いたので

「そうだね。今度はもっとゆっくりと味わって食べたいね」

とナナは笑った。


午後のオリエンテーションは副社長…結城の講義から始まった。

「初めて。株式会社ジェネシスの結城です。…皆さん、午前のオリエンテーションはどうでしたか?…固い話が続いたうえに緊張もあり既に疲れてしまったと言う方もいるかと思いますが、私は固い話はなるべくしないように心がけたいと思いますので、どうか肩の力を抜きリラックスして聞いて下さい」

と言うと結城は椅子に座り

「私は副社長と呼ばれることがほとんどなく結城と名前で呼ばれることが多いのですが…。私はfateのマネージャーを兼任していまして現在fateはアルバムも発売になりもうすぐ始まるツアーに向けて準備を進めていますが、fateは結成当初から海外を視野に入れて活動してまして国内でのツアーの合間には去年クリスのワールドツアーへの同行を糧に今年は単独での北米ツアーとヨーロッパツアーの予定が入ってます。ミュージシャンなら誰もが一度は憧れるようなツアーですが、正直な話をするとワールドツアーは赤字覚悟で行うツアーですし、ナゴミも綾子も日本で行うツアーよりも報酬が遥かに低いです。では、なぜ赤字覚悟で海外進出をするのか…?」

と言って結城はfateの昨年のワールドツアーの話を交えながらも現在抱えてる日本の音楽業界の課題について話をして

「ところで、皆さんはカナデと言う新人ミュージシャンをご存知でしょうか?」

と言った。

「カナデの名前を知らなくてもエンドレスの主題歌を歌い清雅に楽曲提供をしたと新人と言えばなんとなく聞いたことがある名前だなと想像つく方もいるのではないでしょうか?彼はボレロやSperanzaを発掘したジェネシスの敏腕プロデューサーに10年かけてでも自分の持っているもの全てを教えたいと言わせた人間で、現在は顔出しNGで活動していますが顔出し解禁になる来年以降は国内に止まらず積極的な海外戦略も計画しています。エンドレスの主題歌になったSmall piecesを英語で歌い直しゾロレコードの協力を得て海外配信をはじめたところ、エンドレスの海外人気とともに順調に売り上げも伸びていますし、カナデのInstagramのフォロワー数は海外でも伸び公式サイトの訪問者数も日々伸びており海外での注目度も上がってきています。来週発売になるカナデのアルバムは全て英語詞で歌い国内でのCD発売と同時に世界配信をすることは制作会議の段階から決定しています。fateと同じようにカナデもある意味赤字覚悟の賭けではありますが、fateやカナデだけでなく多くの日本人ミュージシャンが海外ミュージシャンと肩を並べて活躍できる…そんな日を夢見て私たちはこらからも活動していこうと思っています。少し時間をオーバーしてしまいましたが、これで私の話は終わります。皆さん、お疲れ様でした」

と言って結城は壇上を降りた。


結城の講話が終了し、休憩時間になると渡辺は

「fateでさえ難しいのにカナデって新人が海外で本当に成功するのかな?」

と呟いた。

「どうだろうね。海外に出ていくミュージシャンはたくさんいるけど…やっぱり国内需要があっての上での海外だろ?」

と石川が言うと

「でも、初めから海外に行って逆輸入って形の人もいるよね?」

とナナは言った。

「そうだけどさ…。海外メインで英語詞歌ってるミュージシャンもいるけど、英語詞がどれだけ日本人に受け入れてもらえるもあるし英語圏の人からするた日本人の英語って、俺たちからすると外国人が話す日本語と同じって聞くじゃん。そりゃ、ネイティブな英語出来るなら違うかもしれないけど」

と渡辺が言うと

「そうゆう意味ではfateは海外向きかもな。ナゴミは帰国子女だし綾子も昔から英語に親しんでるから二人とも英語圏の人たちと同等で英語話せるらしいから」

と石川は言った。


ナナたちが話をしてるその様子をじっと見ていた結城は隣に座る相川に

「あの子だろ?お前がどうしても欲しいと言ってた子」

と聞いた。

「えっ、はい。やっぱり女の子もいた方が楽しいかなって」

と相川が笑うと結城は資料を見て

「H大文学部…」

と結城は呟いた。

「うちは女の子少ないですし、華がある方が奴らもやる気が出るんじゃないかと。それに、結構可愛い顔してると思いません?」

と相川が言うと

「…お前は何を考えてるんだか」

と結城はため息をついた。

「いや、職場に潤いをと思いまして」

と相川が笑うと隣に座る村上が

「潤いって…。だいたいジェネラインは相川さんの直属になるんでますよね?相川さんだけが潤うんじゃないんですか?公私混同はダメですよ」

と村上は笑った。

「大丈夫。俺も良い大人だしさすがに手を出すつもりはないですよ。けど、このインターンシップは選考も兼ねてますから実際と変わらない仕事を与えて音楽業界がどうゆう業界なのかを理解してもらいたいと考えてますし、人間性もキチンと見させてもらおうと思ってますよ。…あの子に限ったことじゃないですけど」

と相川が言うと

「相川の直属になるのか?」

と結城は聞いた。

「はい。職場体験と言うよりは職場見学の方が多くなるとは思いますけど、幅広くレーベル事業部の仕事を見てもらおうと思いまして」

と相川が言うと

「そうか。それは良いことだけど…村上の言う通り公私混同は絶対にするなよ。2人とも公平な目で見て本当にジェネラインに必要な人間かどうか判断してくれよ。必要のない人間に内々定を出すような余裕は無いからな」

と結城は言った。

「わかってますよ」

と相川が言うと結城は時計を見たあと資料を片付けて

「さっ、仕事に戻るとするか。俺がいないと誰かが仕事サボろうとするからな」

と席を立った。

「これから戻るんですか?」

と村上が聞くと

「ああ。スケジュール詰まって和の機嫌が悪くなってきてるから様子見に行かなきゃなんないんだよ」

と結城は笑った。

「そりゃ、大変ですね。まぁ、fateだけでも大変なのにボレロの方もそろそろ動き始めなきゃなんないですしね」

と村上が言うと

「村上、頼むから去年の綾子の二の舞になるようなことだけは避けてくれよ。、本当、苦労したから」

と結城は言った。

「わかってますよ。…ねぇ、相川さん?」

と村上が言うと

「…わかってますよ。あれは俺もひどいことしたなって反省してますから」

と相川はばつの悪そうな顔をした。


休憩時間が終わると、所属部署の発表が行われた。

ナナが緊張した顔で自分の名前が呼ばれるのを待ってるとマイクを持った相川が

「レーベル事業部、石川静司さん、田口ナナさん、渡辺大雅さんです。よろしくお願いします」

と言った。

レーベル事業部…自分の力じゃなくて、やっぱり相川のおかげで参加出来たんだとナナは少しだけ悲しそうな顔をした。

「…田口さん。…田口さん?」

と石川に声をかけられて我に返ったナナが

「えっ!ごめん、なに?」

と慌てると

「移動するらいよ。ほら、部長さんも待ってるし」

と石川は言った。

「あっ…。すみません。今行きます」

とナナが慌てて準備をしてると

「大丈夫、大丈夫。そんなに慌てなくていいか。俺、男には厳しいけど女の子には優しいから」

と相川は笑った。

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