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お隣のふにゃふにゃ王子様  作者: まあちゃん
324/356

東京2日目の夜 2

「おしまいにしよう」

と奏がナナの頭を撫でると

「…でも」

とナナは言った。

「言い争いするなんて時間がもったいなじゃん。明日には北海道に帰るんだし」

と奏が言うと

「でも…」

とナナはもう一度言った。

「でも、なに?」

と奏が聞くと

「そりゃさ…ケンカとかってしたくないけど、でもお互いに言いたいことあるなら言うのも大事だと思うよ」

とナナは言った。

「…」

奏が黙ってしまうと

「そりゃ、貴重な時間だし楽しく過ごす方が絶対にいいのはわかるけど、このまま話を終わらせたらきっとまたお互いに頭にくることがあるんじゃない?それがつもり積もって取り返しのつかないことになったら嫌だし」

とナナは言った。

「そうかもしれないけどさ…」

と奏が言うと

「私、先輩とのことを基準にしてたつもりなんて全然無かったの。ただ、本当に初めて経験することで…それが自分が憧れてたようなことだったりもしたらてつい言葉に出しちゃったんだ」

とナナは言った。

「憧れ?」

と奏が聞くと

「うん。鼻チューも、こうやって一緒にダラダラと寝転がりながら話をするのも、抱き合いながら眠って朝に目が覚めたら彼氏が隣にいるって言うのも、彼氏の家に行ったり彼氏の家族と一緒にご飯ご馳走になったり…。友だちからそうゆう話を聞いて、良いなぁ羨ましいなぁってずっと思って憧れてたことだからさ」

とナナは言った。

「ふぅん」

と奏が納得出来ない顔をすると

「私は、奏君がファーストキスじゃないし処女でもないけど男の人と付き合うのって奏君が初めてなの。奏君と付き合うまでは先輩には本命の彼女がいて私は二番目の彼女だったんだって思ってたけど、それは違ったんだなって今はわかる。…もし出来ることなら」

と言ったナナは瞳に涙を浮かべ言葉につまった。

ナナの顔を見て奏が、やっぱりあの男にセフレにされたことが悲しいとかあの男を忘れられないのかと考えているとナナは

「…出来ることなら……奏君が…初めての人だったら良かった」

と言った。

「えっ?」

と奏が思ってもいなかった言葉に驚いた顔をすると

「…ファーストキスも処女失うのも奏君だったら良かった。一緒に初めて共有したかった。ごめんなさい…初めてをもらってばかりで肝心なものを返すこと出来なくてごめんなさい」

とナナがボロボロと涙を流すと

「別に謝ることないじゃん。だいたいナナにとって俺が初めてじゃないってのは知ってた事だし初めてにこだわってる訳でもないし」

と奏は言ってナナを抱き締めると

「俺はさ、ナナの初めてもらうよりもナナが憧れてたことが叶ったって喜んでくれることの方がずっと嬉しいんだよ」

と言った。

「本当に?」

とナナが奏の胸に顔を埋めながら聞くと

「本当だよ。…それからナナは過去を気にするのが嫌だって言ったけど、俺は過去を気にしてるつもりはないし無意識に言ってるかもしれない。…でも、あの男に負けるのは正直面白くない」

と奏は言った。

「負ける?どこが?」

とナナが聞くと

「どこって言うか全部。…そりゃ、俺は高校生だし社会人の男に比べると人生経験も少ないし女友だちもいないしナナと付き合うまで誰とも付き合ったこと無いから女心ってのもわかんないから、どうしたら女が喜ぶとか気分悪くするとかも…キスの仕方もセックスだって初心者だからどうしたらナナが喜ぶかも人から聞いたり調べた情報が頼りでそれが本当に正しいのかどうかも正直全然わかんないよ。けど、あの男よりも自分と付き合って良かったって思って欲しいし、あの男が好きだった気持ちよりも俺の方が好きだって気持ちの方が大きいって思って欲しい。あいつに何1つとして負けたくない」

と奏は言った。

「そんなの負けてる訳ないじゃん。奏君の方がずっと大好きだよ」

とナナが言うと

「でも…」

と奏は言った。

「でも?」

とナナが聞くと

「でも、ナナがあの男のことがスゲェ好きだったってのは知ってるから嫉妬心ってのもあると思うし、だから無意識に過去を気にしてるのかもしれない。でも、これからは過去のことを言わないように気を付けるよ。ナナには触れられたくない過去だし、過去は過去だもんね。俺とナナには過去は無いけど今と未来があるし」

と奏は言った。

「…そうだね。でも、これからは一緒の過去も増えていくよ」

とナナが言うと

「そうだね。クリスマスだって修学旅行だって言われてみたら過去の良い思い出だね」

と奏は笑いながらナナの髪を撫でて

「今日のこともいつか二人で思い出話したりするのかな?その時って、なんて話するんだろう」

と言った。

「奏君の家が豪邸でビックリしたって言うかも」

とナナが顔を上げて奏を見て笑うと

「豪邸?」

と奏は聞いた。

「そうだよ。だってお母さん言ってたけど地下にも部屋あってエレベーターもあるとかさ。エレベーターがある家なんて見たことないよ」

とナナが言うと

「あっても運搬用のエレベーターだから人は乗れないよ」

と奏は笑った。

「運搬用って何を運ぶの?」

とナナが聞くと

「荷物時とかかな。ほら、昨日もナナの荷物運んだし」

と奏は言った。

「そうなんだ。てっきり重いのに頑張って奏君が運んでくれてたと思ってた」

とナナは言うと

「そう言えば、地下にはシアタールームがあるんでしょ。お母さんがシアタールームで奏君の文化祭ライブの映像見せてもらいなって言ってたよ。動画サイトからも削除されてるのに持ってるの?」

と聞いた。

「動画サイトは事務所の人が削除したからもう観れないけど、事務所の人が撮ってくれたやつを琳たちも持ってるよ。…けど、めちゃくちゃ下手くそでさ」

と奏が笑うと

「私は動画に載ってたSPLASHしか観たこと無いけど、スゴい楽しそうだったよね。ねぇ、その動画見せてよ」

とナナは言った。

「嫌だよ。スゲェ下手くそだし」

と奏が言うと

「お母さんが奏君と同じ高校生だったら惚れてしまうぐらいカッコいいって言ってたから観てみたいな」

とナナは言った。

「惚れてしまうって、なに言ってるんだよ。…ちょっと気持ち悪いんだけど」

と奏が言うと

「でも、それだけスゴいってことでしょ?ねぇ、これから見せてよ」

とナナは言った。

「今から?」

と奏が嫌そうな顔で言うとナナは起き上がると

「いいしょ。ねぇ、見ようよ。ねぇねぇ」

と奏の腕を引っ張り起き上がらせた。

「…えぇ、面倒くさいし今度でいいじゃん」

と奏が言うと

「面倒くさくないよ。奏君、自分が作った曲も聴かせるの面倒くさいからCDになったら聴けばいいって言うしさ。なんでもかんでも面倒くさいばっかりっしょ。せっかく付き合ってるんだし彼女の特権で文化祭のビデオ見せて」

とナナは言った。

「彼女の特権って…。だいたい、作った曲を聴かせれないのは面倒くさいんじゃなくて発売になるまではレーベルの許可無しに他人に聴かせたらダメだって契約してるからだし」

と奏が言うと

「文化祭のライブも許可無しに見ちゃダメなの?」

とナナは聞いた。

「それは無いけど」

と奏が言うと

「だったらいいしょ。ほら、行こう。奏君の家のシアタールームも見てみたいし」

とナナは奏の腕を更に引っ張って言った。


地下の廊下を歩いていると

「ねぇ、地下の部屋って鍵ついてるの?」

とナナはキョロキョロと和と綾子のスタジオのドアを見て聞いた。

「この部屋は父さんでこっちは母さんのスタジオ。楽器も少しだけど置いてあって温度や湿度管理がされてる部屋だから勝手に入れないように鍵掛かってるんだよ」

と奏が言うと

「へぇ、ここでボレロやSperanzaやfateの曲が生まれるんだぁ」

とナナは拝むように手を合わせたので、奏は驚いた顔をして

「なにしてるの?」

と聞いた。

「ほら、これからも良い曲が生まれますようにってお祈りを…」

とナナが言うと奏はクスッと笑い

「ナナが拝んで良い曲が出来るんだったら、俺の部屋も拝んでもらおうかな」

と言った。

「あっ、今ちょっとバカにしたでしょ」

とナナが言うと

「そんなことないよ。ただ、綾子大好きの琳でさえ拝むなんてことしたこと無かったからビックリして。ナナは本当にナゴミと綾子大好きだよね」

と奏は笑った。

「大好きって言うか…そうゆうのは通り越して今はナゴミも綾子も神みたいな存在だね」

とナナが笑うと

「神なんだ。スゲェな。昨日なんて神と飯食って話して、めちゃくちゃスゲェじゃん」

と奏が言うと

「言われてみたらそうだね。私、神と話しちゃった」

とナナは言った。

「言われてみたらって…」

と言うと奏は歩き出して一番端の部屋の前に来るとシアタールームのドアを開けて中に入り照明をつけると

「どうしたの?入らないの?」

とナナに聞いた。

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