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お隣のふにゃふにゃ王子様  作者: まあちゃん
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誠の説得と綾子の気持ち

吉川が帰ったあと、綾子はスタジオに戻った。

「綾子、遅かったけど大丈夫か?」

と渉が言うと

「え?何が?」

と綾子は話を聞かれたのかと思い一瞬不安になった。

「何がって、どこかで具合悪くして倒れてたかと思って」

と渉が言うと

「ごめん。実はなっちゃんから電話きて話してた」

と綾子は咄嗟に嘘をついて笑った。

「なんだそうか。で、何話してたの?」

と興味深そうな顔をして渉が聞くと

「香港のお土産聞いて無かったけど何がいいって聞かれて…。でもよく分からないからお菓子って言っておいた」

と綾子たちが笑ってるとコンビニのふくろを持った誠が入ってきた。

「よう、おまえはどこに行ってたんだよ」

と渉が聞くと

「コンビニ。今日発売の週間マンガ買ってなかったから」

と誠は言った。

「俺も買ってないわ。後で見せて」

と隼人が言うと

「俺も見たいな」

と相川が言ったので

「相川さんも読んでるんですか?」

と隼人が驚いた顔で聞いた。


日付が変わる頃、隼人のドラム撮りが終わりメンバーは解散することになった。

篠田がメンバーを送ろうとしていると

「私、今日は寄るところあるから大丈夫です」

と綾子は言った。

「そう?じゃ、3人送るわ」

と篠田が言うと

「すみません。綾子、心配だし今日は俺が綾子を送ります」

と誠も言った。

渉と隼人と篠田は顔を合わせて何か言いたげな表情をしたが

「そっか。…じゃ、誠に頼んで俺たちは帰るか」

と言って篠田は渉と隼人を車に乗せて出発した。

「綾子、何かあったんですかね」

と渉が心配そうに言うと

「まぁ、今は誠に任せてさ。様子見よう」

と篠田は言った。


誠は綾子の買い物に付き合ったあと食事に誘った。

綾子はもしかしたら誠が吉川との会話を聞いていたので?と思っていたが、自分から聞いて墓穴を掘っても困ると思い黙っていた。

「前から気になってたんだけど、どうして綾子は4年契約で事務所に入ったの?」

と誠は聞いた。

「それは…」

と綾子がどうこたえようか迷ってると

「それに綾子だけこれからの予定もあまり入ってないのもさ。一番オファーがきそうなのが綾子なのに」

と誠は言ってから

「もしかして、結婚するの?」

と聞いたが、綾子は俯いて何もこたえられなかった。

「…意地悪してごめん。実は、吉川さんとの話を聞いてたんだよね」

と誠は言った。

「…やっぱり。ごめんね。まだ正式に決まってる話じゃないから黙ってたんだけど」

と綾子が言うと

「結婚するんだよな」

と誠は綾子を真っ直ぐ見て言った。

「あ…」

と綾子が視線をずらすと

「綾子、吉川さんに言われた事は気にするな。結婚しても世界進出の影響なんてないよ。あの人は、わかってないんだよ」

と誠は言った。

「うん…。でも…吉川さんが言ってる事も全てが間違ってる訳じゃないし…。あの人はあの人なりに一生懸命なっちゃんの事を考えてるのも分かるから」

と綾子が言うと

「じゃ、2年待つの?」

と誠は言ったあと

「違うか…。二人は4年待ったんだよな。これからまた2年も和さんを待たせるの?」

と誠は言った。

「…」

綾子が黙ってると誠はため息をついて

「和さんは優しいし綾子の言うことなら聞いてくれると思うよ。けど、結婚って女だけじゃなくて男にも大事な事だよ。プロポーズだって相手の人の一生背負う覚悟でするんだからさ。それを2年待って欲しいとか言うのは酷だと思うよ。俺ならそんな事言われたらショックだよ」

と言った。

「分かってるよ…。、だから悩んでるんじゃない」

と綾子は言ったあと

「だから困ってるんだよ。なっちゃんと幸せになりたいし、なっちゃんを幸せにしてあげたい。支えてあげたい。けど、なっちゃんやスタッフのみんながずっと夢見て頑張ってきた世界進出がすぐそこにあって…。もしも私と結婚することが少しでも足を引っ張ったらって…」

と言った。

「綾子、最近身体の調子が悪いから考え方が後ろ向きになってるんだよ。落ち着いて考えたらこたえなんて簡単に出るよ。吉川さんの言ってた事なんて気にするな。もし、時期が悪いなんて思ってたら吉川さんじゃなくて、村上さんや結城さんが話をしに来るんじゃないか?」

と誠は言ってから

「それから…他の人は気付いてないみたいだけど、綾子…妊娠してるんじゃないの?」

と言った。

綾子は一瞬ビクッとしてから

「そんな事ないよ。突然びっくりするような事言わないでよ」

と言った。

「そう?だったら俺の勘違いかもしれないけどさ。もしも妊娠してたら、それこそ和さんとしっかり話をした方がいいと思うよ」

と誠は言った。


その日から綾子は毎日いろんな事を考えていた。

和と結婚することは4年前から夢見てきた。

結婚して和を支えて暮らしていきたい。

和の子どもを生みたいとも思っていたし、和も同じで結婚して早く子どもが欲しくて自分がして欲しかったことを生まれた子どもに全部してあげたいって思ってるのも知っていた。

けど、子どもを生むどころか結婚さえも今していいのかどうか分からない。

結婚したい。

でも、和の…ボレロの足を引っ張っる事はしたくない。

和に2年まで待って欲しいと伝える。

優しい和なら待ってくれるだろう。

けど、4年ずっと待ってくれてた和にそんな事を言えるだろうか?

それになぜそんな事を言うのか理由を聞かれるはず。

世界進出が成功するまでと言ったら、和はそんな事は気にするなって言うはずだし、自分たちを信じてないのかって思われる。

それに…。

綾子は和に会うその日までずっと悩み続けた。


「綾子、今日、和さんと会うんだろ?何時に約束してるの?」

と隼人が聞くと

「19時に待ち合わせしてるよ」

と綾子は言った。

「お土産何を買ってきたんだろうな」

と渉は綾子に聞くと

「お菓子って言ってたよ。スタジオにも持ってくるからみんなで食べよう」

と綾子が笑うと

「最近、綾子も貧血良くなったのか顔色良い日が多いし、和も安心するな」

と篠田は言った。

「そうだな。あと1ヶ月でレコーディングも終わるし、ボレロもアルバム製作で余裕出来るから二人の時間も増えるしな。あ…その前に清雅のレコーディングがあるか…」

と相川が言うと

「綾子、和を待たせるのも悪いから今日は早く上がれ」

と篠田は言った。

「いいんですか?じゃ、先に帰らせてもらいます」

と綾子がスタジオを出ると

誠とすれ違った。

「綾子、上がり?」

と誠が聞くと

「うん。なっちゃんと約束してるから、もう帰っていいって」

と綾子は笑った。

「綾子、大丈夫だよな」

と誠は心配そえな顔をした。

「何が?」

と綾子がとぼけると

「吉川さんが言ったこと」

と誠は言った。

「あー。あれ。全然気にしてないよ。だから誰にも言わないで。…誠には心配かけちゃったみたいで本当にごめんね。でも、何が大事か自分の中で結論出たから大丈夫だよ」

と綾子は笑うと

「じゃ、行ってくるね」

とその場を去った。

「…」

誠は綾子の様子に何か違和感と決意みたいなものを感じて綾子の後を追って引き留めた。

「綾子、本当に大丈夫か?」

と誠が聞くと

「やっぱり誠には隠し事出来ないね…」

と綾子は言ってから

「前に誠が私に聞いたこと…あれ違うって言ったけど嘘。本当は誠の言う通りだよ。でも、私から話をするまで黙ってて」

と言って綾子は外に出て行った。

スタジオに戻った誠は自分が綾子に聞いた事について考えていた。

何を聞いただろうか?

ずっと考えていたが思い当たるふしが無かったが

「……あ!あれか!」

と誠は呟いた。

「じゃ、大事なものって…」

と呟くと誠は

「篠田さん。今日綾子と和さんがどこで会ってるか知ってますか?」

と聞いた。

「え?エクセレントホテルで待ち合わせしてるらしいけど。どうした?」

と篠田が聞くと

「すみません。今日、帰らせて下さい」

と言って誠は慌ててスタジオを飛び出した。

外に出た誠はタクシーを捕まえようと手を上げていたが、なかなかタクシーが捕まらなかった。

「クソッ。これなら走った方が早いのか?」

と誠は走り出した。

「吉川の野郎!綾子が2年なんて待てる訳無いだろ。」

「綾子、吉川の言葉を鵜呑みにしたら、和さんと綾子だけじゃなくて子どもまでも悲しませる事に気づけよ」

と誠は走りながら呟いた。



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