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お隣のふにゃふにゃ王子様  作者: まあちゃん
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修学旅行が終わり

ラウンジで窓の外の奏とナナのことを見ていた琳たちや元カノたち…そして偶然通りかかった同級生たちは肩を落として歩くナナの姿が見てなくなるまで見ていた。

「…」

「…」

誰もが何をどう話していいのかわからず黙って窓の外を眺めていたが、ロビーの方から奏の声が聞こえたので声のする方を見た。

奏は友だちと笑いながら話をしていたが無理に笑ってる姿は窓の外を歩いていたナナと重なって見えた。

「…可哀想」

と詩織が呟くと

「…笑って見送るとか私は無理だわ」

と元カノも言った。

「私も無理。いくら若狭君と付き合えるって言ってもあんなの耐えられないな…」

と女子生徒たちが話してると

「…でもさ、こんなの長く続かないよ。きっと毎回最後は泣いてるんだよ。…泣いてる方も泣かれる方も耐えきれなくなって別れちゃうよ」

と元カノは言った。

すると琳は元カノをジロッと見て

「久美子の場合はな。でも、あの二人は簡単に別れたりしない。…奏がナナさんのこと絶対に離さないよ」

と言ったあとニコッと笑って

「あの奏が惚れた女と奏を惚れさせた女だよ。簡単に別れたりするわけないじゃん」

と言った。

「だよな。俺さ、あの二人はこのまま結婚までしちゃうような気がするんだよね」

とさっちゃんも笑うと

「よし、奏のところ行くか?」

と勇次郎は言った。


奏が東京に戻り6日後。

奏と一緒にいた時間がまるで夢だったかのようないつもの日常を過ごしてるナナが家に帰ると

「ナナ、荷物来てたよ」

と母親が声をかけた。

「荷物?どこから?」

とナナが聞くと

「東京からだったはずだよ。…また、ネットオークションで何か買ったの?部屋に置いてあるからね」

と母親は言った。

「最近、やってないんだけどな…。なんだろう?」

と思いながら階段を上がり自分の部屋に入ると机の上に宅配便のマークのついた封筒が1つ置いてあった。

封筒に日時指定を示すシールが貼ってあったので

「日時指定?…どこからだろう?」

とナナは伝票を見ると驚いた顔をして

「奏君?」

と言うと急いで封筒を開けた。

封筒を開けると奏が12月に発売したSad loveと今日発売のSmall piecesのCDが入っていた。

CDを手に取ると

「言ってくれないから買ってきちゃったしょ。1枚目も持ってるって」

とナナは嬉しそうに笑った。


自分が買ってきた奏のCDの包装紙を開けるとCDをプレーヤーにセットしブックレットを見た。

子どもの手のひらに植物の小さな種子が乗っているジャケットを開くと、大きな木の下で楽しそうに幼い子どもたちが走り回っている写真とSmall piecesの歌詞が載っていた。

プレーヤーを再生するとナナはじっと歌詞を眺めた。

1枚目のシングルとは違い、どちらかと言うと清雅が歌ってるあの曲のようなストリングを使用した美しいメロディーの曲に優しいカナデの歌声が重なるSmall pieces。

春の日差しのように心が暖かくなるように曲をナナはじっと耳を澄まして聞いた。

Small piecesが終わり少しの間が空くと、今度は青空を連想させるような爽やかなギターサウンドのさよならが流れてきたので、ナナはブックレットのページをめくったが次の瞬間

「これ…」

と驚いた顔をした。

そこに写っていた写真は太陽の光にキラキラと照らされている雪の結晶のネックレスの写真だった。

「…」

クリスマスイブに大通公園で奏がナナと一緒にと2つ買い、二人で1つづつ持っているあのネックレス。

離れて暮らしてても同じものを持っていたら近くに感じるかと思って買ったんだと奏が首に着けたくれたネックレス…。

曲を聴きながら歌詞を目で追ったナナの瞳には涙が浮かんでいた。

歌詞を見ると卒業ソングのような歌なのに、ナナには自分と奏のことを歌っているような気がした。

離れて暮らす二人の別れの瞬間とき…。

離ればなれになることの悲しみ…寂しさ…。

そして、再会する日への希望…。

爽やかな曲調に重なるカナデの切なくも優しい歌声が胸にに強く響くさよならを聴き終えると

「奏君、スゴいわ。天才かも…」

とナナは涙を流しながら笑った。


勉強に部活にとミュージシャンになる前のありふれた日常を過ごした2月が終わりあっという間に3月も半ばになり奏はスタジオ通いの毎日が始まった。

スタッフやサポートメンバーとも半年以上の付き合いになると意志疎通が上手くいくようになりレコーディングも順調に進み充実した日々を奏は過ごしていた。

「奏、明日休みだよ。なにするの?」

と大川が聞くと

「明日は友だちと遊びに行く約束してます」

と奏は笑った。

「どこ行くの?」

と大川が聞くと

「シーに行こうって話してるんですけど春休みだし混んでますかね?」

と奏は聞いた。

「シー?男と?何人で行くの?」

と大川が驚いた顔をすると

「4人でですけど」

と奏はなぜ驚いているんだろうと不思議な顔をすると

「夢の国ってのは家族や恋人と行くんじゃないの?野郎で行って楽しいの?」

と佐藤は言った。

「仕方ないじゃないですか。みんな彼女いないんですもん。それに夢の国に男同士で行っちゃダメだって決まりもないですよ」

と奏が笑うと

「奏は彼女いるだろ?一緒に行けよ」

と佐藤は言ったあと

「あっ…いや。ほら…今度さ」

と気まずそうな顔をしたが奏は何事も無いように笑って

「そうですね。今度は彼女と行きたいので明日は下見してきます」

と言った。


次の日の夜、家に帰ってきた奏はナナと電話をした。

『シーに4人で行ってきたの?』

とナナが聞くと

「そうだよ。男同士ってどうなのかな?って思ったけど楽しかったよ。ナナさんはまたスノボ行ってきたの?楽しかった?」

と奏は聞き返した。

『楽しかったけど、暖かくなってきたからゲレンデがザクザクでさ。さすがにそろそろシーズンも終わりだね』

とナナが笑うと

「そっか。でも、またいかにも大学生って感じのテニスの時期がやってくるでしょ?」

と奏は聞いた。

『まあね。テニス楽しいよ。奏君もやってみたら?』

とナナが言うと

「いや…俺は、そうゆうチャラチャラしたのはちょっと」

と奏は言った。

『チャラチャラしてないよ。やってみたら楽しいよ』

とナナが言うと

「でも、俺はいいや」

と言ったあと奏は

「春休みってカテキョのバイトあんまり無いんでしょ?こっち来ればいいじゃん」

と言った。

『いやいや奏君の家にお世話になるなんて無理だよ』

とナナが言うと

「大丈夫だって。父さんたちなんていつ家にいるのかわかんないような生活してるんだし気を使う必要ないんだよ。それに母さんが住み込みのハウスキーパーのつもりで来れば良いのにって言ってるし」

と奏は言った。

『そうじゃなくてさ。私、料理とかあんまり得意じゃないし…ナゴミと綾子と同じ屋根の下とか無理無理』

とナナが言うと

「あっそ。まぁ、こっちに来ても俺も仕事だしね。でもさ、母さんも言ってたけどインターンシップでこっちに来るときは俺ん家に泊まりなよ。往復の飛行機代だけでもバカになんないし、ホテルなんて泊まってたらいくらお金あっても足りないからね」

と奏は言った。

『そうだね。その時は遠慮なくお世話になるね。まぁ、エントリー通過したらだけどね』

とナナが笑うと

「そういえば、ジェネシスでもインターンシップ募集するらしいよ。もう少ししたらホームページに載るらしいからチェックしてみなよ」

と奏は言った。

『でも、奏君の事務所でしょ?何かさ…』

とナナが言うと

「そうゆうのは関係無いでしょ?残念ながら俺にはナナさんを採用しろなんて言うような権力ないし。それにインターンシップ始まる頃には事務所にも行かなくなるからバッタリ会うってことも無いから大丈夫だよ。エントリーするだけでもしてみたら?」

と奏は言った。

『そうだね。チェックしてみるね』

とナナが言うと

「ああ、春休みも会えそうにないしゴールデンウィークには会えるのかな…」

と奏は呟いた。

『奏君、最近そればっかりだね』

とナナが言うと

「だってさ、もう2ヶ月だよ。桜の季節終わっちゃったよ」

と奏は言った。

『こっちはまだまだ先だよ。ゴールデンウィーク前に桜の季節だからね』

とナナが言うと

「そっか。じゃ、北海道の桜の季節に会えるのかな…。今頑張ればゴールデンウィークに連休くれるって言ってたけど本当かな…」

と奏は言った。

『…ゴールデンウィークは私が行こうかな』

とナナが言うと

「えっ、ナナさん大丈夫なの?」

と奏は言った。

『私だって貯蓄はしてるんだよ。東京行く飛行機代ぐらいは出せるし、奏君が送ってくれた写真見てたら私もシーに行きたくなってきたし。その代わりホテル代は奏君が出してね』

とナナが言うと

「えっ、うちに泊まればいいじゃん」

と奏は言った。

『それはダメだよ。…今度の時はあれ使うんでしょ?』

とナナが言うと

「あれ…?……ああ、あれね。そうだった、今度の時はするって約束したんだった」

と奏は笑った。

『…そうだよ。ご両親のいるところでそんなことは出来ないよ』

とナナが恥ずかしそうに言うと

「大丈夫。俺の家って全部屋防音加工されてるから」

と奏は言った。

『そうゆうことじゃなくて…』

とナナが言うと

「わかったよ。ゴールデンウィークのスケジュールがはっきり決まったらすぐホテル予約して連絡するから。あっ、でも相川さんみたいに金が有り余ってる人と違うから札幌の時みたいなところは期待しないでよ」

と奏は笑った。


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