雪の世界と恋心
前日、富良野に来た奏たちは荷物を置くと早速、スキー希望者とスノボ希望者に分かれ、レベルごとのグループ分けをして早速レッスンに入った。
幼い頃からスノボをしてた奏は琳と勇次郎とともに一番上級のグループに入り、他のグループを横目にインストラクターに連れられて山頂まで行ったりとレッスンと言っていいのかどうかわからないほどスノボを満喫していた。
ゴンドラの中で
「勇次郎も滑れるなんて知らなかった」
と琳が言うと
「俺、小学生の時に新潟で育ったからね。冬の遊びって言ったらスキー場に行くことぐらいだったんだよ」
と勇次郎は言った。
「さっちゃんも初めは自分だけ初級グループでムッとしてたけどめちゃくちゃ楽しんでるみたいで転んで雪まみれになるのが笑えるって言ってたよな」
と琳が言うと
「俺にはインストラクターがオッサンじゃなければもっと良いけど、楽しいから許すって言ってたよ」
と奏は笑った。
一方、ナナたちもまたスキー場のロープウェイの列に並んでいた。
「平日なのに混んでるね」
とナナが言うと
「どっかの学生が団体で来てるみたいだよ。ほら、同じウエア来て同じ板持って。これからご飯かな?ってことはこれから空いてくるんじゃないか?」
と齋藤は嬉しそうに言った。
「齋藤、嬉しそうだね。何かいいことあった?」
と青木が言うと
「いやいや、ほら。ゲレンデでの出会いとか?可愛い子いないかなぁ」
と齋藤は言った。
「はぁ?こんな可愛い子たちが一緒に来てるのに何言ってるのよ…」
と青木は言ったあとロッジに入ってく学生を見て
「あっ、めちゃくちゃカッコいい子いるんだけど」
と言った。
「なんだよ。おまえだって同じじゃん」
と齋藤が笑うと
「いやいや、本当カッコいいんだって。ちょっと見てみなよ」
と青木は言った。
青木の視線の先を見て齋藤が
「ああ、確かに」
と言ってると
「…あれ?ユイナ、あの人ってさっちゃんに似てない?」
とナナは言った。
「えっ、そんなことないしょ。似てる人なんてどこにでもいるって」
とユイナが少し焦って言うと
「そうかな…」
とナナは言った。
「そうだって。ほら、列進んだし前に行こう」
とユイナが言うと
「…うん」
と言ってナナは前に進んだ。
グループごとに時間差で昼食をとることになってるためにその後も滑っていた奏は
「楽しいんだけどさ、腹減ったと思わない?」
と勇次郎に言った。
するとインストラクターが
「これ滑り終えて昼にするからもう少し我慢してね」
と笑った。
奏たちがロッジに入ろうとすると、これから午後のレッスンが始まるさっちゃんとすれ違ったので
「さっちゃん、もう行くの?」
と琳は聞いた。
「うん。今度、ロープウェイで上まで上がるらしいからさ。めちゃくちゃ楽しみ」
とさっちゃんが笑うと
「マジ?上の方ってめちゃくちゃ急斜面だよ。大丈夫?」
と琳は笑った。
「ウソ。大丈夫かな…」
とさっちゃんが心配そうにすると
「琳の嘘だって。めちゃくちゃ見晴らしいいし楽しいよ。じゃ、また夕方」
と勇次郎は笑った。
先に昼食をとっていたグループが一斉に席を立ったので比較的空いてきた食堂で奏たちが昼食を食べてると琳の元カノがやって来て
「うわ、カレー美味しそう。私もカレーにすれば良かった。琳、少しちょうだいよ」
と言った。
「嫌だよ。他の奴にもらえよ。ってかなんか用?」
と琳が言うと
「琳じゃなくて若狭君に用があったの。あのさ、夕食のあとにちょっと付き合ってくれない?」
と元カノは言った。
「はっ?なに言ってるの?おまえ、今度は奏狙いか?やめてとけって。奏はおまえなんて相手しないから」
と琳が笑うと
「私じゃないよ。友だちが若狭君と話したいから連れてきて欲しいって頼まれたの」
と元カノは言った。
「うわ、お前が愛のキューピッド?似合わないからやめておけよ」
と琳が笑うと
「うるさいわね。じゃ、若狭君ご飯のあとね。忘れたふりしようとしてもダメだよ。出口で待ってるからね」
と言って元カノは去っていった。
「…琳の元カノっていつ見ても強引だよな」
と勇次郎が言うと
「だろ?人の話全然聞かないんだよアイツ」
と琳は言った。
「でも、結構長く付き合ってたし今でも仲いいじゃん。やり直せば?」
と奏が笑うと
「いやぁ、無理。友だちだから上手くいくだけで付き合うってなると無理だよ。多分、向こうも同じこと思ってるよ」
と琳も笑った。
「ふーん…」
と言うと勇次郎は食堂の出入口を見てハッとした顔をした。
「ん?どうした」
と奏が勇次郎の見てる方を見ると、サークル仲間と一緒に食堂に入ってくるナナを見つけた。
「あっ…」
と奏が驚くと視線に気付いたナナも奏を見て驚いた顔をしたが、奏は咄嗟に視線をそらしてしまった。
「あれってナナさんに似てない?」
と琳が言ってるとナナと一緒にいた武志が勇次郎に気付いて近くに来て
「勇次郎、お前の高校も来てたの?」
と言ったあと奏を見て
「あっ、田口の彼氏でしょ?写真でもイケメンだと思ったけど実物見るとますますイケメンだなぁ」
と笑った。
「写真?」
と奏が勇次郎を見ると
「俺じゃないよ」
と勇次郎は慌てて言った。
「…勇次郎、こちらは誰?」
と琳が聞くと
「俺の従兄弟でユイナさんの彼氏。ナナさんとも同じ大学通ってるんだ」
と勇次郎は言った。
「武志です。よろしくね」
と武志は言ったあと
「そうだ。偶然とはいえ、ここで会ったのも何かの縁だし飯一緒にしていい?」
と笑った。
食堂に入る前、トイレに寄ったナナたちは女子高生の集団がトイレの順番待ちしてる列に並んでると
「若狭君本当に来てくれるのかな?」
と詩織は琳の元カノに聞いた。
「来てくれるって言ってたよ。もし、来てくれないって言っても私が引きずってでも連れてくから」
と元カノが笑うと
「でもさ、彼女いるんだよね?言ってもフラレるだけだし…」
と詩織は言った。
「だけど、若狭君が彼女といるところって誰も見たことないしさ。それに、同クラの子が話してたけど若狭君、彼女とケンカしてるみたいなこと鈴木君と話してたって」
と元カノが言うと
「ケンカ?」
と詩織は聞いた。
「うん。それにさ、噂だと彼女ってかなり遊んでる人らしくて若狭君は騙されるみたいだし、ケンカしてる今のうちに目を覚まさせて詩織と付き合う方が若狭君のためにもなるんだって」
と元カノが言うと
「でも、若狭君って彼女作らないの有名でしょ」
と詩織は言った。
「それは前までの話でしょ。自信持ちなって。当たって砕けろだよ」
と元カノが言うと
「うん。そうだね、頑張ってみるね」
と詩織は言った。
トイレを終えたユイナは
「さっきの子、好きな男の子に告白するのかな?」
とナナに聞いた。
「きっとそうだよ。青春って感じだよね。上手くいくといいね」
とナナが笑うと
「本当だね。だってさ、その男の子って派手に遊んでる彼女と付き合ってるって言ってたしょ。そうゆう女と付き合うより、さっきの子と付き合った方が絶対いいって」
とユイナは言った。
「なんかうちらって近所のお節介なオバサンみたいだね」
とナナが笑うと
「そうかもしれないけど、そうゆう遊んでる女と付き合ったって良いことなんて何もないよ。さっきの子、可愛い顔してたし上手くいくって信じたい」
とユイナは言った。
「何を信じたいって?遅いよ」
と待っていた武志が言うと
「ごめんごめん。女子高生でトイレ混んでてさ。で、先輩たちは?」
とユイナは言った。
「先に食ってるって行っちゃったよ。…あっ、齋藤先輩は女子高生ナンパして断られてたみたいだけど」
と武志が言うと
「うわ、先輩なにやってくれてるの。恥ずかしい」
とユイナは言った。
「だよな。俺も一緒に行こうって誘われたけど、さすがに学校行事で来てる女子高生はナンパできないよ」
と大石が笑うと
「ですよね?…もう、仲間だと思われたくないぐらい恥ずかしい」
とユイナは言った。
食堂の中に入ったナナは
「でも、出会いがどうとかいってたけど本当にするとは思いませんでした」
と笑っていたが視線を感じたのでチラッと感じる方を見ると、驚いた顔をして自分を見てる奏と目が合った。
「えっ…なんで…」
とナナが驚いた顔をすると奏は視線をそらして友だちと話はじめたのでナナは視線をそらされたショックで身動きが出来なかった。
そういえば、修学旅行で富良野に行くって言っていた。
偶然とはいえ、こうやって1ヶ月ぶりに奏の顔を見れるのは嬉しい。
…けど、それよりも視線をそらされたことが。
とナナが考えてると奏たちと話をしてきた武志が
「なぁ、一緒に飯食おうって話になったんだけど」
と言った。




