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お隣のふにゃふにゃ王子様  作者: まあちゃん
289/356

それぞれの新年 1

次の日、奏は飛行機の中で書いた歌詞を相川に見せた。

「んー、いいんじゃない?でも、これだと冬のラブソングの歌って感じだな。…これは今度のカップリングになると思うから冬じゃなくて春の感じにした方がいいと思うぞ。例えば、粉雪を花びらに変えたりするだけで…」

と相川が言うと

「確かに…。これだけで変わりますね」

と奏は感心した顔をした。

「だろ?これだと捉え方でラブソングにも卒業ソングにも聴こえると思わないか?」

と相川が言うと

「そうですね。じゃあ、ここの部分も…」

と奏が歌詞を書き直してると

「そうそう。それだとどっちにも取れるだろ?」

と相川は笑った。


制作にレコーデイングにと奏は忙しい日々を過ごしていた。

スタッフやサポートメンバーから出てくる意見やアイデアを話し合い試行錯誤してみんなで1つの曲にまとめていくって作業はとても楽しく勉強になることばかりだった。

スタジオを出る時に日付が変わってない日は無かったけど学校が冬休みなので睡眠時間も確保出来るし、自分で勉強する時間も曲を考えたりする時間も取れる。

忙しいなりにやりがいのある充実した日々を送ってるうちにあっという間に時間は過ぎて仕事納めの日が来て奏は正月休みに入った。


大晦日の夜、奏は久しぶりに琳たちと会い北海道のお土産を渡すと

「なんだよ、これ。全部黒ボールペンじゃん」

とさっちゃんが言うと

「本当だ。こんなに黒ばかり要らないよ」

と琳は笑った。

「なに言ってるんだよ。黒って一番使うだろ?」

と奏が笑うと

「北海道まで行ったんだからもっと良いもん買ってこいよ」

と琳は笑った。


都内でも比較的参拝客が少ない勇次郎の家の近くの神社近くにあるコンビニに着くと勇次郎は雑誌を立ち読みしていたので奏たちはコンビニに入り

「よう、何読んでるんだ?」

と勇次郎に声をかけた。

すると勇次郎は本を見せて

「旅行雑誌。ほら、ほら冬の北海道特集してるからさ。修学旅行の参考にしようかと」

と言った。

「どれ?いいとこあった?」

とさっちゃんが見ると

「やっぱり時計台かな?あとはラーメン?それから赤レンガ…はクラスで行くんだっけ?」

と勇次郎は言った。

「…時計台は見たらがっかりするよ」

と奏が笑うと

「それよく聞くけど、そんなにがっかりする?」

とさっちゃんは聞いた。


神社の境内に入ると既に列を作ってる参拝客がいたので奏たちはその列に並んだ。

お互いに冬休みに何をして過ごしてるかや、宿題をどのくらい終わらせたかなどの近況報告をしているうちに年明けを迎え、最前列に並ぶ人たちから次々と本殿での参拝を始めた。

年明け前から来ていたおかげで比較的早く参拝の順番が回ってきた奏たちは賽銭箱にお賽銭を入れるとお参りをし4人でおみくじを引きを引いた。

「うわぁ。吉って微妙…」

とさっちゃんが言うと

「俺、大吉!」

と琳は笑った。

「俺は小吉だ。奏は?」

と勇次郎が聞くと

「もちろん大吉」

と奏は笑った。


4人は参拝を終えると出店などを見たあと駅に向かって歩いた。

「初日の出って今年はどこで見る?」

と琳が言うと

「犬吠埼はもういいな。電車で押し潰されそうになるし」

と奏は言った。

「逆に近場で京浜島つばさ公園ってのが穴場らしいけど」

とさっちゃんがスマホを見ながら言うと

「京浜島…。羽田の隣にある公園?」

と勇次郎は聞いた。

「そうそう。空港方面から初日の出がのぼるって書いてあるし、そんなに混まないみたいなこと書いてあるし」

とさっちゃんが言うと

「じゃ、そこにする?」

と琳は言った。


電車を乗り継ぎ公園の最寄り駅に着くと

「歩いて20分ぐらいだって」

と琳は言った。

「20分?日の出までまだまだあるじゃん。コンビニで飲み物とか買ってこうぜ」

と奏が言うと

「カイロ欲しいよな。売ってるかな?」

と琳は言った。


コンビニで時間を潰したあと公園に着いた奏たちは遊歩道の途中から初日の出を見るとこにしたので柵にもたれ掛かりながら日の出までの時間を潰していた。

「来年は初日の出なんて来れないんだろうなぁ」

と琳が言うと

「だよな。センターも1ヶ月きって勉強勉強って感じなんだろうな」

とさっちゃんはため息をついた。

「はぁ、志望校どうしよう」

と勇次郎がため息をつくと

「勇次郎、志望校変えるの?」

とさっちゃんは驚いた顔をした。

「うん。つくばの大学に行こうかと思ってたんだけど、T大の理Ⅰも頑張れば狙えないことも無いって言われたからさ」

と勇次郎が言うと

「T大か。俺は医学部志望だしT大は無理だな」

とさっちゃんが言うと

「さっちゃんはどこ目指してるんだっけ?」

と勇次郎は聞いた。

「俺はTJ医大。親父もTJ医大出身だしさ…。あとはH大もいいかなって気がするから迷ってる」

とさっちゃんが言うと

「H大?」

と勇次郎は驚いた顔をした。

「うん。まあ、俺の偏差値で合格確定ラインだし姉ちゃんたちと離れられるってのもあるしさ」

とさっちゃんが笑うと

「そっか。奏がH大ならナナさん追いかけていくのかな?って思っちゃうけどさっちゃんがね…」

と琳は言ったあと

「まあ、奏はT大文Ⅰで合格確定なんだろ?もったいなくてH大は受けないか…」

と笑った。

「H大だと仕事出来なくなるしね。まあ、現役合格しないと仕事は無くなるんだけどさ」

と奏が笑うと

「仕事無くなるってどうゆうこと?」

と琳は聞いた。

「俺、絶対に現役合格するって親と約束して事務所入ったからさ。もしも落ちたら事務所辞めさせられんだよ」

と奏が笑うと

「マジ?笑って言ってるけどキツいな…。綾子さんたちって、そんなに教育熱心な人だったんだぁ」

と琳は驚いた顔をした。

「教育熱心って言うか…。自分たちもそうやってやってきたし、今まで司法の仕事に就きたいって頑張ってきたのに簡単にその夢を捨てて欲しくないって言ってた。…あとは、もしも音楽でやっていけなくなったときに何も残って無かったらどうやって生きていくんだって言われた」

と奏が言うと

「確かにな。人生の全てを賭けて音楽やるって言うのもカッコいいけど、もしものことを考えるとな。高卒の元ミュージシャンじゃ何をして生きてくんだ?って感じだよな」

と勇次郎は言った。

「そっか…。で、そのことはナナさんにも話したの?」

と琳が聞くと

「話してないよ」

と奏は言った。

「話してないって、もしかして仕事のことも話してこなかったのか?」

とさっちゃんが聞くと

「うん。別に話さなくていいかなって思ったし」

と奏は言った。

「いやいや、話した方がいいだろ。相川さんだって話した方がいいって言ってたじゃん」

とさっちゃんが言うと

「いいんだよ。それに相川さんのところで働いてるって言ってあるし」

と奏は言った。

「相川さんって…。それって家政婦のバイトしてるって思い込んでるんだろ?なんで、そんな見え見えの嘘つくんだよ。おかしいって思うのも時間の問題じゃない?」

と勇次郎が呆れた顔をすると

「俺は嘘ついてないよ。家政婦してるともバイトしてるとも一言も言ってないし、ナナさんが勝手にそう思ってるだけだよ」

と奏は言った。

「…」

勇次郎が黙ってると琳とさっちゃんは顔を見合わせてから

「こっち帰ってきてからも忙しくて全然連絡出来なかったんだろ?勝手に思い込んでるって言っても毎日毎日夜中まで相川さんのところで家政婦してるなんて絶対怪しいって思うはずだよ」

とさっちゃんは言い

「長続きしない俺が言うのもあれだけど、怪しいとか思われるのはヤバイよ。怪しい…何をしてるのか何を考えてるかわかんないって不安になるってのがつもり積もって不信感になったらもう終わりだから。何を言っても言い訳としか思われなくなって終わっちゃうぞ」

と琳は言った。

「…いづれ話そうと思ってるし大丈夫だって。ナナさんにも言ったけど、あれもこれもって一辺に話してもナナさんは混乱するだろうし少しずつでいいんじゃないかと思うんだよ」

と奏が言うと

「少しずつって何をどういつ話すんだよ」

と勇次郎は聞いた。

「修学旅行に行った時は志望校のことは話すつもりだよ。前からどこ狙ってるのか聞かれてるからね」

と奏が言うと

「仕事は?」

と勇次郎は聞いた。

「それは…来年、大学に受かったら…」

と奏が言うと

「はぁ?それまで黙ってるつもり?」

と勇次郎は驚いた顔をした。

「いやいや、無理でしょ。だいたい、勘づいてるけど言わないだけなんじゃない?おもいっきりカナデって名前で活動してるんだしさ」

と琳が言うと

「そうだよ。奏から話してもらうまで待ってようって思ってるんじゃない?」

とさっちゃんも言った。

「それは大丈夫。ナナさん、カエデに興味無いって言ってたし、名前もカナデじゃなくてカエデだって思ってるから大丈夫だって」

と奏が笑うと

「そんなのすぐに間違ってたって気付くって。だいたい、大学受かるまで黙っててそれから話すの?なんで今まで黙ってたんだろうって思うんじゃない?」

と琳は言った。

「…それはそうだけど」

と奏が困った顔をすると

「言いたくない理由があるのか?」

と勇次郎は聞いた。

「…俺は俺を見て欲しいんだよ。誰々の子どもとか音楽やってるとかT大学目指してるとかそうゆうのは関係なく俺を見てもらいたし知って欲しいんだよ。…それっておかしいことか?」

と奏が言うと琳たちは困った顔をした。

「…おかしいのか、やっぱり」

と奏が聞くと

「いや…おかしくはないけど」

と琳は言い

「うん。気持ちはわかるよ」

とさっちゃんも言ったが

「でも、悪いけどそれも含めて奏だろ?俺は奏の親も知ってるし仕事も志望校も知ってるけど別になんとも思わない。過去に親のことで嫌な思いをしてきたことも知ってるし仕事のことや志望校を聞いて距離を感じて欲しくないって気持ちもわかるよ。でも、俺たち見てみろよ。俺たちはそれを知ってからって何か変わったか?少なくても俺は奏に距離感じたり気を使ったりしてるつもりないよ。奏は奏だろ?何か変わるのか?」

と勇次郎は言った。

「そうだよな。当たり前過ぎて忘れてたけど奏は奏じゃん」

とさっちゃんが笑うと

「だよな。それで距離感じたり見る目が変わるような女なら俺がドロップキックしてやるよ」

と琳は笑った。

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