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お隣のふにゃふにゃ王子様  作者: まあちゃん
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クリスマスの終わり 3

ソフトクリームを食べてると奏は

「スゴい濃厚だね。小樽で食べたやつみたい」

と驚いた顔をした。

「小樽?」

とナナが聞くと

「うん。父さんが高校の修学旅行で食べたソフトクリームをどうしても母さんに食べさせたいって行った店。昔からあるみたいだけど混んでたよ」

と奏は言った。

「混んでる?…じゃあ、あそこかな?」

とナナが言うと

「メロンソフトもマジ美味かったよ。何十年も母さんに食べさせたいってしつこく思ってただけのことあるなって思ったよ」

と奏は笑った。

「…そんなに美味しかったんだ。…私も今度食べてみよう」

とナナが笑うと

「でも、これも美味いね。何個でも食べれそう」

と奏は笑った。


出発時刻が近付き出発口近くに来るとナナは

「…東京帰ったらなにするの?」

と聞いた。

「家に帰って飯かな?」

と奏が言うと

「またご飯?」

とナナは笑った。

「でも誰もいなかったらお土産持ってくついでにばあちゃん家で食べてくるかも」

と奏が笑うと

「おばあちゃんの家は近いの?」

とナナは聞いた。

「近いって言うか隣だよ」

と奏が言うと

「そうなんだ。じゃ、すぐ行けるもんね」

とナナは言った。

「うん。あっ、でもな。相川さんのところ行きたいしな…」

と奏が言うとナナは少しだけムッとして

「奏君って本当に相川さんのこと大好きだよね?」

と言った。

「大好き?…そうかな?」

と奏が言うと

「そうだよ。相川さんの家に住んだりしたり今朝だってメール送ったりして…」

とナナは言った。

すると奏は

「それって焼きもち?」

と聞いたあと

「相川さんも男だし焼きもち妬かれても俺も困るし相川さんだって困ると思うよ」

と笑った。

「焼きもちなんかじゃないよ」

とナナが慌てて言うと

「大丈夫。相川さんは俺の師匠だから。それ以上の何もないし、もともと俺は男に興味ないし」

と奏は笑った。

「男に興味あるって言われても困るけど…。師匠ってどうゆうこと?」

とナナは聞いた。

「んー…」

と言って奏は少し考えてから

「それは秘密。話せる時がきたら話すから」

と笑ったがナナは寂しそうな顔をして

「私って奏君のこと、あんまり知らないよね?」

と言った。

「そう?でも、俺だってそうじゃない?」

と奏が言うと

「そりゃそうだけど…。奏君は私のことをもっと知りたいとか思わない?…私は奏君のことをもっと知りたいと思うけど…」

とナナは言った。

「俺は少しずつ知るんでもいいような気がする。あれもこれもっていっぺんにお互いのこと聞いても理解なんて出来ないでしょ?少しずつでいいじゃん」

と奏が言うと

「…そうだけど」

とナナは納得出来ない顔をした。

すると奏は頭をかいて

「でもさ、ナナさんは誰も知らない俺知ってるじゃん」

と言った。

「誰も知らない奏君?」

とナナが言うと

「うん。ダサダサでカッコ悪い俺のこと。俺自身が自分に驚くようなダサさ。昨日みたいなダサい俺のこと誰も知らないし、ナナさんの記憶から消して欲しいって思うぐらい恥ずかしい」

と奏は言った。

「そっか。私だけか…」

とナナが嬉しそうに笑うと

「だよ。…恥ずかしいから誰にも言わないでよ」

と奏は笑った。

「言わないよ。私だけの知ってる奏君だもんね」

とナナが満面の笑みで言うと

「やっぱり、ナナさんは笑ってるのが一番いいね」

と奏は言った。

「そう?」

とナナが聞くと

「うん。からかった時にふてくされるのも面白くて捨てがたいけど笑ってるのがいい」

と奏は笑った。

「面白いって…。それは誉めてないね」

とナナが言うと

「そうかな」

と奏は言ったあと

「俺さ、自分で言うのもあれだけどスゲェ恵まれてて毎日毎日好きなことやって暮らしてるんだ」

と言った。

「好きなこと?」

とナナが聞くと

「うん。いろんな人助けられたり迷惑かけながらだけどね。…でもさ、贅沢なんだろうなって思うんだけどたまに好きなことばっかりやってるのに、逃げ出したくなる時があるんだ」

と奏は笑った。

「逃げる?」

とナナが聞くと

「本当は勝手な自惚れで何も乗ってないのかもしれないけど、なんか背中とか肩に乗ってるように感じる物が重くてね」

と奏は笑ったあと

「でもさ、ナナさんとlineしたり電話したりするじゃん?いつもくだらない話ばっかりなんだけど、ナナさんと話すと気持ちが楽になって何度も救われたんだ。よし、もう少し頑張ろうって気にもなれなし」

と言った。

「な…なに?どうしたの突然」

とナナが言うと

「突然じゃないよ。北海道きたら言おうとずっと思ってたんだ。ナナさんにスゴい感謝してるって。…言うの遅くなっちゃったけど」

と奏は笑った。

「そ…そんな感謝なんて…」

と言うとナナ涙を浮かべ

「感謝してるなんて…もう終わりみたいなこと言わないでよ」

と言った。

すると奏はナナな髪をクシャクシャと撫でて

「終わりのわけないじゃん。またlineしたり電話したりするし1ヶ月したらまた会えるんだし」

と言って

「それまで浮気しないでよ」

と笑った。

「するわけないでしょバカ…。ああ、泣いたら余計寂しくなるから泣かないって決めてたのに…奏君にのせいだよ…バカ…」

とナナがボロボロと涙を流して言うと奏は時計を見てから

「もうそろそろ行かないとなんないんだけど…。最後に一度だけバグしてもいい?」

と聞いた。

「嫌…」

とナナが泣きながら言ったので

「そっか…ごめん」

と奏が寂しそうな残念そうな顔をすると

「バグじゃなくて…ギュッてして」

と言ってナナは奏の胸に飛び込んできたので奏はナナを優しく抱きしめた。

「…奏君」

と奏の胸でナナが肩で呼吸をするように泣きじゃくっていると

「大丈夫だって。また会えるから。帰ったら連絡するし」

と奏が言ったのでナナはうんうんと何度もうなずいた。

奏はナナの涙を拭ってキスしようとしたが、失敗してしまい鼻と鼻がコツンとぶつかってしまったので

「あっ…また失敗した。超カッコ悪い」

と恥ずかしそうにするとナナは奏の鼻に自分の鼻をくっつけて

「仲良しの証拠だよね」

と涙でグシャグシャの顔で嬉しそうに笑った。

「…うん。そうだね」

と恥ずかしそうに言って奏もナナの鼻に自分の鼻をスリスリとくっつけたあと、チュッとナナの唇にキスをしてもう一度優しく抱きしめると他の人に聞かれないようにナナの耳元で

「最後の最後でカッコ悪い…。今度までに練習してくるから」

と言った。

「練習?どうやって練習するの?誰かとするの?」

とナナが聞くと

「まさか。自分の腕で使って練習…」

と奏は笑った。

「自分の腕?じゃ、私も自分の腕使って練習しておこうかな?」

とナナが笑うと

「ダメダメ。ナナさんの方が上手くなったら俺の立場ないでしょ」

と奏は言ったあと、今度は失敗しないでナナの唇にキスをして

「じゃ、行くね」

と言ってナナから離れた。

「…うん。またね」

と笑ってたナナがまた涙を流してはじめると

「泣いてるんだか笑ってるんだかわかんない顔して…」

と奏はナナの髪を撫でて

「東京着いたら連絡するから」

と言うと出発口に向かって歩きだした。

セキュリティゲートの前で奏がナナの方へ振り向き小さく手を振ると、少し離れたところに立ってるナナも涙でグシャグシャの顔で笑顔を作り奏に手を振った。

…奏は少し寂しそうな笑顔でもう一度ナナに手を振るとセキュリティゲートをくぐりナナの視界から消えた。

「…」

ナナは流れる涙をコートの袖でゴシゴシと拭うと歩きだし昇りのエスカレーターに乗った。

奏が乗る飛行機がどこから飛び立つかわかっているのでボーディング・ブリッジの窓からでもいいから奏の歩いてる姿を見たい…早くしないと奏が飛行機に乗ってしまうかもしれない…と思いナナはエスカレーターを掛け上がり展望スペースへと急いだ。

展望スペースには飛行機をナナと同じように見送る人々が集まっていた。

幼い男の子が立ってる横のスペースが少し空いていたのでナナは

「すみません」

と言ってそのスペースに立った。

「…」

男の子はナナの泣きはらした顔を見て驚いたのか

「ママ、抱っこ」

と隣に立つ母親に両手を広げて言うと

「はい。はい」

と母親は男の子を抱き上げ

「ほら、パパ来たよ」

とボーディング・ブリッジの窓を指さして言った。

「どこ?」

と男の子が言うと

「ほら、あそこ。パパ、手振ってるよ」

と母親は窓から手振ってる男性に向けて男の子の手を振った。

「あっ、本当だ。パパ!いってらっしゃい!」

と男の子が両手を広げて手を振ると男性は嬉しそうに笑い手を振り返していたが、その男性の後ろを奏がうつむきながら歩いていたのでナナは身を乗り出して窓を見た。

窓から姿が消え次の窓からまた姿が見える…。

ナナがじっとその姿を目で追ってると飛行機に繋がる最後の窓に差し掛かった時、奏が窓の外を見た。

「あっ…」

とナナが思わず声を出したのと同時に奏はナナの姿を見つけた様子で笑いながら手を振った。

「…」

また涙が出てきそうになるのを必死に堪えてナナも笑いながら手を振り返すと奏は歩きだし最後の窓から姿が見えなくなった。


飛行機が動き出し滑走路に向かい始めるとナナの心は奏と離れる寂しさと悲しみで締め付けられるような痛みを感じた。

もっと雪がたくさん降って飛行機が止まっちゃえばよかったのに…。

そしたら、もっと奏と一緒にいれたのに…。

離陸の順番待ちをしている奏の乗った飛行機を見ながらナナがそう思っていると、飛行機はゆっくりと動き出し滑走路に入ると、ナナの願いとは裏腹に一気にスピードを上げて動き始めるとあっという間に飛びだった。

「…」

身を乗り出して飛行機が見えなくなるまで見つめていたナナは人目も気にせずボロボロと涙を流して泣いていたが、隣で母親に抱かれてる男の子は

「パパ行っちゃったね。なにお土産買ってきてくれるかな?」

と無邪気に笑いながら母親と話をしていた。


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