クリスマスデート 5
ひときわ人が集まってるクリスマス市を見てると
「ねぇ、ホットワインだって。ナナさん飲む?」
と奏は聞いた。
「いいよ。一人で飲んでも楽しくないし」
とナナが言うと
「でも、少しは暖まるかもよ。ほら、シナモン入りとかあるし…。俺もホットミルク飲みたいし」
と奏は言って店の前に行くと
「ホットワインとホットミルク。…シナモン大丈夫?」
とナナに聞いた。
「うん。大丈夫」
とナナが言うと
「じゃ、ホットワインはシナモン入りで、ホットミルクは砂糖多めで」
と注文した。
歩きながらホットワインを飲んで
「はぁ…美味しい。暖まる」
とナナが言うと
「良かった。ナナさん寒そうだったもんね」
と奏は言ったあと
「ねぇ、これ可愛くない?」
とガラス細工の小さなオブジェを見て言った。
「そうだね。トナカイにサンタさんにスノーマン…。ツリーもある」
とナナが目を輝かせて見てると
「ナナさん、どれがいいか選んで」
と奏は言った。
「選ぶ?」
とナナが聞くと
「うん。部屋に飾ったら可愛いと思わない?よく見るとちょっとずつ顔が違ったりするから選んでよ」
と奏は言った。
ナナは奏が自分の部屋に飾るのか、それとも他の誰かにプレゼントするんだろうかと思いながらも
「そうだね…。これとこれとこれかな?」
と言った。
「ツリーは?」
と奏が聞くと
「ツリーは…これじゃない?」
とナナは言った。
奏がオブジェを買ってる間、ナナは隣の店に売っているアクセサリーを見ていたが、雪の結晶の形をしたネックレスに目を止めさわってみた。
「それ、いいね。男でもつけれそうじゃない?」
と奏が言うと
「そうだね。どっちでもつけれそうだし奏君似合いそうだね。買う?」
とナナは聞いた。
「…俺、似合うかな?」
と奏が言うと
「似合うよ。どれ、私が買ってあげよう」
と言ってナナは
「すみません、このネックレス下さい」
と言った。
「はい。こちらですね」
と店員が言うと
「すみません。2つ下さい」
と奏は言って財布を取り出してお金を渡した。
「私が買うって言ったのに…」
とナナが言うと
「これぐらいは俺でも買えるよ」
と奏は笑った。
店員にネックレスを渡されるとナナは
「2つも同じの買ってどうするの?」
と奏に聞いた。
「そりゃ着けるよ」
と言って袋からネックレスを取り出して
「ナナさん、ちょっと髪の毛あげて」
と言った。
「えっ、もしかして私の?いいよ、いいよ」
とナナが言うと
「なんで?似合うと思ったから買ったのに。ほら…」
と奏はナナの首にネックレスを着けて
「うん。やっぱり似合う。可愛い」
と微笑んだ。
「…」
ナナが恥ずかしさで顔を赤くしてると奏は自分もネックレスを着けて
「どう?似合う?変?」
とナナに聞いた。
「…悔しいぐらい似合うよ」
とナナが言うと
「マジ?」
と奏は嬉しそうに笑った。
クリスマス市を抜けてイルミネーションを眺めながら歩いていると
「もう、手離してもいいよ」
とナナは言った。
「なんで?」
と奏が聞くと
「だって充分過ぎるぐらいクリスマスデート楽しませてもらったし手まで握ってもらっちゃったら贅沢過ぎてバチが当たっちゃう」
とナナは笑った。
「バチが当たるの?…別に俺は無理して手繋いでる訳じゃなくて繋いでいたいって思うから握ってるだけなんだけど。俺、バチ当たるのかな」
と奏が言うと
「奏君ってさ、スゴい優しいけど優し過ぎるのはダメだよ」
とナナは笑った。
「優しい?俺が?」
と奏が聞くと
「優しいじゃない。私が喜びそうなこといっぱいしてくれて、こんなどうしようもないことに付き合ってくれて」
とナナは言った。
「どうしようもないこと?」
と奏が聞くと
「うん。付き合ってるふりとか…彼氏のふりとか」
たナナは言ったあと
「スゴいありがたいんだけど、優しすぎて本当に付き合ってるのかもって勘違いしそうになっちゃうよ」
と笑った。
「…俺たち付き合ってるんじゃないの?」
と奏が聞くと
「付き合ってるふりでしょ?お互い好きな人がいないから、好きな人が出来るまでの限定カップルでしょ?」
とナナは言った。
「…あ、そうだね。忘れてた」
と奏が困った顔をすると
「…もういいや。奏君は天然の女たらしだね。こんな子が大人になったらって考えたらお姉さん怖いよ」
とナナは笑って奏の手を離した。
「…さっきから気になってたけど、何でナナさんはそんな顔で笑うの?俺といるの嫌なの?あのジャガイモのところに行きたいの?」
と奏が聞くと
「ジャガイモ?そんなこと言ってないでしょ?…それに奏君といるのが嫌なんて言ってないよ。こんな嬉しいクリスマス初めてだもん。本当、奏君には感謝してるよ」
とナナは笑った。
「だったら何でそんな顔するの?俺はただナナさんと楽しみたいなって…。俺が楽しいのと同じようにナナさんにも楽しんでもらいたいなって思ってただけなのに。…俺、間違ってる?」
と奏が聞くと
「そうゆうこと言うのがダメなのよ。奏君、優しいし相手のことをスゴく考えてくれる人だけど、そうゆうこと言われると女の子は勘違いするの。もしかしたら私のこと好きなのかな?とか好きになってもいいのかな?って勘違いしそうになるよ」
とナナは言った。
「勘違いしそうになる?」
と奏が聞くと
「だから、それがダメなの。…じゃあさ、例えばだけど奏君は遊びで女の子と付き合いたくないって言ってたよね?キスもその先も好きな人としかしたくないって言ったじゃない。だけど、今私がキスして欲しいって言ったらしてくれるの?キスしてくれたら私が喜ぶって言ったらするの?」
とナナは言った。
「…」
奏が黙ってしまうと
「例えばの話だから真剣に考えないでいいよ。意地悪言ってごめんね」
とナナは言った。
「…じゃ、ナナさんは俺がキスしたいって言ったらしていいの?俺と出来るの?」
と奏が聞くと
「それは…」
とナナは言葉に困った顔をしたので
「ごめん。勘違いしてたのは俺の方なんだ」
と奏は頭をかいた。
「勘違い?」
とナナが聞くと
「本当に付き合ってるわけじゃないけど、勝手にナナさんは俺の彼女だって思い込んでたみたい。ごめんね。気を付けるよ」
と奏は少し寂しそうな顔をして笑った。
「どうゆうこと?彼女だって思い込んでたって…意味がわかんないんだけど」
とナナが言うと
「いいや。これは本当恥ずかしいから聞かないで。ただ俺が勘違いしてたってだけだから」
と奏は言ってスマホを見て
「もう、11時だしホテル戻ろうか?」
と歩き出したがナナは動かなかったので
「ナナさん、行こう」
と奏は言った。
「奏君…。私は奏君が何を考えてるかわかんないよ。また、そうやってからかってる楽しんでるの?」
とナナが聞くと
「そんなことないよ。ただ、勘違いして悪かったって思ってるだけだよ」
と奏は言った。
「勘違いって何を勘違いするの?全然わかんない」
とナナが言うと奏はため息をついて
「あーっ。もう!ナナさんが俺の彼女だって勘違いしただけってこと。勘違いして一人でデート楽しんで、男友だちの話聞いて面白くなくなって、俺の彼女になにやってるんだよってジャガイモにムカついて、ナナさんが喜ぶかな?って真面目にプレゼント選んだり…東京と札幌じゃなかなか会えないけど同じもの持ってたら少しは近くに感じれるかな?ってネックレス買っちゃったってこと。…ごめん、もう勘違いして変なことしないから安心して」
と奏は言った。
するとナナは奏の顔を真っ直ぐに見て
「そんなこと言われたら期待するよ?大丈夫?」
と聞いた。
「期待?」
と奏が聞くと
「奏君が私のこと好きなんだって思っちゃうよ。いいの?」
とナナは言った。
「…それは」
と奏が言うと
「ごめん。そうゆうことじゃないよね」
とナナは言った。
「今まで、好きになった子っていなかったからナナさんのことを好きなのかって聞かれたら正直好きってどうゆうことを言うのかイマイチわかんないから好きなのかって聞かれてもこたえられないよ。
けど、こんな風にいろいろ考えるのも楽しませたいとか喜ばしたいって思うのもナナさんが初めてだし…。さっき、店員さんも言ってたけどこれって好きってことなのかな?」
と奏が聞くと
「…そんなの私に聞かれてもわかんないよ」
とナナは言った。
「だよね…」
と奏が苦笑いすると
「もし…もしもだけど、私が奏君のことを好きだって言ったらどうする?」
とナナは聞いた。
「どうするって…。嬉しいよ」
と奏が言うと
「そうじゃなくて。他の女の子みたいにフラれて会ったり連絡とったり出来なくなる?」
とナナは聞いた。
「なんで?そんなことしないよ。だってナナさんは他の子とは違うでしょ?」
と奏が言うと
「じゃ、ふりとかじゃなくて本当の彼氏になってって言ったら?」
とナナは聞いた。
「いいよ。だいたい、俺は勘違いしてそのつもりだったし何も変わんないでしょ?」
と奏が言うと
「じゃ…キスして欲しいってバグして欲しいって言ったら?」
とナナは聞いた。
「それは…」
と言ったあと奏は恥ずかしそうに顔を赤らめて
「俺はキスもしたいしバグだってしたいよ。けど、そうゆうのって俺の気持ちだけ押し付けてもダメでしょ」
と言った。
「…」
ナナが黙ると
「大丈夫、ホテルに戻っても何もしないから。別々のベッドで寝るし…それでも信用出来ないならロビーに行くし…。だからさ、風邪ひいたら困るしもう帰ろう」
と奏は寂しそうに笑った。
 




