クリスマスデート 3
「あれ?ナナじゃん。久しぶり」
と大学生風の男が話しかけてくるとナナは
「お久しぶりです」
と頭を下げた。
「なに?知り合い?」
と大学生風の男の友だちが聞くと
「うん。同じ大学の後輩。ちなみに高校も後輩だよな」
と男は言った。
「へぇ。こんな可愛い後輩いたんだ?」
と男の友だちが言うと
「だろ?それがさ、本当可愛いんだよ。俺のこと追っかけて大学入ってきたんだよな?」
と男はナナに言ってから奏を見て
「まぁ、昔話だからさ。気にしないで」
と笑った。
「別に気にしないですけど…」
と奏が言ったのを聞いてない男は
「でもさ、ナナって本当メンクイだよな?こんなモデルみたいな彼氏見つけて。遊ばれないように気を付けろよ」
と笑った。
「…はい」
とナナが言うと男はナナの耳元に顔を近付けて
「俺フリーだしナナのこと狙ってたのにな。あんなイケメン絶対遊んでるって。今度はナナだけと付き合うからやり直そう」
と言った。
「…」
ナナが顔をこわばらせ固まってると
「あの、人の彼女にちょっかい出すのやめてくれませんか?」
と奏は言った。
すると男はナナから離れて
「ゴメンゴメン。久しぶりに可愛い後輩に会ったから嬉しくてさ。彼氏君、ナナのこと大事にしてやってね。コイツ、本当一途な女だから泣かせないでよ」
と言った。
「はい。大丈夫です。俺、浮気とか嫌いだし女泣かせる奴も大嫌いですから安心してください」
と奏が笑うと男は一瞬だけムッとした顔をしたあと笑い
「そっか。安心した。本当よろしくね」
と言ってナナの耳元で
「番号変わってないから、いつでもいいから連絡して」
と言ってから
「じゃ、俺たちそろそろ行くわ。ナナ、念願のクリスマスデート楽しんでこいよ」
と男は笑いながら友だちと一緒に歩いていった。
「…」
ナナが顔をこわばらせて黙ってるのを見て
「なに、あれ。ムカつくんだけど」
と奏が言うと
「ゴメンね。悪気ある訳じゃないんだよ。あの人、誰にでもあんな感じなの」
とナナは言った。
「誰にでもっておかしくない?彼氏いるのわかっててあんなことする?どれだけ自分に自信あるんだよ。だいたい顔のこと言われるの嫌だし遊んだためしないっての。ジャガイモのくせにマジムカつく」
と奏が言うと
「ジャガイモって…」
とナナは言った。
「だってジャガイモみたいじゃん。ってか、ジャガイモなんて言ったらジャガイモに失礼だわ」
と奏が言うとナナは
「確かにジャガイモに失礼だね」
と笑った。
「だろ?」
と奏は言ったあとため息をついて
「ナナさん、男見る目ないわ。あんなのどこが良かったの?」
と聞いた。
「…気づいてた?」
とナナがばつが悪そうな顔をすると
「そりゃ話聞いてたからわかるよ。けど、あれは無いわ。だいたい、ナゴミが好きでなんであれに行くわけ?アイツのどこにナゴミの要素があるの?女好きそうで危ない感じに惹かれたの?」
と奏は聞いた。
「それは…」
とナナが言うと奏は頭を振って
「俺にはよくわかんないな…。ってか、あんな軽いこと俺は出来ないしそうゆう男が好きって言われても俺は演じるのも嫌だし付き合えないよ」
と言った。
「…演じる?…そっか…。そうだよね。優しくしてくれるのも電話に付き合ってくれたのも全部付き合ってる雰囲気出すために無理してくれてたんだよね。それに今日だってわざわざ来てもらっちゃって本当にゴメンね」
とナナが言うと
「そんなことは言ってないでしょ?なんでそうなるの?」
と奏は聞いた。
「だってそれが本当のことでしょ?」
とナナが言うと奏はなんと言っていいかわからず黙ってしまった。
「いいや。せっかく憧れてたクリスマスデートしてもらってるのにケンカみたいになるの嫌だし。ねぇ、早くプレゼント選ばないとご飯予約してる時間になっちゃうよ」
とナナが言うと
「あのさ…。話終わってないよね?」
と奏は言った。
するとナナは
「奏君、もうやめよう。話なんてしたって何も変わらないんだから時間の無駄だよ。私には1分でも1秒でももったいないの。どっちかに好きな人が出来たら終わっちゃう関係なんだし…来年はぼっちクリスマスに逆戻りかもしれないから今年のクリスマスを目一杯楽しまなきゃなんないじゃない」
と笑った。
「…」
奏が黙ってると
「じゃあさ、予定変更して一緒にプレゼント選ぶんじゃなくて別々に選んでこない?」
とナナは言った。
「別々?」
と奏が聞くと
「うん。ここって上に上がるとお店いっぱいあるのよ。ここ上がるとパルコでしょ?あっちだと4プラ。その隣はピヴォだし…買い物しやすいと思うよ」
と言ってナナはスマホを見て
「じゃあ、1時間後の7時40分にここで集合。1分でも遅れるとご飯に間に合わなくなるからね」
と言った。
「えっ、ちょっと待ってよ。俺、あんまり道とか得意じゃないんだよ。戻ってこれる自信ないんだけど」
と奏が言うと
「大丈夫。12番出口って覚えておけば帰ってこれるから」
とナナは笑って
「じゃ、時間もったいないから行くね」
と12番出口に歩いていった。
「あっ…」
と奏は呟いたがナナはすでにいなくなっていたのでナナのあとを追うように12番出口からパルコに入ってキョロキョロとまわりをみたがナナの姿が見えないのでフロアマップを手に取り
「どこ行けばいいんだよ…」
と呟いた。
その頃ナナは泣きそうになってるのをグッと堪えて街中を歩いていた。
すれ違う仲良く肩を寄せ合うカップルを見て余計に泣きそうになったが目頭を両手でこすり友だちのバイトしてるシルバーアクセサリーの店へ向かった。
前から何度か下見をしにきて、これが一番奏に合うとめぼしをつけてたピアスがあり、それを取り置きしてもらっていた。
ナナの予定では二人で見にきたところに店員(バイトしてる友だち)がそのピアスを入荷したばかりなんですよと見せてくれて…と計画していたのだが無駄になってしまった。
「こんばんは…」
とナナが店に入ると
「いらっしゃいませ。…って、田口じゃん。あれ、彼氏と来るんじゃなかったの?」
とバイトしてる男友だちは聞いた。
「ちょっと予定変わっちゃって。別々に買ってプレゼント交換しようってことになったの」
とナナが笑うと
「そうなの?まあ、いいや。取り置きしてたの持ってくるよ」
と男友だちはバックヤードに行った。
ナナがディスプレイされてるアクセサリーを見ていると
「お待たせしました」
と男友だちは小箱に入ったピアスを持ってきて蓋を開けて
「これで間違いないよな?」
と聞いた。
「うん、これこれ。ありがとう」
とナナが言うと
「上手くいって良かったじゃん。ユイナも心配してたんだぞ」
と男友だちは言ったあと
「ああ、俺もユイナとデートしたかったなぁ」
と笑った。
一方の奏はパルコを出て他のデパートも見たが気になる商品がなく少し離れたデパートの方まで足を伸ばしたてみたが少し高級感の漂うジュエリーショップに男一人でいるのが珍しいのかジロジロと店員に見られて居心地の悪さを感じていた。
「プレゼントお探しですか?」
と店員が話かけてくると
「あっ、はい。彼女になんですけど。ピアスが欲しいって言われて…」
と奏は恥ずかしそうに言った
「ピアスならこちらのタイプとかどうですか?」
と店員がダイヤのついたピアスを出すと
「もう少し違うのを…」
と奏は言った。
「そうですか?…ちなみに彼女はどんな感じの方ですか?好みとかありますかね?」
と店員が聞くと
「好みはわからないけど…。大学生で、でも少し子供っぽいところもあって夢みがちというかロマンチストな感じで。それからちょっとしたことですぐに顔を真っ赤にして恥ずかしがったり突然怒ったり、くだらないことで笑ったり…。なんだろ?どんな子なのかな?」
と奏は呟いた。
「…どんな子なのかはわからないけど、お客様はその方のことを良く見ていて、とても大好きなんだって言うのは伝わりますよ」
と店員が言うと
「…大好き?」
と奏は驚いた顔をして聞いた。
「はい。わかりますよ。彼女のお話するときのお顔もとても優しく見えますしね」
と店員が微笑むと
「…そうなんだ」
と奏は呟きながらショーケースを眺めていたが1つのピアスを指を差し
「これ。これ下さい」
と言った。
「こちらの商品ですか?」
と店員が聞くと
「はい。これが彼女に一番合うと思います」
と奏は微笑んだ。




