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お隣のふにゃふにゃ王子様  作者: まあちゃん
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撮られた写真

「そういえば、お前らは彼女と上手くやってるの?」

とカンジが渉たちに聞くと、渉たちは顔を見合わせて

「俺たちは…残念ながら彼女いないんで…」

と渉は言った。

「え?マジ?何で?篠田さんが反対してるの?」

とカンジが篠田を見ると

「俺は反対なんてしてないよ」

と篠田は手を横にふった。

「本当?じゃ何で?今、モテモテじゃん」

とカンジが言うと

「仕事と大学でいっぱいいっぱいで…彼女見つけるどころか、好きな子を作るのも…」

と渉は言った。

「まぁ、仕事忙しいもんな。でもさ、寂しくない。若いんだし遊びたいだろ?」

とタケが言うと

「そうゆうのも…何か…。今の生活でいっぱいですから」

と渉は言った。

「ふーん…。でもさ、メンバーの中に女いるのってどうなの?いくら和の彼女だとはいえ、綾子は可愛いしちょっと恋心持ったりしないの?」

とタケは聞いた。

「まぁ、綾子は高校の頃からスゴいモテてましたけど、俺は仲間だと思ってるし…綾子の作る音楽には惚れるけど女ってなると…意識したこと無いですね」

と隼人は言った。

「俺は…ここだけの話、高校の時は好きでした。でも、和さんと綾子と3人で会った事があって…。その時はまだ和さんがボレロのナゴミさんだとは知らなかったしまだ二人は付き合って無かったんですけど、絶対に和さんには勝てないなって思って隼人の胸で泣いて諦めました。それからは、恋愛とは違う仲間としてメンバーみんなで絆みたいのを作ってやってきたし、今さら意識したら高校生の頃とは違ってメンバーとしてやっていけない気がします」

と渉は言った。

「じゃ、誠は?」

とカンジが聞くと

「俺は…高校生の頃から綾子に惚れてますよ」

と誠は言った。

「え?」

とその場にいた人全てが驚いたが、誠は平然として

「でも、俺が綾子を好きだなって思った時には、何となく綾子にも好きな奴いるんだなって気付いてたし…。綾子自身にも惚れたけど、それ以上に綾子のギターや作る曲に惚れてたから恋愛よりもいつか一緒に演奏したいって気持ちの方が大きかったです。今も綾子の事は好きですけど、それ以上に一緒に仲間としてやっていく事の方が俺には大切だし、初めから和さんの存在を含めた綾子に惚れたから二人の事は邪魔するつもりもないし、二人にはいつまでも幸せでいて欲しいって思いますよ」

と誠は笑ったが、他の人々は少しだけ複雑な顔をしていた。


日付が変わり深夜の2時を過ぎた頃、綾子と和は由岐に起こされ店を出る準備を始めた。

「店、変えるけどお前たち来る?」

と由岐に聞かれた和は

「俺はパス。綾子は?」

と聞いた。

「私も帰ろうかな?」

と綾子が言った。

店を出たボレロとSperanzaのメンバーはこのまま帰る和と綾子に手を振って、次の店に向かって歩いて行った。

綾子は手を振りながら

「じゃ、帰ろうか?」

と和に言うと、和は綾子の事を抱き締めた。

「なっちゃん?ちょっとダメだって。こんな街中で…誰かに見られたらどうするの?」

と綾子が恥ずかしそうに言うと

「無理、ギュッてしたいの格好つけてずっと我慢してたんだもん。壊れるぐらいギュッてしたい」

と和は強く綾子を抱き締めたので、綾子も和を抱き締めた。

その後、二人はキスをして顔を見合わせて笑うと、もう一度キスをした。

「実はさ、武道館のお祝いにホテル予約したんだ。料理もお祝いのシャンパンも用意してるし二人で二次会しよ」

と和が言うと綾子は嬉しそうに頷いたので、和は綾子のおでこにキスをして手を繋ぎ歩き出した。


武道館後、Speranzaはホールツアーが終わったばかりだが、今度始まるアリーナツアーのリハーサルに入った。

無事4人とも大学4年に進級出来て、卒業に向けて忙しくなる前にアリーナツアーを終えて、その後は大学の様子を見ながらじっくりとアルバム製作に入る予定になっていた。

一方、ボレロは半年間の個人活動を終えて、アルバム製作やアジアツアーが決まっていたので連日ミーティングをしていた。

半年間の個人活動の間、ナゴミはソロデビューをして、タケは清雅のツアーに参加、カンジは作曲家として活動し、そして由岐は映画のオファーが来ていたので撮影と、メンバーはほとんど一緒にいることが無い生活を送っていた。

けど、この個人活動で個々の世界が広がり、それぞれがそれぞれに吸収してきたものを持ち帰ってきたので、今までよりもアイデアも出るし、より良い物を作ろうと言う前向きな気持ちも以前よりも大きくなっていた。


「村上さん。大変です!」

と和の個人マネージャーの吉川が会議中のミーティングルームに慌てて入ってきたのは、Speranzaの武道館ライブからちょうど3週間後だった。

「なんだ、今大事な話をしてるんだぞ。もう少し静かにしろ」

と村上が言うと

「すみません…。でも、これ」

と言って一冊の週刊誌を差し出した。

「ん?何?…」

と記事を見た村上は顔色をかえた。

「え?何?」

とタケが週刊誌を覗くと

「『ナゴミ、噂の彼女との深夜の熱いキスを激写』…」

と題名を呼んだ。

「え?どれ?」

とメンバーが記事を見ると、その週刊誌にはSperanzaの武道館ライブの後に行った店を出てくるSperanzaとボレロのメンバーの写真、和と綾子が抱き合ってる写真、二人がキスしてる写真、二人が手を繋ぎ歩いてる写真、そして一際大きく和が綾子のおでこにキスしてる写真が載っていた。

「うわー、ついに撮られたね。和も場所考えろよ」

とタケが言うと

「だって今まで撮られたこと無かったし、綾子が可愛かったからつい…」」

と和は恥ずかしそうに言った。

「で、どうするの?」

とカンジが村上に聞くと

「社長や篠田と話はするけど、まぁ隠す必要なないから交際認めると思うよ。けど、由岐と綾子の事は…」

と村上は言った。

「え?俺?」

と由岐が驚くと

「由岐と綾子が兄妹ってバレたよ…」

と村上は言った。

「何で?別にいいじゃん」

とタケが言うと

「いや、綾子が事務所に入る契約に由岐と兄妹という事は公表しないって事が入ってて…。両親も由岐も綾子もそれが条件で契約結んだから…」

と村上は言った。

「何で?別にいいじゃん、兄妹でも」

とカンジが言うと

「あのとき綾子は外の事務所からもスカウトされてたけど、ほとんどがユキの妹って声をかけて来たんだよ。それを商売に使おうとしてるのを感じて、綾子は自分じゃなくてユキの妹なら誰でも良いんじゃないかって思ってて。だから、ユキの妹と言うことは公表しないで自分の力でやってみろって言ったうちの社長を信じて契約したんだよ」

と和は言った。

「でも、今さらバレてもSperanzaはユキの名前に左右されるようなバンドじゃないだろ?」

とタケが言うと

「そうだったらいいけど…。七光りかって偏見の目で見る人も出てこないとは言えないな…。由岐だってそんな言葉が聞こえてきたらツラいだろ?」

と村上が話をしていたところに結城がやってきて

「すまんけど、今日のミーティングは終わり。スタッフはそれぞれ解散。ボレロのメンバーはこのまま待機して待ってるように」

と言った。


数分後、最初に来たのは社長だった。

「お疲れ様です」

とボレロのメンバーが申し訳なさそうに頭を下げると

「別に、そんな顔すんなよ。何も悪いことしてる訳じゃないし」

と社長は笑った。

その後、慌ててSperanzaのメンバーがやって来て

「すみません。遅くなりました」

と頭を下げると、暗い顔をしている綾子を見て

「まぁ、いつかは公表しなきゃいけない事だったし気にするな」

と社長は言うと

「まず、ナゴミと綾子の事だけど…。事務所とナゴミと綾子それぞれ交際を認める書面を出そうかとゾロとも話はしたんだけど、それでいいかな?」

と言った。

ミーティングルームにいる全てが頷いているなか、吉川だけは顔をくもらせていたのに社長は気付いた。

「吉川、何か意見あるか?」

と社長が聞くと

「いや…」

と言葉を濁したので

「いいから、言ってみろ」

と社長は少し強い口調で言った。

「…はい。僕はボレロもSperanzaもまだまだこれからが勝負だと思いますし、交際を認めるよりは、あれは酔いの席の出来事で友人だと言った方がいいと思います」

と言ったのを見て和は吉川を一瞬睨んだ。

「そうか…。でも、和も綾子も名前は出してないにしろ、交際相手がいることはずっと認めてるし友人同士で酔いの悪ふざけなんて事を言ったらそれこそマイナスイメージになるんじゃないか?」

と結城は言った。

「それは…」

と吉川が返答に困ってると

「吉川、お前がボレロやナゴミ…Speranzaを大事に想ってるのは分かるけど、このままだと和はお前に不信感持つぞ。ミュージシャンとミュージシャンを支えるスタッフは信頼関係が出来てないと全てがダメになる。和は普段は穏やかだから気付かないかも知れないけど、嫌いな奴は徹底的嫌って近付けない。和がお前を信頼出来ないと言ったら終わりだぞ」

と村上は言った。

「…」

吉川が俯いて何かを考えている様子なのを見て

「まぁ、その話はまた機会を設けるとして。もうひとつの問題なんだが…由岐、綾子。お前たちには本当にすまない事をした」

と結城が頭を下げた。

「そんな…頭を上げて下さい!元々ワガママを言ったのは私ですし…」

と綾子が言うと

「俺も綾子も両親も、いつまでも隠せる話じゃないのは分かってましたし、逆に今まで表に出なかったのが幸運だったと思います」

と由岐も言った。

「そうか…。そう言ってもらえると助かるよ。…じゃ、由岐と綾子の事も認めてもいいのか?」

と社長が言うと、由岐と綾子は頷いた。

社長はボレロとSperanzaのメンバーを見て

「お前たちも、和と綾子、由岐と綾子、この二つを公表して大丈夫か?」

と聞いた。

「はい。今回はたまたま和と綾子だったけど、俺たちだっていつどこで撮られるか分からない生活してますし。別に交際や兄妹だと知られたからって音楽で勝負してる俺たちには関係ありませんから」

とタケが言うと

「俺たちも同じです。それでファンが居なくなるなら、元々俺たちは音楽じゃダメだったと言うことですし…」

と隼人も言った。

「そうか。ありがとう」

と社長が言うと

「じゃ、和と綾子と由岐は村上と篠田と相談してマスコミに送る文書を作って。俺もこれから社長と事務所のコメント作って今日中には全部FAX流すから」

と結城は言った。

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