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お隣のふにゃふにゃ王子様  作者: まあちゃん
213/356

日曜日の午後 2

和が店に陳列されているロング丈のパーカーを手に取り

「どう?」

と聞くと

「いいと思うけど、これメンズでしょ?母さんには大きくない?」

と奏は言った。

「でも、デザインがいいじゃん。」

と和が言うと

「そうかな」

と奏は言った。

「そうだって。それに綾子は結構メンズ着てること多いし良いんだって。…このパーカーとさっき見たTシャツを合わせたら良いと思わない?」

と和が聞くと

「確かに…母さんに似合いそうだね」

と奏は言った。

「だろ?色は黒とグレーどっちかな」

といいながら和がパーカーを両手に持ち鼻唄を歌うと

「鼻唄歌うほど楽しい?」

と奏は笑った。

「鼻唄?歌ってた?」

と和が聞くと

「えっ、無意識だったの?」

と奏は聞き返した。

「全然気にしてなかった…」

と和が言うと

「そうなんだ…。あのさ、そうやって歌ってる鼻唄が曲になることってあるの?」

と奏は聞いた。

「そりゃ、あるよ。全部が全部鼻唄で作ってる訳じゃないけどね。鼻唄で歌ったワンフレーズを元に曲が出来る時もあるよ」

と和が言うと

「へぇ…。じゃ、今のもそのうち曲になるのかな?」

と奏は聞いた。

「それはないかな」

と和が笑うと

「えっ、何で?」

と聞いた。

「もう忘れちゃったから曲に出来ないよ」

と和が笑うと

「忘れちゃったの?もう?」

と奏は驚いた顔をした。

「うん。まぁ、すぐに忘れるような鼻唄なんてたいした物じゃないし元々曲になんてならないんだよ」

と和が言うと

「そっか…。そうかもね」

と奏は納得した顔をした。

「逆に奏はどうやって曲作るの?」

と和が聞くと

「こうゆうの作りたいなっていうのを適当に弾いてみて、気に入ったフレーズがあるとそこから広げていくっていうか…」

と奏が話してるのを和はニコニコしながら聞いていた。

「ごめん…なんかド素人が生意気だよね」

と奏が恥ずかしそうにすると

「いや、そんなことないし逆に楽しいよ」

と和は言った。

「楽しい?」

と奏が聞くと

「楽しいし嬉しいよ。奏と曲作りの話が出来る日がくるなんて思ってなかったからね。共通の話題で話せるのはスゴい嬉しいよ」

と和は言った。

「そう?」

と奏が恥ずかしそうに言うと

「そうだよ。実は相川さんのこと羨ましいなって気持ちもあったしね」

と和は笑った。

「相川さん?」

と奏が聞くと

「うん。奏が相川さんの家に通いつめて曲作りしてるのは羨ましかったよ。うちにもスタジオはあるんだし、俺だって奏の曲を見てやれるのにってちょっと嫉妬したりもしたよ」

と和はグレーのパーカーを戻しながら言った。

「…」

奏がなんと言っていいのか困ってると

「でもさ、綾子にも言われたけど奏の曲を見てやるなんてこと出来ないのはわかってるんだ」

と和は苦笑いしながら

「親子だと必要以上に期待をかけてしまって厳しくしてしまうかもしれないし、逆に甘くなって本当はダメなところも目をつぶってしまう可能性あるからね。それってどっちに転がっても奏のためにならないような気がするんだ」

と言った。

「…俺も父さんや母さんには。やっぱり家族だから甘えが出るし…家族だから素直に意見を聞けないってこともあるかもって思う。…それに、まだまだ父さんや母さんに聴かせれるような曲は作れないし。……でも」

と言うと奏はニットのカーディガンを手に取り

「いつか、俺が作った曲に父さんが歌詞つけて歌ってもらえたらなって…」

と顔を赤くして言った。

「奏…」

と和が驚いた顔をすると

「夢って言うか…。ほら、母さんが作った曲に父さん歌詞つけて歌ってるじゃん。だから、いつか俺もってちょっと夢見てるって言うか…。でも、だからって音楽やるって決めた訳じゃなくてやっぱり安定してる司法の方が俺には合ってるかなって最近また思ってるし。だから、夢って言うか…そうゆう曲を作れるようになりたいなってだけで」

と奏は顔を赤くしながら早口で話した。

すると和は嬉しそうに微笑みながら

「そっか…。じゃ、奏が俺に歌って欲しいと思えるような曲が出来たら歌詞つけて歌ってやるからな。それまで他の誰にも曲の提供するなよ」

と言った。

「提供?俺、プロになるって決めたじゃないんだし。それに俺の作る曲なんて誰も歌いたいと思わないもん」

と奏が笑うと

「じゃ大丈夫だな。綾子の時は渉は仕方ないにしても、Speranza以外に提供するのは俺が一番初めと思ってたのに清雅さんが最初でそのあと俊太郎にユッコさんにってどんどん先を越されてったからな」

と和は笑った。

「やっぱり一番最初に歌いたかったの?」

と奏が聞くと

「そりゃね。綾子が初めて提供した曲って愛の形なんだけど、あれって俺への愛を込めて作った曲なんだよ」

と和は言った。

「俺への愛って…言ってて恥ずかしくない?」

と奏が聞くと

「そうやって言われると恥ずかしいけど…。けどさ、angle's featherは渉で愛の形は清雅さんって、自分のことを書いた曲がどんどん他の人に歌われるって言うのは悔しかったよ。それを表に出しはしなかったけどね」

と和は言った。

「どうして?いつもの父さんなら俺が歌いたいとか何で他の人が歌うんだって言いそうなのに」

と奏が言うと

「言えるわけないよ。仕事は仕事って割り切らなきゃなんないし、そんなこと言ったら綾子も困るだろうしね。…まぁ、今は綾子の作った曲を歌えてるし20年待ったかいがあったよ。それに、奏が一番最初に曲を提供するのは俺って予約も取れたし。歌詞も俺が作っていいなんて共同制作みたいで楽しみだな。それまでは一線で活躍出来るように頑張んないとな」

と和は嬉しそうな顔をした。

「で…でも、音楽するって決めた訳じゃないからね。大学は一応法学志望だし弁護士は昔からの夢だから…」

と奏が言うと

「わかってるよ。別にミュージシャンになれなんて言わないよ。真面目な話になっちゃうけど、奏の人生なんだから奏がやりたいことをやればいいんだよ。親が決めるもんじゃないし、俺も綾子もまわりに反対されながらも自分で決めてこの仕事してるのに、奏の将来を決めれる立場じゃないだろ?」

と言って奏の頭をポンと叩いたあと

「じゃ、これとさっきのTシャツ会計してくるからここら辺で待ってて」

と言った。


時刻が17時をまわり、和が運転する車の助手席に奏が座ってるとlineの着信音が鳴ったのでスマホを開いた。

「line?」

と和は聞くと奏は

「うん。母さんからと…さっちゃんからも来てた」

と言った。

「綾子と悟志?綾子、何だって?」

と和が聞くと

「夕食何がいい?だって」

と奏は言った。

「なんで俺に聞かないで奏に聞くかな…」

と和が言うと

「別にいいじゃん。父さん運転してるかもって思って俺に寄越したのかもしれないし…。で、何がいい?」

と奏は聞き返した。

「…秋刀魚さんま?」

と和が言うと

「秋刀魚ね」

と言って奏はlineを打ったあと、さっちゃんからのlineを開いた。

『ナナちゃんたち、今日の18時過ぎの便で帰るんだって。見送り行く?』

というメッセージを見て奏が

『ごめん。今、気付いた。買い物して今から家に帰るから無理』

とlineを返すと

『そっか。lineだけでもしておいたら?』

と返信がきた。

『何書くの?書くことない』

と奏が送ると

『またねとか。元気でとか。好きですとか』

と返信がきた。

「バカじゃない?」

と奏は呆れた顔で笑うと

「楽しそうだな」

と和は言った。

「あー、さっちゃんがバカなこと言ってるからさ。本当くだらない」

と奏が笑ってると

『ナナちゃん、奏の事が好きらしいし付き合っちゃえば?』

とlineが来た。

「はぁ?」

と奏が言ったあと

『東京と札幌で?それに俺は別にナナさん好きじゃないし』

と返していると車を運転している和は笑いながら

「コロコロ表情が変わって飽きないな」

と言った。

「えっ?何が?」

と奏が聞くと

「奏だよ。怒ったり笑ったり驚いたり…昔の綾子みたい」

と和は笑った。

「…母さん?」

と奏が聞くと

「そうだよ。ちょっとからかうとコロコロと表情が変わって面白かったな」

と和は笑った。

「確かに、からかうとコロコロと表情が変わる人って面白いよね?」

と奏がナナのことを思い出しながら笑うと和はチラッと奏を見て

「ふーん…。そっかそっか」

と笑った。

「な…何がそっかなの?」

と奏が聞くと

「いやぁ…。そっかぁ。綾子、寂しがるかもな」

と言った。

「だから、何が?」

と奏がムッとして聞くと

「奏も高校生だもんな。そろそろ彼女の1人ぐらいいてもおかしくないよな」

と和は言った。

「彼女?俺に?いないよ、そんなの」

と奏が言うと

「はいはい。そうですか」

と和は笑った。

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