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お隣のふにゃふにゃ王子様  作者: まあちゃん
210/356

飯田と綾子と…和

「俺にもチャンスってありました?」

と飯田が聞くと綾子はすぐに

「無いと思うよ」

と答えた。

迷うことなくすぐにこたえた綾子に

「返事はやっ。少し迷うとか…無いんですか?」

と飯田が苦笑いすると

「だって無いものはないからね」

と綾子は言った。

「それは、ナゴミさんがいなかったらって言うのが考えられないってことですか?」

と飯田が聞くと

「そうゆう訳じゃないけど…」

と綾子は笑った。

「俺、自分で言うのもなんだけどモデル出身だし結構自分に自信あったんだけどな…。ナゴミさんがいなくてもチャンス無いなんてショックだわ…」

と飯田が思わずタメ口になって笑うと

「ショック受けるようなこと言わないと諦めつかないでしょ。私も心を鬼にして言ってるんだよ」

と綾子は笑ったあと真面目な顔をして

「でもね、実際に飯田さんと私って言うのは無かったと思うよ」

と綾子は言ったあと話を始めた。

「私が今こうやっているのは、なっちゃんがいたからなのよ。私、相川さんに連れられて行ったボレロの武道館ライブでナゴミが見たステージからの景色を見てみたいってスゴい思ったの」

と綾子が言うと

「見えた景色?」

と飯田は言った。

「うん。ほら、俳優さんでも舞台のカーテンコールで感極まって思わず涙が出てくるときってあるでしょ?あれと同じ。当時の私はナゴミが感極まって泣いてしまったあのステージに立ってみたいって思ったのよ。…けど、お兄ちゃんは反対したし家族にも心配かけたくないしプロになるのは一度諦めたのよ。プロになるのを断ったことに後悔はしてなかったの。だけど、渉たちもいつか武道館のステージからナゴミが泣いた景色見るんだろうな…とか、自分も見てみたいな…プロの世界で挑戦してみたいな…って気持ちが少しずつ大きくなって…ギター弾くのも見るのも嫌になってたの。でも、今さらやっぱりプロになりたいなんて言えないじゃない?だから、諦めようとしてたときに、なっちゃんが背中を押してくれたの」

と綾子が言うと

「背中?」

と飯田は聞いた。

「うん。大学卒業したら結婚しようって。結婚したら家庭に入って欲しいけど、大学行ってる4年間はやりたいことを我慢しないでやって欲しいって言われたの。なっちゃんやお兄ちゃんや両親に遠慮して本当にやりたいことを我慢しないで欲しいって…。私が本気で頑張りたいって言うならお兄ちゃんも両親も反対しないだろうし、なっちゃんが私を支えてくれるからやってみろって…」

と綾子が笑いながら話してる横顔が、今まで見た中で一番キレイな綾子の顔だと飯田が思ってると

「それで、相川さんや事務所の人と会う機会をなっちゃんが作ってくれてプロになったの。なっちゃんって、ふにゃふにゃしてて頼りなさそうに見えるでしょ?けどね、本当に私のことを支えてくれて…結婚しても家庭に入らなかった約束破った私を今もずっと支えてくれて…。なっちゃんがいなかったら私はプロになってなかったと思うし、なっていてもこんなに長くは続けてこれなかったと思う」

と綾子は言ったあと

「あっ、それ以前に音楽もやってなかったと思うよ。私がギター始めたきっかけはなっちゃんみたいに格好良くギター弾いてみたいからで、曲を作り出したきっかけもなっちゃんみたいに曲を作ってみたいなって思ったから。曲を作り始めてからは、いつかなっちゃんに歌ってもらえるような曲を作れるようになりたいって曲作り頑張ってたからね」

と綾子は笑った。

「ミュージシャン綾子の全てがナゴミさんから始まってるんだ…」

と飯田が笑うと

「そうだね。全部、なっちゃんだね」

と綾子は言ったあと

「もしなっちゃんがいなかったら私はプロになってないどころかギターもやってなかったし、きっと飯田さんと知り合うことは無かったと思うんだ。だから、なっちゃんがいなくても飯田さんにはチャンスないのよ」

と綾子は笑った。

「ですね」

と飯田が笑うと

「でしょ?」

と綾子も笑った。

「あっ、もう5分過ぎちゃったな…。またナゴミさんに嫌な顔される」

と飯田が言うと

「なっちゃん?あー、そんなの軽く流しておけば良いのよ。誠なんていっつも目の敵にされてるけど流してるでしょ?」

と綾子は笑った。

「…誠さんのことは…聞いても大丈夫ですか?」

と飯田が聞くと

「誠?」

と綾子は聞き返した。

「俺の勘って言うか…誠さんも言ってたけど、誠さんて綾子さんのこと」

と飯田が言うと

「それね。うん、知ってるよ。誠には本当に申し訳ないと思ってるよ。きっとなっちゃんも思ってると思うし…。けど、それを態度に出すのって誠に失礼じゃない?私となっちゃんが誠に気を使って、誠の前でよそよそよしくしてたら…飯田さんが誠の立場ならどう?」

と綾子は聞いた。

「惨めに感じるかも…。でも、目の前でイチャイチャされるのもキツいし…」

と飯田が言うと

「そっか…そうだよね」

と綾子は何か考えてる顔をして

「私、誠のことは考えないようにしてるんだけど間違ってるのかな?…でも、考えて気を使ってたら仕事なんて出来ないだろうし…」

と呟いた。

「…難しいですね」

と飯田言ってると和が走ってきて

「おい、もう5分過ぎてるんだけど。長くない?」

と言った。

「あ、ごめんなさい。もう話は終わったんで…」

と飯田が言うと、和は綾子が何か悩んでる顔をしてるので

「綾子どうした?何か言われた?」

と心配そうに聞いて飯田をジロッと見た。

「えっ…」

と飯田が困ってると

「あのさ、なっちゃん…。うちらって誠に悪いことしてるのかな?」

と綾子は聞いた。

「悪いこと?…何が?」

と和が何を余計なことを言ったんだと言わんばかりの顔で飯田を見ると

「もう少し誠に気を使った方が良いのかな?…これからは、人前で仲良くするのはやめようか」

と綾子は言った。

「はあ?何、突然?そんなことしたら不仲とか思われて男が寄ってくるだろ?そんなのダメだよ」

と和が言ってるのを見て、飯田は呆気に取られて口を開けて和を見てしまった。

「…何?」

と和がムッとした顔で飯田に言うと

「…いえ。…なんか…スゴいですね」

と飯田は目を丸くして言った。

「何が?はっきり言わんとわからんだろ?」

と和が言うと

「なっちゃん、やめな…」

と綾子は言った。

「な…何がやめなだよ。って言うかさ、何話してたの?」

と和が言うと

「別になっちゃんには関係ないから」

と綾子は言った。

「関係ないことないだろ?だいたい、人の嫁さんと二人で何話すんだよ…。綾子も綾子で相手が勘違いするから優しくするのやめろって何回もいってるのに。綾子はさ、自分がモテるって自覚が足りないんだよ。こんなに可愛い子に優しくされたら次々と男が寄って来るだろ?本当に…」

と和がブツブツ言ってるのを見て飯田が思わず笑ってしまったので

「何、笑ってんだよ」

と和は言った。

「すみません…。でも、本当にスゴくて…。何でそんなに必死なんですか…。すみません…。あのナゴミさんが一人の女にこんなに必死になるなんて…、ギャップ有りすぎて…笑い過ぎて腹痛くなる」

と飯田が笑ってると

「おまえ、失礼な奴だよな。まるで誠みたいでムカつくわ」

と和は飯田の頭を叩いた。

「ちょっと…失礼じゃないですか?俺、これでも売れっ子俳優ですよ。叩いたりしたらダメでしょ」

と飯田が笑いながら言うと

「だから、見えないところ叩いただろ?だいたい、叩かれて笑ってるとか気持ち悪いわ」

と和が言ってると誠がやって来て

「何か、俺の名前聞こえたから来てみたんですけど…何か楽しそうですね」

と言った。

「楽しくないよ。こいつ、俺のこと笑いやがって…。こんな失礼なやつおまえ以外にもいるなんて驚いたよ」

と和が言うと

「なになに?何で笑ってるの?」

と誠は綾子に聞いた。

「ん?なっちゃんのギャップがツボに入ったみたいだよ。スゴいよね。俳優さんて涙流しながら笑ってても絵になるって言うか…。やっぱり生まれつき持ってるもの違うよね」

と綾子が笑うと

「何言ってるの?俺だって飯田になんて負けてないよ。涙流しながら笑っても絵になるって。泣いてみる?」

と和は言った。

「和さん、そんなぐらないことで張り合わないで下さいよ。本当、子どもっぽくて見てる方が恥ずかしくなりますから」

と誠が言うと

「だって綾子が…」

と和は言った。

「はいはい、心配しなくても大丈夫ですよ。綾子は和さんが一番なんだから安心して下さい」

と誠が呆れたように言うと

「だけどさ…。お前だって嫌じゃない?綾子が、年下の俳優と何かあったりしたら」

と和は言った。

「大丈夫、無いですから。だいたい、飯田さんになびくぐらいなら綾子は先に俺のとこに来てますって」

と誠が言うと

「なっ…!何、その自信ありますって顔」

と和は言った。

「だってそうでしょ。だいたい最近仕事も一緒になっていい気なってるみたいだけど、綾子愚痴ってましたからね。和さんは仕事になると鬼で怖いから俺のとこに戻ってくるとホッとするって」

と誠が言うと

「誠!それ内緒にしておいてって言ってたでしょ。それに誠のとこじゃなくてSperanzaって言ったじゃない。誤解されるようなこと言わないでよ」

と綾子は誠の腕を叩いて言った。

「おい、腕叩くなよ。明後日からまたスタジオ入るのにベース持てなくなったらどうすんだよ」

と誠が言うと

「それぐらいで持てなくなるわけないでしょ?どんだけか弱いのよ」

と綾子は笑った。

「そうだよ。持てなくなったら俺が代わりに弾いてやるから綾子を責めるなよ」

と和が言うと

「持てなくなるわけないでしょ?冗談ですよ。だいたい、これから綾子はfateじゃなくてSperanzaメインなんですからね。仕事の邪魔になるようなことしないで下さいよ」

と誠は言った。

「邪魔なんてしないよ。綾子がSperanzaに入るから俺なんて我慢して一人で海外行くんだよ。偉いと思わない?」

と和が言うと

「海外?どこ行くんですか?」

と誠は聞いた。

「香港と台湾にプロモーションだよ。本当は二人で行く予定だったけどSperanzaで綾子はお疲れだろうからって俺だけになったんだよ」

と和が言うと

「ごめんね…。行こうと思えば行けると思うんだけどね」

と綾子は言った。

「良いんだよ。大人なんだから一人で行けるって」

と誠が言うと

「何でお前が言うの?それ、俺のセリフだろ?」

と和は言った。

「まぁ、細かいことは良いじゃないですか」

と誠は言ったあとあくびをして

「もういい加減帰りません?もうすぐ日が昇ってきちゃいますよ」

と言った。

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