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お隣のふにゃふにゃ王子様  作者: まあちゃん
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打ち上げの席で 2

「まぁ、仕方ないですよ。何を取っても和さんには敵いませんから」

と誠は笑ったあと

「俺、fateがアルバム作ってるとき毎日のようにスタジオ通ってたんですよ」

と言った。

「スタジオ?」

と俊太郎が聞き返すと

「はい。どうせ暇だろうからプリン持って来いって言われて」

と誠は笑った。

「プリンて健太のところ?あれって予約出来ないだろ?差し入れに使うのって難しくない」

と俊太

「そうなんですけど、綾子がプリン食べないと仕事しないって言ってるからって無理やりわけてもらって…」

と誠は笑った。

「…もしかしてケンタ・オオイケのプリンですか?あれ、美味いけど差し入れって数必要だしほぼ無理じゃないんですか?それを差し入れに使うなんて、スゴいですね」

と飯田が言うと

「ケンタ・オオイケって、知られてないけど高校生の時に綾子たちとバンド組んでたんだよ」

と誠は言った。

「バンド?」

と飯田が聞くと

「そう。健太は高校卒業したら実家を継ぐためにパティシエ修行でフランスに行って、健太の代わりに入ったのが俺。健太がフランス行かなかったら俺はSperanzaに入れなかったんだよ」

と誠は言った。

「そしたら今ごろ、何してただろうな」

と俊太郎が聞くと

「スタジオミュージシャンとかですかね。もしかしたら先輩の後ろでベース弾いてライブ回ったりしてたかも」

と誠は笑った。

「そりゃ、ギャラたっぷり取られそうだな」

と俊太郎が笑うと

「ちょっと話が脱線しちゃったんで戻したいんですけど、良いですか?」

と誠は聞いた。

「ごめんごめん。で、スタジオに差し入れしたんだっけ?」

と俊太郎が聞くと

「そうなんですよ。でも、その時の俺は曲が全然作れなくなってたんでレコーディングなんて見に行きたく無かったんです。だから、差し入れ置いたらすぐに帰ろうと思ってたんですけど綾子と和さんに見てけって言われて…。その時、darknessの歌入れしてて…。綾子は俺と同じで曲が書けなくなってたらしいんですけど、あの曲を作ってスランプから抜け出したって聞いて…いつまでも曲が書けない自分が惨めな気持ちになって泣いてしまったんですよ」

と誠は笑った。

「…」

「…」

何て言葉をかけて良いのかわからず俊太郎と飯田が黙っていると

「俺、和さんに曲が書けないことを愚痴ったんです。休みもらってるのに曲が作れないなんて笑えますよね?って言ったら、和さん…そんなの笑う奴いるのか?もし笑う奴がいたら殴ってやりたいって…。俺、そんなこと言われると思ってなかったから驚いちゃったんですけど、和さん…曲が書けないなら書けないって開き直れば良いんだって言うんですよ」

と誠は笑ったあと真面目な顔をして

「俺が書けなくても他の誰かが書いた曲を歌えば良いって。俺に曲を提供して売れたいって思ってる奴はいっぱいいるんだって…。ずいぶん勝手なことを言うなと思ったんですけど…。和さんいわく、綾子みたいに自分を追い込んでも曲が作れる人なんて滅多にいないって。だから和さんはスランプの時に無理して曲を作ろうとしないらしいんです。家に籠って作らなきゃ作らなきゃって思っても良いものなんて作れない…心に余裕がないと作れないって言われてその通りだなって思ったんです」

と誠は言った。

「…確かに」

と俊太郎が頷くと

「で、のりちゃんやかず君のレコーディングなんて滅多に見れないし勉強になるからスタジオに通えって言われてレコーディングあるときはほとんど通って」

と誠は言ったあとクスッと笑い

「働かざるもの食うべからずでタダ飯は食わせないって和さんに言われて、朝っぱらからスタジオ入ってレコーディングのセッティングしたりして…いつの間にかスタッフになっちゃってました」

と言った。

「和さん、厳しいな」

と俊太郎が笑うと

「けど、通って良かったですね。綾子が和さんにはまだまだ追い付けないって言ってたけど、本当に何から何までスゴかったです。曲の作り方も歌詞の作り方も…仕事に対する姿勢もスタッフやメンバーとの接し方も…何一つ取ってもあの人には勝てないなって思いました」

と誠は言った。

「そのわりには、和さんへの態度悪いよな?もう少し可愛げある態度取れば良いのに…」

と俊太郎は言うと

「他の人から見たら綾子のこともあったし和さんのことを嫌ってるように見えるかもしれないけど、何かあったときに話を聞いてもらうのもアドバイスしてくれるのも和さんだし…誰よりも頼りにしてるしスゴい尊敬してますよ。でも、それって態度に出さなくても良いかな?って思うんです」

と誠は笑ったあと

「昔から相川さんもボレロのメンバーも…そして綾子も和さんは能鷹だって言うんですけど、本当その通りだなって思うんです」

と誠は真面目な顔で綾子に膝枕してもらい眠っている和を見つめて言った。

「のうよう?」

と飯田が聞くと

「能ある鷹は爪隠すってことわざ知ってる?」

と誠は聞き返した。

「確か…実力のある人ほど、それを表面に現さないって意味のことわざだったような」

と飯田が言うと

「そう、それ。和さんはまさにそれなんだよ」

と誠は言った。

「今、綾子の膝で寝てる…ワガママで甘えてばかりの和さんは爪を隠してる状態。けど、仕事の時の和さんはまるで別人。綾子にもズバズバ意見して、時には意見が合わないで言い争いになったり…。見てたらスゴいですよ。音楽バカの天才二人のケンカなんてレベルがチ違い過ぎて誰も止めれないですからね。先輩なら知ってると思いますけど、あの負けず嫌いの綾子が先に折れるんですよ。和さんには綾子を黙らせて納得させれるだけの才能と実力があるんです」

と誠が言うと

「綾子が折れるなんて相当だよ」

と俊太郎は言った。

「そうなんですか?あんなに穏やかに見えるのに…」

と飯田が言うと

「普段はね。でも、仕事になると人が変わるからね。負けず嫌いだし妥協しないし頑固だし…。自分が納得しないものには絶対に首を縦に振らない。…由岐さんそっくり」

と俊太郎は笑った。

「俺、和さんに口悪い自覚はあるし仲悪く見えるかもしれないけど、俺と和さんはそれでいいんだと思うんです。真面目にやるときはやる、けど他の時はバカ言いながら口ケンカしてるぐらいがちょうど良いんですよ。一応、世界中で唯一和さん公認の恋敵ライバルだし」

と誠が笑うと

「ま、和さんも楽しそうだしな」

と俊太郎も笑った。

「けどね、飯田さん。俺が言うのもなんだけど本当綾子はやめた方が良いよ。好意持っても何も良いことないし、どっちかと言うとツラいことの方が多いよ」

と誠が言うと

「そんな…俺は別に」

と飯田は言ったがそれを聞いてか聞かずにか誠は

「和さんは綾子を失うことに比べたら死を恐れない人だし、綾子は綾子で和さんの為なら死を恐れない人…。自分もそんな風に愛したい愛されてみたいと思うなら、俺みたいにこじれて抜け出せなくなる前に綾子のことを諦めた方が良いよ」

と笑った。


「なっちゃん、なっちゃん。帰るよ」

打ち上げもおひらきの時間となり、綾子が膝で眠ってる和の身体を揺すると和はうっすらと目を開けて

「ん…?何?…どうしたの?」

と寝ぼけた声で言った。

「ほら、寝ちゃダメだって。帰るよ」

と綾子が言うと

「和、起きろ。お前だけ置いてくぞ」

と結城も和の身体を揺すって言った。

すると、和はモゾモゾと動きながら起き上がり、あくびをして

「…眠い。綾子、早く帰ろう」

と言ったので

「何が帰ろうだよ。みんなお前が起きるの待ってたんだぞ」

とカンジは呆れた顔で言った。


店を出ると石井が大きな声で

「明日…今日の集合遅れるなよ」

とスタッフに言った。

スタッフやサポートメンバー…長野と及川とひろみがあちこちとそれぞれに散らばって行く姿を見送った和が

「じゃ、俺たちも帰ろうか?」

と言うと

「さっきまで寝てた奴は、すっかり目が覚めたみたいだな」

とカンジはあくびをしながら言った。

「そうでもないよ。眠いし…早く帰りたい」

と和が言うと

「帰って何すんの?綾子、疲れてるんだから寝かせてやれよ」

とタケが言うと

「何するって何すんだよ。寝るに決まってるだろ?」

と和は言うと綾子の手を繋ぎ

「じゃ、俺たちはタクシー拾って帰るから」

と言った。

すると慌てて飯田が

「あの!」

と和と綾子に声をかけた。

「ん?何?」

と和がジロッと見ると

「あの…少しで良いんで綾子さんと話をする時間をもらえませんか?」

と飯田は言った。

「綾子?」

と和が聞くと

「はい、10分…いや、5分で良いです。綾子さんと二人で話をさせて下さい」

と飯田は頭を下げた。

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