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お隣のふにゃふにゃ王子様  作者: まあちゃん
203/356

特別なアンコール

「アンコール!アンコール」

「アンコール!アンコール」

ステージが真っ暗になると、会場のいたるところからアンコールの声がかかった。

「アンコール!アンコール」

「アンコール!アンコール」

次第にその声は大きくなり、会場全体が一斉にメンバーを呼ぶアンコールの合唱を始めた。

「スゴいですね!」

と飯田が俊太郎に言うと

「スゴいよな!」

と俊太郎は笑った。


アンコールの大合唱が数分続いたあとステージが明るくなると、直則を先頭に奏太、和樹、綾子、ナゴミと順にステージに戻ってきたので観客からは悲鳴にも似た大歓声が上がった。

メンバーがそれぞれのたち位置につき、ナゴミと綾子と和樹がスタッフから楽器を受けとると、アンコール一曲目の演奏が始まった。

一曲目の演奏が終わるとfate仕様にアレンジされたSperanzaの曲が演奏され、ナゴミはペットボトルの水を飲みギターをスタッフに渡し

「ヤバい、イッちゃいそうだよ。スゲェ、気持ち良い…」

とエロチックな吐息を吐いた。

「なぁ、一緒にイッてくれる?…一番気持ちところのもっと先でイカせてくれる?」

とナゴミが言うと歓声が上がった。

「本当?よし、じゃあ今まで感じたことないぐらい感じるように可愛がってあげる」

とナゴミが言うとforbidden fruitの演奏が始まった。

妖艶と言う言葉を男に使っていいのかどうかわからないが、forbidden fruitを歌うナゴミは男女問わず誰もを惑わす美しくも艶やかな色気に包まれていた。

Forbidden fruitの演奏が終わると真っ赤なライトに怪しく照らされていたステージが一変し青色の幻想的なライトに照らされるとバンド名でもあるfateが演奏された。

曲が終わりライトが消えると、綾子にスポットライトがあたった。

「挨拶が遅くなりましたが、こんばんは」

と綾子が言うと観客から

「こんばんは!」

と言う声がかえってきた。

「ついに最終日ですね。ツアー始まるまで結構心配な部分があって…例えば、毎年この時期は不健康なスタジオ暮らしをしてることが多いので、身体の年間サイクルに反してツアー回れるのか?と心配してたんですけど、やれば出来るもんですね。振り替えると楽しかった思い出ばかりであと2~3周ぐらいツアーまわれるんじゃないかな?思ってます。札幌から始まり名古屋、福岡、大阪…そして東京と18公演それぞれにいろんな思い出がありますが、一番の思い出はこうやってたくさんの人がライブに足を運んでくれたことです。暑い日も雨の日もあったのに本当にたくさんの人が来てくれて…。途中、夏バテ気味の時もあったけど、ライブに来てみんなが楽しそうに跳ねてるの見てるとこっちも元気になってきて…夏バテも吹っ飛んで楽しませてもらいました。ありがとうございます」

と綾子が頭を下げると歓声があがった。

「…このあと私たちは海外ツアーに出るのですが、fateを応援してくれるみんなに恥じないようなライブをいろんな国でしてきたいと思います。…そして海外でいろんな物を見て触れて感じてきたものを今度は曲やライブに活かし、一回りも二回りも成長したfateをみんなにみてもらえたら嬉しいなと思います。今日はあと少しになっちゃいましたが最後まで楽しんでって下さい」

と綾子が言うとナゴミにスポットライトがあたり、綾子のスポットライトが消えた。。

「あー、終わりが近付いてきたね。寂しいね…。けど、最後は思いっきり弾けて終わりたいよな?…終わりたいよな? …よし、じゃ最後にみんなの本気を見せてもらおうか?」

とナゴミが言うとblue roseの演奏が始まった。

綾子たちのコーラスが聞こえないほどの観客の大合唱にナゴミは嬉しそうに笑いながら歌い、綾子はギターを弾きながら会場を隅々まで眺めた。

二階席ではSperanzaのメンバーや俊太郎…相川もとても良い笑顔でfateのステージを見てる。

ナゴミのすぐ前にいる奏は他の観客同様に身体を揺らしながら歌ってる。

綾子の顔にも笑顔が浮かんだ。

…ナゴミと綾子だけじゃない。

和樹の顔にも奏太の顔にも笑顔が浮かんでいた。

blue roseの演奏が終わると、綾子はスタッフにギターを渡し、いつものように他のメンバーと一緒にナゴミの立つセンターに集まったが、今日だけはいつもと違い和樹、直則、奏太と笑顔で握手をした。

ナゴミもまた和樹、奏太と握手をして最後直則と握手をするかと思ったら抱き合ったので観客からは拍手に交じって歓声があがった。

直則と離れたナゴミが会場に手を振ると綾子たちも観客席に手を振った。

その後、綾子と和樹が自分のマイクスタンドに付いてるピックを次々と客席に投げ込む終わると、奏太、直則、綾子、和樹と観客に手を振りながらステージを降りた。

アンコールも終わり、ライブが終わったと誰もが思っていた時に

「終わっちゃったね…」

とナゴミが言った。

「終わっちゃったね…。最高に気持ちよかったよ。…楽しませてくれてありがとう」

と言うとナゴミはチュッとマイクにキスをした。

「ライブは終わりなんだけど、今日は最終日ってことで俺たちを楽しませてくれたみんなに特別なプレゼントをしたいと思ってるんだけど…」

と言うナゴミに観客が驚きの声をあげてると綾子がギターを持ってステージに戻ってきた。

「アルバムの中で唯一、ライブで一度もやらなかった曲があるんだけど知ってる?」

とナゴミが聞くと歓声が上がった。

「その曲はfutureって名前のとても可愛い曲なんだけど、アルバムの中ではオマケみたいな役割の曲なので、ライブではやってこなかったんだよ。けど、一度も演奏されないって言うのもなんだか可哀想だしラストぐらいは歌ってやろうかと」

と言うとナゴミは綾子を見て

「何か一言ある?」

と聞いた。

「えっ!あっ…」

と突然話を振られて綾子が動揺した顔をしてると

「話聞いてた?」

とナゴミは聞いた。

うんうんと頷く綾子に

「本番終わったからって気抜いて他のこと考えてた?」

とナゴミが聞くと綾子は手を横に振ったが観客からクスクスと笑い声が起きた。

「どうせ打ち上げのことでも考えてたんだろ?」

とナゴミが呆れたように聞くと綾子は苦笑いをして人差し指を口元に持っていきシーっと言うポーズを取ったのでまたクスクスと笑い声が起きた。

「…参るよね?ほら、最後に一言」

とナゴミが言うと綾子は困った顔をしながらマイクの前に立った。

「打ち上げのことはまだ考えてませんので。…突然話を振られて何を話して良いのか困ってるんですけど。今回のツアーが本当に楽しかったので、来年もまわれるようにスタッフに頼んでみようかと考えてます。…ので、その時はまた遊びに来てください」

と綾子が言うと

「……以上?」

とナゴミが聞くと綾子はうんうんと頷いた。

「もっとね…気の聞いたこと言えないかな?」

と苦笑いするとナゴミは話を始めた。

「チームfateは動き始めたばかりですが…。チームfateと言うのは俺たち二人だけのことではなくドラムの直則ベースの和樹キーボードの奏太、それから俺たちに怒られながらも朝から夜遅くまで…時にはジップに泊まり込んで頑張ってくれたスタッフ、そして俺たちを愛してくれるみんながチームfateのメンバーです。fateはたくさんのメンバーに助けられ支えられながら、これから先もっともっと成長していきたいと思いますので、どうかよろしくお願いします」

とナゴミと綾子が頭を深々と下げると会場中なら暖かい拍手と歓声が起きた。

ナゴミと綾子は頭を上げるとそれぞれに会場をグルッと見てから

「話が長くなっちゃったね。…今夜は特別な夜だから日本語バージョンでやろうか?」

とナゴミが言うと綾子はギターを弾き始めた。

綾子の奏でるギターの音色に、いつものカリスマ性と艶っぽさを持ったナゴミとはまるで別人のようなナゴミの優しく暖かい歌声が重なるfutureに会場中が息をするのも忘れてしまうほど聞き惚れ、futureの持つ暖かい日だまりのような世界観に観客は引き込まれていった。


「…」

飯田の頬に涙が流れたが、その涙を拭うどころか自分が泣いていることにさえ気付かないほど飯田は曲を聞き入っていた。

飯田の隣に立つ俊太郎や相川やSperanzaのメンバー…そしてステージ袖で二人の演奏を見てる結城をはじめとするマネージャー陣や直則たちメンバーにはステージにいる二人がfateのナゴミと綾子ではなく若狭和と若狭綾子に見えた。

お互いの才能を認め合い尊重しそして強い愛情と絆で結ばれてる和と綾子。

曲の持つ雰囲気だけでなく二人の間に流れる空気が会場中を暖かく包み込んでるとそれぞれに感じた。


曲が終わると二人は再度頭を深々と下げた。

少しの間があくと、futureの世界から我に戻った観客からとても大きな拍手が起きた。

二階席のSperanzaのメンバーも相川も北原も俊太郎も、流れた涙を拭った飯田も手を叩いている。

琳も勇次郎もさっちゃんも奏も拍手している。

ナナもユイナも…会場中の観客が拍手している。

機材席に座ってるスタッフも石井も拍手している。

ステージ袖にいるスタッフもメンバーも結城も佐伯も山下も拍手している。


深々と下げた頭を上げるとナゴミと綾子は会場中で一番と言って良いほどの笑顔で客席に手を振りステージを降りた。



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