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お隣のふにゃふにゃ王子様  作者: まあちゃん
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ツアーファイナル

開演5分前、ステージ袖に集まったfateのメンバーはスタッフにイヤモニをつけてもらい、円陣を組むと

「泣いても笑っても最終日。悔いが残らないように」

と和は言った。

奏太、和樹、直則がステージに上がっていくと綾子はいつものように和に背を向けた。

「思いっきり楽しもうな」

と言い、和が肩をパンッといつものように綾子の瞳がギタリスト綾子の瞳に変わった。

スイッチが入った綾子が力強い足取りでステージに上がっていく姿を見ていた和はフッと笑い

「今日も負けられないな…」

と言ってステージに上がった。

オープニングを告げる曲が終わると真っ暗なステージの上で和と綾子は目を閉じ深呼吸した。

暗幕の降りる風を感じた次の瞬間、直則のシンバルを合図にheavenの演奏が始まった。

ステージ後方の無数のライトが真っ直ぐに観客席を照らすとメンバーの暗影が浮かびあがり観客からは歓声が上がった。

歌が始まると同時にステージが目映いライトに照らされると、琳たちはまわりの観客に合わせて身体を揺らした。

オープニングから3曲の演奏が終わるとこの日初めてのナゴミのMCが始まった。

「一日ぶり…元気だった?」

とナゴミが言うと大歓声が上がった。

「東京4日目…ついにツアー最終日になっちゃったけど、最終日ってのは明日の心配しないで良いっていう特別な日なんで、腰が砕けるまで身体の隅々まで可愛がってやるから覚悟するように。…ついてこれるかな?…大丈夫?…よし、じゃみんなまとめて可愛がってやるからついてこいよ!」

とナゴミが言うと次の曲の演奏が始まった。

その後続けて4曲演奏したうちの1曲はボレロの曲で会場は更に盛り上がった。

4曲の演奏が終わると、ステージは真っ暗になり奏太のピアノソロが始まった。

綺麗な旋律の曲に会場が包まれているといつの間にか曲が変化しbutterflyの演奏が始まった。

ナゴミの歌声に観客が息をするのもためらうほどだった。

Butterflyのあと静かな曲が続き観客が曲の切なくも美しい世界観に完全に引き込まれたところでSperanzaの曲shed tearsをとても切なく歌いあげるとステージは真っ暗なった。


二階席で立って見ている隼人が

「すげぇ、完全にfateのものにしちゃってるよ…」

と呟くと

「また、和さんに持ってかれちゃったよ」

と渉は苦笑いした。

「…今の曲ってfateの曲じゃないんですか?」

と飯田が聞くと

「結構前に出したSperanzaのだよ。fateはまだ持ち歌少ないからボレロやSperanzaの曲もやるんじゃない?さっきもボレロの曲やってたし」

と俊太郎は笑った。


会場内が次の曲を今か今かと待っていると、直則のドラムソロが始まった。

激しく力強いドラムソロに観客が歓声をあげると、直則のドラムに和樹のクールなベースが重なったので観客は身体を揺らし二人のセッションを聴いていた。

その後、綾子のギターが重なると大人の雰囲気を漂わせるクールな演奏が縦にピョンピョンと跳ねたくなるようなポップで明るい演奏に変わった。

実際、柵に上がる綾子と和樹はその場で何度もジャンプして観客を煽った。

三人のセッションがラストを迎えると、綾子と和樹は目を合わせ合図すると同時に柵の上から身体を反らしながら思いっきりジャンプをし着地とともに演奏が終わり目映いばかりに照らされていた照明が消え真っ暗になった。

三人のセッションに観客から大歓声があがっると、突然ギターをかき鳴らす音が会場内に響き始めステージは照明で明るく照らされると、ステージ袖からギターを弾きながらナゴミが出てきた。

ナゴミはギターを弾きながらセンターの自分の立ち位置につくと

「俺さ、ツアー回りながらギター練習してきたんだよ。…今日は最終日ってことで綾子に勝負をしてもらいたいんだけど…」

と言うと観客からは歓声があがったが綾子は驚いた顔をして手を横に振った。

「なに?負けるの怖いの?」

とナゴミが意地悪そうな顔で綾子に聞くと綾子は口角を少し上げてムッとした顔をしたが

「なぁ?俺たちの勝負見たくない?」

とナゴミが観客に問いかけると観客からは大歓声が上がった。

「…だって?みんな期待してんのに負けるの怖くて勝負受けれない?…さすがにそれはないよな?」

とナゴミが言うと綾子は更にムッとした顔をして、スタッフを呼ぶとギターを肩からおろしスタッフに渡した何か話をしたあと立ち位置に戻り

「いいよ。勝負しよう」

と言ってスタッフが持ってきたギターを肩にかけジャーンと一度音を鳴らし

「私、負けず嫌いだし手加減しないけど大丈夫?やめるなら今のうちだよ」

と笑った。

「手加減なんてされて勝っても嬉しくないからね。…じゃ、始めようか?…直則、和樹アドリブで良いからリズム刻んで」

とナゴミが言うと和樹と直則は少し話をしたあと、リズムを刻み始めた。

すると奏太が両手を上げて手拍子を始めたので観客もリズムに合わせて手拍子をした。

ナゴミと綾子は足でリズムを取っていたが、ナゴミと綾子はアイコンタクトを取ったかと思うとナゴミが和樹と直則の刻むリズムに合わせてギターを弾き始めた。

リズムを足で取りながら綾子がナゴミを見てると、演奏を終えたナゴミがお前の番だと言わんばかりのドヤ顔で綾子を見たので、今度は綾子がギターを弾いた。

その後、何度か交互にギターを弾き時に時に激しく時に切なく…ポップにとギターの演奏をしていたが、綾子が得意の早弾きを始めると観客からは

「おー…」

と驚きにも似た歓声があがりナゴミは参ったと言うような顔をして綾子を見ていたが、綾子の演奏が徐々に変わるとそれに合わせるように直則と和樹の演奏も変わっていった。

悔しそうな顔をしてナゴミが綾子を見ると綾子はニコッと笑ったのでナゴミは苦笑いをしてからギターを弾き始めた。

4人の演奏に奏太のキーボードが重なるとアドリブで弾いていた曲がfallen angleのイントロへといつの間にか変化していた。

fallen angleの演奏が終わるとナゴミはドラムセットの側に置いてあるペットボトルの水をゴクッと飲んでマイクの前に立った。

「あー…。勝負の結果は…引き分けってとこかな?」

とナゴミが言うと観客からは歓声と同時に笑い声も上がった。

「とりあえず、この勝負は今度のツアーに持ち越しで…」

とナゴミが言うと歓声と拍手が起きた。

「今回ツアーでは持ち歌少ないんでボレロやSperanzaの曲もやってるんだけど。…どうだろ?俺、渉に勝ててる?…本当?…他のメンバーは?…負けてないよって?…嬉しいな」

とナゴミが笑うと女性の観客から黄色い声があがった。

「札幌…名古屋…福岡…大阪…そして東京とジップまわってきて今日はラストになってしまったんだけど。今日以外にライブ見たよって人いる?」

とナゴミが聞くと会場のあちらこちらで手が上がった。

「結構いるね。じゃ、ここ東京で見た人?…おお、多いな。名古屋?…大阪?…福岡?…札幌?…そっかそっか。…今回、初めてのツアーと言うことで試行錯誤の繰り返しでツアーまわってきて、こうやって無事ラストを迎えられたんだけど…。最終日を迎えられたのはみんなのおかげだね。…ファンはね、とても大切で愛しい存在で…みんながいるから自分は頑張れるし、みんなにもっと愛してもらえるようにと努力もするし…。なかなか言葉にして表すことが無いんだけど、いつも大きなパワーを与えてくれるみんなに感謝してます。…ありがとう」

とナゴミが言うと観客からは大きな歓声と拍手が起きた。

「…じゃ、曲に戻ろうか?」

とナゴミが言うとステージのライトが消えて、直則のシンバルを合図にナゴミと綾子のツインギターで始まるspiritの演奏が始まった。

ノリの良い曲が次々と演奏され観客のボルテージが最高潮に達した時、ラストの曲new worldの演奏が終わりメンバーを照らしてた無数のライトが一斉に消えた。

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