17歳の誕生日 4
「村上さん、遅くない?本当に来るんですか?」
と和が聞くと
「来るって言ってたよ。久しぶりにみんなの顔が見れるって喜んでたし、何やらお土産持ってくるって言ってたよ」
と結城は笑った。
「…お土産って、何か嫌な予感しかしないの俺たちだけかな」
とタケが言うと
「一年前の再来とか…?」
とカンジも言った。
「一年前…?あー、俺たちの動画」
と隼人が言うと
「そうだ。めちゃくちゃ恥ずかしい動画見せられたんだった」
と渉は嫌な顔をした。
「俺は貴重な動画見れて楽しかったけど」
と和が笑うと
「ですよね?俺も楽しかったですよ」
と誠も笑った。
それから少しして村上がやってくると琳たちは、短髪に髭を生やしサングラスをかけたちょいワルを越えてワルオヤジに見える村上の姿に緊張した顔をした。
「若者の喜びそうなものがわからなくて…」
と村上が小さな箱の入った紙袋を奏に渡すとカンジが側に来て
「ねぇねぇ、開けてみてよ」
と言った。
「いいって、本当たいした物じゃないから。後で開けな」
と村上が笑うと
「いや開けてみろって。村上さんチョイスの誕プレ見たい」
とカンジがしつこく言ったので奏が箱を開けてるとカンジだけでなく和たちも食い入るように箱に注目していた。
ゆっくりと蓋を開けると奏は
「スゴい…。カッコいい」
と嬉しそうな顔で呟いた。
「どれ?何入ってたの?」
と和が聞くと
「これ」
と奏は箱の中身を見せてた。
「腕時計?」
と和が言うと
「安物なんだけどね。…今どきの子はスマホあるし腕時計とかしないのかな?と思ったんだけど、来年は受験生だし必要だろうなと思ってさ」
と村上は言った。
「嬉しいです。ありがとうございます」
と奏が嬉しそうに言ってると、村上は奏の近くで緊張した顔をしてる琳たちを見て
「で?君たちは友達?」
と笑いかけた。
「はい、高校の友だちです」
と奏が言うと
「初めまして」
と琳たちは緊張気味に頭を下げた。
「初めましてじゃないだろ。前に一度会ったことあるの忘れた?…ほら、fateのお披露目ライブの楽屋で」
と村上が言うと琳たちを会ったことあるかな?って顔をしたので
「村上さん、髭あるしサングラスしてるからわかんないんですよ」
と和は笑った。
「サングラス?…でも、これ取ると怖がられるから」
と言いながら村上がサングラスを取ると
「あっ!」
とさっちゃんは言った。
「思い出してもらえた?」
と村上が言うと
「はい、楽屋にお邪魔したときにお菓子を頂いたスタッフの方ですよね?」
とさっちゃんが言ったので
「スタッフだって」
とタケは笑った。
「スタッフってことに間違いは無いだろ?」
と村上が言うと
「あのね、この人はボレロの敏腕マネージャーの村上さんって言うんだよ。インディーズの頃から一緒のめちゃくちゃ怖い人」
とタケが笑うと
「お前な…見た目はどうしようも無いだろ」
と村上は言ったが
「怖いのは見た目だけじゃないでしょ?村上さんと相川さんに怒られて何度泣いたことか…」
とカンジは言った。
「俺たちも相川さんには怒られましたね…。かげで鬼って言ってましたもん」
と誠が言うと
「そう言えば、綾子はよく相川さんの愚痴こぼしてたよな?」
と和は言った。
「えっ、愚痴?綾子はいつもニコニコしてたのに陰で愚痴ってたの?」
と相川が言うと
「愚痴ってたよな?怖い、鬼だ、どうせまた怒られるんだから会いたくない、あの人詐欺だって」
と和は笑ったが
「詐欺とまでは言ってなかったと思うよ」
と綾子は言った。
「そうだっけ?でもあの頃は嫌だ辞めたいばっかり言って泣いてたじゃん」
と和が言うと
「確かにね…。泣いてばかりはいなかったけど会うたびに愚痴こぼしてたね」
と綾子は言った。
「そんなの全然知らなかった」
と誠が言うと
「みんな同じ思いしてるのに、私だけ辞めたいなんて言えないでしょ」
と綾子は笑った。
「そうだけど」
と誠が言うと
「あれだよ。やっぱり昔からお前より俺の方が頼りにされてるってこと」
と和は笑ったが誠は少し呆れた顔をして
「はいはい。そうですね。頼りになる先輩ですからね」
と言った。
「おい、せっかくの誕生日なんだし二人ともやめろよ。…そうだ、盆休みに沖縄行ってきてさ。泡盛買ってきたんで持ってきたんだよ」
と言って村上が綾子に大きな袋を渡すと
「じゃ、そろそろアルコール解禁の時間にする?ワインも開けようよ」
とカンジは嬉しそうに言った。
ボレロやSperanza…マネージャー陣などがアルコールを飲んでるなか水を飲んでる和と綾子と誠を見て
「3人は飲まないんですか?」
と勇次郎は聞いた。
「俺は酒飲むとすぐに眠くなるからよっぽどじゃない限り飲まないんだよ」
と和が笑うと
「雑誌で和さんがお酒飲まないって書いてあったの本当なんですね」
と勇次郎は言った。
「本当だよ。ちなみに綾子が酒豪って言うのも本当だよ」
と和が笑うと
「酒豪じゃありません。ちびちび飲むからずっと飲めるだけ。あの人たちみたいなペースで飲んでたら倒れちゃうよ」
とアルコールを飲んでるメンバーを見て言った。
「渉さんは飲まないんですか?」
と勇次郎が聞くと
「明日、収録あるし喉枯れたら困るから今日は休肝日なんだ」
と渉は笑った。
「収録?」
と和が聞くと
「再来週、ソロのシングル発売になるから歌番組の収録あるんですよ」
と渉はこたえた。
「渉も忙しいんだな」
と和が言うと
「そんな二人に比べたら全然ですよ。…そうだ、ツアー最終日楽しみにしてますね」
と渉は笑った。
「健太と香住は1日目に来るんだよ」
と綾子が言うと
「そうなの?二人ともしばらく会ってないけど元気かな…」
と渉は言った。
「元気そうなこと言ってたよ。たまには5人で会いたいねって話になってさ」
と綾子が言うと
「いいね、ついでにalien復活しちゃう?」
と渉は笑ったあと
「そう言えばさ、香住って高校の時ナゴミさんのスゴいファンだったよな?雑誌とか必ず買ってたし、ナゴミになら遊ばれても良いっていっつも言ってたよな」
と綾子に聞いた。
「言ってたね。でもさ、渉も言ってたじゃん。ナゴミになら抱かれてもいいって」
と綾子が笑うと
「わ…渉さんて、そっちだったんですか?」
と勇次郎は驚いた顔で聞いた。
「違うって。それだけ憧れてたってこと。本当、格好よくてさ。男でも惚れちゃうぐらい格好よかったんだよ」
と渉が言うと
「過去形かよ。今はダメってことか?」
と和は言った。
「そんなことないですよ。…今でも綾子が良いって言うなら、いつでも抱かれる覚悟できてますよ」
と渉が笑うと
「嫌だよ。何が悲しくて男と寝なきゃなんないんだよ」
と和は言った。
「二人して目覚めるかもよ」
と綾子が笑うと
「冗談でもやめて欲しいわ」
と和は言った。
「そう言えばさ。何であの頃、綾子はボレロの中で一番好きなのがユキさんだって言ってたの?」
と渉が聞くと
「あー、俺もそれ知りたい。何で俺って言わなかったの?」
と和も聞いた。
「普段とのギャップがスゴすぎてね…。雑誌の記事見てみんな騒いでたけど、うわぁ…こんなこと言っちゃってるよって引いたからね。それにボレロの中で選べって言われてもね…。とりあえず面倒だから身近なお兄ちゃんを指差しただけで特に深い意味は無かったんだよね」
と綾子が笑うと
「そうなの?あの頃、かなりショックだったんだよ。抱かれた男より彼氏にしたい男の方が好きなのかっ思って誠実な男目指して女とも縁切ったし」
と和は言った。
「そりゃ、そうでしょ。和さんが女遊びしまくってるのに綾子と付き合ったとしたら、絶対別れさせてましたもん。いくら、憧れのナゴミさんとはいえ仲間がツラい思いするのは見てられないですからね」
と渉が笑うと
「それは無いわ。俺、綾子と付き合えたら他の女は要らないってずっと言ってたよね?」
と和は言った。
「どうだかね。あの頃のなっちゃんて、いつもふざけてて何が本当なのかわからなかったからね」
と綾子が言うと
「でもさ、和さんが綾子のことを好きなのはだだ漏れだったじゃない?俺なんて綾子のこと諦めてって言われたことあったよ」
と渉は笑った。
「あー、そんなこともあったかもしれないな…。よく覚えてるな」
と和が言うと
「覚えてますよ。あの日、隼人と健太とカラオケ行って思いっきり歌って泣いて綾子のこと諦めたんですから」
と渉は言った。
すると、綾子は驚いた顔をして
「うそ!渉は香住のことが好きだと思ってた」
と言ったので渉と和は綾子よりも驚いた顔をした。
「おい…なにそれ。よりによって香住?」
と渉が言うと
「うん。多分、隼人も思ってたんじゃない?…ねぇ、隼人ちょっと」
と綾子は隼人を呼んだ。
「何?どうしたの?」
と隼人がやってくると
「隼人ってさ、渉が高校の時に誰好きだったか知ってる?」
と綾子は聞いた。
「誰って…」
と隼人が言葉に困ってると
「俺、綾子のこと好きだったよな?」
と渉は聞いた。
「えっ、言っちゃっていいの?解禁?」
と隼人が驚くと
「な、綾子だったろ?」
と渉は笑った。
「…信じらんない。全然気付かなかった」
と綾子が呟いてると
「気付かなかったの綾子だけじゃない。誠も知ってたよ」
と隼人が笑ったので
「誠も?何で?」
と綾子は大きな声をあげたので
「何?俺の悪口言ってるんか?」
と綾子たちの方を振り向いて誠は言った。
「違う違う。渉が高校の時に綾子のこと好きだったって話。お前、知ってたよな?」
と隼人が聞くと
「うん。知らない奴いなかったんじゃない」
と誠は言った。
「うそ…。信じらんない」
と綾子が言うと
「何で?俺が綾子のこと好きだったのそんなにショック?高校時代を否定されたみたいでこっちの方がショックなんだけど」
と渉は言った。
「仕方ないさ。相手は綾子だもん。それに片想いで終わって良かったんじゃない?渉の性格上、告ったらそのあとギクシャクして普通に仲間としてなんてやっていけなかったんじゃない?誰かみたいに神経図太くないから」
と和が笑うと誠が
「聞こえてますよ」
と和をジロッと見て言った。




