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お隣のふにゃふにゃ王子様  作者: まあちゃん
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新生活と思い出

武道館ライヴから1ヶ月。

綾子は大学生活にも慣れてきて、新しい友達と楽しいキャンパスライフを送っていた。

「綾子ちゃん、久しぶり」

と声をかけて来たのは、入学式以来同じ構内にいながらも、なかなか会うことの無かった誠と会った。

「ねぇねぇ、綾子。誰?彼氏?」

と綾子と一緒に歩いていた友達は誠に興味津々な様子で聞いた。

誠は容姿も良いし物腰も柔らかい。

そんな誠に興味を持つのは当たり前と言えば当たり前。

きっと高校時代にもかなりモテてきたんだろうと思う。

「あー、残念ながら友達です。綾子ちゃんは他に彼氏いるから」

と誠が笑うと

「綾子、彼氏いたんだ。そんな話聞いたこと無かった」

「ねぇ、彼氏ってどんな人?」

と友達は綾子に次々と質問をしてきた。

「あ…」

と綾子が返事に困ってると

「綾子ちゃんの彼氏はね。男の俺でも惚れてしまいそうな男だよ」

と誠は言った。

「そんなにいい男なの?」

と友達が驚くと

「まぁ、見た目はちょっと…って感じだけど、ここぞって言うときはスゴい格好良くて何よりも綾子ちゃんへの愛がスゴいんだよ。もし、俺が綾子ちゃんの事を好きだなんて言ったら殺されそうだよ」

と誠が笑ってると綾子は恥ずかしそうに顔を赤くして

「か…彼氏の話はいいから」

と言った。

そんな綾子を見て

「綾子、照れてる。彼氏の事、本当に大好きなんだぁ」

と友達は笑ったあと

「で、あなたは?」

と友達は誠に聞いた。

「あ、ごめんごめん。俺は経済学部の山下誠。バンドやってるから今度ライヴやるとき来てね」

と誠が言うと

「ぜひ行きます!」

と友達は言った。


綾子と誠は大学のカフェテリアでランチを食べながら話をしていた。

「渉たちは元気?」

と綾子が聞くと

「あー、今日もこれから事務所出来ないよ会うけど、元気だったよ」

と誠は言った。

「契約したんだもんね…。ついにalienがデビューするんだ。私、CD買うからね」

と綾子は嬉しそうに笑うと

「ありがとう。でも、まだデビューは決まって無いんだ」

と誠は言った。

「え?何で?」

と綾子が聞くと

「まだギターが決まってないのと、曲がね…。それぞれ曲作って相川さんに見てもらってるんだけど…まだデビューできるだけレベルじゃなくて。まぁ、俺たち自身もあんな曲じゃ出すだけ無駄だって分かるから、今は相川さんのところで曲作りの修行中なんだ」

と誠は笑った。

「そっか…。大変なんだね」

と綾子が言うと

「綾子ちゃんはどうなの?」

と誠が言った。

「え?何が?」

と綾子が聞き返すと

「大学では音楽やらないの?軽音サークルとか…」

と誠が言った。

「サークルはいろいろ見たんだけど渉や隼人や健太…誠君もだけど、alienみたいに楽しいバンド組めそうな人が見つからないくて」

と綾子は恥ずかしそうに笑った。

「…綾子ちゃんは、どうして相川さんの話を断ったの?」

と誠はコーヒーを飲みながら綾子に聞いた。

「え?私?」

と綾子が言うと

「由岐さんが反対したから?和さんや親に余計な心配かけたくないから?」

と誠は綾子の目をじっと見て言った。

「違うよ。私は楽しく音楽やりたいのよ。でも、プロになったら楽しいばかりじゃなくなるし、だから断ったの」

と綾子は自分の事を真っ直ぐ見て何もかもお見通しと言う顔をしている誠に動揺を悟られないように平然を装って言った。

「ふーん。そうか…」

と誠は綾子を見ながら

「でもさ、alienよりも楽しく音楽出来るメンバー見つからないんじゃ意味無いよね?」

と言った。

「…」

綾子は返す言葉が見たかなかった。

「alien以上のメンバーが見つからないって言っても、もう僕たちは事務所と契約したし綾子ちゃんとは組めないよ」

と言ったあと誠は

「綾子ちゃんにはカードが3枚あるとするよ。1枚はこれからもメンバー探していつ見つかるか分からないメンバーと新しいバンド組む。2枚目はこのまま音楽を辞める。…まぁ、この2枚は僕は同じ結果を生むカードだと思うけど」

と言ってから

「3枚目はalienに入って僕たちと一緒に苦楽を共にしながら相川さんがボレロの武道館ライヴの時に言ってたあのステージに立ったものしか見れない景色を目指す」

と言った。

「あの景色…」

と呟いた綾子は、武道館のステージに立ちたいとあの瞬間とても強く思った事を思い出した。

「まぁ、反対を押しきってでも自分の意思を伝える事ができないよう人は一生、和さんや由岐さんに守ってもらったら方が幸せかもね」

と誠は言って席を立った。

あの日、和が泣いたステージからの景色を見てみたいと思った気持ち、渉たちと練習した時の事、ライヴでステージに立った時の自分が自分で無いような高揚感を綾子は思い出していた。

本当は自分もalienを続けたかった。

一緒に夢を追いかけたかった。

けど…自分には無理だった。

由岐や和や家族を思うと出来なかった。

違う。

きっと、音楽をやりたいって言って反対されるのが怖かったんだ。

失敗するのも怖かったんだ。

だから、楽しく音楽したいなんて格好つけて言ったんだと、綾子はこの時気付いた。


ボレロとalienが所属する音楽事務所で渉たちは相川と話をしていた。

「で?これが俺に言われて修正した曲?」

と相川は不機嫌そうに言った。

「はい…」

と渉たちは相川の様子から今回も期待に添えるような物を作れなかった事に気付き落ち込んだ声でこたえた。

「あのさ…。これじゃ人前には出せないよ。これは素人が作ったって感じの曲だって何度も言ったよな?この曲を目を閉じて聞いたら何を感じる?何か浮かぶか?喜怒哀楽の何が浮かぶ?」

と相川が言うと

「それは…」

と渉たちが困ってると

「あのさ、もうこの曲は捨てよう。来週までそれぞれ最低2曲は作ってきて。俺に怒られた悔しさでもいいし、好きな女を思った気持ちでもいいし、感情をもっと曲に込めて作ってきて」

と相川は言って頭をかいた。

渉たちは相川に頭を下げると部屋を出て事務所を後にした。


渉たちは近くとカフェに入って話をした。

「俺たち無理なんじゃない?」

といつも冷静で弱音を吐かない隼人が言った。

「何言ってるんだよ」

と渉が言うと

「どんなに頑張ってもダメ出ししかされないし…」

と隼人は落ち込んだ顔をした。

渉も本当は無理かもしれないって思っていたので返す言葉が無くて

「だよな…。俺、音楽って楽しいって思ってたけど楽しくないな…。高校の時はあんなにワクワクして楽しかったのに…」

と言った。

「多分、綾子がいたから楽しかったんだな…」

と隼人が呟くと

「そうだな。綾子の作ってくる曲聞くとワクワクしてみんなでアレンジしてスゲェ楽しかったな…。そう言えばさ、綾子ってステージ立つと別人みたいに弾けるのにステージに出る瞬間までスゲェ緊張してて、いつも俺が肩を叩いて気合い入れてやってたんだよ」

と渉が言うと

「そうだ。今日、大学で綾子ちゃんに会ったんだよ」

と誠が言った。

「マジ?アイツ元気だった?」

と渉が嬉しそうに聞くと

「あぁ、元気そうだったし、スカートとか履いて女子大生って感じで女友達と一緒だったよ」

と誠が言うと

「うわぁ。綾子が私服でスカートとか見たこと無いな。いつもパンツ履いてたもんな」

と渉が言うと

「まぁ、俺たちと会うときは練習とかするときだったしギター背負って歩いてたからな」

と隼人が言った。

「そう言えばさ。綾子が大事にして誰にも持たせなかったあのギターって和さんが使ってたギターなんだって」

と渉が言うと

「マジ?まぁ、スゴい良いギター持ってるなとは思ったけどやっぱりね」

と誠が言った。

「…綾子、新しいメンバー見つけてバンド組んだのかな?」

と隼人がボソッと言った。

「…綾子ちゃん、大学では軽音サークルに入ってないみたいだし、バンドも組んでないみたいだよ」

と誠が言うと

「そっか…。やってないんだ」

と渉が呟いた。

「綾子、音楽辞めるのかな?」

と隼人が言うと

「いや、アイツは辞めないでしょ?綾子はほんとうにギター好きだし曲作るのも好きだから辞める事なんて出来ないよ」

と渉は言った。

「そうだよな…。でも、何か寂しいな。これからは綾子の作った曲も他の奴が演奏するし、練習もステージも全部他の奴が一緒にやるんだな…。俺たちだけの特別な時間だったのにな…」

と隼人が言うと

「あ!そうだ」

と渉は突然大きな声を出した。

「何だよ。ビックリするだろ?」

と誠が言うと

「俺、綾子との思い出を曲にて作ってみるよ。あー、何か今度こそ作れそうな気がするわ。じゃあ、先に帰るわ」

と渉は足早に店を出て行った。


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