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お隣のふにゃふにゃ王子様  作者: まあちゃん
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相川のありがたい話

校内を案内してもらい、音楽室で練習している吹奏楽部の演奏を廊下から見ていた相川は

「…この学校ではアルバイトとか…生徒の就労は禁止されているのですか?」

と有田に聞いた。

「いえ、特に学業に支障が無い範囲でしたら禁止はされていません。でも、進学校ですし勉強で忙しくてアルバイトをしてる子はいませんね」

と有田が言うと

「そうですか」

と相川は言った。

「あの…。もしかして若狭が芸能人になるとかとそうゆう言う話ですか?」

と有田が聞くと

「いえ、そんなことは一切無くて進学校だとやっぱりアルバイトよりも勉強しなさいって考えないなのかなと思っただけです」

と相川は笑った。

「そうですか。それなら良かったです」

と有田は言うと

「そろそろ戻ってみますか?彼らも待ってると思いますので」

と笑った。


奏たちが練習している教室に近付いてくると中からは4人が練習している音が聞こえてきた。

「んー…。これもオリジナルですか?」

と相川が苦笑いをすると

「はい。まぁ…。すみません」

と有田は謝った。

「いえいえ、先生が謝る必要ありませんよ」

と相川が言うと

「とりあえず、こんな感じなんですがよろしくお願いします」

と教室のドアを開けて

「はい、一旦練習終わり」

と有田は大きな声で言った。

奏たちが演奏をやめると相川は教室に入ってきて

「今のはオリジナルの曲?」

と聞いた。

「はい、奏が作った曲です。奏スゴい良い曲作るんですよ」

と琳が誇らしげに言うと

「そうなんだ。じゃ、聞かせてもらうのが楽しみだな」

と相川は笑った。

「楽しみだってよ。気合い入るな」

と琳たちはドキドキしながらも嬉しそうに言っていたが、奏は一昨日相川が自分たちのバンドを酷評したのを思いだし気分が落ちていた。

奏の様子から有田は何かを感じ取ったが

「ほら、こんな機会が滅多に無くて緊張するのはわかるけど、まずはお前たちがいつもやってるあの曲をやって緊張ほぐせ」

と言った。

「じゃ、あれだな。『満月の夜に』をやろうか?」

とさっちゃんが言うと

「そうだな。それがいいな」

と勇次郎と琳も言ったので奏も3人に合わせて

「だな。あれやろう」

と言った。

ドラムの合図で始まった曲はアップテンポの曲で奏の音楽プレイヤーで聞いた曲とは違いイントロから5人の演奏が揃っていたので、

この曲なら直しようがあるか?

と相川は思った。

イントロが終わり奏が歌い出すと相川は目を丸くした。

1年前に聞いた時も上手いと思ったけど、あの時よりも奏の歌は格段に上達している。

歌詞に合わせた感情の入れ方も覚えたようで聞いてて心地よい歌声だ…と思っていると、少しずつドラムとベースのリズムが少し狂い始めてきた。

「…」

相川が参ったと言う顔をして奏を見ると、奏は奏でどうにかドラムの音にギターと歌を合わせようと必死になっていた。

奇跡的にも間奏になると狂っていたリズムが揃ったが、今度は琳のギターが…。

こっちもまた他のメンバーに合わせようとしているのが感じられない…まるで自分に酔ってるような演奏をしている。

奏には悪いけどやっぱり酷すぎる。

楽しくやるのは良いけど、曲を壊してまでやる必要はあるのだろうか?

それにこんなバンドの中でもどうにか音を合わせようしている奏が哀れにも思える。

文化祭とは言え、これをやろうと本気で思ってるのだろうか?

それはそれである意味スゴいけど。

相川にはいろんな思いが込み上げてきた。

曲が終わると相川はため息をついて気持ちを入れ換えて

「この曲は初めて聞いたから、どうアドバイスしていいか難しいな。…そう言えば、前にSperanzaのコピーもしてるって話してたよな?」

と聞いた。

「はい、今もやってますし、文化祭でもやろうと思ってます」

と勇次郎がこたえると

「じゃ、今度はそっち聞かせてくれよ。それなら俺もアドバイスしやすいし」

と相川は言った。

「はい。じゃ…どうする?なにやる?」

と奏たちが話していると有田が

「Evolutionで良いんじゃないか?あれお前たち好きだろ?」

と言った。

「Evolutionか。良いんじゃないか?」

と相川が言うと

「じゃ、それやろうか?」

と言って奏たちは演奏を始めた。

やり慣れた曲でSperanzaのアルバムなどで聞いてるからなのかさっきの曲よりは格段にマシな演奏だった。

ただ、リズムが安定してないので全体的にズレが起きるところはやっぱりある。

でも、自分のズレに気付いて立て直そうとしてる姿勢は感じるし、聞いてて不快に感じない。

それから…この曲なら奏の歌もキチンと聞ける。

さっきの曲だと演奏のチグハグさに気を取られて歌を聞く余裕は無かったが、奏の歌は上手い。

ナゴミに声が似てると言えば似てるけど、それよりも強弱の付け方や感情の入れ方の方が似てるかもしれない。

けど、有田が言っていた通り喉で歌ってるのがわかる。

演奏が終わると相川は拍手をした。

琳たちは演奏を誉められたと嬉しそうに笑いながら、楽器を置くと相川と有田のことろにやってきたが、

「うん…。まぁ…。言いたいことはいっぱいあるけど。もし、聞きたくないなら言わないし」

と相川が少し曇った顔で言ったので誉めてくれるわけではないのだと気付いて緊張した顔をした。

「正直、俺はプロも素人も関係なく良いものは良いって言うしダメなものはダメってはっきり言うよ。じゃないと、自分の長所も短所も気付かないってこともあるし、改善できることも改善出来ないからね。それぞれ聞きたい人にだけアドバイスするけど」

と相川が言うと

「俺は自分の悪いところを教えて欲しいです」

と勇次郎は言った。

「本当に聞けるのか?」

と相川が言うと

「はい」

と勇次郎は真剣な顔でこたえた。

「じゃ、言うけど勇次郎の場合はリズムが安定してないんだよ。曲の始まりは良いんだけど途中からどうしてもリズムが狂ってしまう時がある。多分、気持ちが先走ってしまいそれが演奏にも影響すると思うから、もっと落ち着いて叩いた方が良い。それから、ドラムが狂うと全体が全て狂ってしまうからリズムを身体に染み込ませるような練習をした方が良い。ドラム練習するときはメトロノームを使って練習する。これは毎日続けた方が良い」

と相川が言うと俊太郎は落ち込んだ顔をしていたので

「あのな、これはお前に限ったことじゃ無いんだよ。俺がプロにした子たちはみんなメトロノームを使って練習してる。由岐や隼人も高校生の頃からメトロノーム使って練習してたって言ってたよ」

と相川は言った。

「はい、わかりました。メトロノーム使って練習します」

と勇次郎が言うと

「あと、聞きたい奴はいるか?」

と相川は聞いた。

「俺は…ギターが上達しないのでどうゆう練習したらいいんですか?」

と琳が聞くと

「上達するためにはやっぱり練習しか無いんだよ。教則本とか持ってるか?」

と相川が聞くと

「はい、一冊持ってます。でも、見てもイマイチわからなくて」

と琳が言うと

「DVDとか付いてる教則本買って目で見ながらひたすら練習したら良いんじゃないか?ちなみに俺が初めて綾子にギター教えた時綾子は中学生だったけど、綾子は指に血豆作りながら練習してたよ」

と相川が言うと琳は驚いた顔をした。

「まぁ、そこまでやれとは言わないけどテレビやマンガを見る暇があったら少しでも練習する…それが上達の近道だな。あと、演奏に関して言うと琳はもう少しドラムとベースの音をキチンと聞いた方が良いな。リズム隊に合わせて弾けるようになると技術が足りなくてもギターが格好よく聞こえるから」

と相川が言うと

「はい。もっと練習してさっちゃんと勇次郎の音もキチンと聞くようにします」

と琳は言った。

「じゃ、俺は…」

とさっちゃんが聞くと

「悟志は基本はそこそこ出来てると思うよ。でも基本が出来てるからこそまわりの音をキチンと聞いた方が良いな。ベースは地味に見えるけどバンドの要だ。ベースの良し悪しで曲の良し悪しも決まる。…そうだな。勇次郎と同じようにメトロノームを使う練習はもちろん、バンドで練習するとき最初は必ず勇次郎と二人だけでメトロノーム使って練習したら良いと思う。リズム隊の息が狂うと言うのは致命的な事だから勇次郎同様に悟志もリズムを身体に染み込ませるつもりで練習したらいいよ」

と相川は言ったあと真剣な顔で奏を見て

「奏は聞かなくて大丈夫か?」

と聞いた。

「いえ、教えて欲しいです」

と奏も真剣な顔をすると

「奏はボーカルだし一番目立つ位置にいるから他のメンバーより厳しいこと言うけど大丈夫か?」

と相川は更に聞いた。

「はい、大丈夫です」

と奏が言うと

「じゃ、はっきり言うけど基本中の基本の歌い方がダメだ。喉で歌ってるから音域の幅が狭くて高音になると苦しく聞こえるし、大きな声で歌おうとすると声が歪むしこのままだと確実に喉は潰れる。声って言うのは喉だけでなくて腹からも出すんだよ。それが出来るようになると大きな声で歌っても高い音で歌ってもツラく無い。毎日少しづつで良いから腹に手を置いて腹から声を出すことを意識した練習をした方がいい。もちろん歌う前もだ。札幌で和を見ただろ?和だって歌う前は必ず発声練習はしてるんだ。プロじゃないんだし、あそこまで長くする必要は無いけど腹から声を出す練習と喉を開くことは歌う前には必ずしろ。それから、まわりに合わせようとする姿勢は良いけど、それにばかり気を取られて歌の表現力が低い。お前はボーカルなんだからもっと感情移入して表現力をつけて歌わないとダメだ。じゃないと聞いてる方には何も伝わらない」

と言ったあと相川は琳たちを見て

「1人1人がまわりの音をキチンと聞いて自分に合わせてもらおうじゃなくて、まわりに合わせようと努力しないと演奏は完成しないし、ボーカルも曲に気を取られるばかりで演奏も歌もと何もかもがダメになる」

と相川は言った。

「…」

奏たちが黙っていると

「それから、文化祭ではオリジナルの曲はやめた方が良いな。人前でやるってプロになっても毎回緊張するんだよ。それが、今まで人前でやったことがなかったお前たちが突然オリジナルを無理してやるよりやり慣れてるSperanzaの曲の方が安定してるし良いよ。どうしてもやりたいって言うなら、一ヶ月も二ヶ月も毎日毎日朝から晩まで練習しなきゃ無理だよ」

と相川は言った。

しゅんとした顔をして俯いて話を聞いてる奏たちを見て相川は

「…先生、メトロノームってありますか?」

と聞いた。

「えっ、はい。あります」

と有田が言うと相川は突然笑顔になって

「じゃ、話はそのくらいで実践練習してみるか?…とりあえず俊太郎と悟志は先生についてもらってメトロノーム聞きながら二人で練習。その間に琳には少しギターの弾き方を教えてやるよ。奏は…財布貸すから飲み物調達してこい。暑くて喉渇いたよ」

と相川は言った。


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