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お隣のふにゃふにゃ王子様  作者: まあちゃん
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相川と結城の相違

電話をするためにロビーに向かってる相川は結城にどう伝えようか悩んでいた。

もし、奏が良い曲を作れるって伝えたら奏を何が何でも欲しがるだろう。

けど、もしも才能が無いといったところで和と綾子の子どもなのに才能が無いなんて信用しないだろうし才能を引き出せと言われるに違いない。

「…どっちにしても同じか」

エレベーターを降りた相川が呟いていると、楽しそうに話をしている親子とすれ違った。

奏にもあんな無邪気な頃があったな…。

和が綾子と一緒じゃないと寝れないんだと俺に報告してきたり、テレビに出てる和が格好つけて見てて恥ずかしかったって笑ったり…。

玩具のギターを綾子の真似して弾いたり、マイクを持って和の真似して歌ったり…。

あの頃には、こんな日が来るなんてな思ってもなかった。

ただ、このまま素直にすくすくと育って欲しいとそれだけを願っていた。

ロビーに着いた相川はソファーに座り一息深呼吸をすると、結城に電話をかけた。

ワンコール、ツーコール…なかなか結城は出ない。

向こうも打ち上げの途中だし出れないよな。

一応連絡はしたけど、電話に出なかったからってことにしておけば大丈夫だ。

相川はスマホを切ると目を瞑り考えた。

奏には才能あると思う。

基礎が出来てるからキチンとした曲を作れる。

自分の作った曲を客観的に見れる目も持ってる。

けど、自分が奏の将来を変えるような事をしてしまって良いのだろうか?

と相川が考えているとスマホの着信音が鳴った。

相川はスマホ見るとため息をついた。

「もしもし…」

『もしもし、ゴメンゴメン。プロモーターさんと話をしてたからさ』

「いえ、忙しいなら東京に帰ってからでも俺は大丈夫ですけど」

『大丈夫だよ。プロモーターさんとの話は佐伯に頼んできたから。…で、どうだった奏君は?』

いきなり本題を突きつけられて相川はドキッとした。

結城はやっぱり本気だ。

こんな結城に嘘はつけないと相川は思い話を始めた。

「はい。何から話したら良いのか迷うんですけど…。街中でスカウトは何度もされてるみたいです」

『やっぱり…。いるだけで目立つもんな』

「でも、奏は街中でスカウトするのは悪質スカウトか詐欺だと思ってるみたいで声をかけられても無視してるみたいです」

『そっか。声をかけるのが悪質ばかりじゃ無いだろうけど、こっちには有難いことだな。で、曲は聞いたの?』

「はい。奏がやってるバンドの演奏と奏が作った曲を…」

『バンドの音源も聞いたんだ。どう?やっぱりそこら辺の高校生とは違った?』

「違うって言うか…」

『なに、そんなにスゴいの?』

「結城さんが思ってる逆の意味でスゴかったです。あんな酷いの久しぶりに聞きましたよ」

『そんなに酷いの?奏君、ダメ?』

「奏は綾子の高校生の時と比べたら劣るとは思いますけどギターは上手いです。とんでもないメンバーとやっていてもどうにか音を合わせようと頑張ってる姿勢が感じられましたし…。でも、あのバンドは本当に酷いです。あまりにも酷いので逆に可哀想になっちゃって東京帰ったら練習見てやってアドバイスしてやる事にしました」

『本当に?名プロデューサーの相川慎二にそこまで思わせるバンドってある意味凄いな』

「本当、笑い話ですよ。…奏が楽しんでやってるから何も言えないけど、本音を言えば奏があんなバンドにいるのは正直もったいないですね」

と相川は笑ってると

『で、奏君の曲はどうだった?』

と結城は聞いた。

「良いと思いますよ…」

『それだけ?具体的な感想は無いのか?』

「曲の構成も上手いですし、強弱の付け方や転調のタイミングも上手いです。キチンと基礎が出来てるなって感じました。3曲聞きましたけど、どの曲も俺が今受け持ってる若手よりはるかに良い曲だと思いましたし、さすがあの二人の子どもだなって思いました。それから、自分で作った曲を客観的に見れる能力もありますし、修正するべき点も自分で分かってるみたいですけど、どう修正したら良いのかわからず本人なりに悩んでるみたいで…。けどこれは知識と経験不足からくる事だと思うので少しアドバイスをしました。あとはギターの技術が向上したら曲を作り直したいと言っていたので夏休みの間に俺が変わりにギター弾いてもいいので俺の家でその曲を完成させようと約束しまして…」

と相川は言ったあと、余計な事まで言ってしまったと思い

「で…でも、完成させると言ってもそれを口実に奏と遊びたいなって言うだけで。奏にも遊びに来るように話したんで…事務所の事とかそうゆうのは一切関係なくて…」

と焦って弁解した。

『そうか…。まあ、最初はそれでいいよ。初めから事務所の話をすると奏君も警戒してくるだろうし…少しずつな』

と結城は言うと

『実際のところ、お前が育てたら売り物になりそうなの?』

と聞いた。

「正直に言うと、今日聞いた曲でも少し修正すれば確実に売れると思います。…けど、やっぱり俺は奏には自分で自分の進む道を見つけてもらいたいし…。まだ迷ってるなら一生の事だし自分で納得出来るこたえが出るまで悩ませてやるのが良いと思うので、こっちの世界にズルズルと引きずりこむような事はしたくないって言うか…。和と綾子もきっと奏には自分で将来を決めて欲しいと思ってると思うので」

『俺だって最後に選ぶのは奏君だって事は分かってるよ。だから、こっちの道に進みたいって少しでも思うようにしなきゃなんないんだろ?』

「結城さん!俺はそれが嫌だって言ってるんです。奏には奏の人生があるんです。それを結城さんや俺が決めて良いわけ無いじゃないですか?どうして、そんなに意固地になって奏を欲しがるんですか?おかしいですよ!」

『おかしい?それはお前じゃないか?』

と結城が言うと相川はこの人にこれ以上何を言ってもムダだと思った。

何で奏の事を考えてやらないんだろう?

才能があったって最後に大事なのは本人の気持ちなのに…。

なぜ、こっちの世界に気持ちが傾くように仕向けようとするのだろう…。

『相川、お前が奏君の事を我が子のように大切にして可愛がってるのも知ってるよ。和や綾子や由岐…ボレロやSperanzaのメンバーだってお前と同じことを言うと思うよ』

「だったら…」

『でも、お前はアイツらとは立場が違うんだよ。お前は何の業種のどこの会社で何の仕事してるだ?』

「音楽プロダクションジェネシスの音楽プロデューサーです」

『だよな。今、俺が話してる事はビジネスの話だ』

「…」

『今まで見つけてきた子にも自分の将来は自分で決めさせたいなんて考えたか?綾子の時はどうだった?一度断られた事務所入りを諦められずに和を使ってまで契約させたんじゃないのか?それから、誠だってうちと契約したときは高校生だったはずだぞ。俺たちがせめて高校卒業するまで待てって散々言ったのに、そんなことをしてたら他に取られるって言い張ったのは誰だ?』

「それは…」

『相川…私情を挟まず考えてみろ。例えば、これが奏君じゃないそこら辺にいる見ず知らずの高校生だったらとして考えてみろよ。相川はその子をどう判断する?先に見つけたのにほかの事務所に持っていかれても平気なのか?自分で育てたい大きくしてやりたいって…その子と一緒に新しい夢を追いかけたいとは思わないのか?そこまでお前を思わせる才能は無かったのか?』

「…」

『もし、お前がそこまで思えなかったのなら彼のことは諦めるよ。相川は俺よりも人を見る目が肥えてるし、お前が見つけてきた子でハズレだった奴は今までいないしな。お前の意見を尊重してこの話は無かったことにするよ』

「…結城さん、すみません」

『良いんだよ。お前が彼じゃ無理だって言うなら契約したってうちには何の得にもならないしムダだってことだ』

「……すみません。本当にすみません」

『もう良いから。気にするな』

と結城が何度も謝る相川をなだめるように言うと相川は

「…今の時点で1人であれだけ作れるなら、あっという間に伸びると思います。けど、俺はゆっくりでも良いんで奏には自分の全てを教えてやりたいんです。何年かかってもいいから1から10まで全てを教えてやりたいと思えるだけの才能があるんです。それからでも遅くないと思うんです…。だから、この話は無かったことにしてほしいんです」

と相川は言った。

すると結城はため息をついてから

『相川、俺とお前は同じこと考えてるんじゃないか?』

と相川に聞いた。

「えっ?」

と相川が驚くと

『前にも言ったけど、俺はすぐにデビューさせるとかそんな事は考えてない。高校生なら高校生らしく過ごさせてやっても良いと言ったはずたし、将来司法の仕事に就きたいって言ったならそれでも良いとも言ったはずだよ。ただ、何年かけても良いからお前の持ってるもの知ってること全てを教えてやれって言ったんだ。ただ、他の事務所に取られたらそれが出来なくなるからうちと専属契約を結ばせろと言っただけだ。けど、本人が遊びでしか考えてないならお前が一生懸命教えても何の意味が無いだろ。だから、やる気を出させろって言ったんだ』

と結城は言った。

結城の話に相川が何も言えず黙っていると

『まぁ、スカウトも断ってるって言うなら急ぐ話じゃない。けど、お前の持ってるものを本当に教えるのはうちと契約してからだ。お前が教えたものを持って他の事務所に行かれてはこっちも困るからな』

と結城は言った。

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