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お隣のふにゃふにゃ王子様  作者: まあちゃん
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和の恋心 8

綾子の部屋に入った和は、いつもならすぐにベッドに座るのにこの日はどこに座っていいのか迷っていた。

綾子は大地の話を聞いてもらいたいとも思っている。

自分の事を心配している…じゃなかったのか?

昨日から自分は綾子と大地に振り回されっぱなしりだなと和は小さくため息をついたが、それに気付かない綾子はベッドに座り

「座んないの?」

と和に聞いた。

「えっ?あ…うん」

と和があやふやな返事をすると綾子はいつも和が綾子にするようにベッドをポンポンと叩いて隣に座るように促した。

和はフッと笑い

「誰の真似してるの?」

と言って綾子の隣に座った。

あー、ダメだ。

綾子には勝てない。

自分は結局、大地が話を聞いてやるしか無いんだなと思った和は綾子の膝に頭を乗せて

「大地君と何かあったの?」

と聞いた。

「…なっちゃんがせっかくくれた金魚なんだけど、大地は飼えないからって私がもらったの」

と綾子が言うと

「金魚?そっか…。何か悪いことしたね」

と和は言った。

「ごめんね」

と言うと綾子は寂しそうな顔をして

「大地ね、明後日北海道に引っ越しするんだ」

と言った。

「引っ越し?」

と和が聞くと

「うん。お父さんの仕事で行くんだって。それでね、明日学校でクラスのみんなでお別れ会するんだ」

と綾子は言った。

だから、明日遅れないでよって話をしていたんだと思った和は綾子と大地が二人で遊ぶ訳じゃないとわかりホッとしたが、寂しそうな顔をしている綾子を見てると

「寂しくなるね」

としか言えなかった。

「うん。大地は男子の中では一番の友達だからいなくなるの寂しい」

と綾子が言うと

「綾子、大地君は遠くに行っちゃうかもしれないけど、だからって大地君と友達じゃなくなる訳じゃないんだよ」

と和は言った。

「だって北海道に行ったら新しい友達できて私たちのことなんて忘れちゃうよ」

と綾子が言うと

「そうかな?綾子は新しい友達が出来たらそれまで仲良かった友達の事をわすれちゃう?」

と和は聞いた。

「そんなことはない」

と綾子が言うと

「だろ?新しい友達が出来たって今までの友達とも友達のままだろ?それと同じ。遠くにいて会えなくても大地と綾子は友達。友達はずっと続くんだよ」

と和は言った。

「よくわかんないけど、私と大地は友達なんだね」

と綾子が言うと

「そうだよ」

と和は言った。

綾子が大地と離れるのを寂しがっているのがわかっていて偉そうなことも言ってるのに…心の中では大地が遠くに行くことを綾子から離れることを喜んでいる自分がとても嫌な人間だと思った和は、綾子の腰に腕をまわし抱き締めると綾子のパジャマに顔を伏せて綾子に見られないようにした。

そんなことを知らない綾子はいつものように和の髪を優しく撫でながら

「今日のなっちゃん、ずっと我慢して笑っるみたいだったけど何かあったの?」

と聞いた。

「…俺?俺は…」

と和が言うと

「私じゃ相談にのってあげれないこと?」

と綾子は言った。

「…」

和は綾子の腰をギュッと抱き締めて

「俺のことは大丈夫だよ。綾子の顔を見たら悩んでたことも忘れちゃった」

と言ってから

「あのさ…」

と話を切り出した。

「あのさ…。綾子はその…大地君が好きなの?」

と和が顔を伏せたまま聞くと綾子は

「大地?全然好きじゃないよ」

と笑った。

「本当?」

と和が聞くと

「本当だよ。なんで私が大地好きなの?変なの」

と綾子はまだ笑っている。

「そっか…。じゃあさ…俺は?」

と和が聞くと

「えっ?」

と綾子が驚いた。

「俺は好き?」

ともう一度聞くと

「好きだよ」

と綾子は言った。

和は泣きたくなるぐらい嬉しい気持ちになったと同時に胸がキューッと締め付けられるような…でもその胸の痛みは自分が妹としてではなく1人の女性として綾子の事が好きなんだとはっきり気付かせた。

「俺も好きだよ」

と思わず言ってしまった和は恥ずかしさで耳まで真っ赤にして綾子のお腹に顔を伏せた。


酒もそこそこに和の話を聞いていた直則たちは

「そこでやっと気付いたって訳か」

と結城が言うと

「もっと単純だと思ってたけどここまで長かったな」

と直則も言った。

「そりゃね。相手は小学生だし好きだってことを自分の中で受け入れるのは難しかったからね」

と和が笑ってると

「…その大地って子は結局は引っ越したけど母さんのことはどう思ってたんだろう?」

と奏は呟いた。

「どうだろ?本人に聞いてみる?」

と和が言うと

「えっ?本人?」

と奏たちは驚いた顔をした。

「本人ってどうやって聞くわけ」

と直則が笑うと和は綾子たちの座ってる席の方を見て

「多分、あそこで綾子と話してるちょっと偉そうな奴が大地だよ」

と笑った。

「はっ?あの人ってここに着いてすぐ挨拶しましたけど、部長さんですよね?」

と佐伯が言うと

「そういえば、ここのビアホールって綾子のつてで無理言って開けてもらったんだ」

と結城も言った。

「マジ?じゃ、引っ越したあとも二人は繋がったいたの?」

と直則が言うと

「さあ?俺も詳しいことは分からないから、彼に聞いた方が早いよね?」

と和は笑った。

「お前、何か怖いわ」

と直則が言ってると、和たちの視線に気付いた大地が和たちの席の方へやってきて

「ご挨拶が遅くなり申し訳ありません。この度は当店をご利用頂き誠にありがとうございます」

と大地は頭を下げた。

「そんなかしこまった挨拶いいよ。こちらこそ、こんな時間に開けてもらって悪かったね」

と和が言うと大地は笑顔で

「ナゴミさんは昔と変わらずとても優しい方ですね」

と言った。

「えっ?俺のこと覚えてるの?」

と和が驚いた顔をすると

「はい。祭りで金魚を頂いて。あと、夜遅くなると親が心配するからって気を使って頂いたり。私はナゴミさんみたいな男になりたいなって憧れました」

と大地は言ったあと

「でも、当時の私はまだまだヤンチャな子どもであなたのような男には到底なれそうもなかったですけど」

と笑った。

「そうなの?で?こんなことを聞いていいかわかんないけどサッカーはどうしたの?」

と和が聞くと

「高校で膝を悪くして辞めてしまいました」

と大地は笑った。

「そうなんだ。何か悪いこと聞いたね」

と和が言うと

「いえいえ、医者に止められていたのを隠してサッカーやった自分が悪いんで仕方ないです。それに、高校まででサッカーはやり尽くした感はあるので後悔もしてませんし」

と大地は言った。

「あの、部長さんは綾子と同級生だったんですよね?」

と直則が聞くと

「はい。同級生と言っても小学5年生までですけど」

と大地は言った。

「綾子はどんな小学生でした?」

と直則が聞くと

「あ…言って良いのかな?」

と大地は和をチラッと見てから話を始めた。

「彼女…綾子はとても人気のある女の子でしたよ。お兄さんがいるからか男の子とも気さくに話が出来る子だったしスポーツも出来る子だったんで男の子の友達は多かったですね。だからと言っていつも男の子と遊んでる訳じゃなくて、女の子の友達も多かったですね。何かあると綾子に相談するって女の子が多かった気がするし、女の子たちが綾子とコソコソ話をしていると男の子たちはヤバイなって思ってました」

と大地が言うと

「ヤバイって何が?」

と和は聞いた。

「それは…言って良いのかな?」

と大地は困った顔をしたが何か面白そうだなと思った直則が

「良いから良いから。綾子には黙っておくから」

と言った。

「まぁ、昔の話だし内緒ってことでもないと思いますけど、綾子ってスゴい友達思いって言うか…女の子が男の子に意地悪されたとか聞くと物凄い怒って口だけじゃなくて叩いてきたり蹴ってきたりして…。男の子と対等にケンカしてたんですよ」

と直則が言うと和たちはそんな綾子を知らないのでとても驚いた顔をした。

「まぁ、5年生ぐらいになるとさすがに暴力は振ることは少なくなったけど女の子に謝れってしつこくて…。しつこく言われるとこっちも意地になって謝らなくなる年頃じゃないですか?するとスポーツで勝負しようとか言ってきて。綾子に負けたら女の子に謝るって勝負するんですけど、綾子はとても負けず嫌いで男の子と放課後サッカーとかしてても互角に出来るって知ってるんで綾子から勝負挑まれると男の子はキツかったですね。女の子に負けるのって結構精神的にキツイじゃないですか。だから、女の子が綾子と内緒話をしてると男の子はみんな自分のことじゃないかとビクビクしてました」

と大地が笑うと

「和、知ってた?」

と直則は聞いた。

「いや…知らなかった。俺、綾子と同級生で産まれたかったって思ってたけど産まれなくて良かったかもって初めて思った」

と和が笑うと

「でも、綾子の事が好きだって男の子って結構多かったですよ」

と大地も笑った。

「そうなの?」

と直則が聞くと

「誰とでも仲良くなれる子だったし顔がとても可愛かったですからね」

と大地は言った。

「俺が初めて会ったときは中2で由岐に似た顔してるけど可愛い顔してるなと思ってたけど、やっぱり小学生の頃も可愛かったんですね」

と結城が言うと

「部長さんもやっぱり綾子の事が好きだった1人だっんですか?」

と直則はニヤニヤ笑って聞いた。

「私ですか?…私はそうゆうのは一度も無かったですね。親友だと思ってましたけどね」

と大地は言ったあと

「綾子は友達の恋愛話には一生懸命だけど自分のことは全然興味ないって言うか…。多分、自分のことを好きだって思ってる子がいることさえも気付いて無かったみたいですよ」

と笑った。

「ははっ!綾子の恋愛の疎さは小学生のうちからなんだ」

と直則が笑うと

「でも、綾子はあの頃からずっとナゴミさんのことが好きだったと思いますよ」

と大地は言った。

「俺のこと?」

と和が聞くと

「今でも覚えていますが、祭りの日にあなたと話してる綾子の顔は私が知ってるなかで一番可愛い顔してました。あんなに可愛い顔は後にも先にも、あの日が最後でしたね。と言ってもそのあとすぐに転校したから後は無かったんですけど、あの顔を見たときすぐに綾子はこの人が好きなんだって思いましたね」

と大地は笑った。

「そっか…。でも、大地君が転校するのを綾子はとても寂しがっていたんだよ。離れたら友達じゃなくなるって」

と和が言うと

「そうなんですか…。でも、そうですよね。多分、綾子がミュージシャンになってなかったら再会することも無かったかもしれませんしね」

と大地は笑った。


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