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お隣のふにゃふにゃ王子様  作者: まあちゃん
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楽屋訪問

ボレロの楽屋に続く廊下を歩きながら、綾子は

「相川さん。私は行かなくていいです」

と言った。

「何で?」

と相川が聞き返すと

「私は、やるって決めた訳じゃないし挨拶に行く必要ないです」

と綾子は言った。

「何言ってるの?綾子ちゃんは挨拶に連れてく訳じゃないよ。どうせ行くならナゴミが一番喜ぶ手土産持って行こうと思っただけ」

と相川は笑った。

「あの…何で一番喜ぶ手土産が綾子なんですか?」

と渉が聞くと

「行けば分かるって。それよりも、君たちそんなに緊張しなくていいから。ボレロもステージ降りたら気さくな近所の兄ちゃんみたいなヤツらだからさ」

と相川は笑った。

「でも、ボレロって俺たちのずっと憧れで、その人たちに会えると思ったら…」

と隼人が言うと

「俺なんてナゴミに抱かれても良いってぐらい好きで…」

と渉が言った。

「ナゴミに抱かれても良い?」

と相川は大きな声で笑ったあと

「それ聞いたらアイツなんて言うかな?多分、アイツが抱きたいのは違う人だと思うけどな」

とチラッと綾子を見た。

「綾子ちゃんはボレロの誰が好きなの?渉君と同じでナゴミ?」

と相川が意地悪そうに聞くと

「綾子はユキがスゴい好きなんですよ」

と渉が言った。

「ちょ…渉!余計なこと言わないでいいから」

と綾子が慌てると

「ユキが好きなんて以外だな。アイツ喜ぶよ」

と相川は笑った。

楽屋が近くなって来ると、忙しそうに動き回るスタッフらしき人とすれ違う事が多くなってきた。

「スゴいですね…みんなスタッフですか?」

と誠が聞くと

「そうだよ。今日のライブのために、この場にいない人も含めてたくさんの人が動いてるからね。こうゆう人たちに支えられてボレロがあるんだよ」

と相川が言った隣で綾子は暗い顔をしていた。

「綾子、顔色悪いけど大丈夫?」

と隼人が聞くと

「ちょっと具合悪くて…やっぱり今日は帰りたいんですけど」

と綾子は言った。

「…そんなに楽屋に行くのが嫌なのは何か理由あるの?」

と相川が聞くと

「…」

綾子は黙ってしまった。

相川はその姿から何かを感じとり、ため息をついて

「分かったよ。これ以上無理は言わないよ。とりあえず、挨拶に行くって約束してるからコイツら連れてくけど、綾子ちゃんは一人で帰れる?」

と聞いた。

渉が

「俺も一緒に帰るか?」

と心配そうに言うと

「大丈夫。一人で帰れるから」

と言うと綾子は深々と頭を下げて

「本当にすみません」

と言って来た道を戻って行った。

「綾子、大丈夫かな?」

と渉が心配そうに言うと

「ま、これからも会う機会はいくらでもあるし、具合悪いなら仕方ないな」

と言って相川は

「さ、向こうも待ってるだろうから行くぞ」

と言って歩き出した。


ボレロの楽屋の前に着くと

「やべぇ。俺手が震えてきた…」

と渉は言った。

「そんなに緊張しなくても大丈夫だから。ほら行くぞ」

と笑うと相川は楽屋のドアを開けた。

「あ、相川さん」

ドアを開けてすぐに声をかけてきたのはタケだった。

「お疲れさん」

と相川が言うと

「ありがとうございます。今日のライブどうでした?」

と由岐が聞いた。

「今まで見たなかで一番だったよ」

と相川が言うと

「やった!俺、相川さんに初めて誉められたよ」

とタケとカンジがガッツポーズをした。

相川の後ろで緊張で小さくなってる渉たちに気付き

「相川さん。後ろで固まってる子は?」

と由岐は聞いた。

「あ、忘れてた忘れてた。お前たちの可愛い後輩になる子たちを紹介しようと思って連れてきたんだった」

と言って渉たちを自分の前に立たせて

「昨日聴かせたあのバンドの子たちだよ」

と相川は言った。

相川が一番左にいる誠の肩を叩いて

「コイツがベースの誠…まぁ、あの音源は違う子が弾いてるんだけど、これからコイツが弾くから」

と言うと

「よろしくお願いします」

と誠は頭を深々と下げた。

「で、コイツがドラムの隼人」

と相川が隼人の肩を叩くと

「よろしくお願いします」

と誠と同じように深々と頭を下げた。

「そして、コイツがボーカルの渉」

と相川が肩を叩くと

「よろしくお願いします!」

と渉は人一倍大きな声で言うと深々と頭を下げた。

「若い子は元気あるねー」

とタケは言ったあと

「ギターの子は?」

と相川に聞いた。

「今日は先に帰った」

と相川が言うと

「なんだよ。俺、会うの楽しみにしてたのに」

とタケは残念がった。

「実はさ…。ギターの子は迷ってるらしくて首をなかなか縦にふらないんだよ」

と相川は頭をかいた。

「マジ?何で?あんなに才能あるのに?」

とカンジが言うと

「自分では才能あるのに気づいてないみたいなんだけど、問題はそこじゃないと俺は思うんだよね。いろいろあるみたいでさ」

と相川は言った。

「もったいないな…。今度会わせてよ。俺が話してみようか?」

とカンジが言うと

「あー、あの子はユキのファンらしいから、ユキが話してくれたらやる気になるかもな…今度会ってくれないか?」

と相川は言った。

「俺?まぁ、ナゴミが悔しがるくらいの才能あるヤツだし、興味あるから会ってもいいですよ」

と由岐は言った。

「じゃあ、頼むわ。…ところでナゴミは?渉がスゴいファンらしいから会わせてやりたかったんだけど」

と相川が言うと

「あー、アイツはまだシャワーから帰って来てないよ。どうせ電話でもしてるんじゃない?」

とカンジが言うと

「だよな。楽屋だと由岐がいるから連絡しづらいもんな」

とタケは笑った。


相川たちと別れた綾子は少し離れた所にある椅子に座っていた。

渉と隼人は相川の誘いを受けると言っていた。

自分たちがどこまで出来るか知りたい気持ちもある。

和が泣いてしまうほどの景色を見てみたい気持ちもある。

けど、由岐がツアーに出る度に神社に行って無事に帰ってくる事を祈ってる母親、プロになると言ったとき今まで何でも好きな事をやらせてくれた父親が本気で怒った事を考えるとすぐにやりたいとは言えない。

そして、由岐と和。

今日、武道館に立つまでには自分が知ってる以上にツラい事があったはず。

ボレロが歩んできた道を女の自分が歩こうとしてることを快く思ってくれるだろうか?


「綾子?」

シャワー室から楽屋に戻る途中の和が椅子に座ってる綾子に気付いて声をかけた。

「綾子、来てくれたんだ」

と和は嬉しそうに言った。

「なっちゃん、お疲れ様」

とこたえた綾子は悩んでいることを知られないように明るく振る舞った。

「綾子…ちょっと」

と和は綾子の手を引っ張るとちょうど死角になってる場所に連れていき、綾子をギュッと抱き締めた。

綾子も和の背中に手を回してギュッと抱き締めると

「綾子、キスして…いいかな?」

と和は聞いた。

「え?あ…」

と綾子が恥ずかしがってると和はチュッとキスをした。

「やべぇ。我慢できなくて勝手にしちゃった」

と言うと和は、とても愛情深い優しいキスをしてもう一度綾子を抱き締めると

「ずっとこうやってたいけど、楽屋に戻らないとアイツらになに言われるか分かんないしな…」

と言ってもう一度綾子にキスをした。


楽屋ではボレロのメンバーと渉たちが話をしていた。

「渉はナゴミが好きなのかぁ」

とカンジが言うと

「はい。中学の時にライブ見に行って、その時loverをやってたんですけど、その歌声がスゴい切なくて。それを聞いた時に、俺男だけどナゴミさんになら抱かれてもいいって思っちゃったんですよ」

と渉は言った。

「ナゴミに抱かれてもいい?マジ?スゴいな。それ聞いたらアイツなんて言うかな?」

とカンジが笑うと

「あの歌詞はナゴミのラブレターだからね。君は抱いてもらえないと思うよ」

とタケは言った。

「ラブレターなんですか?」

と誠が聞くと

「そう、アイツずっと片思いしててさ。やっと最近その子と付き合えるようになったんだけど、長かったな…誰かのせいで」

とタケは由岐を見た。

「俺?俺は何もしてないけど」

と由岐が言うと

「いやいや、由岐が怖くてあと一歩が踏み出せなかったんだよ」

とタケは笑った。

「ナゴミさんが片思いとか想像出来ないな」

と渉が言うと

「世間的には抱かれたい男だからね。だけど、休みのアイツは別人だよ。確か彼女の友達に不審者って言われた事あったよね?村上さん」

とカンジが言うと

「その時、俺は裏社会の人間って言われたよ」

と村上は言った。

「確かに村上さん強面だからね。コイツらのマネージャーじゃなければ俺も絶対に近寄らないよ」

と相川は笑った。


楽屋に続く廊下を和は綾子の手を握り歩いていたが

「私、なっちゃんに会えたしもう帰るよ」

と綾子は言った。

「何で?みんなもいるから寄ってきなよ」

と和が言うと

「でも、ちょっと…」

と綾子は困った顔をした。

「もしかして由岐?」

と和は綾子に聞いた。

「え?」

と綾子が驚くと

「一昨日のこと、由岐に何か言われたの?」

と和は言った。

「そうゆう訳じゃないけど」

と綾子がいうと

「大丈夫。由岐は気にしてないだろうし、何か言われたら俺が悪いって事にすればいいんだから」

と和は綾子の手を握り楽屋のドアを開けて

「悪い悪い、遅くなって。そこで綾子に会ってさ」

と和は言った。

渉たちは綾子がナゴミと手を繋いでいるのを見て状況が把握できなくて固まって何も言えなくなったが、それに気付かない和は

「由岐、お前綾子に何言ったんだよ。綾子が由岐に会いたくないって言ってたよ」

と言った。

「は?俺何もいってないけど?」

と由岐が言うと

「ほら、由岐は気にしてないんだから綾子も気にしなくていいんだよ」

と和は綾子に言った。

「綾子ちゃん久しぶりだね。ついに兄貴の許しが出て和と付き合い始めたんだって?」

とカンジが言うと綾子は困った顔をした。

「和の愛が怖くなったら俺たちに言いなよ」

とタケが言うと

「何が怖いんだよ」

と和はふてくされて言った。

「だって、いつでも綾子綾子うるさいし」

とカンジが言うと

「付き合い始めたばかりで朝までキスして唇腫らすとかあり得ないだろ?大人ならもう少し考えろよ。綾子ちゃんもイヤな時はイヤって言っていいんだよ。綾子ちゃんが言わないと付け上がるからね」

とタケが言った。

「まぁまぁ、和を弄るのもそのくらいにしとけよ。可哀想だろ?」

と相川が言うと

「相川さん。いたんですか?」

と和は驚いた顔で言った。

「おいおい、お前いい加減にしろよ。昨日聞かせたバンドの子たちを連れてくるって言ってただろ?」

と相川は言った。

「そういえば、言ってましたね」

と渉たちを見て

「この子たちですか?」

と和は言った。

「そう、じゃ改めて紹介しようか。左側からボーカルの渉、ベースの誠、ドラムの隼人だよ」

と相川が言うと

「ギターの子は来てないんですか?」

と和は言った。

綾子はギュッと目を瞑り相川が自分の事を言わない事を願っていた。

相川も綾子の様子から、言わないで欲しがってると気付いたが

「あー、…ギターはね。お前が今連れてきた綾子ちゃんだよ」

と相川は言った。



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