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お隣のふにゃふにゃ王子様  作者: まあちゃん
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和の恋心 2

「膝枕?」

と直則が聞くと

「そう、膝枕が気持ちよくてね」

と和は言った。

「膝枕ですか…」

と佐伯が残念そうに呟くと

「残念がんなよ。その膝枕に俺の人生を変えた思い出があるんだよ」

と和は言ったあと話を始めた。


幼い頃、毎日両親が仕事で帰りの遅い和は、学校から帰るとまるで我が家のように隣の由岐の家に寄り由岐と一緒に習い事に行き夕食を食べて宿題をして遊んで欲しいとせがむ綾子の相手をして両親の迎えに来るのを待っていた。

両親が仕事で帰ってこれない日は由岐の家で眠り次の日由岐の家から学校に行ったりもしていた。

「なっちゃんは本当にいい子にしていたよ」

と由岐の両親が自分の両親に言うと、両親はとても安心した顔で嬉しそうに和の頭を撫でてくれた。

「いい子にしてるとお父さんもお母さんも嬉しいんだ」

幼い和は両親を喜ばせたいためにいい子になろうと頑張った。

一生懸命勉強してスポーツも習い事も頑張って友達とも仲良くして学級委員もやって心配かけるような事は一切しない…ドラえもんで言うならば出来杉君みたいな小学生だった。

けど、中学に入ると勉強もスポーツもと何でも人並み以上に出来ることでまわりからも期待をされるようになった。

期待を裏切らないように…と言うプレッシャーで押し潰されそうになりながらも和は頑張った。

押し潰されそうになっても頑張れたのは由岐がいたからだった。

「まわりから期待をされるのは由岐も自分と同じだ。由岐も期待を裏切らないように文句も言わずに頑張ってる」

それが和の唯一の救いだった。

中学2年の時、いつものように由岐の家で夕食を食べてた時に由岐と綾子がケンカを始めた。

ケンカの理由は綾子が最後に食べようと残していた大好きなおかずを由岐が取ったという本当にくだらない理由だった。

綾子が泣きそうになってるのを見て由岐は笑いながら綾子のおかずを食べていると、いつも穏和な由岐の父親が

「そうゆうくだらない事でケンカをするな」

と二人に怒り綾子に自分のおかずを分けた。

それで綾子は渋々機嫌を直したが由岐は

「父さんはいつも綾子にばかり甘い。そんな事だから、綾子は甘えてばかりで勉強も出来ないバカなんだ」

と父親に反抗した。

すると機嫌を直したはずの綾子が泣き出してしまい和が綾子を慰めている隣で由岐と父親は言い争いを始めた。

「綾子、泣くなよ」

と口では綾子を慰めていたが和は由岐と父親を見て泣きそうになっていた。

「自分と由岐が同じ?そんなわけない。由岐はおじさんにも綾子にも言いたい事を言える。いつでもどこでも期待を裏切らないようにって頑張る自分とは違う。言いたい事を言えない自分とは違う…。そんなのずっと前からわかってたじゃないか。気付かないふりして見ないふりしてただげじゃないか」

和はとても自分が惨めに思えてきて涙が浮かんできた。

「綾子、もう泣くなよ」

と和が綾子の頭を撫でると

「…」

綾子は泣き晴らした目でじっと和の顔を見てから

「お父さんもお兄ちゃんもケンカやめてよ。なっちゃん可哀想だよ」

と言った。

由岐と父親が綾子の言葉に驚いていると

「なっちゃんは、優しいから頑張ってるけど本当は泣きたいんだよ!おじさんもおばさんも忙しくていつもなっちゃん寂しいのに泣かないで頑張ってるんだよ!お兄ちゃんみたいにお父さんに文句言いたくても我慢してるんだよ!」

と綾子はぐしゃぐしゃの顔で怒った。

「綾子、俺は何も我慢なんてしてないよ…」

と和は言ったが言葉とは裏腹に次から次へと大粒の涙が溢れてきた。

「なっちゃん…」

と由岐の両親も由岐も泣き出してしまった和になんて声をかけていいのか分からず黙っていると、綾子は小さな手で和の頭を撫でて

「なっちゃん…寂しいくて甘えたくなったら私に甘えていいからね。私はなっちゃんが泣いても笑ったりしないから大丈夫だよ。お兄ちゃんだってなっちゃんいない時にお母さんに怒られて泣いてたりするんだから泣くのは恥ずかしくないんだよ」

と笑った。


和の話を聞いていた直則が

「綾子、スゴいな」

と呟くと

「小学生がそんな事を言えるなんて信じられないな」

と結城は驚いた顔をした。

「でしょ?本当に綾子はスゴいんですよ」

と和は言うと

「で、話の続きなんだけどさ。そんな風に泣いちゃった次の日って気まずいじゃない?たがら、いつも由岐が迎えに来る時間より先に学校に行っちゃおうと思って玄関出たら門の前に由岐が立っててさ」

と笑いながら和は続きの話をした。


和は気まずい顔をして門を出ると

「おはよう」

と言った。

「おはよう」

いつものように由岐も挨拶したが、二人の間には何とも言えない空気が流れていてお互いに何をどう話していいのか迷ってしまい、何も話さないままいつもの道を歩いていた。

近くの信号を渡ってる途中で

「あのさ…」

と由岐が話を切り出した。

「ん?何?」

と平然を装っていたが内心由岐に何を言われるのだろう?昨日の事を笑われるんじゃないか?とドキドキして和が聞くと

「綾子がさ、口聞いてくれないんだよ」

と由岐は言った。

「綾子?」

と和が言うと

「うん。和が帰ってから俺の事を完全無視。口を聞かないどころか目も合わせないし俺が近くに寄ると逃げるように慌ててどっか行くし」

と由岐は怒ったように言った。

「へえ、綾子がそんなに怒るなんて珍しいな」

と和が言うと

「だろ?いつもなら朝起きたら前の日の事なんてすっかり忘れてるのに今日はおはようって言っても無視だよ。本当に生意気だよ」

と由岐は言った。

「それはさ、頭が悪いだバカだって言うからだろ?綾子だって教えてやれば勉強出来るし。自分が出来るからってお前は綾子をバカにし過ぎなんだよ」

と和が言うと今まで怒っていた由岐が小さくため息をついて

「だと思ってさ、綾子の事を本当にバカだと思ってないって言ったんだけどそれも無視」

と言った。

「そんなの初めてじゃない?お兄ちゃん大好きな綾子が…」

と和が驚いていると

「そうなんだよ。で、こりゃ本当にヤバいと思って学校から帰ったら母さんに内緒で一緒に多賀庵行っていちご大福食べてこようか?って言ったら勉強するから行かないだって」

と由岐はさっきまで怒っていたのが嘘のように落ち込んだ声で話を続け

「だからさ、じゃ勉強みてやるよって言ったらなっちゃんに教えてもらうからいいだって」

と更に落ち込んだ声で言った。

「俺?」

と和が驚くと

「和に教えてもらった方が解りやすいんだって。だから、今日は絶対に家に来るように言っておいてよ、もしなっちゃんが来なかったらお兄ちゃんのせいだから一生口聞かないからって怒って学校行ったよ」

と由岐は言った。

「なにそれ?」

と和が笑うと

「知らないよ。俺より和に教えてもらう方がいいんだろ?昨日までお兄ちゃんお兄ちゃん煩かったくせに」

も由岐はふて腐れた顔で言った。

由岐の顔を見て和は思わず笑ってしまいながら

「由岐さ、綾子の事を煩いとかウザいとか昔から言ってるけど、本当は大好きなんだな」

と言うと

「まあ、妹だしね。お兄ちゃんお兄ちゃん煩いけど可愛いよ。それが俺よりも和の方がいいなんて…」

と由岐は言った。

「なあ、それってシスコンなんじゃないの?」

と和がまた笑うと

「シスコン?まさか、そんなわけないだろ?」

と由岐が驚くと

「いやいや、シスコンだって。じゃさ、もしも綾子に好きな子とか彼氏とか出来たらどうすんの?」

と和は聞いた。

「綾子に好きな子?綾子は俺の事が大好きなんだから好きな子なんな出来ないだろ?」

と由岐は言った。

「いつまでも由岐が好きなわけないじゃん」

と和が笑うと

「そうなのかな?」

と由岐は考えた。

「それにさ、今どきの小学生は付き合ったりもするみたいだし、チューだってするみたいだよ」

と和が更にからかうと

「チュー?まさか…」

と由岐は言った。

「だって彼氏とか出来たら小学生でもそうゆうのするんじゃないの?」

と和が言うと

「それはダメ。小学生が彼氏って言うのはダメだ。せめて高校生とかになんないとダメだ。けど、綾子の彼氏は俺が認めた奴じゃなきゃ絶対ダメだ」

と由岐は言った。

「はあ?俺が認めた相手とか…。綾子が由岐に認められるような男を好きになるなんて限んないじゃん。由岐さ、かなりヤバい方のシスコンなんじゃないの?」

と和が笑うと

「じゃあさ、和は綾子が変な男と付き合ってもいいと思うの?」

と由岐は聞いた。

「まぁ、綾子が好きになったなら仕方ないんじゃないの?」

と和が言うと

「例えばだけど、上杉みたいに次々と女と付き合うような奴でも?」

と由岐は言った。

「それは…ちょっと。さすがに俺にとっても綾子は妹みたいなもんだし、上杉みたいな奴とはね…」

と和が言うと

「だろ?だからさ、綾子に寄ってくる男を追い払うのお前も協力すれよ」

と由岐は言った。

「追い払うって…何すんの?」

と和が戸惑った顔をすると

「大丈夫、ボコボコにしろとか言ってる訳じゃないから。たださ、和がジロッと睨めば普通の奴はヤバいって思って逃げて行くから睨んでやればいいんだよ。ほら、俺がそれをやるとまた綾子に嫌われるだろ?だから、和がやってよ」

と由岐は言った。

「綾子に嫌われるって…。じゃ、俺は良いのかよ?」

と和が言うと

「大丈夫、和が綾子に嫌われても俺はお前と友達やめたり絶対しないから安心しろ」

と由岐は笑った。


「こうして、由岐のシスコン人生が始まったんだよ」

と和が笑うと

「何か…お前たち頭は良いかも知れないけどバカだな」

と結城は言った。

「と言うか俺は綾子さんが気の毒だなって思いますね…」

と佐伯が言うと

「その上、由岐の認めた男って言うのがさ、散々言われた上杉君とたいした変わらないって言うか…上杉君よりひどい男だったなんてな」

と直則は残念そうに言った。

「父さんが母さんに彼氏が出来たらどうするって由岐ちゃんに笑って話すって言うのがイメージ出来ないんだけど」

と奏は言ったあと

「あのさ、膝枕の話が出てきてないんだけど、それはまだ先の話なの?」

と聞いた。

「膝枕?あー、そうだった。由岐のシスコン話してたら忘れてたよ。膝枕はね、その日の夜に初めてしてもらったんだよ」

と和は笑った。

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