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お隣のふにゃふにゃ王子様  作者: まあちゃん
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ライブ本番

5人がステージ上のそれぞれの位置に立つと会場に流れていた音楽が終わり会場を暗幕を照らしていたライトも消えた。

次の瞬間暗幕が落とされたが、真っ暗な闇に包まれてfateの登場を待ちわびる観客の熱気と声援で誰一人として暗幕が落とされた事に気付いていなかった。

一瞬の間をおいて、直則のハイハットを叩く音が聞こえてきた。

ナゴミと綾子のツインギターのイントロで始まるspiritの演奏が始まるとステージのライトが上下左右とリズムに合わせて点灯して消灯して点灯してと繰り返され直則のドラム、和樹のベースが重なると

「Yeah!」

と言うナゴミの叫び声で目映いぐらいの照明でステージは明るくなり観客からはナゴミの叫び声がかき消されてしまうほどの大歓声が上がった。

激しくドラムを叩く直則、笑顔でキーボードを弾く奏太、柵に片足を乗せ観客を煽っているかのような顔でベースを弾く和樹、リズムを取りながらギターを弾く綾子、ギターを弾きながら鋭い目で観客席を見ながら歌うナゴミ…。

昨日、今日とリハーサルで見てきたのと同じ曲を同じ演出で演奏しているのにリハーサルで見たものとは全く異なるものを見ているように感じた奏は、袖から見えるステージに釘付けになった。

「奏君、これ渡すの忘れてたね」

と結城が奏にイヤモニを差し出したが、奏はそれに気付かず真剣な顔でステージを見ていた。

「…」

結城は奏の横顔を見て驚いた顔をした

親子ってこんなにも似るんだな…と結城は思った。真剣な顔でステージを見てる奏の眼差しはステージに立ってるナゴミと瓜二つの鋭い目をしていて、奏から発している空気はステージに立ってる綾子と同じ…いや、それ以上かもしれないと思うと結城は思った。


4曲を演奏し終えたところでステージのライトが薄暗くなり、ナゴミはスタッフにギターを渡し直則のドラムセットの乗っている台に置いてあるミネラルウォーターを飲み立ち位置に戻るとナゴミはスポットライトに照らされて今日最初のMCを始めた。

「初めまして、fateです」

とナゴミが言うと観客からは歓声が上がった。

ナゴミは観客席をグルッと見渡しながら

「こんなにも俺たちのライブに来てくれてテンション上がるね。それに札幌は可愛い子が多いし、めちゃくちゃに可愛がってやりたくなっちゃうね」

と艶のある笑みで言うと観客席からは更に大きな歓声が上がった。

「…こうやって見ると男も多いね。女の子はもちろん大好きだけど俺は男も好きだから嬉しいね」

とナゴミが言うと図太く低い歓声が上がった。

「いろいろ話したい事と考えてきたんだけど、それよりも時間を共有して一緒に最高に気持ちの良いところにいった方が面白いかな?って思ったんでどんどん曲をやっていこうかな?」

と言ってからナゴミは直則を見て

「じゃ、曲を始めようか?」

と言うとナゴミを照らしていたスポットライトが消えたのと同時に直則のシンバルの合図とともに次の曲の演奏が始まった。

目映いばかりの照明がステージを照らすと、あの柵の上に綾子と和樹が立って演奏していたのでまた歓声が上がった。

笑顔でギターを掻き鳴らす綾子は途中で先ほどのギターに再度持ち替えて曲を次々と演奏した。

爽快感の溢れる曲でナゴミはステージの端から端へと歩きまわりナゴミが移動するたびに歓声が上がった。

曲のエンディングではナゴミも柵に乗り、ナゴミと綾子と和樹がタイミングを合わせてジャンプすると、またステージのライトが暗くなった。

暗いステージの上で直則はドラムセットに座ってミネラルウォーターを飲み、綾子と和樹はスタッフに楽器を渡し先にステージ袖に来ていたナゴミとともにミネラルウォーターを飲みながら呼吸を整えていた。

汗だくで身体全体で息をしている3人を見て奏が

「ライブってこんなになるほど体力を使うのか?」

と思っていると、ステージ上では真上からスポットライトが照らされた奏太がとてもキレイな旋律のピアノソロを弾き始めた。

それを見てスタッフから楽器を受けとると綾子と和樹はナゴミと一緒に静かにステージに戻った。

ピアノソロがストリングスの音色に変わりButterflyのイントロが始まると、それぞれ真上からスポットライトが照らされて幻想的にメンバーの姿が浮かび上がった。

Butterflyの後にもう一曲切なくなるようなバラードが演奏され、その後狂気に満ちた暗くて恐怖で震えが出てしまうようなdarknessの演奏で会場が一気にその世界観に引き込まれて静まりかえると、ステージのライトが暗くなり、ナゴミと綾子と和樹はまたステージ袖に来た。

和樹は急いでベースを持ち替えると直則の後ろを歩きステージの中央真後ろに静かに立ち、和は綾子側のステージ袖にスタッフと移動した。

二人が移動し終えると、地響きのようなバスドラの音で直則のドラムソロが始まった。

真っ赤なスポットライトが直則の刻むリズムに合わせて直則を次々と照らした。

激しいタム回しに観客から大きな歓声が上がるとステージ中央後方がスポットライトに照らされて悠々とした…俺を見ろ!と言わんばかりの堂々とした足取りでベースを弾きながら和樹がステージ中央に向けて歩いてきて直則とのセッションが始まった。

ドラムとベースのリズム隊だけでライブが完成してしまうのではないかと思ってしまうほどの演奏に観客はグイグイ引き込まれた。

一通り演奏が終わり和樹が観客に拳を振り上げていると、今度はステージ袖から綾子が現れて更に歓声は大きくなった。

ステージ中央に来ると綾子は和樹と対峙する形で向かい合い、和樹は少し屈んで綾子は和樹を見上げる形で笑顔で演奏していると今度は綾子側のステージ袖からギターを持ったナゴミが登場したので、観客のボルテージは更に上がり演奏している音がかき消されてしまうほどの歓声が上がった。

ナゴミの登場と同時に綾子と和樹が自分たちの立ち位置に戻り柵に上がると、ナゴミも柵に上がりギターを弾き始めた。

ナゴミ自身の持っている色気を更に強く魅せるような艶のあるギターのフレーズ。

ナゴミの演奏が一段落すると観客からは歓声が上がり、ナゴミは挑発的な目で綾子を見た。

それにまんまと挑発されたような目でナゴミに負けじとギターを弾く綾子にまた歓声が上がった。

すると今度は綾子がどうだと言わんばかりのドヤ顔でナゴミを見ると、ナゴミはニヤッと笑い早弾きを始めた。

その後もナゴミと綾子のギター対決とも思えるようなギターセッションに観客が引き込まれて大歓声を上げていると、曲調が少しづつ変化しfallen angleのイントロになると会場が揺れるほど観客が飛び跳ね始めた。

fallen angleとballの演奏が終わるとナゴミはギターをスタッフに渡しMCを始めた。

「札幌、最高だね」

とナゴミは笑顔で言うと

「ツアー初日は絶対に札幌だって綾子が言ったんだけど大正解だね」

と話を続けた。

「結構いろんな所で話をしてるから聞き飽きてるかも知れないけど、fateは自分たちのやりたいことや今までやってこなかった事をやろうって事で本当にワガママ放題させてもらってるんだけど。やってる音楽がガチャガチャうるさい曲ばかりだから受け入れてもらえるかどうか心配だった部分があったけど、こうやってみんながびしょ濡れになるほど盛り上がってくれて良い笑顔をしてくれると俺たちがやりたかった事って間違って無かったんだって安心するよ。それから、今までやってこなかった事といえばギターを弾くのもスゴい久しぶりでかなり練習してきたんだけど、どうだった?」

とナゴミが聞くと歓声と拍手が上がった。

「良かった。安心した。…ここだけの話、綾子よりも上手かった?」

とナゴミが聞くと歓声と一緒に笑いが起きた。

「この笑いは何だろ?まだまだって事かな?」

とナゴミがふて腐れた顔をすると

「上手かったよ」

「しびれた」

と言う観客の声が聞こえてきた。

「本当?」

とナゴミが色気を纏った小悪魔的な表情で言うと黄色い歓声が上がった。

「綾子より上手いか…。嬉しいね」

と言うと和は笑うと

「じゃ、ズゴい気分の良くなった所で次の曲やろうか?」

とナゴミが言うと、直則の合図でHeavenの演奏が始まった。真っ赤な筋のように何本ものスポットライトの光がステージを照らし客席に向けては緑のレーザーが照らされた派手な演出のあと2曲続けて演奏しnew worldを演奏すると、ステージの照明が消えて足元を照らす薄暗い照明以外、ステージは真っ暗になった。

メンバーがスタッフに楽器を渡しステージ袖でミネラルウォーターを受け取り汗を拭いていると会場内はメンバーの登場を待ちわびる観客のアンコールの声が繰り返し響いた。


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