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お隣のふにゃふにゃ王子様  作者: まあちゃん
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奏と結城の会話

15時を過ぎた頃、ステージではリハーサルが始まった。

今日のリハーサルは昨日の反省点を中心に行われ、奏が意見を出したメンバーのセッション部分のリハーサルも入念に行われてた。

他の曲でも演出が変更になっていた部分があったりとメンバーもスタッフも真剣な顔でリハーサルを行っていた。

その様子をステージ袖で奏が見ていると

「ここから見える景色も音も客席とはちょっと違うでしょ?」

と結城が話しかけてきた。

「はい、でもこんな側で見れるのって臨場感あって良いですね」

と奏が言うと

「でもね、実際に観客入ると曲よりも観客の声の方が大きくなっちゃって演奏は聞こえづらくなるんだよ」

と結城は言ったあと一緒にいるスタッフに

「渡部さん、本番前に奏君…彼にもイヤモニ1つ用意して下さいね」

と言った。

渡部と言うスタッフは奏を見てニッコリ笑うと

「この仕事に興味あるんだって?石井さんから聞いてるよ。スタッフ用のだからいろいろな会話が入ってきて音楽聴いてる暇ないかもしれないよ」

と言ってから

「両親見てたら表舞台に興味持つの普通だけど、裏にも興味あるなんて珍しいね」

と言った。

「はい。一昨日から邪魔なんだろうな思いながらも見させてもらってますけど、スタッフの方って忙しそうに動き回っていて本当にスゴいなって思いますし、スタッフの方がいないとライブが出来ないんだなって改めて知りました」

と奏が言うと

「そう言ってもらえると嬉しいね。でも、君の両親みたいに表に出る人がいないと俺たちみたいなスタッフの仕事はないわけだし持ちつ持たれつだよ。それにメンバーもスタッフも最高のステージを作りたいって思いは同じだし昨日、和さん…お父さんが言ってたけどチームfate、メンバーもスタッフもみんな仲間だからね」

と渡部は話していたが

「じゃ、仕事に戻らなきゃならないから。…相川さんと奏君の分も結城さんにイヤモニ渡しておくから忘れずに着けてね」

と言ってステージの上に上がり綾子と話を始めた。

その様子を奏がじっと見てると

「奏君が来てくれて本当に良かったよ」

と結城が突然言った。

「えっ?」

と奏が驚いた顔をすると

「和の事をほめてくれただろ?そのおかげで和の機嫌がスゴく良いからさ。それに祭りのお土産も…本当にありがとう」

と結城はステージ上の和を見て言った。

「そんな…ほめたわけじゃないんですけど」

と奏が言うと

「それでも和はとても嬉しかったんだよ」

と言ったあと話を続けた。

「実は最近、和の機嫌があまり良くなくてね…。まぁ、曲作りにレコーディングにリハーサルにテレビに雑誌の取材にとずっと休みなくやってきたから疲れも溜まってた思うけど最近は空気がピリピリしててね。綾子がスキンシップを多く取ることでその空気を変えようと心掛けてくれたけど、綾子自身も疲れが溜まってる状態だからツアーに出たら合間合間に休みが入るから頑張れとしか言えなくて、どうしたら良いのか?って佐伯と悩んでたんだよ」

と言った。

「そんなに疲れてるようには見えなかったですけど」

と奏が言うと

「和はそうゆう姿を見せるのが大嫌いなんだよ。気付けるのは昔から一緒の綾子とボレロのメンバーと村上ぐらい。なのに今回は綾子も驚くほど空気がピリピリしててね」

と結城は苦笑いをした。

「昨日の朝は本当に最悪で…まぁ、一昨日綾子と一緒の部屋で寝たいって言ったのを疲れが取れないから初日終わるまで我慢しろって俺が言ったのが悪かったんだけど朝から本当に不機嫌な顔しててね。初めて見たよ、和の不機嫌な顔」

と結城が言うと

「本当にわがままな人ですみません…」

と奏は申し訳なさそうに言った。

「いやいや違うんだよ。あれは俺が悪かったんだよ。昨日、村上と仕事の電話したときに和の話をしたら、そりゃダメだって怒られたよ。言って良いのかな…」

と結城は困った顔で奏を見てから

「良いか…。その…村上の話だと和もいい大人だから大事な仕事の前に…セックス…したいと思ってるわけじゃなくて、ただ側に綾子がいるだけで満足らしいんだよ。酒もタバコもギャンブルも何もしない和にとって綾子に甘えることが唯一のストレス解消だし明日も頑張ろうって言う活力にもなってるらしくてね。それを奪うとストレスを発散出来なくなってイライラしてくるんだって。和にとって綾子は癒しでもあるんだね」

と結城は言った。

「癒し…」

と奏は呟くと考えた。

家で和がいつも綾子にベタベタくっついていたり膝枕をしてもらったり子どもの前でも気にしないでキスしたりしているのを今まで恥ずかしい父親だと思ってみていたけど…。

それに、思い出してみれば綾子が仕事で家に帰らない日が何日も続くと、一見普段と変わらないように見えてもちょっとした瞬間に寂しそうな顔をしたり、いつも二人で座ってるソファーに一人で座ってる後ろ姿が小さく見える時もあって…。

いつまでもベタベタしてるバカ夫婦と言えばその通りなんだけど、それが唯一のストレス解消で癒しだって言われたら…。

奏はステージ上の和をじっと見た。

ライブを見に行った時も昨日のリハーサルでもさっき楽屋に入る時も思ったけど、表に出てる時…仕事をしている時の和は正直カッコいい。

自信に溢れてて、堂々としてカリスマ性を感じさせて、そのうえ男でも惚れてしまいそうな色気も感じさせる。

普段とのギャップに自分は呆れてしまう事が多かったけど、もしかしたらこうやって気を張ってる分、普段は年がいもなくふにゃふにゃして甘ったれて…そうやって心のバランスを取ってるのかもしれないと奏が思っていると

「昨日、スゴい不機嫌だった和が楽屋に入ってお面とわたあめを見て初めは綾子と一緒に驚いた顔して、家族で祭りに行ったときに奏君にわたあめとお面を買ってあげたらスゴい喜んだ事があったって二人で話をはじめてさ。ちょっと機嫌直ってきたかな?って思ってたところに石井さんが来て、奏君が家族で祭りに行った時にまた来たいねって話をした事があって、それは無理だからせめて二人にも祭りに行った気分をあじあわせたいからって買ってきてくれたみたいだよって言ったら、二人ともスゴい嬉しそうな顔をして」

と結城は笑った。

「そのうえ、昨日ギターが上手いって奏君にほめられて更に機嫌良くなって、早く休みにならないかなとか休憩時間に奏君が楽屋に来ないかな?とかリハーサル終わったら一緒にメシ行きたいとか言いはじめてさ」

と結城が言うと

「ワガママ言ってすみません…。本当にあの人は」

と奏は言った。

「いや、違うんだよ。和がワガママ言うのは機嫌が良いときだから。機嫌悪かったりピリピリしてるときも普段と変わらないようにしてるけど、俺たちとは無駄な話を一切しなくなるしワガママと思われるようなことも一切言わなくなるからね。和の場合、ワガママだと思われる発言をわざとして場をなごませたりするからね。本当にワガママなら仕事だって気にくわなきゃ適当にするだろうし…。奏君は知ってるかどうかわからないけど、CD製作もレコーディングだけじゃなくてジャケットや特典も全て和がアイデア出して何度もデザイナーやスタッフと話し合って試作品作ってって繰り返して最終的に綾子と二人でチェックしてOK出してから販売してるんだよ。それにこのライブだって…演出に関して意見を出すのは当たり前だと言えばそうなんたけどセットもポスターも全て和が構想を練るところから参加してるし、ツアーの販促物も和がデザインしてるんだよ。最終チェックだけであとはスタッフに任せてる人も多い事まで一から参加してやってるかね。本当にワガママ人はこんなに仕事しないよ」

と結城は笑った。

「そうなんですか…」

と奏が言うと

「Speranzaのライブのあとも奏君にはお世話になったよね?」

と結城は言った。

「えっ?」

と奏が何のことだろうと言う顔をすると

「篠田の事があって、それでもSperanzaがステージに立った時。君に綾子をほめてあげて欲しいって頼んだだろ?」

と結城は言ったあと

「あの日、本当にステージに立つのが篠田のためになるんだろうか?こんな気持ちでライブやっても良いものなんて作れないって思う気持ちがあったみたいだったしあの状況で和や俺たちがいくら良いライブだったと言っても同情にしか聞こえなくて信じてもらえないからね。奏君にライブをほめてもらえて綾子はスゴい嬉しかったらしいし、ライブやって良かったって思ったみたいだよ。綾子のことも和のことも本当に助けられてばかりだよ。ありがとう」

と結城は頭を下げた 。

「いえ、俺は何も…。実は俺、中学に入るちょっと前からボレロやSperanzaや父さんがソロでやってる曲とか全然聴かなくなって…自分の親が日本を代表するミュージシャンだって言われてもいまいちピンとこなくて友達がスゴいファンなんだけどそれも理解出来なくて…」

と奏がステージを見ながら話しているのを結城は奏をじっと見て聞いていた。

「でも、高校入って久しぶりに二人のライブ…去年のボレロとSperanzaが一緒にやったイベントなんですけど、それを見て自分の知ってる両親と同じ人だとは思えないほどスゴくてそれからもSperanzaやfateのライブに行ってそのたびに…」

と言うと奏は恥ずかしそうに笑い

「これ言うと父さんが調子に乗るのが目に見えてるし、母さんはまた泣くかもしれないから絶対に言わないけど…本当に日本を代表するふたりなんだなって思ったし…こんな偉大な両親のもとに産まれて良かったと思ったし…スゴい尊敬してます」

と奏は言った。

「奏君…」

と結城が嬉しそうな顔をすると

「でも、俺がそう思ってるの知られるの何か恥ずかしいし、絶対に父さん調子に乗るから言わないで下さいね」

と奏は慌てて言った。

「そうだね。和が調子に乗るのが俺にも想像出来るし、自分の両親をほめるのって何か恥ずかしいって言うのも気持ちわかるから黙っているよ」

と結城は言うと

「もし俺が自分に子どもがいてその子どもに偉大な両親のもとに産まれて良かったと思ってるのとか尊敬してるって言われたら嬉しくて泣いちゃうだろうな」

と言いながら涙目になった。

「和と綾子は奏君に寂しい思いや嫌な思いをたくさんさせてきたって思ってるし、そうゆう環境を作ったのはマネジメントの一番上に立つ俺だし責任は感じてたんだよ。それがさ…本当にこれ以上の言葉ないよ。奏君は本当に良い子だね…」

と結城は目頭を押さえた。

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