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お隣のふにゃふにゃ王子様  作者: まあちゃん
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飯田の心 2

由岐と約束した店に向かう途中、飯田は複雑な気持ちだった。

尊敬する由岐と食事をするのはとても嬉しいけど、昨日由岐に綾子の事を姉さんみたいに思ってるだけだと笑ったのにその数時間後には綾子を好きだとか…。

それに和は自分の気持ちに気付いているみたいだし、由岐はまた和に何か伝えるように頼まれて自分を呼んだのかもしれない。

昨日の和の顔を思い出すと飯田は由岐に何を言われるのかと少し怖くなった。


店の店員に案内されて由岐の待つ席に行くと

「お待たせしてすみません」

と緊張した顔で飯田は頭を下げた。

「何謝ってるんだよ。まだ待ち合わせの時間より早いだろ?とりあえず座ってメニュー決めよう」

と由岐が言うと

「でも、早坂さんを待たせてしまって…」

と飯田は席に着いた。

料理を注文すると、由岐は持ってきた袋を差し出して

「これ、綾子から頼まれて」

と言った。

袋を受け取り

「綾子さんからですか?」

と袋の中を見ると色紙とドラムスティックとTシャツと透明なラッピング袋に3つのギターピックが入っていた。

「えっ…」

と飯田が驚いた顔をして色紙を取り出すと、そこには英語で『Dear Naoki』と書かれたIkokaのメンバー4人のサインがあった。

「!?」

更に驚いた顔をして飯田が由岐を見ると

「あとは、昨日のライブで使ってたマイクのスティックとクリスとジョージとアンドリューのピックだって」

と飯田は笑顔で言った。

「マジっすか?」

と飯田はまるで子どものようなキラキラとした笑顔で袋の中を見ながら

「スゴい嬉しいです。これ、一生の宝物にします!」

と言った。

「直樹がIkokaのファンだって聞いたからって綾子がもらってくれたみたいなんだよ。良かったな」

と由岐が言うと

「綾子さんが?…スゴい嬉しいです」

と飯田は言ったあと、少し表情を固くして

「…でも、こんな事をしてもらったらまたナゴミさんの機嫌悪くなるんじゃないんですか?」

と言った。

「和?あぁ…ほら、バカップルの見たくもないラブシーン。あれで機嫌が良くなったから全然心配ないよ」

と由岐が笑ったが、飯田は昨日の事を思い出して一気に暗い気持ちになった。

「…」

飯田が何も言わないで黙ってると

「和のイメージ壊れて驚いた?」

と由岐は聞いた。

「えっ?いえ…」

と飯田が言うと

「仕事とプライベートじゃまるで別人だから驚くのも仕方ないよな。くだらない事でふて腐れたり綾子に甘えたりするイメージ無いから驚くよな。でも考え方によってはプライベートでも自分のイメージを壊さないように気を張ってる事が多くて本当に親しい仲間内以外には本性見せないから貴重な姿を見れたって事でさ」

と由岐は言った。

「いえ…ナゴミさんのイメージが壊れたって言うのは無いんですけど、あんな目で見られると怖いって言うか…」

と飯田が言うと

「あんな目?」

と由岐は聞き返すと、飯田は余計な事を言ってしまったと思い

「…あっ。いえ…ほら、ナゴミさんって優しい目の時もあるけど、写真やライブだと目力が強いじゃないですか?」

と慌てて言った。

「まあ…な…」

由岐は飯田の態度から昨日和との間に何かあったんだと言うことには気付いたがあえて聞かない方が良いのかもしれないと思い話題を変えようとしていると食事が運ばれてきた。

「奏…あ、昨日一緒にいた甥っ子がさ、直樹の事を格好いいって言ってたよ」

と由岐が言うと

「本当ですか?」

と飯田は嬉しそうな顔をした。

「本当本当。テレビで見ても格好いいけど、直に見るとさらに格好いいってさ」

と由岐が言うと

「いや…そんなに誉められたら嬉しいよりも恥ずかしいですね。自分の父親だってかなり格好いいのに」

と飯田は言った。

「父親…ね。仕事してる和の事は別人みたいで格好いいし尊敬するし憧れるって言うけどね。普段がダメって訳じゃ無いけど、いい歳してって呆れるみたいだよ

と由岐が笑うと

「そうなんですか?」

と飯田は驚いた顔をした。

「そうだよ。昨日の二人のイチャイチャだって奏にとっては見慣れた日常の風景だしね」

と由岐が言うと飯田はチクンと胸が痛んだが

「何かやっぱり二人ともイメージと違いますね」

と無理に笑った。

「まぁ、プロだからオンとオフの切り替えはキチンとしてるからな。オンの時は家でも別々の部屋で作業してお互いの仕事に干渉は絶対にしないし、fateでも馴れ合いの仕事は絶対にしないみたいだし妥協を許せない二人だからもめる事もあるみたいだし。でも、その反動でオフは特に和がふわふわを通り越してふにゃふにゃで…。まぁ、気を抜いて本当に安らげる場所が綾子って事だし、そうやってスキンシップとる事で夫婦円満を保ってるからいいんだけど」

と由岐が笑うと

「きっと理想的と言うか良い関係なんですね」

と飯田は言ったが、針が刺されているみたいに胸はチクチクと痛かった。


由岐と別れて自宅に戻った飯田はスマホを手に取り綾子にどうやってIkokaのお礼を伝えようか迷っていた。

メッセージを送って良いのか?

それとも、こうやってたくさん貰ったんだしキチンと電話してお礼を言った方が良いのか?

「…」

メッセージを送るだけでは失礼だし、電話に出なかったら電話したけど忙しそうだったからってメッセージ送っておけば失礼にならないと思い電話をかけた。

「…」

発信音がスマホから聞こえてくると、飯田はドキドキした。

電話に出て欲しい気持ちと、出て欲しくない気持ち…。

数回コールしても出ないので、飯田がスマホを切ろうとした時

『もしもし』

と言う綾子の声が聞こえてきたので、飯田は慌ててスマホを耳にあてた。

「もしもし。飯田です。綾子さんですか?」

と緊張した声で飯田が言うと

『はい。綾子です。…すぐに電話出れなくてゴメンね。和さんがふざけてて』

と言う綾子の声の向こうに

『ふざけてなんて無いだろ?俺のせいにしないでよ』

と言う和の声が聞こえてきた。

「…」

飯田は今日何度目かわからない胸の痛みを感じた。

『もしもし?本当にゴメンね。で、どうしたの?』

飯田の胸の痛みなんてこれっぽっちも気付いてない綾子が聞くと

「今日、早坂さんと食事に行ったんですけど、その時にIkokaのサインとかピックとか…綾子さんからだって言われて、昔からスゴい大ファンで本当に嬉しくて…ありがとうございました」

と飯田は言った。

『もう渡してくれたんだ。あれね、サインは私なんだけど、ピックとかスティックは和さんがメンバーに頼んで貰ってくれたんだよ』

と綾子が言うと

「ナゴミさんが?」

と飯田は驚いた声を出した。

『うん。和さん、自分がスゴい尊敬してるミュージシャンからピックをもらった時にスゴい嬉しかったらしくて今もスゴい大事にしてるのよ。だから、きっと飯田君もメンバーが実際に使ってた物を貰ったら嬉しいんじゃないかって』

と綾子が言うと

「本当に嬉しいです。…でも、ナゴミさんて俺が綾子さんに連絡するのを良く思ってないって聞いたのに何で…?」

と飯田は聞いた。

『さあ?私には良くわからないけど。…もしかしたら誤解もあるかもしれないし話してみたら?代わるから』

と綾子が突然言ったので

「いえっ!俺は…」

と飯田は慌てたが次の瞬間には

『もしもし?』

と和の声が聞こえてきた。

飯田は背中に冷たい汗が流れるのを感じながら

「…もしもし、飯田です。ありがとうございます」

と震える声で言った。

『ああ、別に礼を言われるほどじゃないけど』

と和は言ったあとに

『綾子。俺さ、飯田君と話がしたいからちょっと席外してくれる?』

と言ったので飯田は何を言われるのだろうと考えると冷や汗どころか死刑台に乗せられたような気持ちになった。

一方和は綾子に

「何で?どうせまた勘違いして余計な事を言うんでしょ?」

と言われ

「いいから。別に怒りつけようとかそうゆうのは全然無いから」

と綾子の頭を撫でて

「信用してよ」

と言った。

綾子が仕方ないなって顔でリビングを出て行くと

「ゴメンね。ちょっとさ、君と話をしたくてね」

と言った。

『…』

電話の向こうの飯田はどうしたらいいのかと動揺して言葉が出なかった。




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