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お隣のふにゃふにゃ王子様  作者: まあちゃん
120/356

綾子の話

山下の話を聞いて飯田とマネージャーが立ち尽くしていると

「すみません…。言い過ぎました。でも、綾子がそんな風に見られてると思うと私も許せなくて…」

と山下は言ったあと

「綾子、奥で仕事してますけど案内しますのでどうぞ」

と言って仕切りの向こうへ案内した。

山下に続き歩いている途中、飯田とマネージャーは渉たちの個人マネージャーに恐る恐る頭を下げた。

仕切りの向こうを見るとfateとは違い編み込み三つ編みヘアに黒のユニセックスな衣装を着てまるで一瞬小柄な男が座ってるのではと思わせる風貌の綾子がギターを持ち机には小さなキーボードとPCを置き相川と話をしていた。

「綾子…」

と山下が声をかけると綾子は山下の事を見て

「撮影?もう始まるの?」

と椅子から立ち上がろうとした。

声は綾子なのに瞳にグレーのカラコンを入れてるせいか?ヘアメイクや衣装のせいか?fateとは別人みたいなうえに、多分男の中にいても迫力負けしない存在感の大きさに飯田が驚いていると

「いや、飯田さんが先日の事を謝りたいって」

と山下は言った。

「先日?」

と綾子が言うと

「先日、早坂さんとご一緒に食事に行った時にとても失礼な事を言ってしまって…」

と飯田は言った。

「ああ、そういえばね。でも、私も怒っちゃったお互い様じゃない?」

と綾子が笑うと

「でも、綾子さんの事を何も知らないであんな失礼な事を言ってしまって…」

と飯田は困った顔をして言った。

二人の様子を見てた相川が

「綾子、ちょっと休憩しよう。綾子が気にしてないって言っても彼は納得出来ないみたいだから山下もそちらのマネージャーも抜きで二人で話をしてみたら?」

と言った。


相川たちが居なくなると綾子は飯田を隣に座らせた。

「…ごめんなさいね。明日からレコーディング始まるから打ち合わせしてて」

と綾子がギターを置くと

「ナゴミさんは一緒に打ち合わせしないんですか?」

と飯田は聞いた。

「撮影が終わってから3人で打ち合わせするんだけど、その前に手直ししたいところがあってね」

と綾子が言うと

「大変なんですね…」

と飯田は言った。

「そんなの俳優さんに比べたらたいしたことないと思いますよ。こっちは好きな事をしてるだけで趣味と実益を兼ねた仕事だから大変なんて言ったらバチが当たります」

と綾子は言ったあと

「…お兄ちゃん…由岐さんのことごめんなさいね。あの人、いい歳してシスコン入ってて…」

と言った。

「…いえ、僕が綾子さんと早坂さんが兄妹と知らず仲が良いのを嫉妬してあんな事を言ったので…」

と飯田が言うと

「こうゆう事になるなら初めから兄妹だって言えば良かったのよね…。ごめんなさいね」

と綾子は言った。

「…どうして名前で呼んでたのですか?」

と飯田が聞くと

「ああ、それね。…飯田さんは兄弟いる?」

と綾子は聞いた。

「いえ、僕は一人っ子なので」

と飯田が言うと

「じゃあ、分からないかもね。お兄ちゃんって頭も良くてバンドもデビューして結構有名だったから中学まで由岐の妹って言われて。綾子って名前よりも由岐の妹って名前の方が有名でね。それが嫌で嫌で仕方なかったの。それで高校入ってからは由岐の妹って事は隠してたの。結局、私たちをスカウトしてくれた人がさっきいた相川さんって人で私はもともとボレロを通して知り合いだったからメンバーにもバレちゃったんだけど、事務所に入るときに私もお兄ちゃんも二人が兄妹だって事は公表しないって条件を出して契約したの。親の七光りじゃないけど、兄の七光りって嫌じゃない?」

と綾子が笑うと

「まぁ、そうですけど」

と飯田は言った。

「結局、ナゴミさんと交際してるのが週刊誌に載った時に一緒にバレちゃったんだけど、それからも仕事とプライベートは別ってことで仕事の関係するところでは由岐さんって呼ぶようにしてたのよ」

と綾子は言った。

「さっき…綾子さんとナゴミさんはこれからって時に結婚したって聞いたのですが…」

と飯田が聞くと

「ああ、それ?確かにお互いにこれからって時だったのよ。…でもね、私はデビュー前からナゴミさんと付き合ってたし大学卒業したら私は引退してナゴミさんと結婚するって事務所にも話をしてたからね…」

と飯田は笑った。

「引退?」

と飯田が聞くと

「うん。だから、事務所も4年契約で入ったんだけど…結局契約更新しちゃったんだけどね」 と綾子は言った。

「引退するならあの時期だったのかもしれないけど、Speranzaも軌道に乗ってきて仕事が楽しくなってきた時期で結婚をもししても続けたいって思って。契約更新後に妊娠して結婚して一時活動休止してブランクがあっても有難い事に仕事が入ってきて今に至るって感じです」

と綾子は笑うと

「別にね、お金を稼ぎたいと思われるのはどうでも良かったの。実際、お金って大切な物だしね。けど私は媚を売って仕事を取るくらいならこの仕事を引退するわ。私はデビューしてから20年、ずっと性別や由岐の妹とかナゴミの妻とか関係なく綾子と言う一人の人間の実力を評価してもらいたいと思ってやってるの。…それって俳優さんでも同じじゃない?」

と言った。

綾子の穏やかながらもはっきりとした口調と自分を見る真剣な眼差しに飯田は自分が思っていたのとは全然違う本物のプロなんだと綾子を見て思った。

「そうですね…」

と飯田が言うと

「説教みたいになったけど怒ってる訳じゃないのよ。ただね、飯田さんには分かって欲しいと思ったの。きっと同じように自分の実力で勝負したいと思って人だと思ったから」

と綾子は言った。

「…」

飯田が黙ってると

「それにね。私は昔、結構いろんな事を言われてきたからあれぐらいは全然気にならないのよ」

と綾子は笑った。

「いろんな事…ですか?」

と飯田が聞くと

「デビューしたての頃は枕営業したら仕事をやるとかメンバーとデキてるのか?とかしょっちゅう言われたし、ナゴミさんと交際してるのが発覚したときはついでに由岐の妹って事もバレたから、由岐の妹だからデビューしたとか、由岐の妹だからナゴミに近付けたとか…当時ナゴミさんは抱かれたい男なんてランキングに入ってたから実力で勝負したいなんて言っても綾子はナゴミの身体に惚れたただの女とか…散々言われたよ。まぁ、気にしたら負けだし私は3歳の時からナゴミさんを知ってるのよ。それが抱かれたい男になったからって好きになったりしないわよ。普段のナゴミさんを見たら誰も抱かれたい男になんて選ばないのにって笑ってたしね」

と綾子は笑った。

「…でも、実際にナゴミさんはモテますよね?不倫の噂もあったし…心配じゃないんですか?」

と飯田が聞くと

「不倫?…そんなとこもあったね。あれでしょ?事務所が無くなったって言うやつ。あの頃、子どもが小さくて子育てと仕事の両立が大変で他の事に構ってる余裕が無くてね。それにナゴミさんが違うって言うから浮気してないと思ったし毎日キチンと家に帰って来るのに浮気する暇どこにあるの?って感じだったし言わせておけって感じだったのよ。でもさ、嘘の不倫ネタで仕事取るとかそうゆう事をしてると始めは面白がっていた人も相手にしなくなるって言うかさ…。きっとあの子はデマを流してでも売れたくて必死だったのかもしれないけど、地道に真面目にコツコツ仕事をしないとやっぱりダメなのよね。真面目にやってればどこかで見てくれてる人はいるはずだしね」

と言ってると山下が

「綾子、そろそろ撮影始まるからスタジオに移動するよ」

と言った。

「はい。…ごめんなさいね。長々と話をしちゃって…。今度、飯田さんの話も聞かせてね」

と綾子が立ち上がると

「はい、ぜひ僕の話も聞いて下さい。あの…出来れば連絡先を」

と飯田が言ってると

「綾子、行くぞ」

と誠が顔を出して行った。

「はい、今行くから。ごめんなさい、誠うるさいから…。そうだ、俊太郎先輩に連絡先を教えるように言っておくから。あと、お兄ちゃんの事も気にしないでね。私からも誤解だって言っておくし…。あの人、頑固で言い出したら聞かないから今回のドラマは無理かもしれないけど少し時間が経てば機嫌直るから」

と綾子と飯田が話ながら仕切りから出てくると

「おい、綾子。こんなイケメン俳優と二人で話し込んで…まさか不倫じゃないだろうな?」

と渉は言った。

「バカ、そんなわけ無いでしょ?だいたい相手にされないわよ」

と綾子が渉の肩を叩くと

「だったらいいけど。飯田さんも綾子は既婚者ですからね。絶対ダメだよ」

と渉は言った。

「はい。分かってます」

と飯田が緊張した面持ちで言うと

「渉、何怖がらせてるのよ。そうゆうのやめなよ」

と綾子は笑った。

「だって…」

と渉が言ってると

「おい、行くぞ。綾子、伊藤さんがヘアメイクの手直しあるから早く来てくれって言ってたぞ」

と誠は言った。

「分かった。…じゃ、飯田さんわざわざ来てくれてありがとうございました。また、今度」

と綾子は飯田に頭を下げて急いで誠とスタジオに向かった。

Speranzaのメンバーが楽屋を出ると山下と相川が飯田に話しかけた。

「誤解はとけましたか?」

と山下が言うと

「はい、本当に綾子さんには大変失礼な事を言ってしまったと反省してます。彼女は僕が思ってた人間とはまるで逆でとても真面目で仕事に真剣な人なんですね。…尊敬します」

と飯田は言った。

「…まだ時間大丈夫なら一緒に撮影も見てきますか?」

と相川は言った。

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