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お隣のふにゃふにゃ王子様  作者: まあちゃん
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相川の夢

「化け物だ…」

と言った相川を見て店長は

「今日のライブ、録音してあるから後で渡しますね」

と言ったが、相川はステージに釘付けになっていて聞こえていなかった。

メンバーのルックスも悪くない。

メトロノームがあるのではないかってってくらいドラムスもベースもリズムが安定しているしテクニックを持ってる。

ボーカルの普通の高校生でここまで出せるのか?ってぐらい音域が広くて歌もそこそこ上手いし、表現力もある。

そしてギター…。

ただの高校生がこんなにテクニックを持っているなんて信じられない。

そして奏でる音色の幅も広い。

激しくて切なくて優しくて…表現力が抜群に上手い。

そして曲…。

プロに頼んでもここまでの曲を作るのは一握りしかいないかもしれない。

「こんな化け物が今までよく隠れていたな…」

と相川は言った。

このバンドは、このまますぐにメジャーデビューしてもいいくらいの腕を持ってる。

でも目先の事に囚われず、コイツらの持ってる才能を最大限にまで伸ばしてからメジャーデビューさせる。

今までは原石を磨く事に一生懸命だったけど、今は目の前にいるまだ力を出しきれていない化け物の力を最大限に引き出して解き放ち、誰にも止める事の出来ない巨大な化け物に変化させてやりたい…。

これから始まる夢を想像するだけで、相川は身震いがした。


ライブ後、皆が打ち上げでまた海に行こうと盛り上がっているなか、綾子は廊下で和にlineをしていた。

『ライブ終わりました。

健太とするライブはこれが最後だと思うと泣いちゃった。

卒業式には泣かなかったのにね』

と綾子がlineを送って楽屋に戻ろうとすると

「久しぶりだね」

と相川が声をかけた。

綾子は一瞬誰か分からなかったが、

「もしかして、相川さんですか?」

と言った。

「覚えててくれた?元気だった?」

と相川が言うと

「はい。見に来てたんですか」

と綾子は嬉しそうに言った。

「綾子ちゃんギター上手くなったね。ビックリしたよ」

と相川が言うと

「相川さんに誉められると嬉しいなぁ」

と綾子は恥ずかしそうに言った。

「そうだ。せっかく会ったんだし、今度ご飯でも行こうよ。バンドのメンバーも一緒に」

と相川言うと

「あ…。ベースの健太は明後日フランスに行っちゃうから一緒には…」

と綾子は悲しそうに言った。

「いやいや、ただ若者とご飯食べたいだけだからさ。残りのメンバーだけでもいいし、綾子ちゃんだけでも俺は大歓迎だけど、それじゃ彼氏に怒られるでしょ?」

と相川が笑うと

「私、彼氏いないですから」

と綾子は恥ずかしそうに言った。

「だって今連絡してたのって彼氏でしょ?隠さなくてもいいよ」

と相川が言うと

「いえ、今連絡したのはなっちゃんなんで…。ライブ終わったら連絡しろってうるさいから」

と綾子は言った。

「なっちゃん?あー、和ね。アイツは昔から綾子ちゃん大好きだもんな。付き合ってるの?」

と相川が訪ねると

「それは…無いです。私は妹みたいな存在だから」

と綾子は寂しそうに言った。

相川は、綾子が和の事を好きなんだと気付いたが、昔から和が綾子の事を好きなのを知っていたし、なんで二人は付き合わないのかと不思議に思った。

「アイツ、まだヘタレなままなんだな」

と笑ったあと

「じゃあ、とりあえず今度メシ食いに行くって事で連絡先交換しよ」

とスマホを取り出した。

綾子と相川が連絡先を交換したあと


「あ…。そうだ。アイツらの個人プロフィールは一切公開しないって事務所の方針だから、綾子ちゃんが妹だって誰にも言わないから安心して」

と相川は言った。

「良かった…」

と言う綾子に

「綾子!そろそろ移動するぞ」

と隼人が楽屋から顔を出して声をかけた。

「ごめんね。話長くなったね。じゃあ、今度連絡するから」

と相川は手を振ってその場を去りながら

「ボレロの名前を使わなくても、あの子達は充分売れるよ」

と相川は呟いた。


2週間後、綾子と渉と隼人は相川と約束した店の前に来ていた。

「…なんかさ」

と渉が言うと

「うん…、分かるよ」

と綾子は言った。

「俺たちには場違いだよな」

と隼人が言うと

「綾子の知り合いには悪いけど帰ろうか?」

と渉が来た道を戻ろうとすると

「あ、お前たちも来たの?」

と誠が声をかけてきた。


とても敷居の高そうなイタリアンの店の個室に入った綾子たちはあまりにも場違いな感じがして居心地の悪さを感じていた。

「緊張しないでいいから。メニューは俺が適当に頼むからさ」

と相川は笑った。

「この人、誠も知り合いなの?」

と隼人が小さな声で誠に聞くと

「誠はね。俺が見つけた原石。磨けば光る石なんだよ。これから新しいメンバーとインディーズ、それからメジャーって磨きをかけてプロにしようと思ってたんだ」

と相川は笑った。

「すげぇな。誠、プロになりたいって言ってたもんな」

と隼人が言うと

「で、君たち…。渉と隼人と綾子

と相川は綾子たちの顔を真剣な目で見て

「お前たちは化け物。俺が初めてボレロを見つけた時以上に興奮した」

と言った。

「それで、話なんだけど君たちはベースが抜けたんだよな。誠はメンバーを探してる。で、どうだろ?一緒にプロ目指さないか?」

と相川は言った。

「…」

「…」

突然の話に何も言えない渉と隼人とは裏腹に

「いいんですか?俺みたいのがalienに入っても」

と誠は謙遜して言ったが、綾子は困った顔をしていた。

「綾子ちゃん…。君の考えてる事はだいたい分かるよ。みんなが反対するって思ってるんだろ?両親を悩ませる事もしたくないとも思うだろう」

と相川は言ったあと

「動画サイトで再生回数が6万越えてるらしいよね?これって君たちの演奏を6万回も見た人がいるって事だよ。ただの高校生の演奏を6万回も見る人がいるって普通じゃあり得ないでしょ?それだけ、君たちは求められてるんだよ」

と相川は言った。

「君たちは化け物だけど、まだ上手く力を使えてない。多分、他の事務所なら今のままでもメジャーデビューさせると思うけど、俺は君たちの力を最大限に引き出して誰にも止める事の出来ない巨大な化け物に変化さてからメジャーデビューさせたいんだ。きっと誠が入ると君たちは無敵になる。近い将来4人で世界を驚かせる日が来ると思うとワクワクしてこない?」

と相川が言ったが、綾子たちの相川の言ってる事が信じられず返事が出来なかった。

「綾子ちゃん…君の秘密は絶対に公開しない。兄貴の名前なんて借りなくても君たちは頂点に立てる」

と相川は言ったあと

「まぁ、今日の今で返事しろとか言わないからさ。誠を加入させることも含めて4人ともそれぞれ考えてみてよ。あと

と言って相川は4枚のチケットをテーブルに置いた。

「ボレロの武道館ライブのチケット。君たちが一番始めに目指すところだからさ。そのライブを見てからでも、また俺の言ったこと考えてみてよ」

と言ったあと

「じゃ、難しい話は終わり、腹減ったなぁ。さ、みんなも食べよう」

と言って相川はパスタを食べた。

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