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お隣のふにゃふにゃ王子様  作者: まあちゃん
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嫌悪感

焼肉屋に向かうタクシーの中で飯田は

「何が綾子だよ」

と小さな声で呟いた。

せっかく早坂さんと一緒にメシ食えるって楽しみにしてたのに、何であの女が一緒なんだよ。

早坂さんも音楽やってるからその繋がりか?

でも、音楽も俳優もやって有名大学出てる秀才だし…綾子とは次元が違う人間だって分かんないのか?

それに早坂さんも早坂さんだ。

あんなに優しい眼差しで綾子と話すなんて…。

早坂さんは硬派で有名なのにまさか既婚の綾子の事が好きとか…あり得ないだろ?

結婚しておしどり夫婦なんて言われてるのに、陰で他の男に愛想振り撒いてる尻軽女のどこが良いんだよ。

飯田の綾子への嫌悪感は募るばかりだった。


飯田が焼肉屋に付くと既に綾子と由岐は店に来て個室に入ってると従業員に言われた。

「遅くなりました」

と飯田が頭を下げて部屋の襖を開けると綾子と由岐は隣同士で座りメニューを見ていた。

「お疲れ。とりあえずみんな生で良いか?」

と由岐はタッチパネルの注文画面をいじりながら言った。


生ビールに続き、注文した肉等が運ばれてくると由岐がせっせと焼き始めたので

「早坂さん、俺がやりますよ」

と飯田は慌てて言った。

「いいから、お前は喰ってろ」

と由岐が言ったので

「でも、早坂さんに肉を焼かせるなんて…」

と飯田は困った顔で言った。

「由岐さんは焼き肉奉行だから手出しされるの嫌がるんだよね」

と綾子が生野菜を食べながら言うと

「お前が食べてばかりで焼かないから俺が焼いてるんだろ?」

と由岐は言葉とは裏腹の優しい笑顔で言った。

本当に仲良すぎじゃないか?

と飯田がジッと二人を見てると

「どうした和樹?ほら、肉冷えるから早く食べろよ」

と由岐は言った。

「…はい」

と飯田が慌てて肉を食べてると

「今日は随分静かだな。どうした?」

と由岐は聞いた。

「いえ…。何か二人スゴく仲がいいなって思って…早坂さんが女の人とこんなに親しくしてるの見たことないから」

と飯田が言うと

「そうなの?女優さんとかと親しくないの?」

と綾子は飯田に聞いた。

「親しくって言うのは…。優しいしモテるんですけど硬派で女の人をメシに誘うとかしないし、女の人といるより男といるイメージの方が…」

と飯田は言った。

「確かに女の人と洒落た店でデートとかしなさそうだよね」

と綾子が笑うと

「女と洒落た店で気取ってメシ喰うより、気の合う奴とメシ食ってる方が楽しいし美味いだろ?」

と由岐は言った。

「綾子さんは特別なんですね」

と飯田が聞くと

「綾子?そうか?」

と由岐は綾子を見た。

「まぁ、昔からお互いに何も言わなくても顔を見たら何を考えてるか分かるし事務所も同じで同業だから共通の話題があるから普通よりは仲良く見えるかもね」

と綾子が言うと

「同じ事務所なんですか?」

と飯田は驚いた顔をした。

「あれ?知らなかったか?俺たち事務所の先輩後輩。俺、綾子の旦那のナゴミと同じバンドやってるんだよ」

と由岐が言うと

「そうなんですか?それで綾子さんとこれだけ仲が良いって、ナゴミさん心配するんじゃないんですか?」

と飯田は聞いた。

「確かに和はうるさいな。アイツは昔から綾子がいないと生きていけない奴だから、悪い虫が寄ってこないかいっつも心配してるよ」

と由岐は笑ったあと

「まぁ、俺も悪い虫が寄ってこないか心配だけどな」

と綾子の頭を撫でて言った。

「いつまでも子供扱いして…」

と綾子が言うと

「悪い虫にも種類があるだろ?」

と由岐は言ってから

「まぁ、綾子を泣かせようなんてするバカな奴はいないと思うけどな」

と笑った。

「早坂さん、綾子さんの事がスゴく好きなんですね」

と飯田が言うと

「俺が?綾子を?それ、逆だよ。綾子が俺の事好きなんだよな」

と由岐は笑った。

「私?」

と綾子が驚いた顔をすると

「理想の男はユキだって言ってただろ?」

と由岐が言ったので

「それ、いつの話よ」

と綾子は笑った。


由岐がトイレに行くのに席を立つと、綾子はせっせと飯田のために肉を焼いていた。

「俳優やってるときの由岐さんってどんな感じなの?」

た綾子が聞くと

「早坂さんですか?…そうですね。カメラの前に立つと存在感がグッと増して演技も共演者をグイグイ引っ張っていくような…。早坂さんは俳優になるために生まれてきたような人ですよ」

と飯田は言った。

「そうなんだ…。私はテレビあまり見ないから由岐さんが出てるドラマとか見たことないんだよね」

と綾子が言うと

「そうなんですか?」

と飯田は驚いた顔をしたあと

「…こんなことを言うのは失礼かも知れないけど、綾子さんってスゴいですよね」

と言った。

「えっ?何が?」

と綾子が聞くと

「ギターも上手いし曲もカッコいいと思いました。それから普段の様子…。愛想振り撒いて疲れませんか?」

と飯田は言った。

「愛想振り撒く?」

と綾子が言うと

「そりゃ、綾子さんは綺麗だしそれを武器に使うのは良いと思いますよ。けど、あなたは結婚してるんだし普通他の男に愛想振り撒く事なんてしないでしょ?それとも、ナゴミさんだけじゃ満足出来なくて男を探してるんですか?」

と飯田は言ってから言い過ぎたと思ったが酒の力も借りて次から次へと勝手に口が動いた。

「だいたい、早坂さんは事務所の先輩なんですよね?敬語の使い方しらないんですか?それともタメ口の方が早坂さんを落としやすいですか?」

と飯田が言うと

「何言ってるの?私が由岐さんをどうこうしようとか思うわけないでしょ?」

と綾子は言った。

「じゃ、仕事をもらいやすくするために愛想振り撒くんですか?だいたい、夫婦でユニットとかどんだけ稼ぎたいんだよ。愛想振り撒いて大物から作曲の仕事もらって、スタッフからは姫扱いされて…私、仕事頑張ってますアピールして同情かって…。本当、綾子さんってスゴい演技派ですね。女優業もいけるんじゃ無いですか?ナゴミさんも俊太郎さんも早坂さんも…そう言えば女も騙せますね?本当、恐ろしい女だよ。騙される方も方だけど」

と飯田が言ってると綾子はトングを机に置いて

「私のことは何とでも言っていいけど、なっちゃんやお兄ちゃんたちのことを悪く言うのは許さないよ」

と強い口調で言った。

「なっちゃん?お兄ちゃん?何言ってるの?誰だよなっちゃんって、お兄ちゃんって誰だよ。今はそんな奴の話はしてないだろ?都合悪いからって話をすり替えるなよ」

と飯田が言ってるところに由岐が戻ってきた。

「おい、綾子の大きな声が聞こえてたけど、どうした?」

と由岐は言ったが綾子と飯田はムッとしていた。

その様子に由岐は

「和樹どうした?」

と聞くと

「ちょっと口論になって…すみません」

と飯田は言った。

「あぁ、綾子はすぐムキになるからな…。綾子もほら仲直りしろ」

と由岐が言うと

「仲直りなんてする気は無い。もう二度とこの人には会いたくない」

と綾子は言った。

綾子がそこまで言うのは珍しいので由岐が驚いてると

「都合悪いこと言われたからでしょ?だいたい、なっちゃんやお兄ちゃんって誰ですか?俺、その人知らないんですけど」

と飯田が綾子に聞くと

「お兄ちゃん…。お兄ちゃんがどうしたんだ?」

と由岐は飯田に聞いた。

「彩子さんが突然、お兄ちゃんたちのことを悪く言うのは許さないって怒りだして…」

と飯田は言った。

「綾子、何があったんだ?言ってみろ」

と由岐は言ったが綾子はムッとして黙ったままだったので由岐は

「綾子!」

と怒鳴ったので綾子はビクッとした。

硬派だけど温厚で大きな声をあげることの無い由岐の怒鳴り声に驚いてると

「私が愛想振り撒いて仕事もらったりしてるって…。…ユキもナゴミもみんな騙されてるって…。騙される方も騙される方だけどって」

と綾子は言った。

「はっ?綾子に騙される?和樹、お前そんなこと綾子に言ったのか?」

と由岐が静かに聞くと

「はい。でも、綾子さんはそれを否定しなかったし…」

と飯田は言った。

「綾子が俺やナゴミを騙せるだって?そんなこと出来るわけ無いだろ?俺たちが何年一緒にいると思ってるんだ?」

と由岐は言ったあと

「俺はな、綾子が産まれた時から一緒にいるんだよ。綾子が考えてる事なんて顔見ればすぐにわかるんだよ」

と言って立ち上がった。

「和樹、俺は大事な妹を悪く言うやつが世界中で一番嫌いだ。悪いけど、二度とお前の顔は見たくない」

と由岐は飯田を睨んで言うと

「綾子、帰るぞ」

と綾子の腕を引っ張った。

「えっ?お兄ちゃん、ちょっと…」

と言う綾子を引っ張って由岐は部屋を出て行った。

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