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お隣のふにゃふにゃ王子様  作者: まあちゃん
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横浜最終日 2

ライブの始まりを告げる音楽が終わると綾子がギターソロから演奏が始まりをステージが色とりどりのライトに照らさせると、スクリーンにはメンバーの姿が映し出され客席からは大歓声が上がった。

軽快な音楽の曲を4曲演奏したところで、渉のMCが始まった。

「ようこそ横浜。そして、Speranza20周年ワールドツアーラストへ!」

と渉が言うと歓声が上がった。

「きたね、最終日。アジア、アメリカ、ヨーロッパ…いろんな所に行ってたくさんのファンと会っていろんな物を見て食べて…パワーもらって帰ってきたぜ!」

と渉は言った。

「今日以外、どっかで俺たちのライブ見た人っている?」

と渉が聞くと

「香港」

「シンガポール」

「ニューヨーク」

等と観客から声があがってるなか、

「イギリスとフランス」

と言う声に

「イギリスとフランス行ったの?スゴいね」

と渉は驚いた声をあげた。

「今日は世界中からもらったパワーを今日のライブに全部出しきるつもりでいるからみんなも覚悟してついてきて…ね」

と渉が言うと次の曲の演奏が始まった。

その後、ライブは大盛り上がりで進みあっという間に時間は過ぎてアンコールになった。

アンコールの3曲の演奏が終わると今日最後の渉のMCが始まった。

「えー、Speranzaがデビューして20年たちました。今日、ここに来てくれてる人の中には20年前から応援してくれてる人…Speranzaと同い年の20歳の人…まだ産まれて無かったよって人…たくさんいると思うけど20年…」

と言って渉は黙ってしまった。

「渉!」

と客席から声をかけられて

「はーい」

と笑ってこたえた渉は話を続けた。

「Speranzaもやっと成人になれて酒も飲めるようになって…」

と渉が言うと客席から笑い声が起きた。

「20年…長いようで短いようでやっぱり長いようで…。泣いて笑ってケンカして…若い頃にはメンバーで殴りあいもして…きっと誰か一人でもSperanzaを辞めたいって言ったら解散してたかもしれないってことも何度もあって。でも、誰一人として辞めたいって言わないで。友達だった関係がどんどん変化してSperanzaと言う1つの家族の形を作って…。 家族になったからケンカしても殴りあっても個人個人で活動しても俺たちは解散しないんだと最近思うね。俺たちの家はSperanzaで帰る場所もSperanzaだから…。じゃ、今日最後の曲です。Angle feather」

と渉が言うと演奏が始まった。

Angle featherの演奏が流れるなか、巨体なスクリーンにはデビューしたての頃からのメンバーの姿が映し出された。

ライブハウスでのライブ、初めての武道館のラストで4人で泣いてる姿、レコーディングをしてる様子、東京ドームでのライブ、野外ライブの様子、海外の空港で大勢のファンに囲まれてる様子…20年分のSperanzaの軌跡が映し出された最後の映像は今日のライブの観客や姿と舞い散る白い羽根の映像だった。

感動の中でラストの曲の演奏が終わると客席からはこの日一番の歓声が上がった。

観客の歓声が少し落ち着き、観客の誰もがいつものように4人でステージステージのセンターに立ち挨拶をしてライブが終わると思っていた時に綾子と誠はスタッフに楽器を変更してもらい自分達の立ち位置に立った。

「今日のライブはこれで終わりなんだけど1つだけワガママを言わせて下さい」

と渉は静かな声で話を始めると、綾子、誠、隼人は俯いた。

「昨日、大切な家族が1人旅立ちました」

と言うと客席は静まりかえった。

「20年間ずっと一緒いて喜怒哀楽全てをともにしてきた大切な家族との思い出がつまった…」

と言うと渉は言葉をつまらせた。

他のメンバーも俯いたまま涙を浮かべて唇を噛み締めていた。

渉は深呼吸をすると

「思い出のつまってる…そして彼が大好きだった曲をきっとこの会場のどこかで見てくれてる彼に捧げます。daybreak」

と言った。

隼人のドラムを合図に演奏が始まるとスクリーンには4人の姿が映し出された。


4人はそれぞれに篠田との20年を思い出していた。

車に乗って日本中を回ったこと。

初めての武道館ライブのあとに篠田が嬉し泣きしたこと。

綾子が倒れた時のこと。

初めて海外ツアーに出た時のこと。

打ち上げで飲み過ぎて歩けなくなった篠田を担いで店を出たこと。

篠田に肩を揉んでもらったこと。

他愛ない日常の全てが今となってはとても特別な時間だったように感じる。


目頭を赤くしながら歌う渉。

涙を浮かべ唇を噛み締めながら会場を見渡してギターを弾く綾子。

綾子同様に涙を浮かべてベースを弾く誠。

堪えきれずに涙を流しながらドラムを叩いてる隼人。

2番が終わり間奏に入ると渉は涙を堪えきれなくなり目頭を押さえたが、間奏が終わりに近付くとグッと目頭を吹いて大サビを歌い上げた。

曲が終わると客席からは大きな拍手が起きた。

…けど、メンバーは涙を拭い客席に軽く手を振ると足早にステージを降りた。

メンバーがステージを降りるとステージ袖に相川と結城…そして和が立っていた。

和の姿を見つけると綾子は堪えていた悲しみが全て吹き出してしまい和に抱きついて嗚咽を上げて泣き出してしまった。

「頑張ったな。本当、頑張った。偉いよ。本当頑張った」

と和は綾子の背中を擦りながら涙を浮かべて言った。

その姿を見て誠と隼人と渉もボロボロと涙を流して泣いてると

「本当、みんな頑張ったな。最高のライブだったよ。スゴいよ。本当スゴい」

と言って誠と隼人と渉を抱き締める相川も側で見ている結城も泣いた。


ライブが終わると観客は次々と外に出て行ったが、いつもの雰囲気とは違いなかには泣いてる人もいた。

「いっちゃったってさ…死んだってことだよな」

と勇次郎が言うと

「だよな…」

とさっちゃんが言ったが、それから話は続かなかった。

「泣いてたよな…」

とさっちゃんが言うと

「昨日、運ばれたスタッフが死んだのかな?」

と琳は言った。

「まさか違うだろ?父さん、何も言ってなかったし母さんのことも大丈夫だって言ってたし…」

と奏が言ってると近くにいたファンの子の話が聞こえてきた。

「昨日、私見たもん。本当だって」

とロングヘアーの女の子が言うと

「でもさ…」

とウェーブヘアーの女の子が言った。

「出待ちしてたら救急車が来て男の人が運び出されてさ。メンバーが救急車乗ろうとしたらスタッフに止められてたんだって」

とロングヘアーの女の子は言ったあと

「救急車が走り出したら綾子が篠田さんって叫んで倒れてさ。スタッフに支えられ楽屋に戻って言ったんだよ。きっとあの人が死んだんだよ」

と話をしていた。

琳たちはその時の綾子の気持ちを考えて暗い顔をしていたが、奏は急いで話をしている女の子たちのところに行き

「あの、運ばれた人って篠田さんて言うんですか?」

と聞いた。

突然話しかけてきた奏に驚き

「そ…そうですけど」

とロングヘアーの女の子が言うと

「本当ですか?間違いないですか?」

と奏はもう一度聞いた。

「間違いありません。…信用出来ないなら他の人にも聞いてみたらいいですよ」

とロングヘアーの女の子が言うと奏は

「篠田さんが…」

と言ったきり立ち尽くして動けなくなっていた。

「ちょっ…奏、どうしたんだよ」

と琳に声をかけられて我に戻った奏は慌ててスマホを取りだし

「母さんに…ダメだ。…父さん…仕事してるか…。だったら由岐ちゃん…」

と震える手でスマホをタップしていた。

「奏、どうしたんだよ?奏!」

と琳に声をかけられても耳に入ってこない奏はスマホをいじっていた。

「奏!」

と勇次郎の肩を揺すられてハッとした奏は

「ごめん。俺、母さんに会ってくる」

と言って楽屋口の方に向かって走り出した。

「おい!どうしたんだよ!奏!」

と琳たちは奏の後を追って走った。

楽屋口にはワゴン車が4台横付けされており、既にたくさんのファンの人が集まっていたので警備員がファンの人が近づかないように警備をしていた。

ファンの人の隙間を縫って前に行こうと奏がしていると楽屋口の扉が開いた。

それと同時に渉がスタッフと一緒に出てきてファンの人の黄色い声が上がったが、俯いたまま車に乗り込んだ。

そのあとも誠、隼人と次々と出てきたが皆俯いて足早にそれぞれの車に乗り込こみ車は出発した。

少し時間が過ぎてファンの人の数が少し減ってきた時、また楽屋口の扉が開き結城が出てくると奏はファンの人の隙間を縫ってまた前に出ようとしていたがなかなか前には進めず何とか楽屋口から出てくる姿が見える位置にたどり着くので精一杯だった。


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