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お隣のふにゃふにゃ王子様  作者: まあちゃん
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楽屋で

記者会見のあと、楽屋に戻った和と綾子のもとにメンバーと相川…そして無理やり連れてこられた奏たちがやってきたが綾子の姿が無かった。

「お疲れ!あれ?綾子は?」

とタケが聞くと結城と村上と話をしていた和が

「おぅ。まだシャワーから帰ってきてないよ」

と言った。

「…父さん、お疲れさま」

と少し恥ずかしそうに奏が言うと

「奏、今日は友達のところに泊まるって行ってなかった?…もしかして相川さんに無理やり連れてこられたのか?」

と和は言った。

「無理やりじゃないよな。滅多に見れない社会見学に誘っただけだよな」

と相川が言うと

「…まぁ。そんな感じ」

と奏は言った。

「社会見学?会見も見てたの?」

と和が言うと

「うん。…父さん、真面目に話出来るんだね」

と奏は言った。

「真面目にって…何だよそれ」

と和がふてくされた顔をすると

「大人のくせに、いっつもそんな顔してるから言われるんだよ」

とタケは笑った。

「そんな顔って言ってもさ。会見もそんな変わんないだろ」

と和が言うと

「いやいや、奏はかなり驚いたみたいだよ。今日は初めての父さんばかり見たって言ってたもん」

とカンジが言うと

「そうか?そんなに違った?」

と和は奏に聞いた。

「うん。…父さんも母さんも別人みたいで…カッコいいって言うか…初めて尊敬したって言うか…二人の子どもだってことを誇りに思ったような…」

と奏が恥ずかしそうに小さな声で言ったが和は目を点にして何もこたえなかった。

「おい、和。何固まってるんだよ。奏がお前のことを尊敬して誇りに思ったって言ってるんだぞ。何か言ってやれよ」

とカンジが和の背中を叩くと

「分かってるって。でも、奏がそんなこと言うなんて信じられなくて…」

と熱くなった目頭を指で拭って

「そうだ。村上さん、ユッコさんにもらったお菓子あったよね?」

と聞いた。

「あぁ、あるけど」

と村上が言うと

「奏、そこに座ってお菓子食べな。ライブ前から食べてないんだろ?」

と和は言った。

「いや、そんな俺たちは…」

と勇次郎が遠慮がちに言うと

「遠慮する必要ないから。確か、綾子の事がスゴい好きな子がいたよね?綾子が戻るまで待ちたいだろ?ほら奏、お前が座らないとみんな座れないから」

と和は言った。


奏たちが、スタッフに出されたお菓子や飲み物を飲んでると、綾子が楽屋に戻ってきた。

「あれ?みんな来てたの?」

と言った綾子は奏たちの姿を見て

「こんにちは。もしかして相川さんに連れられて来たの?」

と聞いた。

「お前、和と同じこと聞くな…」

と相川が言うと

「社会見学に来たんだって」

と和は綾子に言った。

「社会見学?…そういえば、私も昔よくライブ後に楽屋に来てお菓子食べてたよね?」

と綾子が言うと

「そういえば来てたよな。あの頃から和は綾子にベッタリで…」

とタケは言ったあと

「今日は珍しくベッタリしないんだな」

と言った。

「まだちょっと打ち合わせがあるからベッタリ出来ないんだよ」

と和がジロッと結城を見ると

「分かってるよ。軽く打ち合わせして終わりにするから」

と言った。


部屋の隅の方のテーブルに和と綾子、結城と和の個人マネージャー佐伯と綾子の個人マネージャーの山下が座って話をしている様子を見て

「まだ仕事なんて大変そうですね」

と琳が言った。

「まぁ、仕方ないさ」

とタケが笑うと

「これから忙しくなるんだろうしな」

とカンジも笑った。

「ところで、Speranzaは再来週の横浜でワールドツアー終わりなんだろ?それ以降はどうするの?」

と由岐が聞くと

「とりあえずオフ入って…その後は個人活動に入ります」

と隼人が言った。

「個人活動するんですか?じゃ、Speranzaは活動休止なんですか?」

と琳が聞くと

「いや、今年中にはシングル出す予定もあるし活動の中心がSperanzaから個人に移るだけだよ。今までも何度かやってきてたし、ほらボレロだって今は個人活動をメインにしてるだろ?」

と誠が言った。

「まぁ、そうですけど。ボレロやSperanzaって新曲出した時しかテレビ出ないしライブのチケットはなかなか取れないし…」

と琳が言うと

「個人活動始めると余計にボレロやSperanzaが遠い存在になっちゃうよな…」

とさっちゃんは言ったあと、ボレロとSperanzaのメンバーが自分達を見てるのに気付いて

「なんて、俺たちが口を挟むことじゃないですよね。本当にすみません」

と謝った。

「いや、謝る必要なんてないよ。そうゆうファンの声ってなかなか直に聞けること無いから」

と由岐が言うと

「そうだよ。実際、チケットが取りづらいのは知ってるし…。だから、少しでもたくさんの人が入れるような大きなところでってライブしてるんだけど…申し訳ないよな」

とタケは言った。

「いや、本当にそんなつもりで言った訳じゃ無いんで…」

とさっちゃんが慌てると

「でも、俺たちは個人活動はSperanzaのためになると思ってるから定期的に個人活動の時期を入れてるんだよ」

と隼人が言った。

「Speranzaのためになる…ですか?」

と琳が言うと

「そうだよ。それぞれが見てきたもの感じてきたものを持ち帰りSperanzaの楽曲やライブに活かす。今までもそうやってきたし、これからもそうすることでSperanzaは常に成長していけるバンドになれるんだよ」

と隼人は言った。

「それはSperanzaだけじゃなくて、ボレロも一緒だけどな」

と由岐は言ったあと

「良いものを作りたいって気持ちも良いもの見せたいって気持ちも待ってるファンがいるから生まれる気持ちなのに、遠い存在と思われるのは寂しいな」

と言った。

「ボレロもSperanzaも大きなグループだから他のミュージシャンが憧れるようなことが出来るけど、大きくなりすぎて出来ないこともあるよな…」

とカンジが言うと

「綾子が言ってた原点回帰ってこともボレロやSperanzaじゃ無理ですもんね」

と渉は言った。

メンバーたちの話を聞いてた琳たちは、大物ミュージシャンになれば何でも出来るしワガママも許されると思っていたけど、実は違うのかもしれないと思った。


日付が変わる頃、ライブハウスを出た奏たちは相川の用意してくれたタクシーに乗り琳の家に行った。

「帰りのタクシーまで準備してもらって、相川さんて本当にいい人だな」

と琳が言うと

「本当だよな。ライブだけじゃなくて記者会見も見れたし楽屋にも…。夢のような1日だったな」

とさっちゃんは言った。

「…でもさ、今までスゴい華やかで憧れる世界だなって思ってたけど、楽屋での話を聞いててちょっと違うのかなって気もしたな」

と勇次郎が言うと

「確かにな…。ライブ終わっても仕事してて想像以上に大変そうだし、由岐さんの話も…」

と琳は言った。

「あのさ…。結構前に由岐ちゃんが言ってたんだけど、ボレロもSperanzaも個人で動ける範囲はとっくに越えてるんだって。2つとも小さな小舟で航海に出たけど、どんどん大きな船に乗り換えてそのたびに乗ってるクルーも増えて、今はスゴい大きな船になったんだって。船にはたくさんのクルーが乗っててその人たちの夢と人生も乗せて航海してるから、自分たちだけでは動かせないらしいよ」

と奏が言うと

「たくさんのクルーの夢と人生か…。大きくなればなるほど重くなるんだな」

と琳は呟いた。

「そういえば、ナゴミさんが綾子さんと組むのを20年待ったって言ってたな」

とさっちゃんが言うと

「20年も待たなきゃワガママ言えないってどうなんだろ?」

と勇次郎は言った。

「ライブや雑誌で見ると自信満々でスゴいカッコいい人たちで、でも話をしてみるとスゴい優しくて気さくな人でスゴい憧れるけど…。何かさ、背負ってるものが大きくすぎて大変そうだな」

と琳が言うと

「だよな。遠い存在なんて言っちゃったけど本当は好きで遠くに行ってる訳じゃないんだろうなって気がするよ」

とさっちゃんは言ったあと

「あー、何で俺は余計な事を言っちゃったかな。本当、バカだな」

と言った。

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