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第1話 夢を見ること!?

「れいせんしゅ?」


「そう、れいせんしゅよ。それで、わたしがあなたのれいせんきになるの」


広い庭園の真ん中で、二人の子供が遊んでいる。一人は綺麗な金色(きんいろ)の長い髪をしたとても可愛らしい少女。もう一人は、漆黒(しっこく)の短髪の男の子だ。どちらも、とても裕福な身なりをしている。

今、この庭園には、この二人しかいない。回りを見渡しても、綺麗な花が咲いているばかりで、人影はない。

花の王冠(おうかん)を作った少女が、少年に王冠を被せながら、ある約束をしていた。幼い二人の、二人だけの約束。それは少女にとって、何よりも大切なものであった。


「まってるからね。リュウくんがれいせんしゅになって、むかえにくるを、ずっとまってるから。やくそくだよ?」


少女の言葉の意味もわからないまま、少年は笑顔で答えた。


「うん、わかった。ぼく、れいせんしゅになって、リィナちゃんをむかえにくるよ! 」


汚れ(けがれ)を知らない二人の、とても無邪気な約束。それがどんなに難しくどんなに残酷な事かも知らずに…



◆◆◆◆◆



放課後、誰もいない教室の中で、いねむりをしていた少年が目を覚ます。


「また、あの時の夢か」


寝起きの気だるい感覚のまま、窓へ顔を向けると、夕日が目に入り、軽い痛みを覚える。


「最近は見なくなったと思ったんだけどな」


溜め息を吐いて鞄に手をかけると、不意に、誰かが近づいてくる気配がする。


「リュウ、お前まだいたのか」


190cmを越える男子生徒が、部長面で俺を見下ろしている。


「カズか。今、寮へ戻ろうと思った所だ」


カズキ=マキナ、この学校の副生徒会長で、剣道部の主将。ある特殊なクラスに所属している。リュウの幼馴染みで、不言実行の男だが、面倒見がよく、皆に信頼されている。


リュウは机の中から教科書を出し、乱暴に鞄の奥へと突っ込んだ。

そして、立ち上がり教室を出ようとしたとき、カズが呼び止める。


「お前、まだ相方を見つけてないのか? 」


リュウと呼ばれている少年はまたかと溜め息を吐きながら答える。


「カズ、俺はもう霊専(れいせん)の生徒じゃない。だから、相方なんて必要ない」


リュウの言葉にカズは俯いたまま、押し黙った。何も言えないカズを尻目に、リュウは教室を出ようとした。

だが、別の三人の生徒に塞がれてしまった。


「おやぁ。そこにいるのはリュウ君じゃないかぁ。それに副生徒会長殿も一緒かぁ。これは奇遇だねぇ」


先頭の男子生徒がニヤニヤした目付きのまま、わざとらしい口調で言った。

またこいつらかと、リュウはまた溜め息をつく。お近づきになりたくない部類のやつらなので、リュウはすぐに、もうひとつの扉へと向かう。

だが、すぐに男子生徒が行く手を遮り、声をかけてくる。


「待てよ、リュウ。この俺が声をかけてやってるのに、無視はないんじゃないか? 」


「そうよ、キラ様に失礼よ」


「ええ、失礼よ」


取り巻きが便乗して来るが、リュウはなおも無視を続ける。キラと呼ばれている男子生徒は変わらずニヤニヤしたまま、話続けてくる。


「はっ、やっぱり腰抜けのエステリア様は、家来の貴族とは話したくないってか?流石、民を見捨てて戦から逃げただけの事はある」


キラは取り巻きと共に下品な笑い声をあげる。

見かねたカズが割って入ろうとしたとき、リュウはカズを手で制して、振り向き様に一言だけ忠告した。


「たかが訓練で、いきがるなよ」


リュウの目を見たキラが一瞬だけ(ひる)んだが、すぐに嘲笑を返してくる。


「た、たかが訓練すら逃げてるお前が(すご)んだって負け犬の遠吠えにしかなんないんだよ! 悔しかったら、俺と勝負してみろ! この腰抜け! 」


「やだよ、めんどくせぇ」


聞こえるか聞こえないかの声でそう返すと、好き勝手吠え続けるキラから顔を背け、リュウはその場を後にする。



ここは神や精霊が実在する世界――ジアテル――


この世界では特殊な教練を経た女性が、精霊の力をその身に宿し、自身の体を様々な武器へと変換する事ができる。人々はその武器となった女性を霊戦器(れいせんき)と呼び、畏敬の念を送った。

その力は絶大で、大戦時の絶望的な戦況をたった一人の霊戦器(れいせんき)(くつがえ)したと言われている。

ただし、一人ではその力を発揮することはできない。如何なる武器も、使い手がいなければ、ただの鉄屑に等しい。

だが、霊戦器(れいせんき)を扱える者は、霊戦器(れいせんき)となった女性よりも少なかった。その理由は単純だ。使い手になるためには、霊戦器(れいせんき)の女性に心から認められ、ある契約を結ばなければならないからだ。そもそも霊戦器(れいせんき)を扱うためには、尋常ならざる体術と武術が必要だ。それに加えて、霊戦器(れいせんき)となる女性に心から認められなければならないのだから、使い手となるのは必然的に霊戦器(れいせんき)よりも少なくなるのだ。霊戦器(れいせんき)の使い手となる者は霊戦手(れいせんしゅ)と呼ばれ、人々から羨望(せんぼう)と尊敬の眼差し(まなざし)を受けた。


両者は例外なく英雄となり、霊戦者(れいせんしゃ)として歴史に名を残したのだ。


そう、それが今から千年前(・・・)の話である。

現在のこの世界では、多くの霊戦者(れいせんしゃ)が現存する。


ここ、ハイリア国国立高等学校では、霊戦者(れいせんしゃ)を育成するためのクラスが設立され、養成カリキュラムが体系化している。


霊戦器(れいせんき)となるための特殊な訓練、儀式も大戦時よりも簡略化され、覚えやすいものとなっている。何よりも、霊戦器(れいせんき)霊戦手(れいせんしゅ)との間で交わされる契約が握手となったのだ。潔癖症(けっぺきしょう)な女性でなければ、そこまで難しいものではない。


霊戦手(れいせんしゅ)となる方も、様々な武術、体術を必須で修得しなければならないが、命を落とすようなものは含まれてはいない。

よって、とてもお手軽に霊戦者(れいせんしゅ)になれるのである。

そのクラスの名前を霊戦専属(れいせんせんぞく)クラス、通称霊専(れいせん)という。


と、言っても、そのクラス以外は、ごく一般的なカリキュラムである。午前中が5教科の座学で、午後になると共同訓練だ。共同訓練では基本的な体力トレーニングからスポーツのようなゲームを行ったり、体術や武術などによる試合を行ったりする。至って普通である。


リュウゼル=ジア=エステリアは1年の時、霊専にいた。しかし、ある事情により普通科に転科したのだ。その理由は聞く人が(みな)納得するものだと本人は思っている。


「カズ君も大変だよね。こんなやる気のない幼馴染みを持つと」


寮の自室に戻ったリュウは、ドアを開けて真っ先に、お小言を聞かされた。


「シンヤ、お前の部屋は隣だろ? 」


溜め息を吐きながら、リュウは目の前の侵入者に出ていけと合図を送る。

シンヤ=ぺディア、情報部の部長で、一般的な情報だけでなく、個人的なものから、国家機密レベルのものまで知っている俺の友人。先生達ですら、こいつを敵にしないよう気を付けているほどだ。


「まぁまぁ、僕とリュウの仲じゃないか。鞄に葉っぱがくっついてるよ」


(とぼ)けた笑顔で答えるシンヤに、リュウは鞄についた葉っぱを取りながら、再び溜め息をついて諦める。


「で、何のようだ? まさか、葉っぱがくっついてる事を教えに来たわけじゃないだろ」


リュウはなげやりに問いを放つ。

そんなリュウの様子を見て満足したのか、シンヤは笑顔のまま返してくる。


「寮の回りは林だからね。葉が鞄に落ちる事もあるさ。それはさておき、君、またカズ君に説教されたんでしょ? 」


まるで、見ていたかのように言うシンヤに驚きもせず、リュウはただ頷く。


「恐らく効果が無いだろうと思って、僕がもう1度聞かせてあげようと言うわけだ」


リュウはげんなりとしたまま、また、溜め息をつく。


「めんどくせぇから、結構です。お引き取り願います」


言っても無駄だとは思っているが、言わずにはいられなかった。

案の定、シンヤに笑顔で却下された。


「君は本当に面倒くさがりだよね。それがいけないという自覚はあるかい? 」


この問いも1度や2度ではない。2年生になってこの一ヶ月、毎日のように聞かされているのだ。いい加減耳タコである。


霊専(れいせん)から普通科になった理由も、訓練を面倒くさがって、1年の間、ただの1度も(・・・)訓練に出なくて、ついには先生が諦めたからでしょう?そんな理由を正当なものだと思っているのは君だけだよ」


「…………」


リュウは、この説教が早く終わる事を祈りつつ、じっと耐えている。


「君が霊戦手(れいせんしゅ)にならないなんてありえない。僕もカズもそう思っているよ。だからこそ、こうして毎日説得しているんじゃないか。なのに、君ときたら、全くをもって聞く気がない。今も僕の話を聞いてないよね? 」


シンヤは絶えず笑顔を作っているが、目が笑っていない。リュウは軽く咳払いをしてから、返事をする。


「聞いてないことはないぞ。ただ、聞いた内容を実行しないだけだ」


リュウの大真面目な物言いに、今度はシンヤが溜め息をついた。


「それ、聞いてないのと一緒だよね? 」


「……うっ」


リュウはシンヤの黒い笑顔に、声を詰まらせる。


「まぁ、君が霊戦手(れいせんしゅ)になりたくない理由は大方予想はついているけどね。姫との約束を守れなくて、自分を責めてるんだろう?でも、君は霊戦手(れいせんしゅ)になるべきだ。なんせ君は……」


シンヤがその続きを話そうとした瞬間、ピン・ポン・パン・ポーンという音声がなり、校内放送が流れる。


「只今、精獣研究会(せいじゅうけんきゅうかい)より、研究対象の精獣アルグが、逃走したとの報告が、入りました。一般生徒の方は、直ちに、付近の建物へ、避難して下さい」


小気味良いリズムの放送が終わると、部屋の窓から生徒達が慌てて寮へ向かって来るのが見えた。


「また、獣研(じゅうけん)か。いつも飽きない人達だね、本当に。それにしても、今回はアルグか。ちょっと厄介だね」


――精獣(せいじゅう)――それは、精霊の力を宿した動物で、大小様々な種類が存在している。

アルグは小型種で、黒色の狼に似た姿をしている。特徴は素早さで、普通の人間が追いかけられれば、逃げ切るのは不可能だろう。ただ、牙や爪に殺傷力はないため、危険度は低くみられている。アルグを怒らせるような事さえしなければ……。


「あれじゃないか? 」


リュウが窓から顔を出し、林のなかを走っている女生徒とそれを追いかける赤い(・・)獣を指差す。両者の間にまだ距離はあるもののみるみる差がなくなっている。


「うわっ、激昂(げっこう)状態じゃないか! あの状態のアルグに噛まれたら、内側から(・・・・)焼かれるぞ! 」


そう、アルグの恐ろしさは怒りが頂点に達したとき、すなわち、激昂(げっこう)状態のときにある。体色を赤に変え、噛みついた相手の体内へ炎を注ぐ。噛まれた部分は内側から焼かれてしまい、回復不能となる。


「どうす……」


シンヤが問いを発すると同時に、リュウは行動を起こした。制服の内側に仕込んである二本の短剣を手にして、窓から飛び降りる。一階付近に植えてある木へ手をかけ落下方向を変え、速度を殺す。


「ここ、三階なんだけど……」


着地に成功したリュウは、短剣を逆手に持ち林を疾走していく。その速さは、アルグのそれを軽く越えている。リュウが前方に女生徒を視認し、間に合うと思った瞬間、女生徒が木の根に足を引っ掛け転倒した。そこにアルグが恐ろしい速さで飛びかかる。間に合わないと判断したリュウは、アルグの顔を目掛けて、左手の短剣を投擲(とうてき)した。アルグは眼前に迫った短剣を爪で弾き、近くの木を蹴って、リュウとの間を空けて着地した。リュウは弾かれた短剣には目もくれず、女生徒を背にして、アルグに向かって構える。


「そこのあんた、危ないから動くなよ」


リュウの警告に、女生徒は恐怖で声が出せず、なんとか頷いて返した。

グルルという唸り声を発しながら、アルグはリュウを(にら)み付けている。アルグの犬歯からは、炎が()れだしている。

一方、リュウは隙のない構えでアルグを牽制(けんせい)している。アルグがいつ動き出しても、いいように視線をそらさない。

両者の間には、見えない火花が飛び散っている。

隙を出さないリュウに(しび)れを切らしたのか、アルグはジリジリと進んでいる。

リュウが自分の間合いまであと少しだと思った瞬間、アルグが真横の木の影へ飛んだ。


「絶対動くなよ」


リュウは落ち着いて、女生徒へ再度警告する。女生徒も返事を返すが、姿の見えないアルグに動揺隠せないでいる。ぽとっと、木の実が女生徒に落ちた。女生徒は無意識に上を見上げる。


「きゃぁあああ! 」


頭上からアルグが襲いかかってきていた。女生徒は、自分を助けに来た男子生徒が噛まれると思い、目を背ける。常人の反射速度では、到底間に合うはずがなかった。

だが、その刹那、予期していたかのように、頭上へと短剣を振るう。

一瞬の交差、そこに立ち続けていたのは、リュウだった。

アルグはばたりと倒れ、体色が黒へと戻った。

安全を確認したリュウは、ふぅっと息を吐いてから、投擲(とうてき)した短剣を拾い上げ、二本とも懐へとしまった。


「もう大丈夫だぞ」


先程までの雰囲気とは一転し、気だるそうに声をかけた。


「あ、ありがとうございました。でも、その、死んじゃったんですか、その子? 」


先程まで自分に襲いかかってきていたアルグに対して、女生徒は心配そうな目を向けている。


「いや、刃の部分は当ててないし、気絶させただけだから、死んでないよ」


リュウがぶっきらぼうに答えると、女生徒はほっとしたような顔をした。


「変な人だな、あんた。こいつ、さっきまであんたの事襲ってたんだぞ」


この変な女生徒に興味がわいたリュウは、少しからかうようにに言った。リュウの問いに、女生徒は照れるようにして答えた。


「こ、この子、私が面倒見ていたんです。いつもはとってもおとなしい子なんですけど、今日は突然暴れだして。エサをあげようとしたときに逃げちゃったんです。それで……」


「それで、自分で捕まえようと思ったわけだ。結構無茶するな、あんた」


女生徒の言葉を引き継いだリュウは、少し責めるような口調でそう言った。


「ご、ごめんなさい。助けてくれて、ありがとうございました。私は1年Aクラスのリィナです」


名乗り終えたリィナは、男子生徒に名前を訪ねようとしたが、話しかける事ができなかった。それは、リュウがこの女生徒が名乗ったリィナ(・・・)という名前に目を見開いて、驚いていたからだ。


「リィナ……、まさか……」


――あのリィナなのか?――


確かに面影はあるが、髪の色が違う。目の前の女生徒の髪色はブラウンだ。


――だけど、もしかしたら――


リュウが自身の心の中で生まれた疑問を口にしようとしたとき、後ろから現れた生徒に呼び掛けられた。


「君達、大丈夫か? 」


聞きなれた声に我に返ったリュウは、振り返り、その生徒の顔を見た。


「なんだ、お前か。なら、問題ないな。チヤは女生徒の手当をしてくれ。俺は精獣(せいじゅう)を捕獲する」


「うん、わかった。あなた、そこに座ってくれる? 」


突然現れた生徒達に戸惑いながらも、リィナは指示にしたがった。リィナが治療を受けている間、リュウはカズに状況説明をさせられた。

アルグの口と前足、後ろ足を縛り終えたカズは、立ち上がり、リュウの方へ向きなおる。


「なるほどな。激昂(げっこう)状態のアルグか。居合わせたのがお前でよかった。対処が難しい相手だからな。やはりお前は早く相方を見つけるべきだよ」


ふっと笑いながら、カズがリュウの肩に手を置いた。リュウは嫌そうな顔で反論しようとしたが、そこに手当を終えたリィナが割って入った。


「やっぱり、あなたもAクラスなんですか? 」


無邪気な笑顔で聞いてくるリィナに、リュウはげんなりした気分で、肩を落としながら説明する。


「俺は普通科のCクラスだ。Aクラスなのはそっちの二人。何度も言うが、俺は霊戦手にはならない」


カズの手を軽く払いながら、リュウは溜め息をつく。カズはまた言ってるのかこいつはという顔をしている。


「そんなに強いのに普通科なんですか?あんな動きをする人、Aクラスにもいませんよ」


説明する気のないリュウを見て、カズは苦笑しながら代弁する。


「こいつは去年までAクラスだったんだよ。といっても、訓練には全く出なかったがね」


カズの説明に、リィナは何かを思い出したように声を洩らした。


「では、あなたがあのエステリアの……」


目の前にいるリィナが、あのリィナなら、自身の名前を知って、何か言ってくるかもしれない。そう期待したリュウは、顔をあげ、じっと彼女を見つめた。

だが、リィナはエステリアの名前を出した事をリュウが怒ったと勘違いし、俯いて謝り始めた。


「軽率でした。ごめんなさい」


リィナが思っているのとは、別の意味で期待を裏切られたリュウは、少し落胆した。


――そりゃ、そうだよな――


ふぅと溜め息をついて、リィナに顔をあげるように促す。


「いいよ、気にしなくて。俺も皆が言うほど気にしてないから」


リュウの不器用な慰めに、リィナは笑ってお礼をした。


「ありがとうございます、リュウゼルさん」


リィナのお礼に、リュウは照れくさくなり、顔を背ける。


「リュウでいいよ。長いだろ」


ぶっきらぼうな物言いを気にもとめず、リィナは返事を返した。


「はい、リュウさん」


時を忘れ、二人の間に甘い静寂が漂う。

気恥ずかしさに耐えかねてか、リィナの後ろで成り行きを見守っていたチヤが声をかけた。


「えっと、そろそろ行きましょうか。先生にも報告しなくちゃいけないし。リィナさん、あなたも一緒に来てくれるかしら。色々とお話を聞きたいから」


カズがアルグを担ぎ上げ、チヤとともに校舎の方へ歩き出す。

チヤに呼ばれたリィナは、リュウに一礼して、その後をついていった。

残されたリュウは、その後ろ姿をじっと見続けていた。何度も夢に見た少女にその後ろ姿を重ねながら。


寮の三階から、そんなリュウ達の動向をずっと見ていた人物がいた。


「リュウ、君は霊戦手(れいせんしゅ)になるよ。君が望もうと、望むまいとね」


シンヤは、暗くなりかけている茜空を見上げそう口にした。その言葉は誰に聞かれる事もなく、空へ溶けていった。

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