1/1
1
彼は二度生まれた
初めは何も知らぬままに、この世に命をもたらされた。
誰からも祝福される神の定めた約束された世界。
しかしながら、彼は今、初めて本当の意味でこの世界に産声をあげた。
それを今まで包んでいたモノを切り裂き鮮血を散らし、強烈な嗚咽と涙の中で、痛烈な冷たさと傷を与えられ、息も出来ぬままに世界へと投げ落とされた。
そして彼は、彼だけの名前をその時に授かったのだ。
青年はいつもしかめっ面をしていた。
それは、まったくもって誰も気付かないような本当に小さな気持ちの揺らぎのようでしかないような、微小な歪であろうが、ある種の人間には一目で見破られ、時には鼻で笑われ、時には腫れ物のように回避され、時には気付かぬ振りをされる。そして時に最も困るのは、愛情という表情を見せられることだ。
そうして彼は、そういったものによって生かされ、生き永らえていた。