第一話『人恋し翼人』
始めまして、更級伊織と申します。
この度は「小説家になろう」様に自分の書いた作品を載せて見たら?
と友人に薦められ、投稿してみました。
初心者故に拙い言い回しや表現等が在りますが、「それでも構わない」という寛大な心の方のみ本文をお読みください。
以上、注意書きでした。
第一話『人恋し翼人』
アリア。
その名は彼女が自らの親から送られた名前。
既に他界した両親との唯一の繋がりであるその名前は彼女にとって大切で大事なもの。
閑話休題
その日は快晴。雲ひとつ無い蒼穹を見上げる一人の女性。
青い…このまま空を見ていてもいい。
だけど取り敢えず、今は街に辿り着く為に歩こう。
今後の指針を胸中で再度確認し足を早めた。
暫く進むと、木陰に一人の人間の子供が居た。
此処暫く人に出会っていなかったアリアはその人の子を観察するように見る。
白を基調とした服装。子供特有の白めの綺麗な肌にかかるさらりとした金の髪に紺碧の美しい瞳。
美しく艶やか。即ち美麗。その一言で全てを表せるほどに人の子の容姿はそれを体現していた。
そして、一人悩みながら傍らの剣を凝視する人の子。
彼もまた、一人なのだろうか?
なら、一緒に歩めないか?
そして抱いた感情のままに彼女が行動するのも必然。
細く白い腕を取り、困惑している人の子にアリアは言った。
一緒に旅をしないか?と。
困った顔をしながらも頷く人の子の手を取り、歩き出す。
誰かと旅をするのは初めてだ。
寡黙な彼女にしては珍しく色々な事を人の子から聞いた。
曰く、恐らくこの世界の住人ではないかもしれないという事。
曰く、何者かに召喚されたかも知れないという事。
そんな事は細かいことを気にしない彼女にとっては些細なこと。
解らないのならば、知らないのならば自分が教えればいい。
彼女は少年にエリスという名前を付け、剣を、拳を、魔術を使った戦い方を教え、必要最低限の常識と金銭の数え方を教えた。
終いには面倒だからという理由で彼に金銭の管理をさせるほどに。
幸いにも才能に恵まれていたエリスは生き残るためにそれらを習得し研磨し続けた。
それからというもの、二人の旅は始まった。
時に二人で各地のギルド支部に寄っては依頼をこなし、体を休めるために宿屋で休息をとる。
そんな二人だが、今現在喫茶店に居た。
アリアの前には巨大なパフェ。
スプーンで掬っては食べるを繰り返す彼女は幸せそうな顔をしていた。
だが、甘党のエリスといえども流石にその巨大パフェには見ているだけで胸焼けがしたのか、無難にショートケーキを頼んで食べていた。
「…食べる?」
視線に気付いたアリアは、エリスがパフェを食べたいと勘違いしたのか、彼に問う。
「いや、自分のがありますから…ね?」
「…美味しいのに…」
困ったような表情のエリスに残念そうな顔のアリア。
「これも中々美味しいですよ?」
手元のケーキをフォークで指し示し、暗に自分はこれで満足してますとアピールするエリス。
「…一口たべさせて」
だが、無類の甘味好きの彼女には通用する筈も無かった。
side エリス
「これも中々美味しいですよ?」
暗に俺はこれだけで十分なんだとアピールしてみる。
「…一口たべさせて」
だが、彼女にはこの回答はミステイクだったと思いながらも後の祭り。
ケーキを切り分け、無言で催促するアリアさんへと差し出すと彼女はパクリと食べる。
美味しそうに食べている彼女の姿は綺麗と言うより可愛らしかった。
そうして自身のケーキを食べようとフォークを伸ばしたところで今度は彼女からスプーンを差しだされる。
「ん…」
つまりは口を開けと言う事なんだろう。
観念して口を開きパフェを堪能する。
「うん、甘い」
ん?まてよ?
これって、間接キス、だよね?
まあ、いっか。
そんな心の葛藤は少し過去を振り返れば思い当たる節がいくつかあったので気にしないことにした。
現実へと意識を戻し彼女の方を見てみると、パフェの山は三分の一程度まで減っていた。
おいおいと思いながらも自分の分のケーキを食べる。
もう少しで完食。
そんな時、ふと意識を他に向けると柄の悪い人間が三人いた。
するとなにやら話し込んだあと、下卑た笑みを浮かべながらこちらにやってくる。
この至福の時間を邪魔するとは…あんたら殺されてもしらんぞと言いたい。言わないけど…
「おい、姉ちゃんに嬢ちゃん、俺らとイイコトしない?」
嬢ちゃんと呼ばれたぐらいでは怒らない。容姿がそうなのは仕方ないと割り切っているから。
にしても、ベタだな。実力も礼儀も三流以下。
「……」
「おいっ、せっかく俺らが誘ってるってのにその態度は無いんじゃねぇの?」
ガッデム!終わった!こいつ等終わったよ!そんな事を心の中で思いつつ男達の冥福を祈る――訳も無い。
無視ってパフェを食べ続ける彼女と俺に業を煮やしたのか、腕を掴もうと手を伸ばし――
刹那、神速の拳撃が男達を叩きのめした。
視線を移すまでも無く、それを行ったのは、アリア・アストレアその人。
極限にまで手加減されたそれが男達の急所を打ち、地べたに這い蹲らせるまでに至った。
「…わたしのエリスに触らないで…!!」
静かに、しかし怒気と殺気が混じり
やばい、かっけぇ…改めて惚れ直しました。
何気に俺、貴女のモノでしたっけ?
って、ちがうちがう!!流石に此処で殺傷沙汰は拙いって!
不機嫌に成った彼女は(特にエリス絡み)では何を仕出かすか解らない。
以前は修行の名目で戦った魔物の攻撃が掠って頬から血が出ただけで切れて山一つ塵に変えるような人だ。
殺意を込めた瞳で男達を一瞥し、一気にパフェを食べきると彼女は立ち上がり、俺の手を引っ張った。
「…行こう?」
「ええ。ですけど、先に会計を済ませないと」
「…うん」
そして会計を済ませ、喫茶店から出て行く俺とアリアさん。
相変わらずこの人は強く、美しいと思う。
そして、またどこか遠く感じた…
宿を取り、指定された部屋に入ると荷物を置く。
勿論一人一部屋ではなく二人で一部屋。
「ん…夕食までは時間的に余裕があるみたいですよ?」
「…そう…エリス、ちょっと来て」
ベッドに腰掛けているアリアさんの横に座るよう促される。
「ん…あったかい…」
ゆっくりと俺の背中に手を回し抱きしめてくる。
そのまま夕食の時間まで彼女に抱きしめられるのだった。
翌日、早朝から日課となっている鍛錬をする。
その後、アリアさんと模擬戦をするのだが…
ギィン!ギャリィン!ガキンッ!!
金属同士がぶつかり合い、火花を散らし金属音を響かせる。
高速といっていいだろう剣速で振るわれる剣。
勿論刃引きなどしていない。
まあ、寸止め出来る技量が互いにあるので問題は…多分無い。
…そう思いたい。
ふざけた思考を放棄し、だんだんと上がる剣速に必死に食らいついていく。
そして終わりは唐突に。
今までの剣閃のなかで最も早く重い一撃を本能的に防ぐと同時に衝撃で剣が手元から離れ吹き飛んでいく。
そして突きつけられる剣。
「参りました…」
「ん…よく頑張った」
そっと抱えられ、宿へと運ばれる。
アレだけ激しく動いたのに彼女は汗一つ掻いていない。
やはり地力が違うのかと理解する。
そのまま一旦風呂へ行き、汗を流し少し浸かってから上がる。
服を着替えてから宛がわれた室へと戻ると、既にそこには彼女が居た。
窓際に立ち、群青色の艶のある長髪を風に靡かせながら歌っていた。
「♪~♪~♪~~♪~」
どこかで聴いた事が有るような、無いような。
優しく静かに、されど心に響く様な、そんな不思議な歌。
俺はそっとベッドに腰掛、その歌にそっと耳を傾けるのだった。
以上、一話でした。
書いた後文字数を見たら2902文字…
え?自分こんなに書いてたっけ?
いきなりですが、ここで簡易人物紹介をします。
登場人物其ノ一
・『エリス・アストレア』
何者かに"精神のみ"を憑依と言う形で召喚され金髪の女顔の少年へと成った元普通の青年。
召喚された理由と意味を知るためにアリアに連れられながら自分を召喚した人物を探す旅をしている。
本人の脳内では召喚者の探索はついで扱いになっている。
まぁ、色々と中ニ風味ですが、今後ともこの作品をよろしくお願いします。
4/28 14:04 章設定等編集。