真実
「ヴォー、あのさ・・・」
「何だ?」
「いや、やっぱいいや。後で話すみょ。
そうだ、ちょっと早いけど宿探さない?
ゆっくり話したいことあるし。 」
「宿か。分かった。向こうからこっちに歩く途中でそれっぽいの見つけたんだ。雨雲が見える。他を探すのは時間がかかるだろう。そこでいいか?」
「うん。急ごうか。」
アレックが見つけたという宿にはすぐに着いた。途中で小雨が降り出したので走ったのだ。
2人が泊まることとなった部屋は2階にあった。すでに部屋の窓には雨が打ちつけられていた。昼頃の太陽は幻のように感じられた。
「雨で体冷えちゃったにゃ。
ここにシャワーはついてないみたいだから着替えるしかできないみたいだにゃ。着替えは俺の使ってみょ。サイズがあえばいいんだけど。」
ラックの小さな鞄の中から次々と洋服が出されていく。まるでマジックだ。
「はい。これ。」
「ありがとう。」
アレックが着てみた。2人は体格が似ているので大丈夫だったようだ。
窓に打ち付けられた雨がガラスを伝って下へ流れていくのが見えた。明日にはやんでいるだろうか。
「ヴォー、さっきの話の続き、いい?」
「詳しく頼むぞ。」
狭い部屋に置かれたベットにゆっくりと座りなおし、アレックは話の続きを待った。
「えっと・・・。何から話せばいいのやら。
そうだな、ヴォーはいつぐらいからの記憶があるの?」
「いつごろからか・・・か。そうだな、気づいたら森の中で一人・・いや、一人では無かったな。誰だったのかまでは分からないが。」
「じゃぁ、城やお父さんのことは覚えてないんだね。」
「城?」
アレックはかなり驚いた声をして聞き返した。
「ヴォーは・・本名アレック・カル・シルセインっていうんだ。
この国の本来の次期後継者だみょ。もちろん、今は君の、アレックのお父さんがこのアークウェイを治めてる。」
「つまり・・・俺は、というか俺が本当に次期後継者だったら今頃ふわふわなベットの上で空の白い月でも見ながら物思いにふけってるはずだろ?何があって俺は森の支配者みたいな野生児の世間知らずになってるんだ。」
アレックは勢いをつけて一気に喋りきった。
「あと、お前は誰だ?」
「俺はラック・ド・ラルーンだみょ。君とは従兄弟になる。
そして君の事だけど、実はとっても幼い頃に城からいなくなってしまったんだみょ。ジュムン叔父さんは理由を知ってたみたいだけど、俺は何にも聞かされてない。それで、真実を知りたくなって君を探しに出たんだ。」
アレックはベットからおりて東に浮かぶ青白く細い月を眺めた。
「なんで最初にそう言ってくれなかったんだ?理由は?」
「さぁ?自分でも分からにゃい。いつの間にかそう言ってた。」
アレックはため息まじりの小さな笑いをするとラックの方へ向き直った。
「そうか。」
「あーあ、全部言っちゃった。もう少しぶらぶらしてられると思ったのに。残念。」
ラックはベットに倒れこんだ。
外から聞こえていた雨風の音はおさまっていた。太陽は西の地平線に隠れ、月が輝きを増していった。優しげな風が吹いている。
「で、俺を国城へ連れて行くのか?明日?」
ラックは驚いたように上体をおこし、
「え?嫌?」
「本当に俺が『アレック・カル・シルセイン』だって証明しなくていいのか?」
「あぁ、それは・・」
またラックがベットに倒れた。
「城についてからすればいいみょ。」
「そうか。」
アレックは呆れながら返事をした。
ちょっと疲れました。。。
そろそろ下書きがなくなってしまいそうなので遅くなるかもですね。