妖精
2人は結局最初の大木のきの見える所まで歩いてきた。
「あれ?人いるみょ。こんな街外れなのに。」
ラック達から親指程度の大きさに人影が2人見えた。
「暇だし、話聞いてみようみょ。」
足を僅かに早めて歩く。距離が縮まったとき、ラックが話しかけた。
「ねぇ、そこの人たちさ・・・」
「何か」
「なんだい子猫ちゃん」
そこに立っていた二人がほぼ同時に答えた。
2人共男だ。洋服など、似たものを着ているどころか、髪型、髪の色が一緒だ。
ただ、目の色が決定的に違った。深紅と群青。話し方からして性格も違うだろう。纏っている雰囲気も大きな違いがあった。
「俺達さ、さっきここの街に着いたんだけど、どっかいい宿知らないかにゃ?」
「へぇ。大変だね。どっか探せばあるんじゃないの。生憎、俺達もここの人間じゃなくてな。」
青目の方が微笑しながら言った。
「ていうか、君たち本当に俺等が見えるの?」
「見えてなかったら話しかけないみょ。」
ラックが不思議そうに呟く。
「そうだね。僕は、陽の精のリュリス。彼は風の精のメフィル。君たちは翼を持ってるんだ。」
「俺はフィツ、こっちはヴォー。」
ラックが代表して自己紹介をした。
フィツの紹介のあと、柔らかな風が吹いた。
「2人とも本名じゃないだろ?」
短い沈黙があった。
「そうだみょ。」
メフィルが言った言葉にラックはかなり驚いていたが、アレックはそれ以上にラックが言った言葉に対して驚いた。
アレックがラックを疑問のまなざしで見ていた。ラックはそれに後で話すから、と思いアレックを見つめ返すことしかできなかった。
「何か事情があるみたいだな。」
メフィル薄くわらった。全てが分かったように。
「で、妖精が何でこんなところにいるんだ?」
アレックが重くなりすぎた空気をなんとかしようと質問をした。
「んーとね、暇つぶし。すること無いんだよね。基本的に。」
リリュスがあくびをしながら言った。
「暇じゃない時はどうしてるの?」
「いつもは上の人のご機嫌とって各々の仕事したりしてるよ。」
「他に妖精はどれ位いるんだみょ?」
「さぁ?」
リリュスはさもつまらなさそうにまたあくびをした。
「分かんないの?集まったりとかは?」
「ないない。」
「俺が分かる程度なら、そうだな・・・40は間違いなくいる。噂くらいしか聞いたことないようなヤツいれたら60いくかいかないか。」
「皆君らと同じような格好してるにょ?」
続く質問。
「妖精のなかでいくつかのグループをつくる。そのグループでは同じようなの着てるな。色とか、素材とか。」
「なら、お前達は同じ所属なのか。」
「そう。分け方としては大雑把だよね。自然物とか。そのまとまりの中でもさらに分かれていたりするね。目に見えるか見えないか、とか。」
「へぇ。面倒くさそう。」
「そうでもないよ。」
リュリスが言った後、メフィルがはっ と顔をあげた。
「リュリス、指令がでた。帰るぞ。」
「え~。今?面倒だなぁ。突然の号令とか一番嫌い。
フィツ、だっけ?クッキー一枚くれる?」
「いいみょ。」
ラックがリュリスにクッキーを渡すと、妖精たちの姿は消えていった。
2人に残されたのは気まずい空気。
ラックはため息をついた。
あんまり気まずい気がしないですか、気まずいというせってーでよろしくお願いします。